砂防

深層崩壊についてよくあるご質問

 

深層崩壊とは。

・山崩れ・崖崩れなどの斜面崩壊のうち、すべり面が表層崩壊よりも深部で発生し、表土層だけでなく深層の地盤までもが崩壊土塊となる比較的規模の大きな崩壊現象。

 

参考:

「表層崩壊」:山崩れ・崖崩れなどの斜面崩壊のうち、厚さ0.5~2.0m程度の表層土が、表層土と基盤層の境界に沿って滑落する比較的規模の小さな崩壊のこと。

 

深層崩壊の発生メカニズムは。

・降雨、融雪、地震などが原因。

・降雨による場合は、短時間降雨よりも長時間降雨に影響されると言われている。

(参考)総降雨量が400mmを越えると増えるとの指摘もある。

・地形的には岩盤クリープ、円弧状クラックなど、深層崩壊が発生しやすい微地形があると言われている。

・渓流域の集水面積が大きい、比高差が大きいなど水の力がかかりやすい地形は相対的に深層崩壊が発生しやすいと言われている。

 

深層崩壊は表層崩壊、がけ崩れ、地すべり、土石流などと何がちがうのか。

・深層崩壊は崩壊の形態を表した言葉で、かけ崩れ・地すべり・土石流は土砂災害の形態を表した言葉である。

・崩壊は表層崩壊と深層崩壊に分けられる(表層崩壊でないものを深層崩壊と呼んでいる)。

・一般的にがけ崩れは、表層崩壊によるものが多く、土石流は表層崩壊によるものが多いが1997年の鹿児島県出水市の針原川の事例のように、深層崩壊に由来するものもある。また、地すべりは一般的には深層崩壊にともなって発生する現象で動きが緩慢なものが多いが、今回取り上げている深層崩壊は深層崩壊のうち、動きが速いものを対象としている。

 

深層崩壊は増加傾向にあるのか。

・増加傾向にあるかどうかは、明らかでない。今後さらに検証が必要と考える。

 

深層崩壊は国内のどのような地域で多いのか。

・隆起量の大きいところ、付加体で深層崩壊の発生事例が多い。 → 深層崩壊の発生箇所及び深層崩壊推定頻度を示したマップ[PDF:1.5MB]

 

推定頻度が特に高いとされる地域で実施される渓流レベルの調査とは。

・土木研究所が発行した「深層崩壊の発生の恐れのある渓流抽出マニュアル(案)」にそって、国土交通省の地方整備局、事務所で調査を実施している。評価項目としては、「深層崩壊発生履歴」「地形・地質条件」「降水による水の外力」を評価して、深層崩壊の危険度を渓流単位で分類している。

(参考)「深層崩壊の発生の恐れのある渓流抽出マニュアル(案)」[PDF:700KB]

 

この全国マップ、あるいは深層崩壊調査は何の役に立つのか。

・全国マップは深層崩壊の発生頻度をある程度把握することにより、今後の地域レベル、小流域レベルの調査実施に生かすことが目的。渓流レベルの調査では、たとえば、天然ダムの発生可能性のある箇所の推定とその対策に役に立つと考えられる。

 

推定頻度が「特に高い」「高い」などは定量的にはどういう意味か。

・平均的な深層崩壊の発生頻度(明治以降日本全体で122事例)に対して、以下のとおり。

     特に高い:5倍以上

     高い:1~5倍

     低い:0.1~1倍

     特に低い:0.1倍以下

 

全国マップの「特に低い」の地域では、深層崩壊は起こらないのか。

・基本的に平野部では起こらないと考えてよい。「特に低い」の地域では伊豆半島の海岸線のがけ部で1件発生している。したがって、「特に低い」地域でも起伏のあるところでは、絶対にないとは言えない。

 

頻度の低いところでも発生事例があるが、その周辺は危なくないのか。

・頻度が低いと推定された箇所においても、多くの深層崩壊発生箇所がある。したがって、本マップは相対的な頻度を示しているだけであって、頻度が低い箇所が深層崩壊対して安全という意味ではない。特に発生事例がある場所の周辺は、危険な可能性があるので必要に応じて調査すべきと考えている。

 

今回の発表を受けて住民が注意すべきことはどういうことか。

・深層崩壊は、通常の土砂災害と異なり、大量の雨が降ってしばらくしてから、例えば数日後に、土砂災害が発生する場合があることを理解しておいてほしい。また、例えば、天然ダムが出来た場合は、急激に下流の河川水位が下がることがあるなど、深層崩壊にともなって起こる現象について理解しておいてほしい。

 

深層崩壊の恐れのある箇所数は全国でどの程度あると考えられるか。

・現在、推定頻度が特に高いとされる地域から深層崩壊の恐れがある渓流域を抽出しており、その数の推定は現状では難しい。

 

土砂災害警戒情報は深層崩壊を対象として発表されているのか。

・土砂災害警戒情報は、降雨に起因する表層崩壊に伴う土石流や集中的に発生するがけ崩れを対象として発表される情報であり、深層崩壊は対象としていない。

 

深層崩壊といわれる台湾モーラコット災害はどのような災害だったのか。

・モーラコットとは平成21年8月に発生した台風の名前であり、日本では平成21年台風8号に相当する。

・台風にともなう豪雨は8月5日から10日まで続き、この間の総降雨量は多いところで3,000mmにも達し、台湾各地の過去最大雨量を記録している。

・主要な土砂災害箇所は52箇所、深層崩壊によって天然ダムが18箇所形成。

・モーラコット台風による死者行方不明者は746名であるが、高雄縣甲仙郷小林村で発生した深層崩壊、天然ダム決壊の1事例で 400名以上の人命が失われている。



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