国土審議会

第3回長期展望委員会 議事要旨

<日時・場所>
 平成23年2月21日(月)18:00~
 中央合同庁舎第3号館11階国土交通省特別会議室

<議事>
・事務局から資料説明
・討議(以下概要)

〇 この報告は、一つの仮定に基づくものであるとの認識が重要。その上で、4)章の「フランス並みの出生率」等、そこに至る可能性や手立て等に関する何がしかの見通しが必要。
 また、人口分布の問題については、過疎地域では産む年齢の人口も減っており、出生率が回復した場合でも、(過疎地域の人口も増加するとは)楽観できない。今後、無居住地域
 の問題はより丁寧にやる必要。

〇 これまでの社会の意思決定は、出生率を下げる方向で積み重なってきた。この報告は、現在の意思決定が、将来どのような結果をもたらすのか考えて行動すべきとのメッセー
 ジ・アラーム。リアリズムをもって、これからの意思決定をする、イノベーションを誘発する、直面する課題を事前学習する素材である旨を強調すべき。

〇 この報告は、絶望ではなく、このままでは国土が持続しないという宿題を明らかにしたところに意味がある。むしろこれまでの50年こそ異常であったと内省すべきではないか。
 また、例えば、日本の過疎地の平均密度は51人(㎞2あたり)であるのに対して、世界の平均密度は47人であること、世界中で水資源の重要性が増す中で日本は水に係る多くの
 技術を有していることなど、世界からどう見えるかとの観点も重要。また、「量」よりも「質」をみる観点、「規模の経済」から「範囲の経済」への転換といった点が重要。ポイント・オブ・
 ノーリターンは何で、いつ訪れるのか。身近に感じられる「暮らし」を成り立たせる圏域の観点なども必要。

〇 この報告は、「こうなる筈だ」ではなく、こうなってはならないとの警鐘だが、それでは足りない。国家も国民もこうするのだという意思を持つべき。この程度の難局は乗り越えられ
 る。例えば、日韓以外なら出生率は再び上昇している。フランスぐらいのことは努力しよう、という意味と理解している。また、減っていくことや減った状態は問題ないと記述してはい
 けない。そういった認識が、例えば投資を弱める。その点で心配なのは、人口減少を補うだろう海外との交流の現状。

〇 現状推移型の展望からシナリオ型の展望に改良されることは進歩。それにより、達成できるかどうか、何を考えるべきかなどが見えてくる。このような分析の高度化を進めていく
 必要がある。これで次に、どういう課題・解決策があるかが見えてくる。

〇 過疎化が進む中、全国一律ではなく、様々な地域で多様化していくことを重視すべきでは。

〇 過去の国土計画は、見てみたい将来を描いてきたが、今回は、見てみたくない将来を示している。これまでは、国土構造を変えることが人の分布をどう変えるか。今回は、人の分
 布が先になっており、それが国土構造をどう変えるかの点も触れられないか。その際、日本地図だけではなく、アジア等に拡げて見ると明るくなるのでは。また、例えば、4)章のリニ
 アの話のようなものをもっと記述できないか。さらに、今後は、どう政策に結び付けていくかが重要。

〇 「はじめに」の文章がうまくない。「である」を多用しない方がよいのではないか。「及びもつかない新しい発見」とは何か。また、本文中に記述されている見出しを、目次の頁に記載
 して、目立たせるとかの工夫をされてはどうか。

〇 例えば、海外からの直接投資額が減っているという記述には、それだけではなく、その原因は何かについて触れられていない。原因を基にした国土政策の関係が分からない。

〇 人口減少社会に入っていく中、ソフトランディングをしていくとの視点を。ポピュレーションには「量」と「質」がある。量が減る中、質が高まるような知的なインフラ整備があってもいい。
 人口減少は必ずしも負ではないし、負を和らげる事も考えられないか。

〇 例えば、カナダの一部の地方公共団体では住民の多数が中国系に占められ、彼らの意思決定が通っている所がある。日本でも過疎のところに大量に外国人が入ってくれば、同
 様の問題が引き起こされる。日本は土地の私有がしっかりしていて、外国人から見ると魅力的。留学生が多い国は財産を海外で保持するために子供を外に出しているとも見れる。
 バブル時に土地への愛着のなさが様々な問題を起こしたことも思い起こすべき。人口減少とは、そういう問題も起きる点に留意すべき。

〇 将来どうすべきかは誰も分からない。このうよな幅広い方々を交えて考える場を作っていけたらいい。外国からみれば日本はまだ魅力的であり、可能であれば、外国人からみた
 日本の将来のあり方との観点も参考になるのでは。

〇 今後、石油が枯渇していく。化石燃料に依存しない経済社会をどう作っていくか。また、食料価格も上がっていく。いずれ転換点が出てくる。そこをどう読み解くか。人口以外の「ひ
 ねり」は何か。今までは安いエネルギーと食料の輸入に依存していた。それを転換し、食とエネルギーの自給を高め、更に地域振興へと結びつけることが必要。また、人口が少なく
 なっていく中でのビジネス・イノベーションを考えていく必要。コンビニや物流でもそうした動きが出てきている。また、土地、食料、エネルギーも枯渇してく一方、中国の問題が巨大化
 し、GDPは日本の何倍になるのか。日野自動車など国内では内陸の工業が臨海部に移動する動きもある。人口減少に伴うインフラの利用度を見ていく必要。

〇 人口減少はアドバンテージ。食料や環境への負荷も減る。団塊の世代がいなくなると人口構成もバランスが良くなる。フランスは出生率は上がったが、結果として国民負担が生じ
 ている。無理をして、フランス並みに出生率を上げる必要はない。また、そのためにスウェーデン並みに国民負担率を上げる必要もない。むしろ横断的思考のできる人材育成が必要。
 クリエイティブなシナリオを考えてほしい。

〇 来日している東南アジアや中国の人は日本の環境対策、防災、治山治水対策を知りたがっている。日本には外国からみても素晴らしい点があり、人口減少の中でも、こうした点が
 維持できるか、どうすれば可能かとの視点があってもいい。

〇 一定の枠の中の検討で将来の政策を立てるヒントができたと認識。あくまで「中間」。今日頂いた意見は、整理して後半戦に活かしていく。どういう改善の方向があるのかとの意見
 も多かった。この点は次の展開にバトンタッチするということかと。「はじめに」の文章も多少手入れが必要かもしれない。

〇 国際的な視点が弱いとの指摘は以前から頂いているが、その方法論を含めて勉強していきたい。例えばフランスの出生率向上策等、各国の施策も検討に含めていきたい。また、
 無居住を中心とするミクロの観点もみていきたい。ポイント・オブ・ノーリターンについても議論を深めていく点。

〇 明日、政策部会があり、時間的制約はある。一任を頂き、「はじめに」と「おわりに」に手を加えることとしたい。

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