計画部会

第9回計画部会・議事要旨

国土審議会第9回計画部会 議事要旨
 
1.日時
  平成27年5月28日(木)15:00~17:00
 
2.場所
  コンベンションルームAP東京 八重洲通りAルーム
 
3.出席委員
  奥野信宏部会長、増田部会長代理、岡部明子委員、垣内恵美子委員、
柏木孝夫委員、高橋泰委員、田村圭子委員、橋本哲実委員、藤沢久美委員、望月久美子委員、森民夫委員、野城智也委員、鷲谷いづみ委員
 
4.議事
 (1)新たな国土形成計画(全国計画)最終報告(原案)について
 (2)第五次国土利用計画(全国計画)最終報告(原案)について
 
主な発言内容(委員発言順)
(1)開会挨拶
 ○審議会冒頭、奥野部会長よりあいさつ
(2)議題
  新たな国土形成計画(全国計画)最終報告(原案)及び第五次国土利用計画(全国計画)最終報告(原案)について事務局から説明。その後、意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下のとおり。
 
<国土の基本構想>
・「対流」という言葉はよいと思う。対流するもので最も重要なのはヒトやカネではなく、情報である「情報が動く」ことが重要であることをしっかり書いてほしい。
・「ローカルに輝きグローバルに羽ばたく国土」とあり、このフレーズもぜひ使っていってほしいが、地方の中小企業の国際化、海外進出が進んでいる。また、地方の製品がネット社会を通じて世界中に広がっている。地方はローカルに、大都市はグローバルに、ではなく、地方の企業が海外に進出している事例を入れつつ「ローカルこそグローバル」としていただけるとよい。
・「ローカルこそグローバル」、「対流」という言葉は、今の時代の課題を表すと同時に将来への姿勢を表すよい言葉だと思う。
・都市と地方とが連携することの必要性について記述していただきたい。(川崎市と宮崎県との包括連携協定締結など)
・第1部P24の「魅力あるしごとの創出」について、この中で最初に取り組まなければならないのは、p.26にある地域消費型産業の付加価値生産性の向上である。これまでは、地方においては労働環境が悪くても雇用を維持することが重要であったが、経済環境が変わってきており、若者が地方の仕事に魅力を感じるような雇用が必要である。生産性を上げるというハードルを超えられない地域は、新陳代謝を思い切ってやる必要があると思う。
・東京一極集中の是正を進める必要があるが、東京の急速な高齢者人口の増加によって、医療・介護人材を地方から集めることになり、一極集中を逆に進めることになってしまうことが危惧される。
・総理の指示である優先度と時間軸の明確化については、特に時間軸の考え方についてもう少し書き込めないか。
 
<分野別施策の基本的方向>
・環境と防災を裏表で考えていくこと、災害発生時の復興を念頭に置いて取り組むことも書いてほしい。
・災害を列挙している中に「火山」が入っているものと入っていないものがある。火山の噴火に伴う土石流被害などもあるので、火山対策も明記すべき。
・イノベーションについての記載は概ねこれでよい。
・イノベーション拠点について、各省の施策が別々の地域で実施されることのないように、地域的に重なっていること、空間的に集約していくことを明確に書いてほしい。
・集積させるものは、人材、知識、情報であり、それぞれの地域でユニークな集積を作る必要がある。何を集積させるのかについて書いて欲しい。
・第2部P21からの記述について、大企業を意識したものになっている。日本のイノベーションは大企業中心であり、中小企業の割合が少ないという特徴があるが、地域においては中小企業のイノベーションが重要で、特にスタートアップ(起業)できる環境が必要である。
・第2部について、コンパクトを機能の集約化の面を強く意識して記載されているが、新しい機能を創造していく、地域のイノベーションを新しい手法で仕掛けていきパイを拡げていくといった意味合いも強調すべき。例えば、コントパクトシティの形成について、都市機能の集約化という視点が強く、民間のノウハウをうまく活用しながら地域の新しい暮らしを生み出すといったニュアンスが弱いと感じる。
・一方で、連携中枢都市圏等における活力ある経済・生活圏の形成については、イノベーションを進めるため、地域間の連携の取組を自治体だけでなく幅広い人々の参画によって推進するということ書いており、評価できる。連携と競争で新しい地域整備をしっかり打ち出しているのはよい。このアプローチにおいて、行政単位を超えて経済圏として具体の施策を国関係者や広域連携等において、柔軟でダイナミックなものを検討していくべき。例えば瀬戸内ブランドの推進について、7県の広域連携で、政策立案のプラットホームをつくる。 イギリスのREPやスイスのDMOのような、地域創生の新しいアプローチのニュアンスを入れてほしい。
・公共意識のある人材の育成について、第2部第9章で地域を支える担い手の育成が書かれているが、地方大学での育成だけで十分か。新しい人材育成のノウハウの共有化を図ることが必要。人材の面でも新しいアプローチを問題提起することが重要と思う。例えば、TV会議における地域未来大学校といった取組をはじめた。
・どうやってコンパクト+ネットワークを実現していくかのプロセスが重要であり、富山市のような具体例を示すとわかりやすくなると思う。
・例えば、エネルギーの分野での具体なアイディアとして、ゴミ焼却炉から熱導管を引き、熱導管の近辺に公共施設等を整備すれば、住宅もその周辺に誘導できる。コンパクト&ネットワーク形成のプロセスをこのような具体的なイメージとして提示されればと思う。
・第2部について、非常に目配りが効いたよくまとまった内容になっている。
・第2部99ページの景観形成の記述について、国民の意識向上、多様な主体の参画を図る、情報提供、専門家の育成など、様々な施策について触れられている。また、次のページに、歴史的な、あるいは自然的な文化財などについても広く当てはまるとこにも書かれている。この内容はとても重要であり、少し重複することとになるが、40ページの(1)にも人材育成や国民意識の向上等についても記述すると、保存、継承、創造、活用等の進め方のイメージが湧くのではないか。特に、担い手の育成が非常に重要なので、是非検討いただきたい。
・41ページの和食文化について、「伝統的な食文化」と「和食文化」が混在している。最も広い概念として「食文化」があり、その中にユネスコで認められた和食文化もあり、伝統的な食文化もあり、新しいイノベーティブな和食文化もある、という形で書いていただけるといいかなと思う。
・伝統的な食文化以外でも日本の食文化、例えば日本酒だけでなく、ビールやウイスキーが、日本の感性を加味したということで国際的な評価が高い。
・和食文化の品質保証について、品質が保証されることによってマーケットにつながるということが国際的にも認められており、原産地証明など様々な制度が各国で工夫されている。日本でも地域表示の仕組みがあるが、さらに強化していく必要があると考えているので、もう少し踏み込んで書いていただきたい。
・食文化、文化的景観、農業生産は密接に関わっている。地域内で継続的に消費することによって生産が継続し、それによって景観が守られ、人が住み続けられるという、地域内で完結するような小さな経済、小さなマーケットのようなものの可能性も少し入れていただけるとよいのではないか。
・40、41ページに目標値が書いてあるが、文化は数字になじまない部分や数字だけで評価できない部分が大きく、目標値が書いていることに少々違和感がある。目標値を記載してもよいが、記載するのであれば、その目標値の背景となる考え方や根拠等を記述すべきである。
・第2部第9章葉重要な部分。この多様な主体による共助社会づくりがうまくいけばコンパクト+ネットワークの社会が実現する可能性が高まるのではないかと思う。
・第2部第9章第2節(3)の一番最後に条件不利地域について触れられているが、条件不利地域には様々な支援が必要だが、がんばっているところもあり、そのような地域にこそとんがったことをやっているところもある。そうした前向きな取組を盛り込めば、より共感を持って読んでいただけるのではないかと思う。
・多様な主体の参加による地域づくりというのは、ナショナルレジリエンスという意味でも、いろいろな観点から検討されていて、いろいろな提案が行われている。共助社会づくり懇談会でもNPO等をどう育てるか、ソーシャルビジネスをどう育て、人をどう育てていくかずいぶん検討されている。
・多様な主体、新しい公共、新たな公、共助社会などの言葉が場面場面で使い分けられている。
・ICTの活用、データの活用の両方にかかわるが、IoTといわれているように、あらゆるものにセンサをつける必要があり、国土交通省が推進してもよいのではないかと思っている。IoTという言葉も記述されているが、環境整備やデータの整備にとどまらず、積極的に「設置の促進」についても入れていただきたい。
・国際会議(MICE)の誘致について、企業だけでは限界があり、政府との連携が重要である。しかし、民間企業と共同して実施場合は税金を使えないなど阻害要因が多くある。企業が主体のMICEについても、政府が資金面も含めて連携、支援することが必要であるということについても書いていただけるとありがたい。
 
<計画全般>
・防災について総合的に書いていただいていると思う。
・広域という言葉は、一般的には、東日本大震災のような被災地の範囲が広いことをイメージすると思うが、水害などを考えると、被災のポイントが多いことや、連動して広域になることもあるので、整理したほうがよい。
・細部にわたってもれなく丁寧に書かれている反面、全体がぼやけてくる。全体を俯瞰したときに、国民目線でわかりやすく、納得できる記述の工夫が必要である。
・例えば第2部について、章立てがストーリーを持っていることをもっとわかるように記述すべき。
(例えば、1章 構造的な話、2章 血液(経済活動)、3章 経済以外の暮らし文化・風土の継承、4章 ネットワークインフラは血管、と見立てるなど。)
・章の冒頭にある、リード文において、何のための施策なのかを端的に示していくことで、その後の節が生きてくる。
・各章のリード文において、「このため~」という言葉が、何のためかわかりにくく、目的と方向性が混在しているので、何のために施策を行うのかなど、本質的なところを正確に記載すべき。国民目線でわかりやすく、合理的な説明がその中で出来るような構成にできないか。
・データベースをつくって、地方のどこが住みやすいのか、東京都民が移住する際に希望を実現するにはどこがいいのかをデータで客観的に示すことが必要だと思う。希望する場所を選ぶことができないと、対流が生まれないのではないか。
・日本創成会議では、全国の二次医療圏についてデータ分析により客観的に比較する作業をしている。すべての地域で整備するのではなく、地方に住みやすさの競争をさせ、集中投資する必要があるのではないか。
・第3部のP2の「地理空間情報の利用推進」について、これは大変ポテンシャルがある。地域医療福祉の視点、買い物、教育等の生活サービス機能の視点等様々な分析に活用でき、生活者の視点での活用方策を提示することが「カギ」になるのではないか。
・第3部の地理空間情報について、めざましくオープンデータ化が進んでいるが、人口減少下では過去の地理空間情報が重要であることから、過去の情報の重要性を考えていただきたい。
・一部のがんばった地域では人口が維持・増加するが、大多数の地域では人口が減少する。人口が減少する大多数の地域においても、ソーシャルイノベーションなど人口減少地域のイノベーションがあること、人口が半分になっても豊かな生活ができるという記述できないか。
・全体を通して記述すべきことは書かれており、評価している。
・第1部P47の脚注で2次エネルギーに都市ガスが含まれているが、都市ガスは1次エネルギーである。水素等に修正してはどうか。
・多くの方は概要版をまず見るので、概要版をわかりやすく作成することが重要であるので、工夫してほしい。
・付加価値の生産性を上げていくことと、イノベーションについて、最先端技術ということだけでなく、地域、地域でがんばって付加価値生産性を上げる変革を進めていくことにより、大きな変革を生んでいるというイメージを、絵におこす段階で考えていただけるといいと思う。
 
<国土利用計画>
・国土利用計画の「おわりに」に持続可能性を前面に出して書かれているのは正しいが、国連防災会議の決議ではサスティナブルデベロップメントをどう守っていくかに重きが置かれている。国交省が、国連防災会議でも先頭に立って国土強靱化に取り組んでいるので、 災害によってサスティナブルデベロップメントが阻害されないように、しなやかな社会の実現について記載できないか。
・人口減少により人口密度が低い地域の有効活用が重要である。人口が減少することで、農地が集約され大規模農業が可能となるなど、人口密度が低いことで魅力的な土地となり、価値が生まれることも考えられる。人口減少に見合った土地利用の方法や住まい方があるのではないか。
・国土利用計画の「おわりに」の部分に「持続可能性」の視点が入っていて、質的な向上が入っているのがよい。国土利用計画の数値目標の中には、必要性からの積極的な目標と、トレンドによる消極的な目標の両方が入っているが、同一の地目でも土地利用によって質が異なっており、その点に目を向けるべき。例えば、森林では、そのタイプや現状によってそこから得られる利益だけでなく、維持コスト等が異なる(まわりに良好な自然が残されている場合、メンテナンスフリーな森林になり国土保全にも資するが、木材生産のための森林は、相当な維持コストをかけている)。
・農地は労力を費やして維持されるものであり、人口が減少すれば、積極的に維持される農地は減少し、その一方で荒廃農地が増えざるを得ない。荒廃農地が放置されると森林になったり原野になったり、その質も一様ではなく、多様な可能性をもっている。この分野の専門家があまりいないので、知識が圧倒的に不足しており、自然再生自体がマイナーな取組となっているが、それは生物多様性と生態系サービスによって土地の価値を高める行為であり、自然再生の取組みで得られた成果を評価し、さまざまな土地でも活用できる一般論に近づけていくことが、これからの土地利用を考える上で重要ではないかと思う。
・国土利用計画の「おわりに」についてであるが、これが、前回議論にあった計画の存在意義であると思う。これは「はじめに」として一番前に記述する方がよいのではないか。
 

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