
都市部において建築物の大規模化が急速に進み、建築物の安全性の確保が喫緊の課題となっているラオス国において、現地政府が行う建築基準整備に向けた取り組みを技術的に支援するため、現地セミナーを開催して情報提供と意見交換を実施した。
・ ラオス国には、建築物の高さや用途をチェックする都市計画許可制度は存在するものの、運用は徹底されていない。また、建築物の安全性にかかる 建築基準(いわゆる単体規定)やその適合性をチェックする建築許可制度は存在しない。
・ 近年、都市部において建築物の大規模化が進む中、多人数収容の中層建築物が、安全性のチェックを受けないまま建築・使用されており、火災や 過剰積載等による倒壊等のリスクが高まっている。

写真1 ビエンチャン市概観

写真2 中層建築が活況な市中心部
2009年1月のソマード公共事業運輸大臣訪日の際、国土交通大臣にラオス建築基準整備への支援依頼があったことを受けて、現地調査により先方の期待する支援内容を確認したところ、概要は以下のとおり。
・ ラオス公共事業運輸省は、2007年に住宅都市計画局に建築基準チーム(3名)を設置し、諸外国の建築基準について調査を開始。
・ チームは、メンバーの変更を経ながらも、JICA集団研修「建築基準コース」に参加して日本の制度を学びながら、JICA専門家作成によるタイの防火基準改正案を基にした「ラオス防火基準案」や、日本やフィリピンの制度を参考とした「建築規制の骨子案」を作成するなどの活動を実施。
・ これら素案の成文化・制度化に向けては、長期的な支援(日本からの長期専門家派遣を想定)が必要と考えるが、要請内容を精査するためにも、まずは課題の明確化と国内関係者間の認識の共有が不可欠であり、これらの点について日本の専門家より意見を聴きたい。
日 時:2010年1月15日(水)8:30~16:00
会 場:公共事業運輸省 第一会議室
参加者:
(ラオス)ソマード公共事業運輸大臣、公共事業省(本省、地方事務所、研究所)、消防庁、ラオ大学、建築技術者協会等から約60名
(日 本)岡崎健二(政策研究大学院大学教授)、長谷川知弘((財)日本建築センター国際部部長)、
佐藤美紀雄・畑めぐみ(国土交通省国際建設推進室)、村岡和満(JICA専門家 公共事業省計画アドバイザー) 他
概 要:
・ ソマード大臣の開会挨拶に続き、ラオス建築基準チームから、「建築規制の骨子案」の作成状況について報告。
・ 岡崎講師より「Building Regulations: Why and How」、長谷川講師より「Some Issues concerning Building Control」と題して講演があり、
以下のような論点を指摘した上で、各国のニーズや状況によって最適解は異なることが解説された。
建築基準・規制の必要性(自然災害等から生命・財産を守る 等)
建築基準の特性(義務づけ可能な最低基準であるべき 等)
基準の規定のあり方(仕様規定か性能規定か 等)
対象とする分野・範囲(省エネを含むか、既存建築物を対象とするか 等)
基準の履行を支える制度(建築確認制度、資格登録制度、教育・啓発 等)
・ 講演後の意見交換では、既存建築物の取り扱いや、建築確認に民間活用すべきか否かといった問題を中心に、参加者全員参加の活発な
意見交換が行われ、建築基準・規制の必要性について、関係者間で一定の認識を共有できたことが確認された。
・ 会議終了後、セミナーに終日参加されたソマード大臣より、セミナー開催に対する謝辞が述べられ、建築基準・規制の整備実現に向けた
日本からの支援に期待しており、公共事業運輸省としても専門家派遣要請などの準備を進めていくとの発言があった。

写真3 ソマード大臣挨拶

写真4 セミナー会場の様子