「21世紀の国土のグランドデザイン」 第3部 7


7 中国地域


−多様な主体の参加と連携の下でグローバルな交流を進める多軸・分散型発展の先導的地域−



 (1) 地域整備の基本方向

 中国地域は、豊かな自然環境の中に多様な機能を有する大小の都市が適度な間隔で分布し、それぞれの地域が相互にかかわりながら、古くから瀬戸内海、対岸諸国との交流を含め日本海の水運及び陸上交通の要衝としての役割を担ってきた。近年では、広島や岡山を始め各地域で平和、医療、環境、人道援助等の国際貢献やスポーツ交流が東アジアを始め世界各国との間で活発に行われ、地球時代をリードしてきた地域の一つである。さらに、ボランティア団体の活発な活動により拠点整備が進むなど住民参加の地域づくりが先導的に行われながら発展してきた。

 今後、本地域は、地域づくりに対する住民の参加意欲の高まりやさまざまなボランティア団体の活発な活動の蓄積を生かすとともに、適度に分散した都市が、周辺の農山漁村とともに、それぞれの個性を生かし、安全で良好な居住環境の下で、豊かな自然を内包しながら、相互に補完・連携し合い、まさに「多様な主体の参加と連携の下でグローバルな交流を進める多軸・分散型発展の先導的地域」として発展することが期待されている。

 このため、人、物、情報の活発な交流が行われ多様な資源を複数の地域が共有し、相互に補完・連携しあうことにより、地域連携軸を域内外に展開する。これと併せ、四国地域との機能分担と連携により、一体的な発展を図りながら、広域国際交流圏を形成する。また、中国山地を中心とする中山間地域等を含む農山漁村の有する棚田等地域資源の最大限の活用と地域の創意工夫により、美しく、アメニティに富んだ多自然居住地域の創造に取り組むことが重要である。
 これらを通じ長期的に日本海国土軸、西日本国土軸が形成されていく。

 (2) 施策の展開方向

 日本海から中国山地を経て瀬戸内海に至る多様性に富んだ中国地域の発展を目指し、それぞれの地域アイデンティティを確保しつつ、新しい文化の創出をも視野に入れながら、異なった歴史、文化、都市機能を有する地域間の交流・連携を促進する。このため、広島、岡山等の産業集積地域において、高度な研究開発拠点の整備を進め、研究開発の活性化や創造性を有した人材の育成を図るとともに、自動車や造船等技術・産業集積を生かしながら企業間・産業間のネットワーク化を促進し、産業構造の転換を促進する。これと併せ、都市の個性に応じて、国際交流、文化、医療機能等の強化・整備を進めながら、地方中枢都市、地方中核都市、地方中心都市等との間を結ぶ複合的な都市間ネットワークを地域内外に連ねることにより地域連携軸を形成する。本地域では、南北方向には、日本海から瀬戸内海を経て太平洋に至る地域が広域的に連携し合う、島根、鳥取、岡山、香川、徳島、高知を結ぶ地域連携軸と島根、広島、愛媛、高知を結ぶ地域連携軸の形成を図る。また、日本海沿岸では、下関、浜田・益田、松江・米子・出雲、鳥取等環日本海交流の一翼を担う国際交流拠点が連なる地域連携軸の形成を図る。さらに、瀬戸内海沿岸においては、水資源開発や豊かな自然環境の保全、回復に配慮し、ゆとりある生活と活発な産業の両立を目指しつつ、四国、九州との連携と交流を進める観点から、瀬戸内海地域における交流圏の形成を図る。特に、西瀬戸地域では、東アジアとの近接性を生かした国際交流の推進を視野に置きつつ、産業、観光等において、海を介した様々なネットワークの形成を図る。このため、高規格幹線道路については、山陰自動車道、中国横断自動車道(姫路鳥取線、尾道松江線)、東広島・呉自動車道等の整備を推進する。また、これに接続する鳥取豊岡宮津自動車道、江府三次道路等の地域高規格道路の整備を推進する。さらに、地域の内外の交流等を進めるための空港、港湾、鉄道、コミューター航空網や高度な情報通信基盤の整備を進める。関門海峡道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める。また、広島、松山の中枢拠点都市圏の連携強化及びその機能の広域的活用のための交通体系について、西瀬戸地域での交流圏構想等の動向を見つつ長期的視点に立って検討する。

 地域連携軸の形成と併せて、近畿地域や九州地域とも連携しつつ、四国地域との機能分担と連携による一体的な発展を図りながら、広島、岡山を核とする中枢拠点都市圏を中心として広域国際交流圏の形成を進める。このため、国際交流の拠点となる広島空港、広島港等の整備や日本海側での境港等の整備を進め、アジア・太平洋地域等へのゲートウェイ機能の強化を図るとともに、これらへのアクセスのための交通基盤を整備する。また、広島市におけるアジア各国との交流、国際平和交流、文化・スポーツ交流を生かして国際コンベンション等高次都市機能の充実を進める。さらに、世界遺産である原爆ドームや厳島神社等の歴史・文化遺産や美しくアメニティに富んだ多自然居住地域の伝統文化等の地域資源とが相まって、国際的にも魅力ある観光が展開されるように、拠点となる地域の環境整備やそれを支える体制の整備を進める。

 多自然居住地域の創造に向けて、中国地域の美しい自然やたたら製鉄を始めとする伝統文化が継承・発展されているとともに、地域の歴史、文学、芸術等をつなぐ文化回廊構想が提唱されている。さらに、中山間地域等の活性化を考える県境サミット、中国山地森林文化圏での取組、各地で展開されているグリーン・ツーリズム、新たなライフスタイルを創出するテレワーク等の都市・農山漁村の交流・連携が進められているとともに、太田川や江の川等の流域において、流域一体となった水質保全、国土の保全・管理等の取組が進められている。こうした連携、交流の動きを踏まえ、圏域の拠点となる中小都市の整備を進めつつ、域内交通基盤や高度な情報通信基盤等の整備、安心で快適な生活空間の創出のため生活環境の整備や福祉の充実、瀬戸内海や日本海の総合的利用や田園、森林、水辺に親しめる環境の整備とともに、洪水、土砂流出等に対する災害に強い地域づくりや海岸の保全を進める。これらと併せて、農林水産業については、中国縦貫自動車道等の活用による域内や関西圏、九州地域の市場への利便性の向上や日本海側の砂丘地形や瀬戸内海の温暖な気候、なだらかな中国山地等の地域環境と伝統工芸を含む地域資源を最大限に活用するため、農林水産業の生産・加工・流通基盤の整備・高質化を図るとともに、高度な情報通信を利用した経営管理やマーケティング等を進めつつ、地域の創意工夫とアイデア豊かな担い手による複合的経営を進める。


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