海事

海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法の概要

1 背景

 ソマリア海賊による被害が、アデン湾及び紅海からオマーン沖及びアラビア海といった外洋に拡大したため、各国船舶において民間武装警備員を乗船させる事例が増加しました。 この結果、ソマリア海賊による被害が減少しましたが、日本籍船には国内法が適用されるため、民間警備員が銃器等を用いて警備を行うことが困難な状況でした。
 このため、凶悪な海賊行為が多発している海域を航行する日本籍原油タンカー等において、小銃を所持した民間武装警備員による警備の実施を可能とする「海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法(以下「日本船舶警備特措法」という。)」が、平成25年11月30日に施行され、同法に基づく運用が開始されました。
 

2 定義

(1)民間武装警備員の乗船が可能となった海域(海賊多発海域)
 日本船舶警備特措法に基づき民間武装警備員の乗船が可能となった海域は、凶悪な海賊行為が多発している紅海、アデン湾及びアラビア海等の海域であり、政令で定められております。



(2)民間武装警備員による乗船警備が可能となった船舶(特定日本船舶)
 日本船舶警備特措法に基づき民間武装警備員による乗船警備の実施が可能となった船舶は、原油を輸送する日本籍船のうち、海賊の対象となるおそれが大きい船舶の要件に適合する船舶となっております(日本船舶警備特措法第2条4号、日本船舶警備特措法施行令第2条)。
 具体的には、満載状態において、推進機関を連続最大速力で運転し船舶を航行させた場合の速力が18ノット未満の船舶(日本船舶警備特措法施行規則第2条第1号)であり、また暴露甲板その他の人が船舶に侵入することが可能な場所から満載喫水線までの最小の垂直距離が16メートル未満の船舶(日本船舶警備特措法施行規則第2条第2号)となっております。
 さらに、当該船舶において乗組員及びその他の乗船者が避難するための設備の設置等の措置を講じることとされており(日本船舶警備特措法第2条4号)、具体的には、VHFや無線電話等の外部と通信可能な設備を有する退避区画(シタデル)を設置すること(日本船舶警備特措法施行規則第3条第1号)、また人の侵入を防止するため、船舷の上端全周に有刺鉄線等を備え付けること(日本船舶警備特措法施行規則第3条第2号)となっております。


 

3 日本船舶警備特措法に係る手続き

 小銃を所持した民間警備員による警備の適切な実施のため、国土交通省は、船舶所有者から提出された特定警備計画及び特定警備を行う者が有する知識技能の厳格な審査など、様々な手続きを行っております。



(1)国土交通大臣による認定(日本船舶警備特措法第4条)    
 日本船舶警備特措法に基づく民間武装警備員による乗船警備(以下「特定警備」という。)を実施する場合、特定警備を実施する予定の船舶の所有者は、特定警備計画及びその他必要な書類を国土交通大臣に提出し、認定を受けることとなっております。
 この際、国土交通省においては、提出された特定警備計画が適切であること、船舶所有者が欠格事由に該当していないこと、また特定警備を実施する予定の警備事業者が欠格事由に該当していないこと等について、審査しております。











(2)特定警備に従事する者の確認
 認定された特定警備計画に記載された警備事業者(以下「特定警備事業者」という。)に、特定警備を実施させようとする場合、特定警備計画の認定を受けた船舶所有者(以下「認定船舶所有者」という。)は、特定警備に従事する者が国土交通省の定める要件に適合しているか確認を受けることとなっており(日本船舶警備特措法第7条)、国土交通大臣に申請書及びその他必要な書類等を提出することとなっております(日本船舶警備特措法施行規則第11条)。







(3)特定警備実施計画の届出(日本船舶警備特措法第13条、日本船舶警備特措法施行規則第16条、第17条)
 認定船舶所有者が、国土交通省から確認を受けた特定警備事業者に特定警備を実施させようとする場合、特定警備を開始する5日前までに、特定警備を実施させようとする航海ごとに、特定警備実施計画を国土交通大臣に届け出ることとなっております。



 

4 入港時の確認(日本船舶警備特措法第19条)

 特定警備実施後、初めて本邦の港に入港しようとする際、特定日本船舶の船内に小銃等が存在しないことについて、国土交通大臣の確認を受けた後でなければ、何人も当該特定日本船舶から本邦に上陸し、又は物を陸揚げしてはならないこととなっております。  

※ 日本船舶警備特措法施行規則第22条の場合を除く。

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