1.日時
平成21年5月15日(金) 10:00~12:00
2.場所
KKRホテル東京「孔雀」
3.出席委員(敬称略)
森地部会長、秋元、秋山、家田、大西、岡部、奥野、小田切、垣内、小林、菰田、佐藤、鈴木、関根、寺島、永沢、西村、林、山﨑
4.議事(概要)
(1) 開会
(2) 国土交通省挨拶
(3) 部会長互選
委員の互選により、森地委員を部会長に選出。また、森地部会長が部会長代理に奥野委員を指名。
(4) 議事
[1] 国土形成計画の推進に向けた検討について
[2] 委員会の設置について
(5) 閉会
5.議事及び主な発言内容
(1) 国土交通省挨拶
○榊国土交審議官より挨拶
(2) 議題1 国土形成計画の推進に向けた検討について
○事務局から説明。その後意見交換。
・集落の問題において、中山間地域を一つのまとまりで考えるのではなく、山間地と中間地は別に考えるべきである。例えば山間地は森林面積が非常に大きく、林業の所有構造により林地の管理の担い手となる人々も違ってくる。こういった山林所有構造(国有・民有、地主の在・不在、規模)を踏まえた上で集落を捉え、きめ細かく対応する必要がある。
・過疎地域における問題は年代ごとに異なっている。若い世代では近くに働き口がないことが問題であるが、40代になると子どもの学校が遠いことが問題となっている。特に中学校や高校への進学時に子どもを下宿させなければならない地域においては、経済的な問題から、進学を契機に移住し、地域を離れてしまうこともある。高齢者だけでなく年代、男女別に意見を集約し考察を進める必要がある
・東京の一極集中の要因は地方に優良な働き口がないことであり、地場産業の育成が重要である。それには金融機関が地方の起業への融資等においてリスクをとっていないことが課題であり、公的な資金援助等も含めた検討が必要である。
・昨年7月に閣議決定した国土形成計画全国計画は2005年~2006年における統計を元に検討をしたが、現在の情勢と異なってきており、共通認識として基盤となる貿易・物流・人流等のデータを見直す必要がある。例えば当時の対米貿易のデータにおいては18%~19%であったが、今年の1~3月のデータにおいては13%まで落ちており、対中貿易が19%へと伸びている。アジアとの貿易が5割近くに増加しており、このような変化に対応する必要がある。
・計画の策定において、国際的にみて重要性を高めている排他的経済水域や大陸棚も含めた海洋に対する視点について、もう一度しっかり踏み込む必要がある。
・地震などに対する災害・防災対策や、昨今のウイルスなどへの対応として安心・安全対策が重要であり、GPSや地理空間情報システム等を活用した基盤を確立していくことが必要である。
・広域ブロックの戦略にも係わる、環境と食料自給の問題が浮上してきている。農業生産法人の数が1万を超え、耕作放棄地を対象とした活動も増えており、都市と農村との相互関係でもって、地域を活性化することが重要である。
・少子高齢化の時代において、病院等は統合せざるをえない状況にあり、広域的な医療対策としてドクターヘリ等の活用も視野に入れる必要がある。
・これまで過疎地域の課題は教育の場や雇用の問題が多数であったが、今回の資料をみると、運転できる人の不在、買い物や通院に係る距離といった問題に変化してきている。これは、過疎地域の生活水準を都市部と比べて著しく低いものとすべきでないという前提があるからだと思われるが、集落問題の検討に際しては、国内の比較に止まらず、諸外国の過疎地において求められている生活水準などと比較してみることも重要ではないか。
・離島は内陸の中山間地域よりも過疎が進行しているところが多く、大都市からみると、辺境という扱いをすることが多いと思う。離島は多くの場合国境でもあり、他国とのコミュニケーションを通じて新しいチャンスがあるという意味で捉えなおすことも重要である。
・「広域ブロック自立・成長の課題について」の資料を見ると東京はうまくいっているようであるが、必ずしもそうではない。英語をしゃべれない学生が多いのが実情で、シンガポールやバンガロールなどの英語に抵抗がない教育を行っている都市では、海外からソフトウェア等を受注し、地域に産業を作っている。日本の中でも空港や産業、学校がある都市は、世界において積極的な施策をとっている都市を見習うべきである。
・我が国は戦後、テクノロジーを強みとしてやってきたが、技術者や理科系の人間を正当に処遇しているか、官庁も含めて見直して欲しい。
・少子高齢化と地球環境における気候の変化を考えねばならない。量的な少子化により、社会が脆弱化しており、そのような状況において気象災害が起こる大きなリスクに備え、
リスクの緩和に向けた対策・メカニズムの作成が必要であり、広域地方計画にも組み込んでいく必要がある。
・都市と農村の拡散をうまくたたみ込む必要があり、市街地のストック形成の方法を変える必要がある。20世紀後半の年率9%相当の成長率をベースにした30年程度の住宅建て壊しのサイクルを見直さなければ破綻する恐れがある。10年に一度の計画策定の時期を逃すと次期では手遅れになる。
・農山村と都市を一体化し、互いの価値を認知・評価し、それを共有・交換するシステムが必要である。政策部会に広域自立・成長政策委員会と集落課題検討委員会の2つを設置する提案が出されたが、場合によっては、多少遅れてでもこれ以外にも専門的に検討する場を設置する必要があるのではないか。
・中山間地域において若い世代の働き口がないという問題があるが、その働き口となる可能性の一つとして、「観光」があるのではないか。
・観光の問題として、老朽化し放棄された観光施設が観光地を台無しにしている問題がある。民間所有の施設のため、自治体が条例などにより除去することは困難であるが、このような問題にも対処していく必要がある。
・地方においては、個人が保有する資産を地方銀行に預金をしても、地方銀行はリスクを取ろうとはせず、中央(J-REIT等)に投資することから、地方にお金が回らない。地方銀行が行う投資のリスクを軽減することにより、地方のお金を地方に投資できる仕組みを検討する必要がある。
・最近の社会資本を巡る議論や経緯、公的固定資本形成の対GDP比に関するデータを見ると、80年代の荒廃するアメリカ経済の前夜の状況と似ており懸念を持っている。力強い日本を作るためにも、広域地方計画では具体の実行計画を書くべき。
・広域地方計画を作る上で、地域の文化を守り継承することが重要である。計画においては、地域の暮らし、誇り、愛着といった幅広い言葉で表されているが、是非とも具体的な施策へと結びつけていきたい。
・経済情勢の悪化に伴い、公共の役割が拡大しているが、今後はその中でも「新たな公」の役割が大きくなるものと考えられる。「新たな公」を活性化することは生きがいにつながり、「新たな公」が行政とともに大きくなって公の役割を果たしていくことが重要である。
・自社を川崎から東京へ移した経験があるが、その目的は人材の獲得であった。人材の獲得のためには川崎でも不利であり、東京に進出せざるを得ないのが実情。
・グローバル経済の中で従来のような高品質のモノを大量に安価で生産する業態が日本から流出するのは免れない。
・地方の工業団地を視察した際に、自然環境がよく、先端技術の研究開発拠点等であれば移転してもよいと感じた。実現するには生活インフラ等を整備する必要があるが、地方は魅力的な環境であると感じた。
・若い世代が一生かけて働ける仕事が地域の活性化には不可欠である。少子高齢化を考えると、医療、介護、農業を地域で魅力ある事業にしていく必要がある。
・広域ブロックの自立的発展において、地場産業の育成は重要であり、その課題の一つとして優秀な人材の育成があげられる。
・若年人口の減少を受けて、大学においても、定員の削減や効率化が求められている。短期での成果を出すことが求められてはいるが、基礎研究の分野においては中長期的な視点に立ち、継続して投資を行うことが重要である。
・大学への中長期的視点からの支援として、研究環境だけではなく、研究職ポストを確保する等の制度に関する問題に対しても取り組んでほしい。
・地域の文化財は保存のみに力点を置くのではなく、活用して新たな価値を創出していくことが重要である。これを誰がどのように行うか検討する必要があり、「新たな公」だけではなく、政府の制度的フレームも必要である。
・過疎地域における最大の課題は地域医療である。医療機関へのアクセスも重要であるが、情報ネットワークを活用することによって解決策が考えられる。今後、医療の情報化をはかり最高齢国家という課題を克服すれば、情報・通信は日本の輸出産業として今後成長する可能性もありうる。海外(釜山)の港湾はIT化が進み、ハブ港湾として日本の港湾が太刀打ち出来ないようなものになりつつある。そのような観点からも計画には情報・通信からの視点を取り入れるべきである。
・農村には豊かな自然などの強みがあり、都市住民にとって魅力に感じるものがある。こういったことを踏まえ、都市と農村がセットになって両方がサポートし合うというような仕組みの中でこの問題を考えていく必要があり、データの取り方から工夫がいるのではないか。
・モビリティのコストが変わると地域が違ったものになってくる。例えば四国において架橋が1000円であれば徳島県は全く異なった地域の将来を描ける。予算の配分を変更するだけで大きなインパクトを残すことができ、計画からはずれるかもしれないが、このような事例も検証する場が必要である。
・現在、環境・福祉・観光などの地域住民が主体となるコミュニティビジネスは盛んに行われつつあり、市場規模も拡大しているが、地域の行政によっては取組に温度差があり、その結果が地域にも現れている。
・経済産業省によると、現在のコミュニティビジネスの市場は2,400億円程度であるが、4年後に2.2兆円規模になるとの試算がなされており、今後益々盛んになることが予想される。但し、住民の起こすビジネスは質や経験値が弱いため、人材育成やモチベーションの担保を行っていくことが重要である。
・コミュニティビジネスにおける平均給与は年収130万程度と低いことから、地域の働き口とするためには、行政においてコミュニティビジネスに対する支援となるような施策や仕掛けを講ずるなど、きめ細かい対応を行う必要がある。
・市町村合併により、過疎地域において疎外感からあきらめ感が増幅している。
・農山村を支えていた昭和一桁世代が全て後期高齢者に差し掛かり、支えられる世代になったことで、農山村地域において人的資源が枯渇化している。
・中山間地域の問題については、地方中小都市の一つの圏域として捉えることが重要。
・コミュニティの崩壊は中山間地域だけでなく都市においても起こっている。都市のコミュニティ崩壊について、先行する中山間地域のコミュニティの崩壊が教訓として何を生み出しているのかという視点からも検討すべきである。
・国外での国土政策を知るために、役所に止まらず委員が各国と交流する機会をつくり、国際的な連携を持つことも重要である。
・過疎地域は農産物やエネルギーの自給率向上を担う場としての期待が持てる。これらの生産を増加させるために、農業生産の工場化や中核農家の育成を支援するような直接的な施策を行ってもらいたい。
・再生可能なエネルギーついても、地方での生産が適しているため、これらを手がかりとして地域のあり方を考えてほしい。
・国土計画において、プラン以上の成果を上げるためには、デザインを国土と結びつけるという視点も必要なのではないか。例えば、地域の生産物を世界に売り出していくため、デザインを利用していくことも有用である。
・地域の若者はコミュニティへの参加経験が不足しているため、そのような機会を作り、若者を育てていくべきである。
・朽ち果てた観光施設や廃屋を除去するなど、美しさやデザインを重視した国土づくりを進める計画の実施機関があってもいいのではないか。
・地域が持つ資源の資産価値を高めるための計画をつくってほしい。ストックの減税にも目を向けないといけない。
・各ブロックにおける広域地方計画についての資料を読む限りでは、目標やプロジェクトを並べただけのように思える。戦略的目標も戦略的ではなく、プロジェクトも理念だけでよい言葉が並んでいるだけのように思える。計画をどのようにフィードバックするのか、重要なものは全国レベルでの共通のテーマとして取り上げるのかといったことを検討する必要がある。
・地域における取り組みが増えているが、地方では都市部ほど個人主義が進んでおらず、 古い組織や年功序列などの体制が依然として残っており、若者が地域に参加したり、新しい取り組みに資金を融通することを阻害しているといった弊害が起こるときがある。
・直島や金沢の例のように、小さな現場で何かをしようと思ったならば、その背後には10年20年単位の大きな政策や思いがないと小さなことも動いていかない。
・EUの地域政策の例をみると、今回の広域地方計画のように、分権化やネットワーク化を進めたところ、一部には成功事例が出てくるものの、多くの地域は埋没し、かえって地域間格差が拡大した面もある。戦略的なネットワークを構築した地域のみが良い結果を残していることを教訓とすべきである。
・成長エンジンの問題と集落の問題は表裏一体と捉えることが出来る。企業を立地する上で豊かな自然環境を望む企業があり、集落においては豊かな自然環境を有していることから、成長エンジンと集落の問題を同時に解決する鍵があるのではないか。
・ただ計画を実行するだけでは、地域格差が生じる可能性がある。そのため、地域の生活の質を高めるための戦略的なアプローチが必要となる。
・広域地方計画をつくる上ではより一層、縦割りを超えた連携を図るべき。
・国外で読まれること意識した計画をつくるべきである。
(3) 議題2 委員会の設置について
○事務局より説明。原案のとおり設置を決定。
(速報のため、事後修正の可能性があります。)