住指発第二六号
昭和四四年三月三日

建設省住宅局長から各都道府県知事あて

通達


建築基準法施行令の一部改正について


標記については、別途建設事務次官から通達されたところであるが、その細目は左記のとおりであるので、その運営が円滑に行なわれるよう、あらかじめ周知徹底その他施行準備に遺憾なきを期されたい。
なお、貴管下市町村に対しては、貴職から通知されたい。

第一 建築物の防災基準の整備強化について

一 防火区画に関する基準の整備

(1) 自動消火設備を設けた部分の面積の控除(第一一二条第一項)

防火区画の設置基準を強化するため、防火区画の設置に関して基準とする建築物の延べ面積及び床面積については、その算定にあたつて当該面積から控除できる自動式スプリンクラー等の自動消火設備を設けた部分の延べ面積及び床面積の限度を二分の一とすることに改めたものである(本条第二項、第三項、第五項及び第七項並びに本条を準用する第一二八条の三第五項に規定する場合において同様である。)。本条第一項に規定する場合を例にとると、耐火建築物に自動消火設備を設ける場合は、延べ面積が三、〇〇〇平方メートルをこえれば(自動消火設備を設けた部分の床面積三、〇〇〇平方メートルの二分の一を控除すると一、五〇〇平方メートルとなる。)、床面積の合計三、〇〇〇平方メートル以内ごとに防火区画を設けなければならないこととなる。

(2) 階段室等の防火区画(第一一二条第八項)

地階又は三階以上の階に居室を有する耐火建築物については火炎及び煙が他の階に拡大することを防止するため、階段、吹抜き等の部分とその他の部分との間に防火区画を設けなければならないこととしたものである。この場合、第一一二条第一項ただし書に規定する用途に供する建築物の部分で内装を不燃化したものについては、その用途上区画することができる範囲で区画すればたりるほか、内装を不燃化した避難階の直上階又は直下階のみに通ずる階段、吹抜き等の部分(避難階の玄関等における階段、吹抜き等)については区画する必要はないこととしている。
なお、本条第一項ただし書及び第四項に規定する用途に供する建築物には、倉庫及び荷さばき施設(荷役機械を除く。)が含まれるものとする。

(3) 防火区画等に設ける防火戸(第一一二条第一三項及び第一一三条第一項第四号)

防火区画又は防火壁に設ける防火戸は、その開閉機能を防火上及び避難上有効なものとするため、随時閉鎖することができ、かつ、火災により温度が上昇した場合に自動的に閉鎖するものでなければならず、さらに、避難通路に設けるものにあつては、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する部分を有し、その部分の幅及び高さは一定以上のものでなければならないこととしたものである。

(4) 貫通部分の充填(第一一四条第五項)

給水管等が同条に規定する界壁、間仕切壁又は隔壁を貫通する場合に生ずる空隙は、防火区画又は防火壁を貫通する場合と同様、モルタル等で充填しなければならないこととしたものである。

二 避難施設に関する基準の整備

(1) 適用範囲の拡大(第一一七条第一項)

避難施設に関する規定の適用範囲を、階数が三以上の建築物及び延べ面積が一、〇〇〇平方メートルをこえる建築物に拡大することとしたものである。

(2) 二方向避難(第一二一条第三項)

二以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から二以上の方向に避難することがより有効にできるようにするため、居室の各部分から階段に至る通常の歩行経路(一般には最短経路)の重複区間の長さは、第一二〇条第一項の歩行距離の二分の一をこえてはならないことを原則とすることとしたものである。

(3) 避難階段又は特別避難階段の設置(第一二二条第一項)

地下二階又は地下三階以下の階に通ずる直通階段は、安全な避難を確保するため、それぞれ五階以上又は一五階以上の階と同様に、避難階段又は特別避難階段としなければならないこととしたものである。

(4) 避難階段又は特別避難階段の構造(第一二三条)

安全な避難を確保するため、避難階段等の開口部及び出入口は火災時に火煙の侵入を防ぐ構造とするよう基準を整備したものである。特に出入口の戸については、火災発生時に自動的に閉鎖するものとするほか、直接手で避難の方向に開くことができる部分を有するものでなければならないこととした。
なお、特別避難階段の附室の排煙設備等については、建設大臣が別途基準を定めることとしているが、近く告示の見込みである。

(5) メゾネツトアパート(第一二〇条第四項及び第一二三条の二)

メゾネツトアパート(共同住宅で二又は三の階数を有する住戸を有するもの。)で居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が四〇メートル以下であるものにあつては、当該住戸内の各部分は当該住戸の出入口のある階にあるものとみなして避難施設を設ければたりることとしたものである。

(6) 避難階の出口

安全な避難を確保するため、避難階においては、居室の各部分から屋外への出口に至る歩行経路を、第一二〇条第一項に規定する歩行距離の二倍以下としなければならないこととしたものである。

三 地下街の防災基準の整備

(1) 地下道(第一二八条の三第一項)

地下街の接する地下道の要件として、その主要構造部は耐火性能を有すること、八分の一をこえる勾配を有しないこと、その内装を不燃化すること等を定めたものである。
なお、地下道の主要構造部の耐火性能、照明設備、排煙設備及び排水設備については、建設大臣が別途基準を定めることとしているが、近く告示の見込みである。

(2) 地下街の防火区画(第一二八条の三第二項、第三項及び第五項)

地下街の各構えは、地下道との間及び各構え相互の間に防火区画を設けるとともに、建築物の一一階以上の部分とみなして第一一二条第五項から第八項までの規定を準用することとしたものである。

(3) 地下街の各構えの出入口(第一二八条の三第四項)

地下街の各構えの居室の各部分から地下道への出入口又は直接地上へ通ずる通路に至る歩行距離を三〇メートル以下としなければならないこととしたものである。

四 内装制限に関する基準の整備

(1) 適用範囲の拡大(第一二八条の四第一項第一号)

ホテル、病院、共同住宅等の用途に供する耐火建築物で三階以上に当該用途に供する部分を三〇〇平方メートル以上有するものについては、他の特殊建築物と同様、内装制限の規定を適用することとしたものである。

(2) 内装制限の強化(第一二九条第一項、第二項及び第四項)

特殊建築物及び高さ三一メートルをこえる建築物の廊下、階段等並びに自動車車庫等の内装は、不燃材料又は準不燃材料ですることとし、難燃材料は使用できないものとすることに改めたものである。内装の不燃化は避難に要する時間の確保をねらいとしているが、今回の改正では、特に避難路の不燃化を促進することにより安全性の向上をはかろうとしたものである。
なお、現行の準不燃材料及び難燃材料の指定については、その試験方法がまとまり次第改正する予定であるので、あわせて申し添える。

(3) 適用除外の制限(第一二九条第五項及び第六項)

自動消火設備を設けた部分については、従来内装制限の規定の適用を除外することとしていたが、今回の改正により、自動消火設備のほかに排煙設備をその要件に加えたものである。
なお、排煙設備については、建設大臣が別途基準を定めることとしているが、近く告示の見込みである。

五 その他の防火措置に関する基準の整備

(1) 風道等の不燃化(第一二九条の二第九号)

地階を除く階数が三以上の建築物及び地階に居室を有する建築物に設ける換気、暖房若しくは冷房の設備の風道又はダストシユート、メールシユート、リネンシユートその他これらに類するものは、不燃材料で造らなければならないこととしたものである。従来一一階以上の大規模建築物等に適用されていたものを、今回の改正で一般の中高層建築物に適用範囲を拡大し、さらに、ダストシユート等についても同様とすることにより、これらによる火災の拡大を防止しようとするものである。
なお、冷蔵倉庫に設ける冷凍の風道は、本条に該当しないものとする。

(2) 貫通部分の不燃化(第一二九条の二第一〇号)

給水管、配電管等が防火区画等を貫通する場合には、その貫通部分から一メートル以内の部分を不燃材料で造らなければならないこととすることにより、これらの燃焼による火災の拡大を防止しようとするものである。
なお、防火区画されたパイプシヤフト等の中にある部分又は建設大臣が別途定める基準に適合する部分はこの限りでないこととしているが、この基準は近く告示される見込みである。

第二 水洗便所の屎尿浄化槽に関する基準の整備について(第三二条)

屎尿浄化槽に関する構造基準は、従来のものを全面的に改め、処理対象区域及び処理対象人員の区分に応じて定められた性能を有し、かつ、衛生上支障がないと認めて、建設大臣が指定する構造としなければならないこととしたものである。従来の第三二条ただし書の規定に基づいて行なわれていた認定制度は廃止し、建築基準法第三八条に規定する特殊なものを除き、すべて建設大臣の指定する構造としなければならないものとする。
従来の建築基準法第三八条の規定に基づく建設大臣の認定に係る特殊型の屎尿浄化槽については、おおむね建設大臣の指定する構造基準に適合することとなる見込みであり、今後同条の規定に基づく建設大臣の認定を受ける必要のあるものは殆んどないと思われるので、念のため申し添える。
なお、屎尿浄化槽を設ける区域は、別添「屎尿浄化槽を設ける区域に関する基準」により、規則で指定することとされたい。その場合において、「特定行政庁が衛生上特に支障があると認めて規則で指定する区域」の指定は、徒らにその範囲を拡大することのないよう慎重に行なわれたい。


別添
屎尿浄化槽を設ける区域に関する基準

一 令第三二条第一項表中「特定行政庁が衛生上特に支障があると認めて規則で指定する区域」

下水道法第二条第七号に規定する処理区域以外の区域で次の(1)又は(2)に掲げる区域とする。
(1) 放流水を処理するための下水溝、下水管その他これらに類する施設の流末が水源池、河川、湖沼、海域その他これらに類する水域で水質保全上重要なもの(公共用水域の水質の保全に関する法律の規定に基づく指定水域その他これに類するものをいう。以下同じ。)に至る場合における当該下水溝等に係る区域。ただし、水質保全上重要な水源池等から遠隔の区域を除く。
(2) 放流水を処理するための下水溝、下水管その他これらに類するものが整備されていない区域で放流水が地下水、水源池、河川、湖沼、海域その他これらに類する水域で水質保全上重要なものの水質に支障を及ぼすおそれのある区域。

二 令第三二条第一項表中「特定行政庁が衛生上特に支障がないと認めて規則で指定する区域」

下水道法第二条第七号に規定する処理区域以外の区域で次の(1)又は(2)に掲げる区域とする。
(1) 放流先が外海である区域

都市計画区域以外の区域で放流水の放流先が都市計画区域内を通らずに外海(清掃法施行令第三条に規定する海域以外の海域とする。)に接続している区域。ただし、外海から著しく遠隔の区域を除く。

(2) 放流先が山間へき地である区域

都市計画区域以外の区域で、居住密度が低く、かつ、区域全体の放流水の量が少ないため、地下水、水源池、河川、湖沼、海域(外海を除く。)その他これらに類する水域を衛生上支障を及ぼすおそれのない区域。

三 令第三二条第二項に規定する「特定行政庁が地下浸透方式により汚物を処理することとしても衛生上支障がないと認めて規則で指定する区域」

都市計画法第七条に規定する市街化区域以外の区域で、十分な地下浸透能力を有する土壌におおわれており、かつ、当該方式によつて処理した場合において区域内の地下水、水源池、河川その他これらに類する水域で水質保全上重要なものに衛生上支障を及ぼすおそれのない区域。

四 備考

前記一、二及び三の区域指定にあたつては、下水道法、河川法、道路法及び清掃法所管部局その他の関係機関と十分協議のうえ、指定するものとする。


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