「21世紀の国土のグランドデザイン」 第3部 2

2 東北地域


−21世紀に向け調和のとれた新しいライフスタイルが展開されるフロンティア−



 (1) 地域整備の基本方向

 東北地域は、豊かな森林を擁する山地と盆地とが構成する山間部や変化に富んだ海岸線等の地理的特徴を有し、一般的に積雪寒冷地域ではあるものの脊梁山脈を境に気候区分が異なるなど多様な自然的条件を備えた地域である。また、三内丸山遺跡を始め各地域に広く分布している縄文時代の遺跡等歴史の中で培われてきた特色ある文化や生活、産業、技術等にかかわる豊富な資源を有するとともに、我が国の主要な食料、木材及びエネルギーの供給基地としての役割を担っている。さらに、これまでの高速交通基盤等の整備の進展を背景に中枢・中核都市の拠点性が高まりつつある。

 今後は、本地域においてこうした個性とポテンシャルを生かし、豊かで美しい自然と共存できる社会を形成していくことが期待される。このため、各中枢・中核都市の個性や拠点性を一層高めつつ、中小都市や過疎化、高齢化の進展が懸念される沿岸部や山間部地域においてゆとりと豊かさを実感できる多自然居住地域の創造に取り組み、これらの都市間、地域間相互の交流・連携を深めることによって、東北地域全体として「21世紀に向け調和のとれた新しいライフスタイルが展開されるフロンティア」としての発展を目指す。加えて、東北地域を縦横に結ぶ地域連携軸を展開するとともに、北陸地域等との連携を図りつつ環日本海地域を中心とする極東アジアにおける国際文化・経済交流のゲートウェイとして、さらに、北海道、関東地域との連携・補完を図りつつ太平洋地域におけるゲートウェイとしての機能の充実を図り、広域国際交流圏の形成を目指す。こうした取組によって広域的な地域間の交流・連携が進み、東北地域として一体的な発展のみならず、北東国土軸及び日本海国土軸形成の基礎が築かれる。


 (2) 施策の展開方向

 奥羽山脈等を境に歴史的経緯や生活・文化環境等は異なるものの、その差異を超えて生活、産業、文化等の各般の面で広域的な連携・交流を推進し、これを通じて東北地域全体としての調和のとれた発展を図る。さらに、岩手、秋田を結ぶ地域連携軸、宮城、山形を結ぶ地域連携軸、福島、新潟を結ぶ地域連携軸等の形成を図るとともに、十和田・八幡平を中心とする地域連携や仙台・福島・山形の各市を中心とする地域連携を進め、北東北や南東北における広域的な交流圏の形成を目指す。また、茨城、栃木との県際交流等による連携の推進を図る。このため、これらの基盤となる高規格幹線道路として、沿岸部の諸都市を結ぶ東北縦貫(八戸線)、日本海沿岸東北、常磐、津軽、三陸縦貫及び八戸・久慈自動車道、中央部の諸都市を結ぶ東北中央自動車道、東北地域を横断し太平洋側と日本海側の諸都市を結ぶ東北横断自動車道(釜石秋田線、酒田線)の整備、これら高規格幹線道路を補完する宮古盛岡横断道路等の地域高規格道路等の整備、空港、港湾、鉄道等の整備を推進する。東北新幹線については、政府・与党検討委員会検討結果に基づき、盛岡・新青森(石江)間について着実に整備を進める。さらに、高度な情報通信基盤の整備を進める。青函地域は、南北に縦走する日本列島と太平洋・日本海をつなぐ津軽海峡が交差する十字路に位置し、インターブロック交流圏として今後の発展が期待される地域であることから、青函トンネルの一層の活用方策、新たな交通体系について、交流圏構想等の動向を見つつ長期的視点に立って検討する。また、高度な情報通信基盤の整備、情報共有の促進等を通じたより一層の交流・連携を推進する。日本海沿岸地域及び三陸沿岸地域については、豊かな海洋資源や高度技術産業等の集積を生かし、環境と調和した研究開発・物流拠点や海洋性レクリエーション拠点の形成等を図り、沿岸域各都市及び内陸部との交流・連携を促進する。阿武隈地域においては、進みつつある高速交通体系の整備にともなう開発可能性の高まりを踏まえ、広域的、総合的な開発構想を推進する。

 広域国際交流圏の形成を図るため、仙台、新潟を核とする中枢拠点都市圏及び各地の地方中核都市圏において、中枢管理機能、研究開発機能、商業・サービス機能、物流機能、コンベンション機能、さらには高度な教育・文化・スポーツ機能等の集積を図り、世界に開かれた都市機能の整備を図る。また、国際交流の拠点となる仙台、新潟空港や塩釜、新潟港等の整備を進めるとともにアクセスのための交通基盤等の整備を進めるなど、新時代に対応した国内外を結ぶ多様な交通基盤及び国際的な観光レクリエーション拠点の整備を推進する。さらに、地球社会を先導する産業・技術を育む地域の形成を図るため、高等教育機関や試験研究機関等の知的資本の充実を図るとともに、東北地域が一体となったネットワーク化や産学官の交流・連携を進め、東北地域全体において独創的な研究開発等を展開する活動の一層の推進を図り、国際的水準の研究開発拠点の整備を図る。あわせて、地域の産業界が一体となったベンチャー企業育成に向けた運動の展開等によりこれらの研究成果や開発技術の産業化を促進するとともに、地域の先端的な産業・技術集積を活用し、時代のニーズに対応した高付加価値製品の創造拠点を形成する。

 多自然居住地域の創造に向けて、世界遺産である白神山地等の豊かな自然と風土が育んできた独自の歴史や伝統を生かし、最上地域における環境と調和した地域づくりや奥会津地域における地域資源を活用した地域づくりの具体化に努めるなど、ハード・ソフト両面にわたり特色ある自然環境や文化遺産の保全・活用を図るとともに、「みちのく」の文学的風土等を生かした個性豊かな新しい文化の創造・発信を図る。また、各地に点在する全国屈指の温泉群及び国際競技大会等にも対応できるスポーツ施設や高度な情報通信基盤、域内交通基盤等の整備、洪水、雪崩、土砂流出等による自然災害への対策や海岸の保全を進め、安全で自然と調和した生活・文化環境や観光レクリエーション機能の強化を図りながら、これらの活用による地域内外の交流を促進する。さらに、圏域の拠点となる中小都市の整備を進めるとともに、高齢化の進展に対応した医療・福祉の充実に向けた施策の展開を図る。地熱、風力等の自然エネルギーの開発利用を推進するとともに、積雪に対応した生産・生活環境の整備等を通じて克雪対策やまちづくりを進める。北上川、阿武隈川等の流域においては、健全な水循環の保全と回復を図り、多様な流域内交流・連携を推進する取組等を支援する。一方、本地域は我が国の食料・木材供給基地として重要な役割を果たしていることから、農業については、生産・加工・流通基盤の整備及び高質化を契機とした経営規模の拡大を進め、新品種の育成や栽培技術の確立等を通じて高度化、複合化を推進する。林業については、豊富な森林資源を活用するため、間伐等の推進等による森林の育成を図りつつ、木材の供給体制の整備及び試験研究の推進等を図るとともに、国民の心身のリフレッシュゾーンとしての整備を図る。漁業については、漁業環境の維持、保全やつくり育てる漁業を推進するとともに、生産・加工・流通基盤や販売体制の整備の推進を図る。さらに、情報ネットワークの活用等により多様な消費者ニーズに対応できる生産・流通体制を整備するとともに、全国的にみて豊かで恵まれた農林水産物、自然環境等の地域資源を活用した複合的経営やグリーン・ツーリズム等の推進を図り、地域の立地条件に応じた生産・生活基盤の整備を図る。

 むつ小川原地域については、我が国にとって重要な施設である国家石油備蓄基地や核燃料サイクル施設の立地・建設に加えて研究施設の立地が進んでいるが、近年の経済社会情勢の変化を踏まえて、これまでの基盤整備を生かし、諸施設の集積可能性を含め、開発方策等の検討を行いつつ、それに基づき推進する。


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