国土交通省 国土交通研究政策所 Policy Research Institute for Land, Infrastructure, Transport and Tourism

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 国土交通政策研究所は、国土交通省におけるシンクタンクとして、内部部局による企画・立案機能を支援するとともに、 政策研究の場の提供や研究成果の発信を通じ、国土交通分野における政策形成に幅広く寄与することを使命としています。
  

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 ● 報告書概要


 今後の社会資本整備についての基礎的研究

◆要旨

長引く不況の中、14年度末の国と地方を合わせ た長期債務残高見込みは693兆円とGDPの1.4倍に達し、我が国の財政状況は大変厳しいもの となっている。さらに、今後は少子高齢化等の影響により社会保障関係費の増大は避けられず、社会資本整備に充てられる財源の確保が厳しくなっていくといわ ざるを得ない。
このような財政状況のなか、戦後の高度成長期より急速に整備されてきた社会資本が本格的な更新の時期を迎えることから、これらに対する維持更新費用が増大 することが予測されている。もし、新規整備のみに重点をおいた投資を行っていくとすれば、必要な維持更新費を確保できず、将来、既存の社会資本ストックを 適正に維持することができなくなってしまう可能性がある。今後も安定した社会資本の維持と新規整備を行っていくためには、新規投資と維持更新費のバランス を考慮した社会資本整備に対する投資計画を策定することが必要であり、そのベースとなる将来の維持更新需要額を把握しておくことが重要である。
現在、いくつかの機関において社会資本の維持更新費の将来推計が実施されているものの、何れもマクロな推計であり、信頼のおける値が得られているとは言い難い。
そこで本研究では、より実態に近い将来の維持更新需要額を把握するために、ミクロな観点からの将来推計を実施するための課題等について考察した。なお今回は、調査対象を道路に絞って考察している。

と ころで、諸外国、特に社会資本整備においてわが国に先行した西欧先進国において社会資本の維持管理はどのように取り組まれているのであろうか。今 回、特にイギリス(イングランド)及びフランスについて、社会資本の中でも道路に対象を絞って現地調査を行い、その維持管理戦略を調査した。日本における 道路の維持管理の実態について簡略に紹介した後、英仏の現状について報告する。

国民の公共事 業のあり方への批判、国民の価値観の多様化、環境意識の高まり等の中で、社会資本整備における合意形成が難しくなりつつある。民主主義 国家である以上、国民の支持なくして事業は成立しない。そこで、意見聴取や協議過程の透明性を確保しつつ事業を進めるためにパブリック・インボルブメント の手法の導入や様々な住民とのコミュニケーション手法が試みられているところである。
その中で直接的に住民の意思決定を政策判断に反映させる手法として住民投票がある。日本においても最近条例に基づいた住民投票がしばしば実施されるように なったことから、近年注目を集めているところである。そこで、諸外国の住民投票制度の例なども参考に、特に社会資本整備との関わりに着目してその論点整理 を行い、社会資本整備との関連を再考することとした。

国 と国民の関わりを考える上で特にその役割分担をどのように考えるか、は大きな問題である。官民の役割分担のあり方、NPOの行政への関わりのあり 方はもとより、地方分権化の流れも同じ文脈上にある。そこで、そもそも中央政府(国)のあり方を経済学的に眺めた場合にどのように捉えることができるの か。意思決定の合理性の点から多数の利害関係者が存在する世界における調停者の必要性を再認識し、調停者としての中央政府の役割の重要性の指摘を行うこと とした。この過程を経ることによりNPOの活用など適切な官民の役割分担により官民協力をポジティブに捉えて住民と政府が行動できることを明らかにする。

本 研究を進めるに当たっては、平成13年11〜12月に「社会資本整備における住民投票に関する勉強会」を開催し、稲葉馨東北大学大学院法学研究科 教授、富野暉一郎龍谷大学法学部教授、佐伯啓思京都大学大学院人間・環境科学研究科教授、村上弘立命館大学法学部教授及び村上順神奈川大学法学部教授より ご講演をいただいた。本研究を行うに当たって大変有益な示唆となった。
また、英仏の社会資本整備(道路)の維持管理調査に当たっては、フランスにおいては、会計検査院評議員長のGerardGanser氏、設備省道路局の国 際担当審議官 PhilippeLEGER氏、国際業務室DominiqueBurgunder氏及び道路維持管理部課長AlainLASLAZ氏、ヴァル・ド・マルヌ 県設備局プロジェクト担当次長のTOURNOUR氏、イル・ド・フランス州設備局インフラ課次長のEmmanuel deLanversin氏並びにクレテイユ市都市計画部長のPierreCONROUX氏に、イギリスにおいては、交通・地方政府・地域省の道路政策部長 のIan Holmes氏、道路庁の会計担当JohnKenny氏、JimHughes氏及び日常維持管理担当PindiPanesar氏並びにダーラム県庁の道路 管理部長Roger Elphick氏、GeoffRace氏及びBrianKitching氏にそれぞれインタビューを快諾いただき、大変貴重な情報をいただいた。
これらのお世話になった方々に心より感謝申し上げたい。


◆発行

国土交通政策研究第11号/平成14年10月

◆在庫

<在庫有>(重量:450g 厚さ:9mm) 報告書を郵送希望の方はこちら

◆詳細

詳細(PDF:3.1MB)

◆事後評価

内部評価シート(PDF:9KB)
有識者評価シート(PDF:5KB)