計画部会

第5回計画部会・議事要旨

1.日時
  平成26年12月4日(木)10:00~12:00
 
2.場所
  経済産業省別館3階312号会議室
 
3.出席委員
  奥野信宏部会長、増田寛也部会長代理、垣内恵美子委員、柏木孝夫委員、坂村健委員、佐々木眞一委員、高橋泰委員、田村圭子委員、橋本哲実委員、藤原忠彦委員、望月久美子委員、鷲谷いづみ委員
 
4.議事
 (1)総論(国土の基本構想)について
 (2)中間整理の素案について
 
主な発言内容
(1)開会挨拶
 ○審議会冒頭、奥野部会長よりあいさつ
(2)議題                        
総論(国土の基本構想)を含め、中間整理の素案について事務局から説明。その後、意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下の通り。
 
<国土の基本構想>
・ 対流とコンパクト+ネットワークをどう中身に絡ませるかが重要であり、各都道府県市町村にとってわかりやすく表現できるといい。
・ 全体的に具体論に欠ける印象。地域から見たとき、「コンパクト+ネットワーク」の考え方で自分の地域はどうするべきなのかが見えない。全国計画というマクロと地方自らが考えるミクロが一体化した議論が必要。
・ キーワードである「対流」と「連携」・「交流」との関係が理解しにくいため、もう少しわかりやすい記述が必要。
・ 「対流」という言葉は、一般的にものの温まり方や熱の伝わり方という学び方をするので、国土づくりの概念としてイメージしにくい。一般の方が理解できるわかりやすい記述が必要。
・ 「対流」の考え方をイメージしやすいよう、具体例を示すべき。
・ 「対流促進型国土の形成」の考え方には大賛成であるが、田園回帰については、この動きを裏付けるデータが見当たらず、むしろ東京圏の転入超過が増している。田園回帰の動きに安易に期待せず、東京の災害や高齢化に関するリスクを前提として地方への人の流れを太くするような記述が必要。
・ 東京圏転入の大半が大学進学時。人口の対流との関係でも、地域の大学の在り方を掘り下げて考える必要。
・ 東京一極集中をどのように捉え、人口が減少する我が国の将来像をどうするのかということは中心課題であり、更に具体的に示すべき。
・ 東京をどう位置づけるのかが重要。競争力をポジティブに捉えるのか、一極集中を是正し集積を少なくしようとするのかで政策が変わってくる。コンパクト+ネットワークの考え方は、国土構造のどのレベルでも通用する考え方。例えば東京は異なる個性を持つ地区がネットワークでつながっていることが強みとなっている。このような東京の強みを最大限に活かしていかなければ、我が国の国際競争力向上の面でも厳しい部分がある。
・ 「対流促進型国土の形成」の考え方や必要性については、第1章で明確に記述すべき。
・ 「対流の発生・維持・拡大」のプロセスを示すことが必要。自治体にもわかりやすいように成功例を示すのが効果的で、リアリティのある計画論につながる。
・ 「対流の発生・維持・拡大」で要因が挙げられているが、対流を駆動させるメカニズムの必要性にも触れておくべき。例えば大学に関して言えば、東京に集中する大規模な大学でI・Uターンの動機付けとなるような教育をすることもあり得るのではないか。また、地方の大学空白地域にサテライト・キャンパスをつくれば、そこで地方について研究した者が地方に新しい仕事を創っていく可能性もでてくる。様々な分野でメカニズムを考えていく必要がある。
・ 国際的な都市間競争に勝てる大都市圏と地方創生が具体的にどう両立しうるのか、説得力が不足している。大都市圏から地方圏への流れを生み出す力強い政策が必要ではないか。
・ 大都市圏にとっての「コンパクト+ネットワーク」の意義を明示すべき。地方におけるそれとは全く意義が異なると考えられる。
・ 地方においては、既に「コンパクト+ネットワーク」化が進んでいるので、前提の整理が必要。ネガティブなコンパクト化にならないよう、国土計画において、戦略的に魅力的なネットワークをつくるなど各地域が知恵を絞って「コンパクト+ネットワーク」を進めるという記述をすべき。
・ 漠然と「コンパクト+ネットワーク」を進めると発散してしまうおそれがある。防災分野では、同じ災害リスクを共有する圏域が行政界を越えて連携する「圏域防災」という考え方があるが、同様に、自然、文化、経済等の圏域(まとまり)で「コンパクト+ネットワーク」を考えていくべき。
・ ネットワークについて、我が国と世界とのネットワークに関する記述があるべき。海洋の利活用や空路の充実についても、相手国・地域を想定しなければ具体的な議論ができない。
・ ネットワークに関して「バーチャル・ネットワーク」についての記述が少ない。「イン・パーソン(実物)のネットワーク」と「バーチャル・ネットワーク」の組合せの重要性に関する記述が必要。
・ 国土計画のこれからの役割に関するメッセージの発信が必要ではないか。歴史的に見ると国土計画は国主導から民間主体へと変遷してきているが、今後は官民協調による新しいタイプのアプローチが要になるのではないか。官民協調の具体的なプランが重要であり、このことが、「コンパクト+ネットワーク」の実現について納得性を高めることにつながる。
・ 「国土のグランドデザイン2050」の「コンパクト+ネットワーク」の記述を付録で付けてはどうか。
・ 「コンパクト+ネットワーク」に関する具体例を参考資料として添付するとわかりやすい。
・ 都市圏の分類について、大都市と地方都市の中間に位置する中堅的な都市の位置づけが必要。
・ 大都市圏の整備について、東京圏と大阪圏・名古屋圏という整理をしているが、東京圏は様々な面で突出した存在であり、東京圏とそれ以外という分類で捉えるべきかもしれない。その際、人口20万人から40万人程度の中堅的な都市の位置づけについての議論も必要。
 
<国土の基本構想実現のための具体的方向性>
・ 産業政策が企業誘致から産業創造にシフトする中、取組の主体が地方となり国の役割は産業育成支援等ソフト施策にシフトしている。しかし、国が新しいタイプの産業形成を主体的に行うべきであり、その旨のメッセージが必要ではないか。具体的には、地域における研究開発拠点整備、ICT医療推進の環境整備、燃料電池車等の普及を見据えた水素インフラ整備、人材育成、金融等が考えられる。
・ 以前は、工場の地方移転に関し、移転先の地域から環境面での懸念が呈されることがあったが、現在は、工場排水は厳密に管理され環境負荷はなく、荒れ地の管理など環境保全への貢献も少なくない。このようなことも企業による「対流」と考えてもよいのではないか。
・ 大都市の魅力はビジネスチャンスへの期待であり、それが大都市間の競争力につながっている。スーパーメガリージョンの形成はその魅力の向上につながる。
・ 出産・子育ての環境整備に関し、「男女が共に仕事と子育てを両立」という記述は子育てをもっと広い概念で捉えられるよう「多様な暮らし方に対応した子育て」とすべき。
・ リニア中央新幹線の開業により、東海道の沿線地区が一つの文化・経済圏になる中で、沿線の中堅都市の結節点の強化により、地方活性化とメガリージョンの形成につながる。
・ どのような要因かは不明であるが、海外からの観光客のうち日本の代理店を利用するのは1割未満であり、ほとんどが海外の代理店であるという話を聞いた。日本の代理店の利用率を向上させることで観光産業の活性化にも資するのではないか。
・ 平常時と非常時を区別した国土づくりの検討が必要。既に非常時の国土づくりを検討している組織があるのであれば、その旨の記述でも構わない。
・ 防災に関連し、老朽化対策と併せて「機能の付与」を検討すべき。例えば、地下埋設物の耐震性の高度化や公共建築の集約化に併せて平常時と非常時のふたつのモードで活用できるような設計を行うことなど考えられる。
・ 「都市と農山漁村の相互貢献による共生」は重要な課題と考えており、しっかりとした柱立てをすべき。
・ 米国において私財で道路整備をしている例があるように、個人の寄付による公共事業の可能性について、計画に盛り込むべきではないか。
・ エネルギーインフラは全ての基本。特に、エネルギーとICTの融合による効率的なインフラ整備が重要。
・ エネルギーの利用は電力と熱に大別されるが、熱の有効利用が大きな課題であり、この解決は低炭素社会実現の鍵。熱は移動距離が2㎞程度に限られているので、まちをコンパクト化する意義がある。コンパクトシティにおける廃熱パイプラインの整備等熱の有効利用について記載すべき。
・ エネルギーの多様化を強調してほしい。特に水素は今後欠かせないファクターである。
・ 共助社会づくりは重要であるが、人への投資は依然として官の役割が大きい。大学の基礎研究などナレッジ・イノベーションにつながる人材育成についてもう少し記述すべき。
・ 各地域においては、交通や教育などの既存データを用いた状況分析と他地域との比較・評価ができてはじめて具体的な検討が可能となる。参考資料では、医療に関する地域間偏差値を出しており、例示した地域では医療は弱いが介護には強いという全国的な位置づけがわかる。国土計画においてもこのような「地域の見える化」の必要性について言及すべき。
 
<計画全般>
・ 国土形成計画は、国土の在り方に関しては最上位・最優先の計画であり、年内にも策定が予定されている「まち・ひと・しごと総合戦略」や各省の様々な計画との整合を図りつつ、位置づけをしっかりとしたものとすべき。また、施策分野が重なる計画が各省で乱立すると地方が混乱するので、政府内で調整を図って欲しい。
・ 広域地方計画の策定を前提として、全国計画を検討していく必要がある。
・ 専門用語などには、脚注などを入れておく必要がある。(P10の「冗長性」など)

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