平成27年7月31日、北海道苫小牧沖でフェリーの車両甲板において火災が発生し、乗員乗客93名は退船しましたが、消火活動を行っていた乗組員1名が死亡する事故が起きました。
国土交通省海事局は、事故後の監査の結果などから判明した、フェリーにおける消火活動の課題について、火災・消防に関する専門家などから構成する「フェリー火災対策検討委員会」を設置し、対策の検討を行いました。
同委員会の検討結果を踏まえ、海事局は、閉囲された車両甲板を複数有している大型フェリーを運航する事業者に対して、消火活動を安全かつ適確に行うための消火プラン(消火活動の手順などをまとめた計画書)を作成し、これを安全管理規程の一部とするための届出を求める通達(「フェリーにおける火災対策の実施について」(平成28年3月29日国海安第412号))【3.添付資料参照】を発出しました。
このたび、東京-徳島-北九州間で「フェリーびざん」など4隻のフェリーを運航しているオーシャントランス(株)は、上記通達に基づく消火プランを安全管理規程の一部として作成し、平成29年3月22日に国土交通省九州運輸局に届出を行いました。上記通達に基づき届出を行ったフェリー事業者としては、全国で3社目になります。※)
※)平成27年7月に火災事故が発生した船舶については、上記通達の発出前に消火プランを作成し、これを適確に実施するための消火訓練を行うなどの火災安全対策が講じられています。
なお、国土交通省海事局及び九州運輸局は、同事業者の協力を得て、実戦的な消火訓練や消火活動を適確に行うための様々な取り組みなどの火災安全対策について確認させていただきました。
オーシャントランス(株)は、
(1)航行中、フェリーから電気を供給し続ける冷凍車やフェリーに積載する車両の積み荷の管理を十分に行うことにより、発火源となる可能性が比較的高い車両や火災発生時に消火活動を困難にする危険物を積載した車両を隔離して積載するなど、積載方法についても十分な注意を払っております。
また、自動固縛装置を使用して車両を船体に固定することにより、車両が所定の場所に広い間隔で整然と積み付けられることから、車両甲板における消火活動を含む様々な作業を容易にしています。
(2)車両甲板の状況を随時確認できるように複数の監視カメラを備え付け、万が一、火災が発生した場合であってもリアルタイムで状況を把握できるようになっています。
(3)消火訓練実施後の乗組員との意見交換の結果などから、防火服、消火ノズルなどの設備の備え付け場所の変更、増強することなどにより、より適確な消火活動を迅速に行えるようにしています。
(4)車両甲板における消火訓練において、実際にスプリンクラーを作動させるなど、実戦的な消火訓練を実施しています。
(5)(一財)海上災害防止センターの実施する消火訓練を乗組員に受講させることにより、乗組員の消火活動に関する能力の向上を図っています。
【車両が広い間隔で整然と積み付けられた車両甲板における消火訓練の様子】
【スプリンクラー放水訓練の様子】
【監視カメラによる車両甲板の状況確認の様子】