建設政策における政策評価に関する研究 −政策評価用語集−
◆要旨
2001年1月1日からの中央省庁等改革に伴い政策評価システムが導入される。本研究は、これに備え政策評価の理論、その学問的背景、各国の政策評価制度
事例などを調査・分析し、国土交通省として導入すべき政策評価システムを検討するための基礎資料を得ることを目的としたものである。
1. 政策評価とは
政策評価の概念は広いが、本研究では主にNPM(後述)との関係が深い行政マネジメントにおける業績測定
(performancemeasurement)及びプログラム評価(program
evaluation)を取り上げた。業績測定とは、行政執行に係る事前の目標の設定及び目標に照らした業績のレビューの両方をいい、業績は経済性、効率
性、有効性、行政サービスの質及び財政上の成果の観点から
outcomeやoutputの指標などにより測定される。プログラム評価とは、単純な業績測定を超えて行政プログラムと成果との因果関係分析など事後的
に行政プログラムを分析し、その有効性を判定するものである。業績測定及びプログラム評価の結果は、企画・立案部門にフィードバックされ、将来の企画・立
案に活かされる。
現代の先進国では、国民の行政活動に対する期待が高度化、多様化、複雑化している一方、財政は厳しい状況となっている。このため、行政はより少ない予算で
より国民が満足できる活動を行っていかなければならない。政策評価は、こうした現代の状況において、成果を重視した質の高い行政活動を通じて国民の満足度
を高めるとともに国民に対するアカウンタビリティを果たすことのできるマネジメント・システムを行政組織に構築するための手法として期待されている。
2. 政策評価とNewPublicManagement
政策評価の概念の背後には政策評価をそのシステムの一部とする大きなマネジメントの理論[NewPublicManagement(=NPM)理論]が存
在する。政策評価が担っている期待が実現されるためには、政策評価を単独の行政活動として捉えるのではなく、NPM理論を土台として働くマネジメント・シ
ステムのためのツールの一つとして捉えることが重要である。政策評価は、NPM型の行政改革において国民と政府、政府と議会、政府機関相互、政府機関と民
間企業その他関係者の間の共通言語を提供する役割を果たしている。
本研究では、NPMの概念を中心として政策評価の概念を捉えようとするアプローチを展開した。
3. NPMの概念整理
NPMとは、主にアングロ・サクソン諸国の行政実務家が企業経営の新しい手法を取り入れて開発し実行した手法を、多数の行政学者等が理論化したパラダイム
である。学問的には、プリンシパル・エージェント理論、取引費用理論などに代表される新制度派経済学を背景とするといわれ、これは公的部門での権限委譲や
業績測定の導入の方向を示している。しかし、実際の業績測定は英米においても定性的(アウトカム指標)なものが多いことから、経営学の影響を多分に受けて
いると考えられる。NPMというパラダイムは一つの理論として明確に確立しているものではなく、緩やかに収斂してきたものである。
4. 本研究の内容
本研究では、我々の文献研究、海外調査等の成果を基に、政策評価に関連する概念を解説したglossaryである政策評価用語集を作成した。用語は、
NPM、政策科学、行政学、経営学、経済学、諸外国の行政システム、政策評価の事例など政策評価に関係する幅広い分野から選定した。
政策評価をNPMという枠組みの中で説明するためには、必然的に関連する多くの概念を説明する必要があるが、これまでの我が国のNPM研究は量的に不足し
ており、解説も不十分である。また、NPMについて無理に全体の首尾をつけるよりも、関連する概念を単独で説明した方が、読者はわからないところを自らの
必要に応じて読むことができ、読みやすさ、実用性、調査研究の趣旨への理解の容易さの観点からも有効であろうと考えられるので、通常の報告書に代えて用語
集を作成した。
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