「21世紀の国土のグランドデザイン」 第3部 8


8 四国地域


−国内外にわたる広域的連携型発展の先導的地域−



 (1) 地域整備の基本方向

 四国地域は、中央部を東西に四国山地が貫き、北に瀬戸内海、南に太平洋と多様性に富んだ海に面するという地理的条件を有し、豊かな自然環境や温暖な気候に恵まれており、地域内に適度な規模の都市が分散し、都市機能の集積も進みつつある。また、古来より瀬戸内海や太平洋を介して、他地域との活発な交流が進められ、個性ある文化が育まれてきている。さらに、近年では、本州四国連絡橋3ルートの全線の完成が間近に迫り、各地方中核都市圏における空港、港湾等の整備も進展しつつあるなど、海を越えた国内外の地域との交流環境が飛躍的に向上しようとしている。

 このような新たな交流環境の形成にともない、他地域との多様な連携により、豊かな自然、個性ある文化等を広域的な観点から活用し、地域の自立的な発展を実現するポテンシャルが著しく高まってきていることを踏まえ、今後、本地域は、「国内外にわたる広域的連携型発展の先導的地域」を目指す。

 このため、四国内各地域の連携の強化を図りつつ、本州四国連絡橋3ルート等を積極的に活用し、多様な地域連携軸を形成する。また、海外との交流の活発化を図り、アジア・太平洋地域を始めとする世界に開かれた地域づくりを促進するため、特に中国地域との機能分担と連携により、一体的な発展を図りながら、広域国際交流圏を形成するとともに、各都市の機能強化、中小都市と中山間地域等を含む農山漁村等における多自然居住地域の創造等を進める。これらを通じ、沖縄から九州、四国、紀伊半島を経て伊勢湾沿岸へと至る太平洋新国土軸の基礎が築かれる。


 (2) 施策の展開方向

 都市機能や研究開発機能の充実・強化、農山漁村の活性化等を図るため、日本海から太平洋までの地域が広域的に連携し合う、京都、兵庫、徳島、高知を結ぶ地域連携軸、島根、鳥取、岡山、香川、徳島、高知を結ぶ地域連携軸、島根、広島、愛媛、高知を結ぶ地域連携軸の形成を図る。その基礎として、四国縦貫、四国横断、今治・小松、高知東部自動車道の高規格幹線道路や阿南安芸自動車道等の地域高規格道路の整備、徳島飛行場等の空港、港湾の整備、幹線鉄道の高速化等を進めるとともに、高度な情報通信基盤の整備を図る。地域連携軸の形成に向けた取組の中でも特に観光、レクリエーションについては、遍路みち等の文化的資産や四国山地等の自然環境を活用し、太平洋、瀬戸内海、日本海を結ぶ広域観光ルートの設定、歴史・文化とのふれあいを重視した道づくり、滞在型保養空間の整備等を重点的に進める。また、中国、九州地域との交流と連携を進める観点から、瀬戸内海地域における交流圏の形成を図る。特に、西瀬戸地域では、産業、観光等において、海を介した様々なネットワークの形成を図る。さらに、長期的な視点から、本州、九州との広域的な連携を図るための交通体系について検討する。豊予海峡道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める。また、広島、松山の中枢拠点都市圏の連携強化及びその機能の広域的活用のための交通体系について、西瀬戸地域での交流圏構想等の動向を見つつ長期的視点に立って検討する。

 アジア・太平洋地域との自立的な国際交流活動を促進するため、中国地域の中枢拠点都市圏等との機能分担と連携を図りながら、高知新港等国際交流の拠点となる基盤やこれらへのアクセスのための交通基盤の整備を進めるとともに、国際コンベンション、国際水準の研究開発等に係る基盤整備を進め、広域国際交流圏を形成する。また、より高次な国際交流機能を発揮する観点から、関西国際空港へのアクセスの充実を図る。

 広域国際交流圏の形成と併せて、松山、高松、高知、徳島を核とする中枢拠点都市圏・中核都市圏において、各都市の連携を図りつつ、業務管理、研究開発、高次の教育・文化、情報等の高次都市機能を強化するとともに、これらを支える都市基盤の整備、中心市街地の活性化を推進し、地域の発展の拠点を形成する。また、瀬戸内海沿岸地域等において、近年の産業構造の変化への対応を図るため、既存産業の高度化や成長性の高い先端技術産業、高次サービス産業の立地等を進める。さらに、人材の育成や技術の高度化を図るため、高等教育機関、研究機関の整備・充実、産学官の連携による研究開発、異業種間技術交流を促進する。

 多自然居住地域の創造に向けて、圏域の拠点となる中小都市の機能を高めるとともに、高度な情報通信基盤、交流基盤や生活基盤の整備等を進め、高齢化に対応した医療・福祉の充実、立地自由度の高い産業の育成、棚田等地域資源を生かした産業の活性化等を図る。このため、四国西南地域で展開されている高度情報通信技術の活用による地域活性化、豊富な農林水産物や自然景観の活用による地域づくり、四国東部地域で展開されている留学生等との交流の促進、海洋深層水を活用した産業の創出等への取組を推進する。また、吉野川や四万十川の流域等においては、都市と山村の交流を通じた森づくりや、清流の保全と地域の振興が調和する地域づくりへの取組等により、様々な主体の参加と広域的な連携の下に水源地の森林整備や水質の保全、多自然型川づくりを進める。さらに、瀬戸内海、足摺・宇和海等における自然環境の保全、回復を進め、あわせて、自然とのふれあいの場としての整備を進める。農林水産業については、その活性化を図るため、関西圏等への時間距離の短縮を生かした生鮮食料品の供給地としての機能の強化、木材供給体制の整備や間伐等による健全な森林の育成、つくり育てる漁業を推進するとともに、生産・加工・流通基盤の整備や高度化を図りつつ農林水産物のブランド化等による高付加価値化を促進する。他方、安全で安心できる生活の実現を図るため、洪水や土砂災害等に備えた災害に強い地域づくりや海岸の保全を進めるとともに、瀬戸内海沿岸地域を中心とする渇水の頻発に対応して、節水型社会の形成や地域の特性に応じた水資源開発を進める。


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