国土交通省
 (別添)硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素含有量に係る下水道法に基づく排除規制について
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 今回の下水道法施行令の一部改正において第9条の5を改正し、下水道法上の特定施設から公共下水道又は流域下水道に排除される下水についての水質規制を下水道管理者が条例で定める場合の基準に、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素(以下「硝酸性窒素等」という。)の含有量に関する水質規制の基準を追加することとするが、その基準の算定根拠等の詳細は以下のとおりである。
 
 

1.硝酸性窒素等に関する水質規制の基準

(1) ある下水道からの放流水について水質汚濁防止法の規定に基づき硝酸性窒素等に係るいわゆる一律排水基準が適用される場合において、当該下水道に下水を排除する特定事業場に係る硝酸性窒素等の水質基準は、以下の基準より厳しくない範囲で下水道管理者が条例で定めるものとする。

硝酸性窒素濃度をx(mg/l)、亜硝酸性窒素濃度をy(mg/l)、アンモニア性窒素濃度をz(mg/l)とすると、

a) 通常における水質の基準(第9条の5第1項)
    x+y+z=380mg/l 未満

b) 製造業等に係る汚水が、処理汚水量の1/4以上のとき、他の汚水により十分に希釈することができないとき、その他やむを得ない理由があるときに該当する下水道に下水を排除する場合における水質の基準(第9条の5第2項)
    x+y+z=125mg/l 未満

(2) ある下水道からの放流水について水質汚濁防止法第3条第3項の規定により硝酸性窒素等に係るいわゆる上乗せ基準が適用される場合において、当該下水道に下水を排除する特定事業場に係る硝酸性窒素等の水質基準は、下水道処理施設における硝酸性窒素等の除去率等に鑑み、当該上乗せ基準に連動した以下の基準より厳しくない範囲で下水道管理者が条例で定めるものとする。

a) 通常における水質の基準(第9条の5第1項)
    x+y+z=当該上乗せ基準に係る数値の3.8倍 未満

b) 製造業等に係る汚水が、処理汚水量の1/4以上のとき、他の汚水により十分に希釈することができないとき、その他やむを得ない理由があるときに該当する下水道に下水を排除する場合における水質の基準(第9条の5第2項)
    x+y+z=当該上乗せ基準に係る数値の1.25倍 未満

2.硝酸性窒素等の排除基準値の算定過程

 硝酸性窒素等の排除基準値の算定にあたっては、(参考)に示す既定の窒素化合物の排除基準値の設定の考え方や下水道における硝酸性窒素等のメカニズムを踏まえた上で検討することとする。

(1)アンモニア性窒素の転換係数について

 水質汚濁防止法に基づく硝酸性窒素等の排水基準値は、水環境中のアンモニア性窒素の硝化のメカニズムを考慮し、アンモニア性窒素については転換係数0.4を掛けることとした上で、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素の総和を100とする予定である。

 しかし、一般的な下水処理場内におけるアンモニア性窒素は、処理工程内(曝気槽)  で酸素が供給され酸素飽和状態にある中で硝酸性窒素又は亜硝酸性窒素に転換しうる。このため、下水道におけるアンモニア性窒素の転換係数は、一般的な河川等の水環境と比較して硝化が促進される環境にあることを考慮すれば1と設定する必要がある。

(2)硝酸性窒素等の排除基準値を算出するにあたっての前提条件

 (参考)に示す既定の窒素化合物の排除規制の考え方を踏襲し、下水処理場の硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素の除去率は20%とする。

 工場排水量(製造業・ガス供給業)が少ない場合(1/4未満)は、家庭排水の希釈効果を考慮し、家庭排水の濃度はアンモニア性窒素濃度40mg/lとする。

(3)硝酸性窒素等の排除基準値

 下水処理場に係る水質汚濁防止法の排水基準100mg/lを常に遵守するためには、以下に示すとおり下水処理場に流入する硝酸性窒素等の濃度を125mg/l以下にする必要がある。
下水処理場の流入可能濃度:

100×1/

(1−0.2)=125mg/l
下水処理場の排出水上限濃度 下水道硝酸性窒素等窒素除去率

硝酸性窒素濃度をx(mg/l)、亜硝酸性窒素濃度をy(mg/l)、アンモニア性窒素濃度をz(mg/l)とすると、

1) 工場排水量(製造業・ガス供給業)が少ない(1/4未満)場合(第9条の5第1項)

 下水処理場への流入水量のうち3/4が生活排水に起因するもので、1/4が工場排水に起因するものと仮定する。また、生活排水濃度を40mg/l(一般家庭濃度)とする。
 このとき、下水処理場の流入可能濃度(125mg/l)を達成するため、当該下水道に下水を排除する事業場に対しては、380mg/lを排除基準とする必要がある。
125 = 40×3/4 + (x+y+z)× 1/4
下水処理場の流入可能濃度  生活排水濃度  生活排水割合   工場排水割合
   x+y+z = 380mg/l

2) 工場排水量(製造業・ガス供給業)が多い(1/4以上)場合(第9条の5第2項)

 下水処理場の流入可能濃度(125mg/l)を達成するため、当該下水道に下水を排除する事業場に対しては、125mg/lを排除基準とする必要がある。
   x+y+z=125mg/l

3) 水質汚濁防止法第3条第3項の規定により下水道からの放流水に上乗せ規制がなされる場合、下水道法における排除基準値と水質汚濁防止法における一律排水基準値(100mg/l)の比を、当該上乗せ基準値に乗じることとする。

1)の場合:  380/100 = 3.8 を上乗せ基準値に乗じる
2)の場合:  125/100 = 1.25 を上乗せ基準値に乗じる
3.水質汚濁防止に基づく排水基準との調整

 特定事業場からの下水が直接に当該下水道からの放流水に係る公共の水域又は海域に排除されたと仮定したとき、水質汚濁防止法に基づく一律排水基準よりも緩やかな暫定排水基準が適用されることとなり、かつ、その数値に2.5を乗じて得た数値(以下この数値をαとする。)が下水道法に基づく排除基準よりも緩やかな場合には、当該特定事業場に対する下水道への排除基準に係る数値はαとする。

 水質汚濁防止法に基づき硝酸性窒素等の暫定基準が適用される特定事業場が下水道に接続して下水を排除する場合に、下水道法に基づく当該下水に係る排除基準を水質汚濁防止法に基づく暫定排水基準の2.5倍とする理由

 水質汚濁防止法に基づく硝酸性窒素等の暫定排水基準については、特定事業場における排水処理技術や経済状況を鑑みた上で排水水質の実態から設定しているが、アンモニア性窒素の排水については硝酸性窒素への換算係数を0.4として設定しているため、例えば、暫定排水基準として240mg/lが設定されている業種については、アンモニア性窒素のみを排出する場合にあっては、600mg/lまで排出可能である。すなわち、アンモニア性窒素600mg/lを排出しても、これに0.4を乗じれば240mg/lとなるため、排水基準を遵守していることとなるのである。

 一方、下水道に排除する場合はアンモニア性窒素の硝酸性窒素への換算係数を1として設定していることから、アンモニア性窒素を600mg/lで排出する特定事業場については、下水道法上は水質600mg/lの排水濃度で下水道に排除することになる。

 従前より、水質汚濁防止法の暫定排水基準が適用される特定事業場が下水道に接続して下水を排除する場合には、水質汚濁防止法の暫定排水基準に係る数値を下水道への排除基準としている。

 このため、硝酸性窒素等についても、水質汚濁防止法の暫定排水基準が適用される特定事業場が下水道に下水を排除する場合には、水質汚濁防止法の暫定排水基準と実質的に見合う排除基準値を適用する必要があることから、当該下水中に含まれる硝酸性窒素等がすべてアンモニア性窒素であったと仮定しても水質汚濁防止法に基づく暫定排水基準と同等程度に緩やかな基準となるように、水質汚濁防止法上の換算係数0.4の逆数である2.5を暫定排水基準に乗じて得た数値を、下水道法に基づく当該下水に係る排除基準とする。

 上記の例でいうと、ある特定事業場に対する水質汚濁防止法の暫定排水基準が240mg/lである場合には、これに2.5を乗じて得た数値である、240×2.5=600mg/lが、当該特定事業に対する下水道への排除基準となる。


(参考)既定の窒素化合物に係る排除基準値の設定根拠について

 下水道法では、法第12条の2第3項に基づく令第9条の5において、すでに窒素含有量の項目についての下水道への排除規制が規定されているが、窒素含有量に係る排除基準値の設定根拠は以下のとおりとなっている。

○  下水処理場の窒素化合物の除去率は概ね20%程度であり、下水処理場に係る水質汚濁防止法の排水基準120mg/lを常に遵守するためには、以下に示すとおり下水処理場に流入する窒素化合物の濃度を150mg/l以下にする必要がある。

下水処理場の流入可能濃度: 120×1/ (1−0.2)= 150mg/l 
  下水処理場の排出水上限濃度    下水道窒素除去率  

(1)工場排水量(製造業・ガス供給業)が少ない(1/4未満)(第9条の5第1項)
 下水処理場への流入水量のうち3/4が生活排水起因で、1/4が工場排水に起因するものと仮定する。また、生活排水濃度を120mg/l(一般家庭排水濃度)とする。
 このとき、下水処理場の流入可能濃度(150mg/l)を達成するため、当該下水道に下水を排除する事業場に対しては、240mg/lを排除基準とする必要がある。
150 = 120×3/4 + ×x 1/4
下水処理場の流入可能濃度  生活排水濃度   生活排水割合   工場排水割合
   x  = 240mg/l

(2) 工場排水量(製造業・ガス供給業)が多い(1/4以上)場合(第9条の5第2項)

 下水処理場の流入可能濃度(125mg/l)を達成するため、当該下水道に下水を排除する事業場に対しては、125mg/lを排除基準とする必要がある。

(3) 水質汚濁防止法第3条第3項の規定により下水道からの放流水に上乗せ規制がなされる場合、下水道法における排除基準値と水質汚濁防止法における一律排水基準値(120mg/l)の比を、当該上乗せ基準値に乗じることとする。

1)の場合:  240/120 = 2 を上乗せ基準値に乗じる
2)の場合:  150/120 = 1.25 を上乗せ基準値に乗じる
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