国土交通省
 「不動産取引価格情報の提供制度の創設」に関する意見
 募集の結果について
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平成15年12月19日
<連絡先>
土地・水資源局土地情報課
(内線30212)

電話:03-5253-8111(代表)


 

 国土交通省では、平成15年7月31日から平成15年8月31日までの期間において、「不動産取引価格情報の提供制度の創設」に関する意見募集を行いました。
 その結果、61件のご意見をいただきました。いただいたご意見は国土審議会土地政策分科会企画部会の下に設置された土地情報ワーキンググループ (座長:山野目章夫早稲田大学教授)に報告し、企画部会への報告(PDF形式)等の参考にしていただきました。主なご意見の概要は以下のとおりです。
 ご協力ありがとうございました。

  1. 提供制度の理念について
    • 不動産取引価格情報の透明性と公開度を高めることは、不動産市場の活性化に資するのみならず、消費者保護、不動産市場の健全化、適正な土地利用の促進、不動産の所有に関するあるべき姿を醸成する上で有効な方法であり、公益性が高い。
    • 基本的な土地情報は公共財としての性格が強く、土地基本法に定められた「土地についての公共の福祉優先」の理念に照らしてこれを公開することは合理的であり、政府部門による整備が望ましい。
    • 日本と同じくらい住宅の自己所有割合が高く、不動産が資産形成に占める割合が大きいイギリスでも、不動産が貴重な資産であるがゆえに、市場の合理性を高めるための情報収集と提供が、社会に受け入れられている。
    • 情報を個人が取得して共有できるならば、その道のプロ相手の折衝局面などで大いに役立つものと予測され、情報の非対称性や不確実性等から生ずる諸問題を緩和できる可能性がある。

  2. 提供方法の充実等について
    • 取引価格とあわせて、住居表示、相続税路線価・固定資産税評価額、借地権の有無、面積・形状・間口・奥行等画地の情報、建物に関する情報、用途地域等の制限、取引当事者の属性等を併記すべき。
    • 悪徳不動産業者リスト、騙された事例、土壌汚染や公害・水害の地域別詳細情報、震源地情報、不適建材情報など、社会や消費者に直接役立つ内容を開示すべき。
    • GIS活用による物件特性情報の提供システムの充実を優先すべき。
    • 取引時点と情報提供時点との時間差を可能な限り縮めるようにすべき。取引時点の定義の明確化と統一化が必要。
    • 不動産は個々の条件の乖離が大きく、地価形成の要因は様々であるため、誤解や曲解を生むおそれのあるデータの加工は不適であり、A案が望ましい。B案では、開示される情報に具体性が乏しく、実際に活用することができない。
    • 公平性の視点からは、ユーザーの多様な状態に対応できるよう、インターネットだけでなく複数の提供方法を検討すべき。
    • 土地価格と建物価格の分離の際にはその手法等基準を明確化すべき。

  3. 鑑定評価の精度向上等について
    • 鑑定評価において、不動産取引価格情報は欠くことのできない基礎資料であり、地価の調査・分析内容の精緻化につながり、ひいては適正な地価の形成により一層寄与できる。
    • 守秘義務を前提にして、不動産鑑定団体に全詳細データを公開すべき。また、価格が異常値と認められる事例については、適正な地価形成に資する観点から、その価格形成過程や背景等の取引事情等に関して取引当事者に対する調査権を不動産鑑定士等に付与すべき。
    • 多くの不動産取引価格が公的土地評価に生かされれば、公的土地評価の指標としての信頼性が増す。また既存の公的土地評価制度をより簡素化できる。
    • 各国で作成している不動産投資インデックスやベンチマークの精度も不動産評価の精度に依存しており、不動産評価精度の向上は、取引価格情報の提供がもたらす最良の便益のひとつと考える。

  4. 情報提供の効果への疑問等について
    • 資産デフレ下において、個別物件等の不動産取引価格情報の開示を実施すれば、国民に値下がり期待を抱かせるとともに、ひいては買い控えを招き、土地取引を停滞させ、さらなる地価下落に繋がる要因となる。逆に地価上昇期には上げ圧力となり、地価高騰に拍車をかける。
    • 土地情報の提供によって、土地取引の促進、土地の有効利用の促進が達成できるという因果関係が大きいとは思えない。
    • 土地市場の活性化、土地の資産デフレ対策は、土地需要の増大、土地取引規制の緩和、税制改革等により実現されるものであり、不正常な情報を含む価格開示によってもたらされるものではない。

  5. 市場の混乱等の懸念について
    • 不動産は個別性が高く、また取引当事者には売り急ぎ、買い進み等の特殊事情を持つものが数多くある。このような特殊な条件の下で成立した取引価格は適正価格とは言えず、これを公開することによって、一般消費者がその価格を正常価格と誤認してしまい、市場を混乱させることになる。また、不動産の需給量が少ない地域などでは、一つの取引事例がいかにも適正価格と認識されることが懸念される。
    • 不動産は個別性が高く、また取引に各々事情があるため、不動産の個別性や取引事情などを並記しない成約価格は無意味である。他の情報を併記した場合であっても、その意味・示唆するところを一般市民が読みとるのは難しく、データの総合判断には精通者意見が必要である。
    • 価格が公開されると、その価格と同水準でないと近隣の取引が成立しにくくなるなど、不動産業界にとっては営業上大変なリスクとなる。また顧客にとっても、価格の公開により相場が出来上がってしまうと、自由に値が付けられなくなり、高く売りたいと思っても売れないような事態になりかねない。

  6. プライバシー、個人情報保護との関係について
    • 地図で地点が示されること、住居表示が実施されていない区域も多いこと等から、住所および氏名の特定は容易であり、特定の個人を識別することができる情報として保護の対象となるべきものである。住所氏名が伏されていても登記等から容易に名簿を作り出し悪用される。
    • 取引価格情報の収集、集積、開示はプライバシーとしての権利保護の対象。個人情報保護の法規制の整備を進める国の姿勢や、宅地建物取引業法の守秘義務規定に反して、個人の重要なプライバシーである取引価格情報を、届出義務を課して罰則を背景に強制的に収集・開示するのは適当ではない。
    • 民間や政府関係団体等にもれのないよう管理の徹底を希望する。
    • 個人情報の公開は当然個人の責任に帰すべきものであり、国家・行政が枠をはめて促すのは自由の侵害。
    • インターネットで無制限に開示することは問題。
    • 検討されている不動産登記法の改正では、登記原因情報の開示については個人情報保護の観点から、利害関係のあるものに限り閲覧が認められるべきとの見解が示されており、その考え方と矛盾する。
    • 価格を知られることにより、各種勧誘行為、親族間の争い、近隣の妬み、窃盗・強盗等の犯罪など、各種の不利益や被害が発生することが懸念される。
    • 法人の風評の発生等による弊害について留意すべき。
    • 土地に対する思い入れが諸外国に比べ強く、個人の資産としても土地は重要な要素として意識されている。プライバシーの観点から国民的コンセンサスを得ることが難しい。
    • 個々の成約情報の収集や提供について、売主・買主双方の同意が必要。

  7. 地価公示との関係等について
    • 地価公示、相続税路線価、固定資産税評価額等が公表されており、取引価格情報を公開する必要はない。一般の取引価格に対して指標を与えることを目的とする地価公示制度を拡充するのではなく、なぜ新たな制度が必要となるのか。
    • 取引事例という生情報を国民に提供して、その情報が正常な価格であるかどうかを考えることなく、それを参考に取引価格を設定させようとするもので、地価公示法と正面から矛盾する。
    • 必要な情報は、民間の事業者から充分に得られる。
    • 土地取引の活性化や不動産証券化の普及等は、地価公示制度の充実、不動産投資インデックスの普及等によって十分達成可能。
    • 実際に欲しいのは売りに出ている土地・住宅の価格や条件であって、既に売れてしまった物の価格がわかっても意味がない。

  8. 行政コスト、国民負担等について
    • 不動産取引は本来自由に行われるべきものであり、需要と供給の原則から価格は生まれるべきものであって、行政が介入する必要はない。高いか安いかは個人の価値観の問題。
    • 通常の経済行為である土地取引を含めた住宅・不動産取引だけについて、なぜ取引価格について届出という行為が必要なのか。
    • 行政の中に新しい役人を増員し、その為の経費が増大することに繋がり、行政改革を進行すべき現時点において全く不必要。
    • システム構築に多大なコストと時間がかからないような配慮が必要。
    • 規制改革が進展する中で、国民に新たな負担(規制)を求めることは、その流れに逆行する。
    • できるだけ単純な仕組みを作ることが肝要。
    • 情報開示は、行政及び収集に協力する者にとって、費用と負担が少なく、単純な仕組みとすべき。
    • 国民に届出義務を課すより、登記情報を持つ法務局や、売却不動産価格の申告を受けている税務署に対して情報提供を求める方が合理的。

  9. 例外の設置について
    • 開発分譲やマンション用地の買収の際、周辺・隣地の買収価格が判明してしまうことで、交渉の難航が予想され、事業の円滑化が阻害される要因となる。
    • マンションや同一分譲地内での売買など、その取引価格が開示されることにより、住民間に不協和音や不都合が生じる。
    • 不動産業者買取りは例外としてほしい。
    • 公共用地の取得価格についても開示すべき。

  10. 政策決定のプロセスについて
    • 実施に至る前に幅広く国民のコンセンサスを得る必要がある。
    • 土地情報ワーキンググループのメンバーに中小不動産業者が入っていなくて全く意見を述べる機会がない。
    • BC案の提示で辛味の少ない法案であるかの様に見せかけて、法案が成立するやA案に近づける様にどんどん強化改正を行い、罰則等も強化して行くのではないか。

  11. 業界の変化について
    • 不動産関連業界関係者が、情報が豊富に利用できることによって「市場が混乱する」と主張することは、自らの専門性を放棄することに等しい。国の役割を最低限に留め、民間にできることは民間に任せるという点を尊重すべき。
    • 不動産屋でも物件によって得手不得手があるので、A案であれば、苦手物件の値付けの参考になる。
    • 情報ビジネスによる分析・解説が前提になっているが、そのような情報の取引市場が形成されるかどうかはまったく未知数である。
    • コンサルティング業の成熟度の低いことが憂慮され、情報公開の健全化にはその分野の見直しが急務。
    • 顧客にも同じ取引情報がわかると、値付の説明が大変になるので、多数の事例からできる査定マニュアルが欲しい。
    • 特権を得て取り扱われる不動産の業務、業界の体質改善を優先すべき。

  12. 修文意見について
    • (中間とりまとめp.5)「物件の市場での評価が実態とかけ離れていったが」とあるが、「評価」と「実態」は、具体的に何を示しているのか。
    • (中間とりまとめp.6)「J-REITの収益性に関する情報等が充分に公開されている」ことと、その価格が「堅調に推移していること」は、直接の因果関係にあるのか。

  13. その他
    • 国土利用計画法は地価高騰時に「地価抑制」策を主目的としていた法律であり、取引価格情報の収集・開示のために同法を改正することは、本来の目的と合致しない。
    • 価格情報を開示するよりも、売買に係る税金をもっと低くしてやれば、もっと取引としては動く。
    • 現状の不動産売買の最大のネックになっているのは銀行等による債権者の抵当権抹消の問題。大手企業への債権償却を、中小企業、個人等にも拡大し、銀行等が実施しそのマイナス額を国が補充する方法等を考えて実施すれば、必然的に情報は交流し、売買がスムーズに進展し、経済効果は増幅される。
    • 取引価格は登記簿にも記載すべき。
    • 所有権移転登記時の登録免許税の基礎となる評価額(現在は固定資産税の評価額を使用している)に取引価格をそのまま採用すべき。


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