講演テーマ : 「トヨタの国際戦略:グローバルロジスティクスの構築」
- 21世紀は「変化の時代」 「明日が読めない時代」、いまは売れていた新車があっと言う間に売れなくなってしまう。いかに情報技術(IT)が発達しても、商品自体は実際に運ばなければならない。フィジカルなサプライチェーンはスリムで短いことが必須条件。
- グローバルな時代にフレキシブルに対応するための物流方式は、リードタイムの短縮、在庫の低減を可能にするものでなければなりません。その為には「小ロット、多頻度かつ満載」の物流をいかに実現化するということです。
- 港湾のインフラもコスト競争に勝たなくてはいけません。すくなくとも物流の障害になってはいけないでしょう。船であればより大きい方が合理的ですし世界は24時間動いておりますから、夜間でも港で荷物が止まらないのが望ましい。また天候に左右されないタフな港であることも大切です。
- 国際競争力のある港をつくっていただき、貿易立国を支えていただきたい。自給自足できない日本文明にとって、出入りのゲートとして大きな役割が港に期待されていると思います。
- グローバルロジスティクスを考えると、港湾は物の動きと情報の動き、これをいかにうまく同時に動かすか。情報技術(IT)、情報通信、あるいはデータベース化をどのくらい現場で集中管理できるかということが、物流戦略と地域のグローバル戦略をつなぐ鍵になるわけです。
- 少なくとも港湾は社会インフラの部品ではなく、世界に広がっていくグローバルネットワークを管理する一つの窓口になるということす。
大橋 隆史氏 キヤノン(株) ロジスティクス本部副本部長
- 日本の港湾がじり貧になっていて、欧米の基幹航路に就航する大型船が日本への寄港を嫌うような傾向が出てきますと、それは日本の港の衰退につながるため、いいことは何もありません。輸出企業にとって物流環境が悪くなることは困ると危惧しております。
- 今は特にコストとの競争ですからハイテク産業といわれてもできるだけ船で運びたい。
- 日本は海に囲まれていますから内航船がもっと発達してもいいはずですが、トータルのコストとトラックを使った運賃を比べると、トラックのほうが断然安い。まずこれが解消されないといけないと思います。港湾サービスの改善で日本もまだ対抗できるでしょう。そのためにも内航船サービス網の整備が望まれます。それによって日本の港湾戦略の中で、メイン港と地方港が両立して機能するのではないかと考えます。
竹村 健一氏 評論家
- 2000年の時点で日本の港はベストテンに一つも入っていません。それに比べてシンガポール、香港、韓国などは着実に取扱量を増やしております。各国の計画をみると各国に引き離されてきた日本の物流がこれから先、さらに大きく遅れてしまう、これでいいのか
- シンガポールで、港湾が発展したのはハブ機能に徹してきました。日本の港湾政策は日本へ原材料を運んできて加工して輸出することを基本に、自分のことしか考えてこなかった。中国が欧米に輸出する貨物も日本がまとめて欧米に持っていくハブの発想がなくてはいけない。
- 時代とともに港湾の機能も変わっていかなくてはいけません。各地の廃棄物を港に集めて、そこからすぐに船に積んで大規模な廃棄物処理施設、溶鉱炉を持っているところまで運ぶという静脈物流の広域ネットワークを作ろうというわけです。
平野 裕司氏 (社)日本船主協会 港湾物流委員会委員長
- コンテナ化後は荷物を扱うノウハウといった船会社本来のサービスが、港湾のサービスに大きく依存するようになりました。このような物流において基幹部分を担うのが港湾であり、従って、どの港湾を選択するのかが大きな課題とされております。その選択された港湾機能がしっかりしていなくてはいわゆるサプライチェーンが成り立たなくなってしまいます。
- 入港/通関等々港湾の諸手続きの問題については、関係省庁の枠を越えた、いわゆるシングルウィンドゥ化をお願いしたい。
- ハブ機能といった視点は絶対に必要だと考えます。国内のハブ港となる主要港湾とスポークとしての地方港湾の機能を如何に有効に結びつけるかを考えるべきだと思います。そういう意味で海運政策と港湾政策を総合的に考えるべきです。
- シンガポールや香港の港湾が使用している機器の大半はソフトも含め日本のメーカー製で、中枢にいる人は、日本国内でほとんどが研修を受けております。日本の港湾関係者は官民を含めて自信を持つべきだと考えます。
平松 守彦氏 大分県知事
- 港湾と臨海工業地帯が一体となって地域開発の拠点となったわけです。これからも競争力のある産業を立地させ、アジアとの競争を勝ち抜いていかねばならず、そのための港湾整備が必要です。
- 大港湾の競争力を高めるためには、大港湾への貨物を集める内航海運の競争力がもっと強くならなければならない。そのためには港湾と海運の連携が必要です。
- 「九州アジア経済圏構想」というものを考えているんです。国と国との自由貿易協定ではなく、九州と韓国、九州と中国という形で直接交流していくというのが私の考えです。
- 我が国の産業の空洞化を食い止めるためには、インフラ整備を進め、産業の国際競争力を高める環境をつくる必要があります。
- 中津港の整備を進め、雇用と民間投資を誘発します、産業が海外へ流出してしまうところを、港湾を整備することによって流出を食い止め、地域復興に寄与する。