計画部会

第8回計画部会・議事要旨


1.日時
  平成27年4月21日(金)16:00~18:00
 
2.場所
  コンベンションルームAP東京 八重洲通りF・Gルーム
 
3.出席委員
  奥野信宏部会長、大西隆委員、小田切徳美委員、佐々木眞一委員、
高橋泰委員、橋本哲実委員、望月久美子委員、森民夫委員、鷲谷いづみ委員
 
4.議事
 (1)新たな国土形成計画(全国計画)第2部骨子(案)等について
 (2)第五次国土利用計画(全国計画)素案について
 
主な発言内容(委員発言順)
(1)開会挨拶
 ○審議会冒頭、奥野部会長よりあいさつ
 
(2)議題
 [1]新たな国土形成計画(全国計画)第2部骨子(案)等について  
第2部骨子(案)等について事務局から説明。その後、意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下のとおり。
 
<国土の基本構想>
  • 兵庫県からの「コンパクト+ネットワーク」の意見については、後日、事務局で整理されるとのことだが、コンパクトについては、このような場では認識を共有できていても、一般的には考え方が浸透していない。強制的にコンパクト化することはあり得ないが、将来的な行政サービスの水準を見た上で、どのようにして実現するのか議論を深めていかなければならない。
  • 「コンパクト+ネットワーク」について、居住の集約化という理解をされていることが多い。文化や歴史を守るという観点からも、必要な集落は残さなければならない。その場合、道路や橋などは維持すべきだが、下水道などは維持の負担も重く、どうしていくのか考えなければならない。
  • コンパクトには、ベースを維持するということと、縮退という2つの概念がある。どちらに重点を置くかで考え方が変わるので、整理の必要がある。
  • コンパクトに関連して、地域医療構想については今年から具体的な議論になっている。「コンパクト+ネットワーク」については、具体例にすることでイメージしやすいのではないか。
  • 人口減少について、スターバックス・インデックスの資料にあったように、一定規模以上の圏域人口がないと成り立たない産業がある。必要な人口を確保するため、病院も集約しないといけない。コンパクト化の必要性の説明に当たり、全ての地域に施設を置くことで皆が不幸になるということを、全面的に押し出すべきではないか。
  • コンパクト化は、人口減少下においても活力を維持するためのイノベーションを起こす手段であるという観点も重要。行政サービスの効率化・維持は重要だと思うが、従来の地域が価値の高い産業、新しい機能を生みだし他の地域や海外と交流を繋げるイノベーションも必要である。成熟社会に向けた新しいイノベーションを生み出していく中心となるものがコンパクトであり、「守り」よりも「攻め」という意味を丁寧に説明する必要がある。
  • 「対流」や「ヒト、モノ、カネの動きによるイノベーションの創出」は良い考えだと思う。
  • 長岡市は11市町村が合併したが、合併前の長岡以外の10市町村はお互い他の町には行ったことがなかったが、合併によって隣町と交流が生まれ、文化的価値が生まれた。まず各地方の個性を知ることが重要。価値ある交流によるイノベーションの創出については、きちんと書いてほしい。
  • 対流の話だが、ネット社会の影響が大きい。以前はマスメディアからの情報しかなかったものが、より遠くの観光情報などをネットで容易に入手することができるようになり、それが文化の交流も促進させている。「情報」が大事である。
 
<分野別施策の基本的方向>
  • 第2部第1章第5節にある「美しく暮らしやすい農山漁村」で「美しい」が項目立てされていることは良いが、「美しい」はここだけにだけに限ったことではないので、「美しい」という概念を基軸に据えて第2部に位置付けて考えてほしい。
  • 計画提案で提案数が少なかった、環境保全・景観、共助社会については、地方公共団体がそのテーマについて考えることに慣れていないことが要因と考える。自らビジョンを立てて計画を立てるのは難しいので、国から情報提供やモデルの提示をすることにより、国が支援することが必要である。
  • 共助について、やる人はでてきているが、行政が共助を強調しすぎると、下請けで使うイメージになるので、うまく協調できるよう書かないといけない。Win-Winとなることを目指すべき。
  • 開発済みの工業団地が有効に使われていない。離れた場所にある工業団地でも、ITを使って有効に活用することができる。例えば、ドイツのインダストリー4.0のような取組は、このような有効利用を図るものである。
  • コンパクトシティといっても、一般住民にとっては何が変わるのか分からないと思う。個人の生活レベルに落として考えると、「職住近接」ということが重要なので、そのような視点で書けばよいのではないか。
 
<計画全般>
  • 地価が高い現在は、高齢者が東京にある家を売って地方に移住する良い時期であり、ラストチャンスである。高齢者が地方に移動するという視点も入れないと、東京圏だけでは高齢化問題について対処不能になりかねない。
  • 中部地域における昇龍道プロジェクトはうまくいっていたが、北陸新幹線ができて動線が変わってしまい、長野は取り残された。このように、地方がいくらがんばっても、国レベルで道路・鉄道のインフラが整備されてしまうと、極めて影響が大きいため、国はそういう面も考慮すべき。
 
 
 
[2]第五次国土利用計画(全国計画)素案について
素案について事務局から説明。その後、質疑応答が行われた。各委員から出た意見は以下のとおり。
 
<国土利用の基本方針>
  • 空き地や適切な管理・利用がされていない土地について、所有と管理・利用を分けて有効利用できるようにするべき。管理をすべて公で受けられないだろうから、その土地を利用したい民間を活用して管理をするということも考えられるのではないか。
  • コンパクトシティの形成について、国土利用計画を活用して、サービスを受けられる頻度等をゾーニングで変えていくことにより、サービスの頻度が低い地域から高い地域に誘導していくような取組も必要ではないか。
  • 災害・防災の観点で行う土地利用規制は、既に制度としては整備されているが、対象となる住民や建築物の種類などに応じて、よりきめ細かくゾーニングすべき。
  • 国土利用計画は国土形成計画の開発の側面を面的に抑制するという説明があったが、今回の検討の中で、そのような関係にあるのが、スーパー・メガリージョン構想である。スーパー・メガリージョンの形成と、その周辺における土地利用は一つの塊として捉えるべきである。そうすると、国土利用計画の目標年次である2025年が、国土形成計画における時間軸と合わない可能性も出てくる。場合によっては、国土利用計画も、国土形成計画と同じく2050年を意識しながら向こう10年を考える、という方向性にした方が良いのではないか。
  • 何を契機として、国民一人一人が国土に関心を持つのかということについて、国土形成計画で意識されていないとすると、国土利用計画で踏み込む必要がある。
  • 「美しい」ということばが文中に少ない。美しい国土は、生活環境面のみならず、観光産業の振興にも重要な要素であるため、少なくとも、国土利用の基本方針の3つの中に記載されておくべきである。
  • 人口減少の問題が一層深刻化する中、コストやベネフィットを考えても、多様な機能を生み出す自然生態系の活用は優れた戦略と考えられる。
  • 国土利用計画において、グリーンインフラについて記述していることは評価できる。
 
<地域類型別、主な利用区分別の国土利用の基本方向>
  • 東京の介護が必要な方をどこで面倒見るか。現在は神奈川県、多摩地域、埼玉県にまだ余裕があり、かなりの高齢者が移っている。世田谷区ではこれから10年間で3万8千人分の高齢者関連施設が必要だと試算されており、その一方、空き家が3万軒あり、これを利用できないかと考えている。しかし、法律では施設の構造規制が厳しくて利用が難しい。空き家利用については法的な検討も必要ではないか、という視点を是非入れて欲しい。
  • 「田園回帰」が国土利用計画に書かれていない。「田園回帰」を受け入れる土地利用について記入を検討して欲しい。
 
<必要な措置の概要>
  • 所有者が死亡し、相続人がないと、不動産は直接国庫に入ってしまい、市町村が自分のこととして考えられないので、市町村が関与できるようにすべきである。
  • 具体的なソリューションを出来るだけ計画に記載して欲しい。例えば、地籍調査の実施は、都市部はともかく、地方の中山間地域では元々の境界が明確でないので、簡単にはいかない。
  • 国土利用計画のソリューションについて、施策の方向性を議論しておく必要がある。
  • 空き家、遊休資産等の有効利用のために民間を活用する新しい仕組みが必要。例えば、一元的な情報データベースを整備し、ワンストップで情報を利用できるようにするなどの対応が必要である。
  • 民間ビジネスとして、遊休スペースのマッチングサービスもあるが、公有地の活用について民間のノウハウも活用して資産を集約し、官民一体となって有効活用することも考えられる。
  • 産業構造が今後変わった際、既存の工場用地をそのまま使えるとは限らない。工場等跡地の転換をスムーズにサポートすることが必要。
 
<計画全般>
  • 国土利用計画については、制度を存置している意義、制度の活用を考えないといけない。国土利用計画の枠組みを発展させていかなければならない。
  • 国土形成計画と国土利用計画の役割分担と両者の関係はどうなっているか。素案の中に形成計画との連携という言葉があって「相まって効果を発揮する」とある。「相まって」とはどういうことか。
  • 渡良瀬遊水地のような取組は、先進的な事例であるかもしれないが、昔は、このような土地利用による問題解決がむしろ普通のことであった。このように、「革新」だけでなく、「温故知新」も重要なキーワードとなる。
  • 今回の計画により、土地がどのように変わり、そこにどれだけの人が住み、個人の生活がどのように変わるか、ということが見えにくい。そういう視点を入れることで身近に感じられるのではないか。

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