計画部会

第7回計画部会・議事要旨

1.日時
  平成27年3月6日(金)10:00~12:00
 
2.場所
  経済産業省別館3階312号室
 
3.出席委員
  奥野信宏部会長、増田寬也部会長代理、家田仁委員、大西隆委員、柏木孝夫委員、坂村健委員、佐々木眞一委員、寺島実郎委員、藤原忠彦委員、橋本哲実委員、望月久美子委員、野城智也委員、鷲谷いづみ委員
 
4.議事
 (1)新たな国土形成計画(全国計画)中間とりまとめ(案)について
 (2)第五次国土利用計画(全国計画)骨子(案)について
 
主な発言内容(委員発言順)
(1)開会挨拶
 ○審議会冒頭、奥野部会長よりあいさつ
(2)議題
 (1)新たな国土形成計画(全国計画)中間とりまとめ(案)について   
中間とりまとめの案について事務局から説明。その後、意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下のとおり。
 
<国土に係る状況の変化と国土づくりの目標>
  • アジアダイナミズムと向き合う日本の国土に関しての視点が少なく表現が弱い。昨年、中国のGDPは日本の2倍になり、国民一人あたりのGDPは香港にも追い抜かれた。中国は華人ネットワーク型で成り立っており、日本もASEAN、中韓とのネットワーク型経済発展の中に身を置いていることを意識するべき。
  • P5の「ライフスタイルの多様化」で「国際志向」と「地域志向」があるが、この二つの価値軸と、大都市と地方とどちらで暮らすかという軸は異なる。従来の画一的な都市生活スタイル指向ではなく、豊かさを感じる生活スタイルの幅が広がっていることを端的に表現する言葉を検討すべき。
  • P5の典型的な家族像が「女性の社会進出や若者の就職難等により崩壊」となっているが前後の論旨がつながっていない。
  • P8の「経済成長を続ける活力ある国」について、生産年齢人口が減少していく中ではマイナス成長が続くと考えられる。国民に誤ったメッセージを与えず現実を見据えた記述にするためにも、縮小する社会でも快適に、また、それに備えて力を蓄える国土計画といった視点が必要ではないか。
  • P8に国土づくりの目標が掲げられているが、危機感のある2章以下と比較して危機感が伝わらず違和感がある。[2]の「経済成長を続ける活力ある国」に関しては、高度成長より持続可能性の方が大事な時代となってきており、自信と誇りを持てることが豊かさにつながると考える。
  • P8の3つの目標が同列で書いてあるが、[1]は目的、[2]は戦略・手段、[3]は結果であり、レベル感が違うので違和感がある。何を目標としているのかわかりやすく整理すべき。
  • 計画の目標について、若干「守り」のイメージが強いが、同時に未来志向型のポジティブな「攻め」の面も期待されている。企業サイドも、本来持つべき方向性、目指すべき姿を考える変革期になっており、これを後押しする計画にして欲しい。
 
<国土の基本構想>
  • 対流について、将来的に人口が3000万人減るというだけでなく、代わり海外から3000万人入ってきて、人の動きが活発になるという、日本を変えるという意識が必要。
  • 対流する国土を実現する主体は民間であり、民間がこれになじむかどうかが課題。なぜなら、人口の移動は転勤がほとんどであるため。本社機能の移転に関しては、今回、税制による支援を取り入れたが、税の後押しだけでは不十分。機能の全てではなく、一部東京に置かなくても良い購買・研修部門などの移転を進めていくため、どのような手段を用意できるかが課題。
  • コンパクト、対流、イノベーションの結びつきがわかりにくい。地域に蓄積している情報があって、これに新しいものが加わってイノベーションが発生する。集約する場が必要ということを強調すべき。
  • 人口減少下では、上手に地域をたたむことが必要となる場合が起こりうる。これをタブー視するのはいかがなものか。重要なのは言葉で触れないということではなく、経済合理性等上から目線の価値観で一方的に進めるというやり方ではなく地域が自ら考え決定する中で、タブー視しない姿勢で考えていくということ。
  • 都市・農山漁村の共生について、よく明記されている。また、コンパクト化、小さな拠点など、「守り」と「攻め」の視点が明記されていて良い。
  • 東京一極是正について、機能の地方移転が「考えられる」と消極的な表現だが、積極的に促進する表現にすべき。
 
<国土の基本構想実現のための具体的方向性>
  • P20の「コンパクトシティ」について、内閣府の世論調査では反対が2/3の64%を占めている。行政効率が上がるなどメリットがある一方で、立ち退きを迫られるなど不安要素があるためだと思われる。国民の理解が得られるよう、施策推進の理由を掘り下げて丁寧に説明することが必要。
  • P31の「名古屋圏の世界最先端のものづくり」について、中部でものづくりが盛んなのは研究開発を行っているからである。研究開発に関して筑波研究学園都市と関西文化学術研究都市が例示されているが、名古屋圏にも触れていただきたい。
  • 産業基盤の再構築について、どこまで深刻な問題意識があるのか。勤労者の収入が減っている中で、より豊かさを取り戻すために食・エネルギーの基盤のあり方を意識した計画にすることが必要。例えば、食料自給率の目標を実現するために必要な農地面積を確保するためにも参画型の農業とし、食の輸出力を上げ輸入を減らし、安定的な産業構造の基盤を作る必要がある。
  • 21世紀に入り日本は500万人の労働者が建設業・製造業からサービス業に移動しており、年収が160~190万円低くなっている。これは、サービス業の生産性が低いため。しかし、生産性の高い製造業だけでは成り立たなくなっており、観光業を始めとするサービス業の付加価値・生産性を上げなければならない。
  • ICTに関してもかなり書き込んであり、重要なところを押さえているという印象だが、他省庁所管分野にももっと言及してもよいのではないか。例えば、国民共通番号制度が始まったが、日本は標準化が下手で、人が移動しやすいようになっていない。例えば、誰かが亡くなった際に相続のために戸籍を取る必要があるがICTを活用出来ないことや、引っ越しの手続きも自治体によってシステムがバラバラなので名前が正しく表示されないなど面倒。人が移動しやすくするためにICTをもっと活用しやすいように国土を変えていく必要がある。
  • 新たに仕事を作ることだけではなく、今ある仕事を働きやすくすることも必要。サービス産業に関しては、労働生産性を上げ、若い人に魅力があるようにするにはどうすればよいか、掘り下げて考える必要がある。
  • CCRCについて、高齢者の移住も考えなければならない。その際、地方大学を核としたコミュニティのあり方が考えられる。
  • 移住は山梨や長野が人気のようだが、それでも十分ではなく、「お試し居住」やコミュニティづくりなど、さらに制度設計を考える必要がある。
  • 世界的に競争力のあるスーパーメガリージョンの形成については、距離・時間は確かに短縮されるが、世界的な競争力を持ったビジネスができることが重要。規模が大きくなれば魅力が上がるわけではない。海外からのヒト・モノ・カネをどう惹き付けるか。東京・名古屋・大阪などビジネスの活動拠点に必要なビジネス基盤整備、特に金融取引市場の整備が必要。
  • 労働力人口が不足する中で、女性の参加、高齢者の参画も必要。生産年齢人口が6500万人しかいないので、それでも足りない場合は労働生産性の向上が必要。
  • サービス産業の活性化はある程度の規模があれば可能だが、小さな拠点のようなところはどうするか検討する必要。
  • P22のイノベーションについて、地域の資源との結びつきについても、もう少しわかりやすく書くべき。その地域に根ざした知識とICTの融合によりイノベーションが起こるといった成功事例を具体的に例示すると自治体等にも伝わりやすいのではないか。
  • P29のオープンイノベーションについて、その場所にオンリーワンの世界的な技術集積を作ろうとする動きがあってはじめて活きてくる。
  • P38の[2]について、基本的に共感。
  • P40の[4]の「複合的な効果をもたらす施策の推進による国土管理」については、もう少し膨らませても良いと思う。自然環境のリスクが懸念される場所はレクリエーションを行う場に活用するなど、居住する場所にしないことが必要。ウィーンではドナウ川流域の国立公園が氾濫原として位置づけられており、洪水対策の良い例。氾濫原特有の動植物もあり、観光の拠点にもなっている。多面的な国土利用について、各国の成功事例を紹介して日本も何ができるか追記してほしい。
  • P30に「ユーラシアダイナミズム」の記載があるが、書きぶりが足りない。例えば、関東地方であれば、日本海とどうつながっているかが重要。また、関西は空港が多くこれらをどう活用するのかという視点も必要。
  • P30のリニア中央新幹線の書きぶりでは誤解を与える可能性がある。リニア中央新幹線整備の本来の目的は、輸送の観点から東海道新幹線のバックアップ機能、すなわち南海トラフで被害を受ける静岡県を避けることや東海道新幹線の老朽化への対応である。その上で、国土構造の変革をもたらす可能性があるものと理解すべき。
  • P31に「新たな価値を創出」とあるが、楽観的過ぎであり常識の域を出ていない。わからなくてもわからないなりに、民も含め皆で勉強し、力を合わせていくべきというニュアンスが欠けている。もっと挑戦的な視点があっても良いのでは。
  • 「コンパクトシティ」はもともとヨーロッパで提唱された概念であり、環境負荷を軽減することを目的としている。ここでの使用方法はオリジナルの意味とは違って言葉を流用しているので、そもそもの説明が必要。
  • 資料2-1のp.3の地域構造の将来像が小さな拠点、コンパクトシティの形成、地域間連携となっているが順番が違っているのではないか。(右にある図は一番左にある図であるべき)。
  • 連携中枢都市圏の主体について、県だと大きすぎるので、関係する自治体を束ねる広域的な組織や機構のような制度が必要。
  • 実現の手段として、新しい政策手段の方向性を示すことを期待したい。
  • 企業の再編再生や産業サポートのあり方については、ハードだけでは限界があり、ソフト面からのアプローチも必要。民と公が協調したオーダーメード型の産業サポートの場づくりや人材育成等の仕組みをいかに作り込めるかが今後の課題。
  • スーパーメガリージョンについて、時間・距離が短縮されるのは分かるが、具体に国土構造がどう変革するのかを何か書き込んでいかないとしっくりこない。小さな拠点などリアリティのある姿をどう描いていくか。時間軸に沿ってPDCAを実施していく必要がある。
  • P42でエネルギーインフラについて国土と一体のものとして位置づけられていることは評価したい。
  • 多様性、コンパクト化、ネットワーク強靱化という方向性の中で、実際にどうコンパクト化を図っていくか、最終報告に向けて記述していく必要がある。エネルギーの観点から言えば、これまでの土木系のインフラ整備に加え、コンパクトでスマートな分散型システムを考えた場合、熱導管をどうやって引くかが重要。これにより、まちが自然にコンパクト化し、合理的な移動が図れるようになる。これが公共事業改革、さらに、自治体が自ら考え取り組むという自治体改革につながる。
  • 地方の創生については、地域の実情に一番詳しいのは市町村であり、P18の「個性ある地方の創生」には、地域の実情に最も詳しい市町村が主体となって地域の抱える様々な課題についてさまざまな地域資源を活用し、実効性ある施策を実施していくことが必要であるということを加えていただきたい。
  • 単純な食糧自給率だけでなく、国内生産力や嗜好にあった作物生産のため、相対的な国民自給力を考えていく必要がある。
  • ICTの活用については、システムを利用する側の意識改革が必要。論理的でない仕組みを論理的なITで行うのに無理がある。テレワーク等を発展させるために、まずは、日本独特の根回し文化等業務の仕組みを見直す必要がある。
  • 国土は産業の基盤なので、モード間の結節点の整備やミッシングリンクを早期解消し、国際的に遜色ない物流コストの実現を図る必要がある。
  • 水素エネルギーは何からも作れる、という意味で重要。課題としては、どこから、どうやって、いかに安く作るかということがある。
  • 地方活性化に民間企業の力を使ってほしい。例えば、中山間地にて、一定の環境基準等を設けて、それに合致した企業の立地を優遇するなど、そういう視点も今後反映していただきたい。
 
<計画全般>
  • 早い段階で公表することには賛成。
  • 全体の方向感は共有する。
  • 全体的には共有。「イノベーション」も出現が多くて良い。
  • 全体的によくまとまっている。課題のみではなく未来志向なのも良い。
  • 国土計画を作るに当たり、昔の計画の焼き直しではなく新しい視点を持っているということを見せる必要がある。
  • まち・ひと・しごと総合ビジョンが閣議決定され、各自治体においても今年の秋頃にビジョンを策定することになっているが、そこに国土の基本構想をどう反映させるか考えるべき。国土形成計画は夏頃にとりまとめる予定となっているが、中間とりまとめの内容をすぐにでも各自治体に丁寧に説明し方向性を伝える必要がある。
  • 下から目線、自分の事として考えられるかという視点で内容を確認している。
 
 (2)第五次国土利用計画(全国計画)骨子(案)について
骨子案について事務局から説明。その後、質疑応答が行われた。各委員から出た意見は以下のとおり。
 
  • 地籍調査について、国土形成計画と国土利用計画の両方に記載されているが、進捗状況の定量的なフォローアップが重要である。韓国では、数年前に地籍調査はすべて終了したとも聞いており、我が国でももっと力強く推進すべき。
  • また、登記制度が義務化されていないために、所有者が不明となってしまう  土地の問題についても明確に位置づける必要がある。
  • これらの問題は、国土のうち事実上使えない土地が増えつつあるという国土の根本に関わることなので、国土形成計画や国土利用計画でしっかり位置づけ、充実させて欲しい。
以上

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