計画推進部会

計画推進部会(第1回)・議事要旨

1.日時
  平成28年4月19日(火)10:00~12:00
 
2.場所
  中央合同庁舎2号館地下2階講堂
 
3.出席委員
  奥野信宏部会長、家田仁委員、小田切徳美委員、垣内恵美子委員、柏木孝夫委員、坂田一郎委員、坂村健委員、地下誠二委員、中出文平委員、藤沢久美委員、宮本旬子委員
 
4.議事
 (1)報告事項について
 (2)計画推進部会の進め方について
 (3)専門委員会の設置について
 
主な発言内容(委員発言順)
(1)開会挨拶
 ・審議会冒頭、国土政策局長よりあいさつ
(2)委員紹介
(3)部会長互選
 ・奥野委員が部会長に選出された
(4)部会長挨拶及び部会長代理指名
 ・増田委員が部会長代理に指名された
(5)議題                        
OECDによる日本の国土・地域政策のレビュー、新たな国土形成計画(広域地方計画)、所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策最終とりまとめ概要について、事務局から報告。続いて、計画推進部会の進め方、専門委員会の設置について、事務局より説明。その後、意見交換が行われた。各委員から出た意見は以下の通り。
 
<OECDによる日本の国土・地域政策のレビューについて>
・OECDレビューについては、日本の地域の実態についてかなりよく見ていただいたと思う。コンパクト+ネットワークは効率だけではないことをくみ取っていただき、また、小さな拠点についてもきちんと把握していただいた。一方で、国土形成計画のメインのキーワードである対流促進型国土について言及されていないように思うが、地域資源を活かした個性あふれる展開をするという点においては、とりわけヨーロッパ諸国は日本の先輩であるので、逆都市化の問題も含めて、レビューの作成過程あるいはシンポジウム等において反応があったのであれば教えていただきたい。
・先般のシンポジウムの基調講演においては、グリア総長は対流について一番最初に述べておられたと思う。
・3月にパリで文化に関する会議に出席したが、文化の専門家に日本の状況について聞かれ、フランスからみると先進経済国で非常に高齢化が進んで先を行っている日本がどのような対応を行っているのか、都市計画の専門家でない方からも大変興味を持たれていることを実感した。OECDのレビューも素晴らしいものであり、随時日本の状況を国際的にも発信していくことが重要。ホームページにも英語のサマリーなどを掲載しても良いのではないかと思う。
・OECDのレビューについて政策的に印象に残った三点について、[1]コンパクト+ネットワーク、[2]大都市圏・スーパー・メガリージョンの役割(ワークライフバランス、女性の子育て環境の整備が生産性を上げることが挙げられている)、[3]「小さな拠点」の重要性(OECD諸国にも同様なことをやっている国はあるが、日本はかなり広範に行われている)
 
<広域地方計画について>
・三大都市圏と地方圏では、そもそも適用される法律が違うものも結構ある。両者は少し毛色の違うものとして広域地方計画の推進を考える必要がある。東北では、10年ほど前から東北発コンパクトシティ研究会をやっているが、コンパクトシティの形成についても大都市圏と地方圏ではやり方が異なるのではないか。
・人口減少も地方圏では2000年頃からはじまっており、地方圏は15年ほど人口減少への対応について知恵を出している。今回の広域地方計画で示されている先進事例はその結晶である。
 
<所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策について>
・所有者の所在の把握が難しい土地への対応について、今回のとりまとめは制度の上手な運用にとどまっているので、次は制度的改革。国土交通省所管だけではないと思うが、それも継続して取り組んでいただき、時々報告して欲しい。
・世界をみると、都市構成でも駄目になった所を再生するには国土の再構成が必要。その際、集約したり廃止したりする必要があるが、所有者が分からないのは大きな問題で、この問題には早く取り組む必要がある。スピード感が重要。
・休眠預金が今国会に議員立法であがっているが、こちらの問題についても、所在が不明のままである土地を最終的にどう活用するかといった、ゴールから検討してみてはどうか。
・希少な植物の保護等をするときに自治体が条例を定める場合(保護区等を決める)、所有者の所在がわからないと進まないということがある。国土の環境保全にも間接的に寄与する問題である。
 
<国土形成計画の推進について>
・主たる専門委員会の目的は、計画に基づいて具体的なアクションがどのようになされるか、そしてそのアウトカムをどう出すかであり、それらに絞った調査をすべき。特にアクションは、具体的にどのような政策や制度が新しく作られつつあるのか、事業やプロジェクトが具体的にどのように進みつつあるのか、どのような啓蒙・啓発活動がなされるのか、濃淡はあるだろうがその辺の把握に努めていただきたい。
・遠隔離島や海洋上の国土計画的な要素、シーレーン、領土領海の問題もあるが、現在の全国計画、広域地方計画に書いた程度であるので、継続勉強課題として事務局で取り上げていただき、適宜報告してほしい。
・前回は「政策」部会であったが、今回は「計画推進」部会ということで、計画を一歩進めるという点が明確となったのではないか。計画の推進と同時に新しい芽を作っていくことが重要ではないか。
・4つの委員会のうち「稼げる」「住み続けられる」という名前は良いが、4つめの「国土管理」だけ従来のようなネーミングになっている。「適切に管理できる国土」などにするのはどうか。
・「稼げる国土」「住み続けられる国土」は重なる部分が多いかと思うが、どのように連携するのか教えていただきたい。
・国土管理専門委員会の中に、「美しい国土を守り次世代に継承するための事項」と書いてあるのに感銘を受けた。できれば国土管理の前に「美しい」とあればもっと良かった。
・資料4のp.1の「計画の効果的かつ着実な推進」の2番目のマル(各種計画の連携)は重要で、国土強靱化地域計画など他の計画と連携は密にしないとシナジー効果は生まれない。資料には連携について書いてあるが、それをどのような形でやっていくのかが明確になっていない気がする。また、まち・ひと・しごとの計画やエネルギー基本計画など、基本計画間の全体最適化のプロセスを明確にすべき。
・国交省の計画は公共事業と表裏一体で、公的資金によるインフラ整備を行うが、それだけだと民間資金の投資を喚起することがなかなかできない。例えば、公共事業を行う際、2/3は地銀が拠出し、所有権を与えるなどすれば、公の資金が入ることで国や自治体の施策が付いてくるので、地銀も投資しやすくなることも考えられる。公共事業の改革をどう考えるか、民間資金をどう活用し、地域の中でどう循環させていくか、地銀改革につながるので、その点も課題である。
・資金循環については、以前から地域の中での資金循環を、小さな資金循環と言っており、国としても関心を持っているところかと思う。
・専門委員会の設置の中で「稼げる国土」という言葉が出てくるが、象徴的で非常に際立っている部分かと思う。歴史的に俯瞰すると、70年代までは国土政策が経済政策と太いリンクがあったが、80年代過ぎるとインフラの充足もあって、国土政策と経済政策とのリンクが相対的に薄くなっていった。一方で、新しい時代の国土と経済について、我々はやや準備不足だったかと思う。OECDは1997年にナレッジエコノミーというレポートを出し、今後知識経済化すると言っていたが、知の濃度とか、それをベースとした多様な人材の交わりの重要性がますます高まることを予見していた。知識経済学の街づくりでいうと、役割の中心は市や町などの小さな単位にうつってくる。そういったことも踏まえ、今回は、計画の推進や課題などが設定されているのではないかと解釈している。
・市町村やコミュニティが今後の推進の母体になるとすると、OECDのレポートは現場に対するメッセージが不足している。そのため、専門委員会による調査の意義としては、もう一歩踏み込み、調査の中からガイドを出していくことが重要。我々の調査研究の中でもう一段小さい活動主体に染み込むようなメッセージを出していければと思う。
・コンパクト+ネットワークについて、具体的にどのようにコンパクトにするのかという原案が欲しくなってくる。どのようにコンパクトにしていくか、イメージしておかないと、どのように政策誘導するかも分からない。政策にはインセンティブとペナルティを考えなければならない。コンパクトの原案を作ると揉めるかもしれないが、それを恐れるのではなく、議論のためにも具体的にどうコンパクトにしていくのかのイメージを出す必要がある。
・非常事態が起こってしまったらどうするかということが国土形成計画に書かれていない。救援物資が現場に行き渡らないという問題も今起こっている。非常時にどうすべきかも計画において考えるべき。
・今の世の中の経済は、バーチャル(ネット)の世界とリアルの世界があるが、ネットの中の世界の経済の果たす役割が非常に大きい。そういう意味でいうと、経済空間というのが、リアル空間とバーチャル空間の両方に重なっていることを意識した方が良い。シェアリングエコノミーといった最新のネット社会に対して、国土形成計画も対応していく必要がある。
・コンパクト化については地方圏によってはかなり反発が強いところもあって、理解を得ながら進めていく必要がある。他方で、北海道総合開発計画の議論の際には、北海道でコンパクト化はできないと言われたが、地域によっては行政と一緒に小さな拠点を進めているところもあり、そういった事例を見ていく必要がある。
・地方の産業を元気づける視点として、一つは交流人口を増やすことであり、コンパクトシティも交流人口を増やす拠点として結果的にコンパクト化することを目指せないか。二点目は古民家などあるものを活かすこと。三点目は広い意味での官民連携が地方では不可欠であること。
・計画をモニタリングするに先立ち、計画の普及が進んでいないと感じる。広報のしくみを考える必要がある。地方版総合戦略の策定者が引用できるようにするため、まず読んでもらう工夫を。
・国土の維持管理をどうするか。活力を生むための開発が国土の維持管理にとってマイナスにならないようにしなければならない。たとえば、リニア中央新幹線の新駅周辺の開発についてもちゃんとした計画が必要であり、国土形成計画のような最上位の計画が、開発と維持管理、自然的土地利用との折り合いをしっかりみていくようにしてほしい。
・特に広域の計画では流域圏で考えたとき、上流部が荒れると下流部に被害が及ぶので、土地利用基本計画の5地域を超え、縦割りではなく各省庁が連携して、広域圏を考える必要がある。特に経済的な部分と自然・景観・防災については他省庁に関する部分もあるので、連携して具体施策を投げかけてほしい。
・計画の進め方について、遅れている部分だけでなく、進んでいることをさらに加速させるためにどうするかという点の議論も重要。
・コンパクト+ネットワークの議論について、地方では過疎でもそこに住み続けたいといった心の問題があり、一人ひとりの国民が長い時間軸、広い視野の中で折り合いをつけていかなければならない部分もたくさんある。国民が自分のこととして考えられるように周知すべき。
・稼げる国土に関係するが、国際競争力が重要なキーワードになると思うが、世界の中で生きていくという点が弱い気がする。
 
(以上)

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