計画部会

第6回計画部会・議事要旨

 1.日時
  平成26年12月16日(火)17:00~19:00
 
2.場所
  合同庁舎3号館10階共用会議室A
 
3.出席委員
  奥野信宏部会長、家田仁委員、岡部明子委員、垣内恵美子委員、坂村健委員、佐々木眞一委員、高橋泰委員、田村圭子委員、橋本哲実委員、望月久美子委員、矢ヶ崎紀子委員、野城智也委員、鷲谷いづみ委員
 
4.議事
 (1)中間整理の案について
 
主な発言内容
(1)開会挨拶
 ○審議会冒頭、奥野部会長よりあいさつ
(2)議題                        
中間整理の案について事務局から説明。その後、意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下の通り。
 
<国土の基本構想>
・ P7に「自然、社会、文化等の面で世界でも類を見ない多様性を持つ我が国」との記述があるが、世界を見れば類はあるため、表現に違和感がある。
・ 「コンパクト」について定義する必要がある。機能や居住の空間的な密度を高めるということだと考える。
・ ネットワーク化のメリットについては、最低限の機能の維持というだけでなく、高度な機能を有する地域と周辺地域が連携することによる階層的なネットワークも認識する必要がある。
・P8に「地域の一か所に『コンパクト』に集積することが個性を鮮明にする場合もあり有用」とあるが、これだけでは「まとまる」ことにより個性が高まるというニュアンスが伝わらない。
・ 国土形成計画の議論において、「コンパクト+ネットワーク」をキーワードとし続けるべきなのか疑問。一般の国民にすんなり理解してもらえることが重要なので、「まとまり」と「つながり」としてはどうか。
・ 「コンパクト+ネットワーク」と「対流」の関係については、地域構造やインフラなどのストラクチャー(つくりだて)が「コンパクト+ネットワーク」で、その上でのアクティビティが「個性」と「対流」というイメージではないか。
・ 東京一極集中の是正については、これまでの国土計画や政治の紆余曲折についても記述すべき。また、日本では、国土の均衡ある発展の下、諸外国と比べて大都市における空港、環状道路、港湾等に対する必要な投資を怠ってきたため整備が遅れているということを認識すべき。
・ 国土軸については、例えば瀬戸内海やフォッサマグナなど、地政学的な国土軸もある一方、政治的な意味での国土軸もある。新たな国土軸を議論する際は、意図の違いについて整理すべき。
・ 「コンパクト+ネットワーク」のあり方については、人口規模別の4類型で記述されているが、例えば中山間地域であってもネットワークによってグローバルにつながることは可能であり、ツリー構造を前提としたモデルには疑問。
・ 人口減少に対しては、適応策と緩和策が必要であるが、十数年後に出生率を向上させるための構想(緩和策)が不足している。適応策として、「コンパクト+ネットワーク」により生活の質を維持し、緩和策として、くらしやすく子供を産み育てやすい空間構造を形成し、そこに「対流」が生まれる、という整理が可能。第2章において、十数年間にわたり人口減少が継続するが「コンパクト+ネットワーク」で乗り切れる、または、「対流」を生み出すことで十数年後には出生率が回復する国土構造が実現される、ということを示すべき。
・ 一般国民にとってのわかりやすさが重要であり、初めて聞いたときに理解できるものである必要がある。人口減少などの様々な問題を解決するための決定打が「コンパクト+ネットワーク」であることを示すべき。
・ 「ネットワーク」という言葉が様々な意味で使用されており、何を示すかが曖昧。現在では「ネットワーク」と言えば「スマホ」や「インターネット」によるネットワークをイメージするが、それとの違いを丁寧に説明すべき。
・ コンパクト化により切り捨てられる地域があるという印象を持たれるのは好ましくない。遠隔医療や遠隔教育等を可能とするコンピュータ・ネットワークが国土の維持に大きく貢献しうる。
・ 住み慣れた場所に住み続けることをあきらめる覚悟について記述する必要がある。東京から地方への移住を促進することと、すべての集落の維持という考えをやめることが、日本人にとって最も重要な価値観の転換である。
・ 1955年~1970年の間に、地方から約800万人の若者が三大都市圏へ移住し、彼らは現在65~80歳となった。大都市から地方へ移住した場合に実現される豊かなライフスタイルを提示することが必要。この800万人うち約200万人が地方へ移住すれば、大都市圏の医療・介護の不足や地方の活性化などの課題を解決できる。
・ P10に記載されているように、「すべての地域で必要な機能を享受することが可能」とするためには、各種機能の集約化と同時に「たたむ」覚悟が必要であり、それを宣言した上での「すべての地域」としないと説得力がない。
・ 東京一極集中については、災害時における大都市のリスクを強調することで、逆説的に地方との連携や地方への分散の必要性を示すことが可能。
・ 「コンパクト+ネットワーク」については、例えば農業やものづくりにおいてイノベーションを生み出すためには、現場でなければわからない知識があり、地域的な近接性は非常に重要。その現場に多様な能力(人材)・知識が集積することでイノベーションが生まれる。一方、コンパクトに集約されたノードがきわめて個性的であれば、地域の階層を超えて国内外どこでもつながっていく。
・ 硬直化する国土・社会に「対流」を生み出すことを計画の目的とし、そのために[1]コンパクト「まとまることによる拠点強化」、[2]ネットワーク「つながることによる機能強化」、[3]グローバル「圏域を越える展開による成長の強化」という3つのキャッチフレーズをたてることを提案したい。
・ 圏域を超えること自体がグローバルへのチャレンジと考えており、圏域については、規模の小さいものから[1]農山漁村圏(中山間地域)、[2]地方都市圏、[3]大都市圏、[4]複数の圏域を含む広域ブロック、[5]新しい圏域「メガリージョン」、[6]世界との圏域、と段階的に整理し、圏域を超えることをグローバリゼーションと定義することを提案する。
・ 「コンパクト」の内容としては、[1]空間的密度を増す、[2]サービス機能の集約、[3]集中的な社会基盤の整備と保全、[4]これまでの発展過程による歴史的・文化的背景の尊重、とすることを提案する。
・ コンパクト化の本来の意味を考えると、東京の位置づけが微妙である。東京ほどコンパクト化していて世界とネットワークがあるところはない。コンパクト+ネットワークを進めると言いながら、東京一極集中を是正するというのは、分かりにくい。ネットワークの意味に、「リスク軽減」や「バックアップ機能」等を盛り込むと、東京をコンパクト化するものの、一極集中について放置しない、手立てを考える必要があるという形にできるのではないか。
・ 「地方」とは農山漁村なのか、「地方都市」とは都市なのか、構図がわかりにくいので整理が必要である。
・ コンパクト+ネットワークについては、きちんと定義すればこのままの表現でいいのではないか。既存の言葉で全てを語るのは難しいと考えている。
 
<国土の基本構想実現のための具体的方向性>
・ 成熟社会の知識集約化、課題解決型の産業を生み出すため、多様な地域の連携を支える国土構造に転換する必要がある。一方、知識集約的なイノベーションは、自然体では大都市に集中するが、地方創生との両立のためには、地方独自のイノベーションモデルが必要。
・ P27の「横断的な視点」に記載のある技術革新の導入について、技術革新と社会課題の解決をマッチングし、具体的なビジネスモデルの確立につなげることが重要。民間活力の活用にあたっては、計画の早い段階から公・民の関係者が連携するなど、インフラや公共施設の経営ノウハウを高度化する工夫が重要。また、地域金融の役割としては、融資だけでなく投資機能の活用や、ナレッジによるコーディネート機能の活用など、金融機能の高度化が重要。
・ 東京一極集中と東京の国際競争力強化の2つの課題については、背反する可能性があり留意が必要。東京におけるくらしやすさを追求すると、競争力強化のための機能集中と背反となるため、イノベーションによる解決が必要。
・産業界で、対流は物流や人の移動と捉えるが、スムーズかつ低コストということが非常に大事であるので、国際的に遜色ない物流コストの実現に向けたインフラ整備が重要。日本海と太平洋の両方を使うという意味では、まだまだ日本海側のインフラ整備が必要。
・ 住む人にとってコンパクトとは、居住を集約するということである。しかし、農地や森林のように人がいったん開発した国土は放棄すると荒廃する。居住がなくてもアクセシビリティは確保し、国土を保全する必要がある。
・ P15の「魅力ある『しごと』の創出」に「地域の成長産業としての観光の振興」とあり、これは成長産業ということでインバウンドを指していると考えられるが、記載されている内容は不十分。現在観光行政として行われている以上の一歩進んだ将来ビジョンについて記述が必要。
・ 仕事の部分では需要、経営、多様な雇用の創出という意味でも、観光産業の多様な「旨み」や「色彩」についてもう少し表記して欲しい。
・ 世界市場と勝負できる都市を強くした上で、地方がついていくという構造もあるので、東京一極集中の是正については観光振興という観点では微妙なところである。
・ ロンドン五輪の際、英国観光庁は大会前、大会中、大会後の投資を2:2:6とした。メガイベント後の刈り取り期の投資が非常に重要であり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックとの関係では、観光分野を含め、国土形成計画にそのような視点があってもいいのではと思う。
 
<計画全般>
・ 国土形成計画(全国計画)をベースとして、今後、広域地方計画の策定に向けた議論が開始されることも見据え、特に以下の3点について計画部会での議論を深める必要がある。[1]様々なレベルの「コンパクト+ネットワーク」を念頭に置くこと。[2]国土形成計画のキーワードである「対流」と「コンパクト+ネットワーク」をどのように結びつけるか。[3]中間整理(案)の段階では記述のない国土軸について、どのように考えるか。
・ 現行計画との関わりや本計画で新たにハイライトしていること、現行計画に沿った進展と現状の評価についても記述が必要。
・ 全国計画と広域地方計画の関係性を、ここで重視するキーワードの「対流」にふさわしい活発な相互作用を感じさせるような記述をすべき。広域地方計画の成果の分析評価や地方計画にかかわる地域の動きを加えることで生き生きとした記述になるのではないか。
・ 「人口減少を好機と捉えた整備が必要」や「国民一人一人が豊かさの享受できる」など非常にいいフレーズがあるが、これらの記述が分散しているため、この計画の立ち位置が不明確となっている。

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