「21世紀の国土のグランドデザイン」 第3部 10


10 沖縄地域


−太平洋・平和の交流拠点(パシフィック・クロスロード)−



 (1) 地域整備の基本方向

 沖縄地域は、我が国と東南アジア地域等の熱帯・亜熱帯圏との結節点に位置し、広大な海域に囲まれた我が国唯一の亜熱帯海洋性気候の島しょ地域という独特の自然的、地理的環境の下で、古来からの東アジアや東南アジア諸地域との交易を通じて形成された琉球文化に、戦後のアメリカからの影響等が加わった、国際色豊かな独自の文化、生活様式を育んできた。

 今後、本地域は、そうした地理的、自然的特性と歴史的、文化的蓄積等の地域資源や、それによって培われてきた多様性を受け入れる国際感覚と相互扶助の精神を積極的に生かし、地域の自立的発展と我が国ひいてはアジア・太平洋地域の経済社会文化の発展に寄与する21世紀のフロンティア、「太平洋・平和の交流拠点(パシフィック・クロスロード)」として特色ある地域の形成を目指す。

 このため、アジア・太平洋地域における結節機能を育成、強化し、平和交流や技術協力等の国際的な貢献活動を始め、経済、学術、文化等における多角的な交流を促進して、世界に貢献する広域国際交流圏の形成を図る。また、経済の自立と雇用の確保を進め、地球社会と共生し国際平和に貢献する自立的な地域を構築する。このことによって、海洋性の太平洋新国土軸形成の端緒が開かれる。


 (2) 施策の展開方向

 沖縄本島を中心に奄美群島も含めた琉球弧を視野に入れ、アジア・太平洋地域における人、物、情報の結節点となる広域国際交流圏の形成を図る。このため、那覇を中心に、中枢管理、国際交流等の高次都市機能の集積を図るほか、那覇新都心等の拠点市街地の整備や独特の歴史、文化を反映したまちづくりを進め、特色ある中枢拠点都市圏の整備を図る。また、各地域の特性を生かして国際貢献活動や経済、学術、文化等に関する交流拠点の整備を進めるとともに、これらの交流拠点間のネットワーク化を図る。こうした交流の基盤として、アジア・太平洋地域に向けたゲートウェイ機能の強化に向け、国際交流の拠点となる那覇空港、那覇港等の整備及びこれらへのアクセスのための交通基盤の整備を推進するとともに、高度な情報通信基盤の積極的な整備を図る。また、那覇空港自動車道の整備や沖縄西海岸道路等の地域高規格道路の整備、沖縄都市モノレールの建設推進等を図る。このほか、高等教育・研修機関の整備等により、若年層を中心に国際化の進展や経済社会の変化に対応しうる人材の育成、確保に努める。

 これらにより、国際平和に関する交流や、害虫防除技術等熱帯・亜熱帯地域の発展に寄与する技術の移転、アジアを始めとする海外からの研修生、留学生の受入等の国際協力を進めるほか、珊瑚礁の研究を始めとする亜熱帯特性に関する国際的な学術・研究交流や琉球文化の継承、発展につながる文化交流、観光、スポーツ等、多様な交流と地域の情報発信を促進する。

 経済面では、自由貿易地域を充実するとともに特別自由貿易地域を新たに設け、税制・融資の積極的活用により国際的な物流・中継加工拠点の形成を促進するほか、魅力的な立地環境を整備してアジア・太平洋地域のビジネス拠点の形成を目指す。また、健康、医療、環境、食料等に関する研究開発・産業、情報通信産業等の振興を図るため、産学官の協力による研究開発やベンチャー企業の支援等を進める。

 一方、多様な亜熱帯海洋性の自然環境や独特の文化を国民的な財産として保全、活用し、北部圏や宮古圏、八重山圏等において、安全で快適な居住と個性ある交流を実現する魅力ある多自然居住地域を創造する。このため、やんばる、西表島等の貴重な亜熱帯生物の生息・生育地や各地の美しい景観を形成する海浜、珊瑚礁海域等の保全、回復や赤土流出対策を進めるほか、歴史的な街並みや史跡、伝統芸能等の保全、継承を図る。また、これらの地域資源をネットワーク化した国際的な長期滞在型、通年型の観光・リゾート地の形成を進めるとともに、これらを支える産業の振興を図る。亜熱帯特有の自然条件等の優位性を持つ農林水産業については、生産、流通、加工基盤の整備等を図るとともに、地場産業等との連携等複合的な取組を通じて、市場ニーズを踏まえた振興を図る。さらに、台風等による自然災害や渇水等に柔軟に対処するため、総合的な防災対策、多目的ダムの建設等を進める。また、雨水等の利用や下水処理水等の循環利用による節水型社会の形成を図る。

 これらの施策の展開に当たっては、沖縄地域全体の振興を図ることが重要である。特に北部圏については、沖縄本島の一体的な発展を図る上でその果たす役割は大きく、地域特性を生かしつつ今後とも振興に向けての着実な取組を進める。

 また、土地利用上大きな制約となっている米軍施設・区域については、普天間飛行場の返還等沖縄にある米軍施設・区域の約21%、5002haの縮小が盛り込まれている平成8年12月の「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」の最終報告の内容を着実に実施し、その進展を踏まえつつ跡地の利用を計画的に進める。


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