第2回土地収用制度調査研究会 議事概要



日時: 平成12年7月12日(水)14:00〜16:00
場所: 通商産業省別館共用会議室
議事: (1) 現行土地収用制度の現状と課題
    (2) 公共事業の課題と土地収用法制度見直しの基本的方向性
出席者: 法学界、環境、マスコミ等の分野の有識者19名
議事要旨:
  フリートーキングにおける意見の概要は以下のとおり
  第1に、情報公開、住民参加については、行政の情報提供がうまくない、説明が一般的に極めて下手だと感じている。海外では正しい情報を正しく伝える人材がいる。このような人材がいて、誤解を招かないような情報提供があることが、情報公開を進める前提ではないか。第2に、大都市の密集市街地や区分所有の問題については、既成市街地の再編・再整備を進める上で極めて重要な課題となっていくと思われるが、密集市街地の開発を住民の側に立って議論をする人々の中からも、収用法との絡みを従来以上に幅広に考えていかないと対応できないという意見が一部に出てきている。第3に、まちづくりの主体が、公共だけでなく多様化していることを議論に加えるべきである。
  事業を早くやれという声をよく聞く。よく最近、公共事業の評価としてBbyC(コスト・ベネフィット・アナリシス)をやるが、これは投資が終わった後の評価であって、公共投資が予定通り進行しない場合の社会的デメリットをきちんと踏まえた上で、社会的効果が最大限に発揮されるような計画的取組をきちんとやるべきという指摘をしきりに受けている。経営的にも、必要な事業を適確に実施することが大事である。本当に必要なものが遅れることの社会的デメリットをきっちり把握して、それを示して理解を求める必要がある。なお、現場の切実な問題点についても丁寧に拾い上げて、できるものは組み入れるということで改正作業を進めて欲しい。
  第1に、経済界では、国際競争力とスピードが議論となっている。グローバルとスピードがキィワードだ。国際競争力と言う視点から公共事業を見ると、都市型の公共事業の中に、極めて必要なところが残ってしまっている。例えば首都圏の環状道路、国際空港など。韓国、香港、シンガポール等の競争相手に比べ、非常に非効率な点が多いという指摘がある。日本から資本が出て行くばかりで、なかなか入ってこない。公共基盤における国際競争力が本当に強くなっているのかどうかという視点で公共事業の意味合いを議論して欲しい。また、時間の効率がよくないといわれているが、東大の先生の論文にあるが、公共事業に時間管理概念を導入したらという研究をされていて、その中で、首都高速道路湾岸線5期工事は、7年遅延した結果、社会全体では6400億円の損失が発生しているという試算がある。また、営団地下鉄半蔵門線の半蔵門〜三越前間の工事が3年遅延して、社会全体では210億円の損失が発生しているとのことである。経済界にとって、時間というのは非常に大事なテーマ。是非そういう視点を議論の中にくみ取って欲しい。第2に、収用制度については、国際比較が必要である。アメリカ、ドイツなどの他国と比べ、我が国の収用制度が競争力の点でどうなっているのか。土地に関する税制の各国との差は製造コストに当然入ってくるように、土地収用の在り方についても共通の競争条件として各国に負けないというような意味での議論も必要である。日本固有の文化もあるので全部アメリカ流とはいかないが、例えば、行政、収用委員会と裁判所の役割についていえば、より裁判所型の制度に持っていくというような議論も必要ではないか。
  誰でもが反対しない事業と、普通の公共事業と、原子力発電所のような事業と、それぞれ違いがある。住民参加等は、大型の公共事業はともかく、全部の事業でやるには時間的な問題がある。
  一坪地主というような反対運動はけしからんという側面はあるかもしれないが、これをなくすために簡素・迅速化というのは基本的に問題の解決にならず、かえって時間がかかるのではないか。東京都日ノ出町の廃棄物処分場の用地の収用ができないと処理能力が3割減になるという説明を聞いているが、そうであるなら住民とゴミを3割減らすことを考えた方が前向きだ。収用委員会など収用の現場で御苦労されている方々が簡素・迅速化を望む気持ちは分かるが、これはその方々や法律が悪いのではなく、住民の声を反映しない形での拙速な事業の推進に問題がある。事業の公益性の判断は収用委員会の権限外であるにもかかわらず、収用委員会に付けが廻ってくることが問題であり、そういう事業を見直す方向に持っていくべき。公益性の判断が情報公開や地域住民の参加を適正に経て行われ、環境保全等を適確に考慮したものであれば、収用手続は、円滑・効率的に実施する必要がある。
  都市計画事業では都市計画の事業認可・承認が事業認定に代わることとなっているように、情報公開や住民参加というのは土地を収用するために必要となるのではない。事業認定庁が幅広く情報公開や住民参加に乗り出していくのは筋違い。やはり、それは事業庁なり計画事業を行う者がやって、事業についてのコンセンサスを得てから、土地が必要なら収用委員会に収用裁決を申請すべきもの。
  土地収用法の守備範囲はどこまでで、個別公共事業法の改善すべきところはどこかという仕分けは大事である。しかし、収用法を考えてみるとき、起業者が手続をちゃんと踏んでいるかを認定庁が見ることとしてもいいのではないか。ただ、その前提として起業者と認定庁が分離していることが必要である。
  本来は収用の前提として、総合的な土地利用計画があるべき。また、事業認定の位置付けがはっきりしない。任意買収は土地収用法の枠外とされている一方、アンケートを見ると事業認定の実務では、任意買収の進捗状況を要求しているようである。まず最初に、事業認定という制度を全体の公共事業のプロセスの中でどういう意味を持つ制度として位置付けるかをはっきりさせる必要がある。また、事業認定と任意買収の分担を明確にすべきである。第2に、アンケートは、土地所有者の側の意見が入っていない。パブリックコメントなどにより、反映することが可能ではないか。
  事業計画の策定段階での情報公開、住民参加は是非すべきだ。また、利害調整の主体は、準司法的権限を持つ機関とか行政委員会のような第三者機関であるべきかの検討が必要である。なお、行政不服審査法のような総代制を考えて欲しい。
  公共事業の執行に伴い、適切な自然環境の回復措置が必要である。ミティゲーションに使う用地は、収用の対象とすべきであり、また、適切な回復措置をきちんと位置付けるべき。
  第1に、一般的な公共事業に対する環境への配慮が必要である。第2に、環境庁などが出来た後の、環境保全の事業を、例えば種の保存法に基づく事業を収用適格事業とすべきである。第3に、事業にはなじまないが、私有地にある大事な環境を保全することが必要なので、それになじむ土地収用法を考えるべき。
  全体的な土地利用計画や公共事業のマクロの計画の中で、収用というプロセスの位置付けを検討していくことが必要である。ただ収用というミクロのプロセスだけを見て、そこにしわ寄せされている問題をそこだけで解決しようとすると、対症療法的となり本質的な解決につながらない。
  日本の制度では、住民参加というと概念的な規定しかなくて、担当者によって内容が異なる。住民参加の内容まで踏み込むべきだ。経験を積んでいるところでは、かなり制度的に踏み込んでも対応可能であり、踏み込むことで全体のレベルを上げることも必要な時期に来ている。なお、情報公開に際し、プライバシーについて問題になることがあるが、その当事者の意向を確認をせずにプライバシーのために非公開となる例がしばしばあり、当事者の意向を確認する手続も含めて情報公開を考えて欲しい。
  情報公開や住民参加の問題については、各地方自治体で様々な取組がされているが、試みに、全く地元に根回しせずに行政の試案の段階で市民に提示してみたが、それだけで反対運動が起こり、議論に乗ってくれなかった。


[本議事要旨は暫定版のため、今後修正の可能性があります。]


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