第1回土地収用制度調査研究会 議事概要



日時: 平成12年5月24日(水)14:00〜16:00
場所: 建設省3階 第一会議室
議事: (1) 土地収用法の運用状況等について
    (2) 現行制度の問題点について
出席者: 法学界、環境、マスコミ等の分野の有識者17名
議事要旨:
  フリートーキングにおける意見の概要は以下のとおり
  公共事業に関する政策評価の問題がクローズアップされてきており、今後は更に進んで事前評価や、第三者による政策評価が問題となってくるであろう。こういった公共事業を取り巻く環境の変化を前提にすると、@収用適格事業の範囲について主体と対象の両面からの再検討、A早い事業計画の段階で公共性を広く公開すること、B収用手続をより一層簡素化・迅速化すること、C総代の互選を命ずることができるような制度を検討すること、D生活再建措置や事業損失についても補償することを検討することが必要がある。
  収用の損失補償基準はやや抽象的な法律の規定だけで、具体的な損失補償基準はなく、任意買収のための基準が具体的な損失補償基準として機能している。収用は、相対立する権利者間の公正中立な調整を行う準司法的な手続であるので、具体的な損失補償の基準を法令化する必要がある。
  収用手続は慎重であるべきであって、情報公開を拒むとか、環境アセスメントが適切になされていないとかいった、いわば行政の怠慢を収用手続が後押しするようなことは適切でない。むしろ、収用手続はそのようなことがないよう慎重にチェックする制度とすることが必要である。
  一般法で定めることかもしれないが、収用手続に入る以前の事業計画の段階で住民参加や情報公開をすることが必要である。さしあたり土地収用法に限っていえば、事業認定申請以前の事業の企画の段階での十分な参加、合意形成、情報公開を申請の条件としてはどうか。
  公共事業計画法制に不備があって土地収用制度に負担をかけているという面もある。そうすると、この調査研究会においても、土地収用法制が事業計画段階まで視野に入れるのか、それとも事業計画段階は個別の事業法制に委ねるのかを整理した上で検討する必要がある。
  事業の公共性が大きいと同時に、当該土地のもつ環境の公共性も大きい。そのため、自然環境の公共性と事業の公共性とのバランスの取り方を基本的に考える必要がある。環境保全のための事業を収用適格事業とすることも検討する必要がある。
  10年、20年、100億円、200億円かけてきた事業が反対によって止まってしまうので土地収用は非常に重要である。他方で、一坪運動をやる側の苦労も分かる。そのため、事業を進める上では種々の手続を踏むことが必要であり、例えば、ある自治体のように、住民参加等の地元のケーブルテレビに入ってもらって、事業者、賛成派、反対派、学者、法律の専門家等みんなで議論して情報公開に取り組んでいる事例が参考になる。
  強引に進めてきた事業を、一遍立ち止まって振り返ってみるための法律の整備が必要である。多数当事者問題はそれぞれの方々が事業に対して疑問を抱きながら一坪運動をやっているのであって、むしろそちらの方の味方的な考え方もある。公共事業の説明責任が完全に果たされれば、そのような運動の相当部分はなくなるのではないか。
  公共用地の取得の際に反対が起こるのは、主として、補償が十分でない場合、あるいは事業の公共性そのものに疑問がある場合という2つの場合に分けられる。前者については、生活再建措置が重要な問題になってくるであろう。後者については、事業認定の段階かあるいはそれ以前の計画策定の段階において、情報公開、参加手続を進めていく必要があろう。また、地権者にとって、事業認定というものがそもそもどのような意味をもつのかを伝えるということも必要であって、これには、事業認定において理由の提示がなされないという問題点が挙げられる。その点をクリアすれば、事業認定段階で処理される問題が収用委員会の場に持ち出されることはある程度解決できるのではないか。
  権限外であるにもかかわらず、収用委員会の審理においては七〜八割が事業計画の妥当性についての批判に終始しているのが現状であり、本来の任務である土地の範囲であるとか、補償金額であるとかについての審理に要する時間は極めて少ない。一坪運動等の多数当事者を相手にすることは実務では非常に困難を極めている。連日徹夜で職員が対応せねばならないこと等の現場を考えると何とも割りきれない。事業計画の段階から権利者にある程度の理解を得られる手続が踏めれば、収用の手続は苦労しなくて済むのではないか。
  廃棄物の処分容量が非常に深刻になってきている一方で、技術基準の厳格化や住民の反対運動によって廃棄物処理施設の建設が急激に落ち込んでおり、深刻なごみ問題に直面している。そのような現状に鑑みると、第三セクターである廃棄物処理センターによる廃棄物処理施設を収用適格事業とすることも検討する必要がある。
  公共性・公益性が時間とともに変化することを土地収用法は視野に入れるのかについても検討する必要がある。


[本議事要旨は暫定版のため、今後修正の可能性があります。]


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