第8回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

第8回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

1.日時
  令和元年9月30日(月)10:00~12:00

2.場所
  九段第2合同庁舎8階地震予知連大会議室

3.出席者(五十音順、敬称略)
  <委員>
   石田東生、金山洋一、小林潔司、柴崎亮介、高木健、谷口守、羽藤英二、藤野陽三、堀宗朗、山田正
  <ゲストスピーカー>
   関本義秀

4.議事
(1)中間とりまとめのフォローアップ事項 
 [1]スマートシティ
 [2]データプラットフォーム 
(2)今回のテーマについての議論
  <テーマ>
  「都市・地域マネジメント戦略」
(3)議論及び意見交換                   
(4)その他(今後のスケジュール)                         
  
5.議事次第
 【データプラットフォーム】
  • 国土交通データプラットフォームについて、デモ版を全都道府県に拡大する場合、共通で使うデータ、都道府県ごとにカスタマイズするデータなどの構想はあるのか。データを見せるだけでなく、データを使うための適切なアプリケーションの組み込みが重要。
  • 国土交通データプラットフォームからデータセットをダウンロードすることが出来るので、今後、科学計算やシミュレーションに使えるようデータ変換などの作業ができるように環境構築したい。現在は生のデータを使っているが、今後、用途に適したデータ変換を準備していく必要があると思う。デモ版について言えば、どの都道府県にも対応できる。地域に特化したデータだけ優先的に見られたり、ダウンロードできる機能などを今後ブラッシュアップさせていくことが必要である。
  • データ変換などは、ダウンロードした後から手入力になると煩雑で、スケールアップの問題もある。複数県のデータを処理するとなると時間もかかるので、スケールアップを想定した並列計算が出来るプログラムにしておく必要がある。
  • 国土交通データプラットフォームについて、流動系のデータの更新はどのように考えるのか。これから継続的に更新する仕組みをどう考えているのか。
  • 人流や交通、企業間取引のデータは民間等から集まっている情報を掲載している。動的なデータもデータプラットフォーム上に載せられるよう目指しているが、画面上で多数のデータを動かすと非常に重くなるなどの問題があるので、これを解決しないといけない。
  • 動的なデータは、値段が高かったり、民間ベースのものが多く、データプラットフォームで継続できるかどうかは、データプラットフォームがどれだけ広いコミュニティーにできて、民間等が、「提供したい」「値段がついているような形でちゃんと流通させたい」と思えるか次第である。公共のデータとは違う側面もあることを考慮したい。
  • 技術的なところにはボトルネックはなく、むしろデータ提供側の問題である。データのカタログ検索は出来るけど、ダウンロードには提供者側のサイトに個人情報などのユーザー登録が必要なものが多い。APIの連携にしても、サイトへの負荷が集中した場合どうするのかの議論がある。データフォルダとデータプラットフォームの関係をどう築いていくかが重要。
  • 科学者、研究者がどんなデータを使いたいのかをアーキテクチャー(設計図)みたいなものを作って提案すると、それに応じたプラットフォームが出来る仕組みを国が考えれば良いと思う。
  • システムアーキテクチュアも、立派なものを作りすぎて手が動かなくて何も出来ない自体に陥っていると聞く。
  • アーキテクチュアを作るだけでなく、民間企業等がその設計図のインプリメンテーションに参加しなければ意味が無い。インプリメーションに参加する企業にも、自分で事業をやりたい事業系やシステム受託系などが混在しているので、どの様に設計するかを考えなくては行けない。
  • データプラットフォームについて、地方でのコンパクトシティ、網形成計画、地震対策など、入口だけでなく、出口側には色々なマーケット、ニーズがあるので、どうすれば活用し得るか、どういう分野が関連し得るかの議論をした方が良い。地方公共団体では、実効性のある政策を中々たてられない現状があるので、出口側の議論を詰めることは特に大事である。
  • データプラットフォームの出口を政策だけでなく、日常の生活にどのように使っていくのかが重要。データプラットフォームだけでなく、行政フローや行政の文化・手続きを変えていく必要がある。
  • 総務省のマイナーポータルがどれだけ使われているのか。システムを作るだけでなく、拡張性も考えて作るべきである。とりあえず作ったシステムはスケールアップが難しい。最初からスケール感を考えるべき。データの構築に数ヶ月、データ変換に経費がかかる(都市まるごとシミュレーション)。協調領域におけるプログラム支援などの仕組みが必要。
  • 10年、20年たつと使えなくなるものではなく、データ変換のライブラリが必要である。先端技術を研究し、バージョンアップを行っていく。
  • 官と民がやりたくなるような状況を作り出す必要がある。設計に使用してもらうように官民のコミュニケーションが大事である。

【データ駆動型】
  • データ駆動型は戦術としてはいいが、国土論の側面が弱い。研究者とか専門家をしっかりと育てて議論を積み重ねていかないと、技術が使えるものに、政策論になっていかない。
  • RESAS(地域経済分析システム)で見ていただくと分かるように、公共側の統計データの情報はどんどん劣化しているし、調査しなくなる自治体も出てきている。公共データのクオリティーは下がりつつあるが、民間の方は業務の傍らで結果的にものすごいデータを取得している状態であることから、民間データの扱いついて、公共的な色彩も高いビジネスモデルの開発を産学官で検討する必要である。「地域がだめになったら民間による商売も少なくともポジティブな影響はない」というようにしないと行けない。
  • 海上のデータは、海上保安庁が海洋情報クリアリングハウスをやられておるが、陸上のデータを見ると海の情報が完全に抜けていることが多い。これからは陸と海が連携して色々なことが行われていくことから、陸と海のデータを連携し、両方を同じように見られるようにすることが必要だと思う。船の世界では日本海事協会がデータを集めているが、海の観測点は少ないので、船でとったデータを含めあらゆるデータの活用が重要となる。
  • 英国で洋上風車の話を聞きに行った時にあちらのコンサルタントから、「日本の洋上風車のデータは少ない。英国は気象を含めたちゃんとしたデータを予測する技術があるから、ぜひ日本で紹介して欲しい」と言われた。洋上風車はあまり建っていないが、民間が有効に使えるデータが用意されていないことで諸外国にそのように言われるのではないか。気象庁をはじめ、気象に関して良いデータや高い技術が折角あるのだから、上手く利用出来る仕組みを作って、諸外国からそういうことを言われないようにしてほしい。
  • データは全部デジタルでも、オンラインになっていない。まずは、APIと連携して、コミュニティーを作り、民間投資を促す。投資のインセンティブをどうするか。公共的な重要性から社会的善にどう結びつけるか考えなくてはならない。
  • 都市・地域マネジメントをする上で、地域の変化をモニタリングできるデータが少ない。流域の治水リスク、都市のスポンジ化の度合いなど、マイナスデータをモニターするのは難しいが、これをきちんと押さえなくては都市・地域のマネジメントは出来ない。
  • 全データの動的なデータベース化だと、データが重過ぎてしまう。時間を通じて固定しておくのか、変化していくところを記述していくのか、新しいスキームを作らないと、都市・地域マネジメント自体のデータベースが出来ない。
  • 経済データだけでなく、社会的データ(空き家データ、交通事故データ、犯罪発生率など)をどこまで取り込めるかが重要である。
  • 平常時と危機管理時にそれぞれ必要な情報を得るための整備がまだまだ進んでいない。洪水の解析モデルと既存データベースが乖離していて、データを入力するのにも時間が掛かり使いにくい。解析するソフトとデータベースの間のお互いの連携がないと、使いにくいものばかりが残ってしまう。
  • スマートシティ事業やMaaSはそれぞれのコンソーシアムで頑張っている。その勢いをマネジメントする中でデータプラットフォームやデータ連携をどう作るべきか考えることが大事だが、骨格となるものがまだ無い。マネジメントにつなげていくようなシステム開発において、国がどういう役割を果たすかを考えることが重要。
  • エストニアは電子政府化が進んでおり、インフラ情報の計測を行っている(早期警報システム、事故処理プラットフォームなど)。また、日本では、携帯電話会社のデータや交通事業者のデータは容易に外に出てこないが、エストニアでは、GDPRというEU一般データ保護規則に基づき、携帯会社のデータに、大学がアクセスできて、公式統計となって公開されている。
  • 土木系が主体となってITを使えるような視点が重要である。
  • 東大で毎年やっているサマースクールでは、東大よりもインド工科大学の学生の方が出来る。統計的・データ解析の基礎ができている。クロスバリデーションするよりも、土木の分野の中でデータ教育をしていく必要がある。国交省の中でも博士の必要性をリカレント教育の中で強める必要がある。
  • 維持管理の点検データを集める際、エビデンスが重要である。
  • 維持管理データは国交省、地方自治体、JR、NEXCOが持っているが、民営化・分社化したことで、それぞれのデータが弱くなっている。データを皆でシェアすることで維持管理の負担が減らせることを示すことが大事であり、国交省が率先して動くべきである。地方自治体も実はいろいろなデータを知りたいはずなので、国交省が見本を示してくれれば地方はついてくるはず。SIPインフラにおいて東北地方では、山形県にある全市を対象にデータをシェアし維持管理のデータを共有して、いろいろ政策に生かしていこうという動きをしており、そう言う動きが基本となると思われるので、国交省が率先して動いてもらいたい。

【スマートシティ】
  • スマートシティは論文の数が少なく、研究者の育成が必要。幹事やとりまとめを行う企業において、社内に研究開発部門を持っていない会社もあるので使い方をよく考えないといけない。研究開発費については、GAFAや自動車会社のような民間企業と比べると、研究開発費がほとんどない状態である。研究者が海外に行ってしまう傾向にある。
  • 日本のスマートシティの特徴は何かを考える時、我が国の特徴である防災だけでなく、非常に優秀な自動車メーカーを抱えていることからモビリティも一つの柱として考えていくことが必要。
  • スマートシティは都市計画政策・社会資本政策を劇的に変える可能性があるが、熱を感じない。ムーブメントを都市計画や社会資本政策にどう活用していくか。さらにはモニタリングやマネジメントをしっかり行う必要がある。
  • スマートでない都市の方がスマートシティになる可能性がある(スプロール市街地でのエネルギー網の規制緩和など)。これは他国ではできないからこその強みである。
  • 東京がスマートシティになっていない。例えば、鉄道の駅とビル開発側が連動するような制度設計ができていないので、ビルで働く人で鉄道駅が混雑してしまう。データサイエンスを使った横串の制度設計を国土交通省が立てることは相当意味がある。局所的な人の集中と投資、トータルマネジメントというところにデータが使うよう、スマートシティのプロジェクトの中で試みていただきたい。
  • 本当にスマートにやろうと思ったら、ごみ処理からスマートシティを進めていくべきである(例:クアラルンプールでは、CO2をださないごみ処理を作った)。

【都市・地域マネジメント戦略】
  • 北海道下川町ではサンルダムが完成しているが、特徴的な林業政策で林業にあこがれる若者、地域興し協力隊などが移住してきている。同じように八ッ場ダム周辺にも新しいライフスタイルを求める人達が現れており、ダム建設も人口増の変数としてきいてくると思う。
  • 都市・地域マネジメント戦略の中でデータプラットフォームとかスマートシティを論じるときに、もう少しシンボリックなプロジェクトがあっても良いと思う。組み合わせ最適問題をデータを使って解いていくことになるので、例えば国土の問題を量子コンピュータと組み合わせて解くなど、取組について国民が見やすいようにするということも大事ではないか。
  • 二拠点居住が増えている。副業をする人が増え、一つのところに住み、二つの職場で働くようになっている。その実態を把握するためには、今までの指定統計の概念の他に、新たな工夫や基礎研究が必要である。
  • 多地域居住については関係人口という形でまとめられる。
  • 公共交通が人口に影響している。都心との時間距離や運行状況などのサービスレベルも地方自治には有効な情報なので、どのように取り込んでいくのかを考えるべき。(守谷のつくばエクスプレス 30分以上短縮、都市に直結や、富山市のLRTの運行頻度など)。
  • 交通と都市のマネジメントをインフラでカバーできていない現状にある。
  • 都市と地域のマネジメントで行政の方向性を明確化する。
以上

 

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