米国マスタープラン策定における住民参加制度
〜Comprehensive Plan 策定プロセスの紹介〜
◆要旨
1. 背景
近年わが国では、まちづくり・地域づくりに関する計画策定や事業実施にあたって、住民参加手続きを積極的にプロセスに組み込む動きが多くなってきている。しかし、こうした取り組みは依然発展の途上であり、今後住民参加プロセスのあり方やその是非について積極的な議論が展開され、また具体的な取り組みを通じてノウハウの蓄積が図られていくものと考えられる。
そこで、こうした議論に資する資料を提供することを目的として、住民参加プロセスの導入を非常に広範囲に導入したオレゴン州及びポートランド市における制度及びその成立の過程を紹介するとともに、米国の代表的な都市について概観したものである。
2. オレゴン州及びポートランド市における住民参加制度
オレゴン州のマスタープラン制度は、自治体単位で策定される基本的な土地利用計画である「コンプリヘンシブ・プラン」(Comprehensive
Plan)の策定を自治体に義務づけたオレゴン州法「上院法100」(Senate Bill 100-Oregon's Statuteson Land Use and Planning)、「コンプリヘンシブ・プラン」の策定に当たって住民参加制度の導入及び住民への情報のフィードバックメカニズムの採用を義務づけた「ゴール」(Oregon's
Statewide Planning Guide)に、その特徴を見出すことができる。
一方、ポートランド市では、住民参加プロセスを積極的に導入し「コンプリヘンシブ・プラン」の策定を進めたが、この策定プロセスの決定にも住民の意見を反映させる手法を用いており、全米の中でも非常にユニークな制度を採用している。こうしたプロセスを実現するために、計画の基本的な目標や計画基準が示されている「ゴール&ポリシー」(Comprehensive
Plan Goals and Policies)において住民参加手続きの採用を定めるとともに、市当局と住民との間に立ち住民参加による計画策定を具体的に支える組織として「ネイバーフッド・アソシエーション」(Neighborhood
Association)を設けるなど、さまざまな制度的な整備が行われている。
3. マスタープラン策定等に関する代表的な住民参加事例
(1)サンフランシスコ市(カリフォルニア州)
・マスタープラン
「マスタープラン」(Master Plan)を策定することが州法により定められているが、同市では「サンフランシスコ市憲章」(Charter of the City and Country of San Francisco)において「マスタープラン」の策定を市都市計画委員会に義務づけている。
・マスタープラン採択・改正プロセスにおける住民参加
「マスタープラン」の採択及び改正にあたっては、最低1回は公聴会を開催することが義務づけられている。
(2)シアトル市(ワシントン州)
・コンプリヘンシブプラン
2014年までの20年間を計画期間とする「持続的なシアトルに向けて-シアトル成長管理計画」(Toward a Sustainable Seattle:
Seattle's Plan for Managing Growth)が、総合的な都市の基本計画として1994年に策定されている。
・コンプリヘンシブプラン策定プロセスにおける住民参加
将来の市の発展方向に関する公聴会を1990年から開催し、住民の意見聴取を進めている。
(3)ミルウォーキー市(ウィスコンシン州)
・コンプリヘンシブプラン
「今後20年の間、地域的努力を通じて、できる限りミルウォーキー市を改善する」ことを目標とした「コンプリヘンシブ・プラン」を策定している。
・コンプリヘンシブプラン策定プロセスにおける住民参加
市都市計画委員会に対しては公聴会の開催を、市議会(議会公共改善委員会(Public Improvement Committee))に対しては住民集会の開催を義務づけている。
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