計画部会

第3回計画部会・議事要旨

 1.日時
  平成26年11月7日(金)10:00~12:00
 
2.場所
  中央合同庁舎4号館2階共用220会議室
 
3.出席委員
  奥野信宏部会長、増田寛也部会長代理、家田仁委員、垣内恵美子委員、柏木孝夫委員、坂村健委員、田村圭子委員、橋本哲実委員、望月久美子委員、野城智也委員、鷲谷いづみ委員
 
4.議事
 (1)活力ある大都市圏の整備について
 (2)グローバル化への対応について
 (3)国土基盤の維持・整備・活用の方向性について
 
主な発言内容
(1)開会挨拶
 ○審議会冒頭、奥野部会長よりあいさつ
(2)議題                        
大都市圏、グローバル化、国土基盤について事務局から説明。その後、意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下の通り。
 
<活力ある大都市圏の整備>
・ 東京圏、大阪圏、名古屋圏を「三大都市圏」で括っているが、人口集中や出生率の低さでも東京圏が突出している。東京圏は特出しし、「東京圏」、「その他の都市圏」、「地方圏」という区分で具体的方策を考えるべき。
・ 大都市圏と地方圏の整備はペアで、かつ、土地利用等メリハリを付けて行うべき。
・ また、多摩ニュータウンは公が、多摩田園都市は民が整備を行ったが、継続した地域マネジメントの有無によりクオリティに違いが出ている。検討の参考になるのではないか。
・ 東京の少子化対策として、リニア中央新幹線が開通すれば、リニア沿線等の子育て環境に優れた地域に居住し、東京に通勤するというような対策も考えられるのではないか。実際、名古屋在住の東京単身赴任者を対象にしたアンケートではリニアが開通すれば約4割が名古屋から通うとの結果が出ている。
・ 東京の少子化対策としては、ワーク・ライフ・バランスなど働き方やキャリア形成についての企業側の取組も必要であり、国土計画になじまない分野ではあるが、方向性について書き込んでいくべき。
・ 大都市の郊外に子育て特区を作るなど、魅力的かつ重点的な投資が必要。女性の活躍には、テレワークも重要。
・ 東京圏の子育て環境の整備について、単なる保育園数の確保等親の労働の視点のみではなく、広い緑地や安全なプレイグラウンド等子供の視点からの取組が必要。
・ 大都市圏の個性については、名古屋圏は製造業に特化しており、自動車に加えて航空産業でクラスターが出来つつあるが、大阪圏は商業・金融とも東京とぶつかっているという難しさがある。
・ 都市間競争が激しくなる中、モノ・カネ・人材は瞬時に移動する。次世代の有能な人材はシンガポール等に移動しているともいわれている。東京への知的集積が重要。
・ 東京が、シンガポールや上海のような成長過程の都市と同じ土俵で勝負してナンバーワンを目指すのはリアリティに欠ける。成熟社会の豊かさをもつオンリーワンを目指すべき。
・ イノベーションのためには、科学があるだけではなく、それを具現化するための企業、金融、マーケットが集中していることが必要。東京は、そのような「Think by doing」の拠点機能を進化させるべき。また、シーズとニーズをマッチングする人材が不足しており、海外の人材も導入して多様化を図るべき。
・ 災害により国土の東西分断が起きないよう、東京・名古屋・大阪間の交通ネットワークのリダンダンシーが必要。
・ 大都市圏が抱えている首都直下型地震や高齢化のリスクについて、東京都ではまだシナリオを作れていない。東京は国際競争に勝たなければいけないが、投資余力が高齢化対策に取られてしまうのではないかという懸念がある。
・ 都市防災について、高潮災害が抜け落ちている。今後、温暖化で海岸線も変わるので、都市中心部への機能誘導等を検討すべき。
・ コミュニティについて、平常時の医療・福祉面における支援者と被支援者の間に構築されている関係を防災面にも活用できるような制度設計が必要。
・ ニュータウンのオールドタウン化が指摘されているが、そこには知識と経験を持つ高齢者の人材がおり、ソーシャルビジネス発展の萌芽がある。
・ 文化・歴史が醸し出す魅力あるまちづくりについて、既存ストックも大事だが、東京は芸術文化のマーケットでもあり、コンテンポラリーアート等魅力的な創造活動にも、特にリピーターを創出する観光資源としての価値がある。
 
<グローバル化への対応>
・ グローバル化に関する取組はメリハリを付けるべき。グローバルニッチトップの育成は望ましいが確率が低いため、まずは対内直接投資に重点を置くべき。
・ 国土を世界に開く観点では対内直接投資が重要で、知的集積のある大都市圏の役割は重要。そのために官民連携でのビジョン検討や各都市の役割分担の議論が必要。
・ グローバル化について、国際物流の規模でトップになるのは現実的ではなく、せめてトップグループにいるという目標を鮮明にし、国際動向を踏まえた戦略的思想に立って施策を重点化することが重要。
・ スーパーメガリージョンについて、人口規模が大きいからヒト・モノ・カネが集まるというロジックは疑問。具体的にどのような効果が出るのか議論すべき。
・ 高度人材の供給については、投資を呼び込むためのみではなく、東京の強みである知的ストックとして多様で競争的な基礎研究の充実の面からも重要であり、そのような記述が必要。
・ 観光産業は国際的な価格競争で疲弊している面もあり、観光客数の増加だけでなく、収益を重視した高質化を図る必要。地域の観光関連機関の体制整備も必要。
・ 観光について、日本のサポーターを増やすという外交、文化政策的な側面もあり、産業面と外交・文化面を両輪として計画に位置づけるべき。
・ 日本の観光資源の世界的価値の認識と持続的な活用が重要。日本は世界に34か所しかない生物多様性ホットスポットのひとつである。日本は歴史的文化的なものへの認識は高いが、ナチュラルヒストリー(博物学)への認識が弱い。動植物の豊かさを世界に発信することは観光の質の向上につながる。
・ ヘリテージレールウェイ(廃線や廃線になりかけている鉄道)も観光資源として人気。
・ 観光について、都市が稼いだ所得を地方で消費するという所得再配分機能を持つという側面も認識すべき。
・ リニア中央新幹線の整備に関し、名古屋では駅周辺の整備計画はあるが、東京を含めた機能の再配置ついては議論できていない。広域地方計画での議論が必要。
・ リニア中央新幹線は東海道新幹線を助けるものとして建設されるものであり、新幹線開業前に現在の効果を予測し得なかったのと同様、確実なことは言えない。当部会でリニア中央新幹線開通の効果やスーパーメガリージョンの形成が図られるにはどうしていくべきかについて考えないといけない。
 
<国土基盤の維持・整備・活用の方向性>
・ インフラ整備については人類の歴史と重なるという歴史的な認識が必要。インフラ整備が完了するということはなく、地理的拡大と高性能化からクオリティを上げる方向を目指すという記述が必要。
・ インフラの再定義が必要。例えば、オリ・パラや大規模災害への対応を考えれば、地下鉄と水上交通の結節強化は重要。
・ ICT活用の重要性は、医療や教育等において空間的なギャップを超えてサービスを受けられることで、今後のまちづくりには不可欠。また、先進国はソフトウェアで伸びているが、ウェブ上の作業はテレワークでも可能であり、地方在住者の就業機会拡大につながる。
・ 防災・減災ついて、平時の成長と非常時の安全の両面の効果を考慮に入れて国土形成を図る必要があることを明記すべき。
・ ICTの安心・安全面での更なる活用について検討すべき。
・ 防災減災について、東日本大震災以降、リスクとの共生の認識は一般化したと思われるが、その前提として災害リスクと発災後の情報共有が重要。
・ インフラのコストについて、特に米国など、国際比較をするとわかりやすい。また、社会資本の老朽化で「50年以上経過する施設」とあるが、50年は経過すると使えなくなるのではなく、適切なメンテナンスの警告時期であると理解すべき。
・ インフラの運営について、ノウハウを持った外国企業を含めた企業コンソーシアムを作り出すことが必要。
・ インフラは民間の投資を呼べるものでなければならない。例えば廃熱パイプラインは、低炭素化のみでなく、まちのコンパクト化の誘導にもつながる。グローバルな視点では、EUは構成国でエネルギー源を分担し全体で最適化しており、例えば日本と韓国とが連携するなど国際的なエネルギー政策が重要。
・ エネルギー基盤は全ての根幹であり、国土計画への位置付けが重要。
・ 災害もエネルギーがなければ復旧できない。その視点が欠けている。
・ 「コンパクト+ネットワーク」においても、例えば鉄道はエネルギーがなければ機能しないので、交通インフラだけでなくエネルギーもネットワークの要素に加えるべき。
 
<計画全般>
・ 論点の重点化が必要。
・ 施策にメリハリをつける必要。単に全てトップを目指すということではなく、我が国は何を目指すのかをはっきりさせておくことが重要。
・ 「国土のグランドデザイン2050」を基本にしつつも、国土形成計画は、              
この10年でやるべき事をしっかり書くべき。
・ 官がやるべきこと、やらない方がいいことが渾然一体となっている。また、
タイムスケールについても、短期と長期が混在している。
・ 「対流」という言葉は、国土計画の発展段階からも次期計画に相応しいキーワードである。全総策定時のように「ワクワク」する計画にしたい。
・ 全国計画は、今後広域地方計画を検討するときに、地方から見て納得性の高いものでなければならない。「国土の均衡ある発展」という概念は、東京圏と地方圏では受け止め方が全く違う。これをどのように扱うかの検討が必要。
・ 国土計画の使命は、地域の文化を守り育てるというところにある。
・ 「コンパクト+ネットワーク」は非常に重要な概念だが地方圏にとってはわかりにくい。都市の連携については、行政的な連携にも限界があり、コミュニティにおける市民・NPOの活動が重要。
・ コンパクト+ネットワークの重層的な構造について、うまく整理されていない。言葉と概念図の整理が必要。
・ 従来の成長重視の考え方を前提とするのは疑問。ヒト・モノ・企業の多寡ではなく質を重視することで、大都市圏の成長と地方創生を両立するということではないか。
・ 個と公の関係についても言及すべき。例えばスウェーデンでは、個人で住宅を建築する際、再利用を考慮し、法律でバリアフリー対応が義務づけられている。日本では住宅の個人所有の意識が強く建て直してしまうが、再利用を前提とした施策の検討も必要。
 
 
(以上)

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