国土交通省
 自動車交通局プレスリリース「『運転支援技術について安全
 上留意すべき事項の確認』の意見募集について」(平成15年
 6月23日)に寄せられた意見とそれに対する国土交通省の考え方
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平成15年12月18日
<連絡先>
自動車交通局技術安全部
技術企画課
(内線42254)

電話:03-5253-8111(代表)


 

 

「『運転支援技術について安全上留意すべき事項の確認』の意見募集について」
(平成15年6月23日)に寄せられた意見とそれに対する国土交通省の考え方

(頂いた御意見)
 運転支援技術が「運転支援の考え方」を満たしているかどうか確認を行う制度の明文化は、先進安全自動車(ASV)推進検討会の場で十分に議論された結果であり、運転支援技術の更なる普及推進に寄与するものとして、今回の提案を支持する。
(国土交通省の考え方)
 各種の運転支援技術については、実用化が増加してきており、「運転支援の考え方」に基づいて安全上留意すべき事項について確認を行うことにより、円滑な実用化を推進していく。引き続きご支持賜りたい。

(頂いた御意見)
 「運転支援技術」は広範囲に及ぶため、今回の制度の対象となる技術の具体的な定義が必要と考える。「運転支援技術」の定義として、「走る・曲がる・止まるの基本操作についてドライバーを支援する制御を行うもの。ただし、車両本来の基本性能に係る車両安定化技術(例えば、VSC(ヴィークル・スタビリティ・コントロール)、VDM(ヴィークル・ダイナミクス・マネージメント)等)は除く。」を提案する。
 (理由)対象技術の明確化により、新規技術全般(例えば情報提供/警報装置、等)にまで拡大して「確認が必要」と誤解されることなく、必要な手続きを予め把握でき、早期の開発・確認の円滑化が図られると考える。
(国土交通省の考え方)
 「運転支援技術」とは、安全運転を支援するために、自動車周囲や自身の情報を把握し、これら情報を処理することにより、情報提供・警報を行い、又は自動車の制御を行うものであり、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、VSCといった車両安定化技術も含まれるが、運転支援技術のうち「運転支援の考え方」に基づいて安全上留意すべき事項の確認を行うべき対象と考えられているものは、システムが周囲の環境等を認知・判断することにより、ドライバーが通常行っている操作の一部をシステムが支援する技術である。
 一方、情報提供・警報のみの技術については、これがドライバーの認知・判断を支援するものであり、かつ、「運転支援の考え方」が対象としている安全上の問題が生じるおそれが少ないため、基本的には「運転支援の考え方」に基づいて安全上留意すべき事項の確認を行う対象とは考えていない。ただし、警報の方法が確認を要する運転支援と紛らわしい場合などには確認が必要である。
 また、ABS、VSC等の車両安定化技術は、車両が不安定な状態におちいった場合に作動するものであり、ドライバーが通常行っている操作にシステムが介入するものではないので、システムの操作に対して過信が生じ本来ドライバーが行うべき認知・判断が低下するものではない等、「運転支援の考え方」が対象としている安全上の問題が生じるおそれが少ないため、基本的には「運転支援の考え方」に基づいて安全上留意すべき事項の確認を行う対象とは考えていない。

(頂いた御意見)
 「運転支援の考え方」の中の「4ドライバーがシステムに過度の依存や不信を招かず適正な信頼が得られるようにシステムが配慮されていること」については、「依存・不信なし」の客観的かつ定量的な証明が極めて難しいと認識している。基本的にメーカーの最善の努力を説明し、(メーカーが)責任を持って保証していくべき項目と考えており、その観点による確認を実施いただきたいと考える。
(国土交通省の考え方)
 現在実用化が進められつつある運転支援技術は、運転操作を支援するというこれまでにない目的に対して様々な考え方と新技術を用いて開発される途上にある技術であり、個別の技術についての安全対策を必ずしも定量的に基準化できる段階にはないと考えている。
 「運転支援の考え方」は、こうした現状を踏まえて、個別の新技術に対する自動車メーカーの安全対策に関し、安全上配慮すべき事項の包括的なチェックリストを作成したものである。
 このため、自動車メーカーが用いた安全上の考え方についての見解を求め、それが「運転支援の考え方」に沿ったものであるかどうかを確認することとしているが、これは「4ドライバーがシステムに過度の依存や不信を招かず適正な信頼が得られるようにシステムが配慮されていること」の項目においても同様である。
 この「4」の項目の場合、自動車メーカーにおいては、当該新技術によりドライバーに生じることが懸念される過度の依存や不信の発生事例を洗い出し、それらの事例に対して講じた対策の有効性を説明するといった対応が考えられる。
 この際、過度の依存や不信に対して有効な対策が講じられていれば、定量的な指標を用いて過度の依存や不信がないことを示すことは必ずしも必要ない。

(頂いた御意見)
 「運転支援の考え方」の中の「8システムについて理解を得られる素地が社会に形成されていること」(社会受容性)については、実際は普及とともに必要性が理解され、その結果として社会受容性が形成されるものであり、明らかに効果が期待できると考えられる支援の場合は、まず社会に問い掛けることが重要であると考える。
(国土交通省の考え方)
 社会受容性は、運転支援技術が社会に問題なく受け入れられ、道路交通全体の安全性向上につながることを求めるものであり、新技術による支援の目的、機能、作動についての理解が容易であるかどうか等、特に運転支援が従来の技術に対して飛躍しすぎていないかどうかにより判断される。したがって、この社会的受容性に関するチェック項目は、明らかに効果が期待できるかどうかのみを問題とする項目ではない。
 なお、社会的受容性を確認するため、フリートテストやモニター調査を行うことが有効な場合もあリ得るが、自動車メーカーが希望すれば、市販化に先立ち一定の条件下でこれら調査を大臣認定制度を活用して行うことが出来る。

(頂いた御意見)
 「運転支援技術について安全上留意すべき事項の確認」の実施にあたり、(回答は)必要に応じ予め関係審査部署とも調整頂いた結果としてもらいたいと考える。また、「確認結果」については、公式に書面等で関係審査部署への回覧も含めて通知してもらいたいと考える。
 (理由)その後の審査の円滑化を図り、本制度を定着させるため。
(国土交通省の考え方)
 「運転支援技術について安全上留意すべき事項の確認」は設計思想に関するものであり、一方、審査担当部署は実際の自動車が設計思想通りに製作されているかどうかを見る。
 「運転支援技術について安全上留意すべき事項の確認」によって新技術が「運転支援の考え方」に沿ったものであることが確認されればその内容は技術指針として整理し取扱いを定式化するとともに、審査担当部署に通知する。
 また、それ以外にもその後の審査担当部署において必要と考えられる情報があれば通知することとする。

(頂いた御意見)
 「技術指針」が策定されている場合の審査について、前述の考え方(関係審査部署との間の調整・回覧)を取り入れることにより、「技術指針」への適合性は書面とし、実車での確認は(装置の)作動機能確認のみとできるものと考える。
 (理由)「運転支援技術について安全上留意すべき事項の確認」は、今回の確認(技術企画課における確認)で終了しており、法規の位置付けでない技術指針に基づく性能確認は審査段階では不要とすべき。
(国土交通省の考え方)
 新技術については、安全基準担当部署において「運転支援技術について安全上留意すべき事項の確認」により設計思想に関する確認を行うが、実際の自動車が設計思想通りに製作されているかどうかは、審査担当部署において見る必要がある。
 「技術指針」が策定されている場合の審査は、設計思想が既に確認を受けたものと同種の技術であるので、技術指針により取扱いが定式化されており、設計思想に関する確認は不要とし、審査担当部署において実際の自動車が設計思想通りに製作されているかどうかを技術指針に基づいて見ることとなる。

(頂いた御意見)
 「運転支援の考え方」の中の「2システムは安全な運転となる支援を行うこと」と「7システムの作動により安全性が後退しないこと」について、補足もしくは、事例追加が望ましいと考える。
 (理由)敢えて「車両を取り巻く交通社会全体の安全の確保」を7で表現した意図を、誤解なく理解されるよう、確実な織り込みと円滑化を図るため。
(国土交通省の考え方)
 「2システムは安全な運転となる支援を行うこと」の例示は次のとおり。
例示:運転負荷を軽減する新技術の場合
 次のような配慮がなされている場合
  • 支援が通常ドライバーの行う運転操作範囲を超えないための配慮
  • ドライバーが安心して利用できる程度に安定的な支援ができる配慮
 衝突被害軽減システムを例に挙げた場合
  • 衝突の被害を軽減するためにブレーキをかけるものであり、安全性の向上が図られる。

 「7システムの作動により安全性が後退しないこと」の例示は次のとおり。
例示:運転負荷を軽減する新技術の場合
 次のような配慮がなされている場合

  • システムの非装着車に比べて安全性が低下しない配慮。
 衝突被害軽減システムを例に挙げた場合
  • 追突事故は車両相互の交通事故のうち最も件数が多いことから、この追突事故の被害を低減する効果が高い衝突被害軽減システムは社会にとって有効である。
  • また、緊急時の制御であるので該当車両以外を事故に巻き込まない配慮がなされている必要がある。

(頂いた御意見)
 「運転支援の考え方」の中の「4ドライバーがシステムに過度の依存や不信を招かず適正な信頼が得られるようにシステムが配慮されていること」について、依存、不信にも配慮する必要はあるが、事故軽減に効果が期待される技術はドライバーにもよく認識させドライバーの責務とすることにより、導入してもよいのでは。
 (理由)事故低減にはドライバーとしての責任と義務が当然ある。それを徹底することにより、恐れることなく導入できると思われる。悪質ドライバーには別の考えで強制介入していくことも考えることが事故低減にダイレクトにつながると考えられる。
(国土交通省の考え方)
 事故低減のためには個々のドライバーの責任と義務の自覚が必須であることは指摘の通りであり、交通安全対策に関わる行政機関等においては、このドライバーの自覚の推進を課題として交通安全対策を推進しているところであるが、国土交通省の推進しているASV(先進安全自動車)プロジェクトにおいても「あくまでも、ドライバーが主体的に責任をもって運転するという前提にたつ」との「ドライバー支援の原則」を基本理念の一つにおきつつ、先進安全技術の開発・普及を促進している。
 一方、「運転支援の考え方」は、事故低減に対する責任と義務の自覚を持つドライバーへの支援であっても、システムによっては過度な依存や不信を招き適正な信頼を得られない場合があり得ることに対し、配慮すべきとしている。
 例えば、衝突被害軽減システム等の事故被害を軽減する新技術の場合、現在のシステムでは人間並みにあらゆる場面で的確な認知→判断→操作を行うことができない以上、システムによって衝突の手前で車両停止するようにするとドライバーに「いつでも衝突する前に止まってくれる」との過信を与え制動操作がおろそかになる、との可能性について配慮すべきと考えられている。
 従って、運転支援技術の実用化にあたっては、「運転支援の考え方」に基づく確認を行う必要がある。

(頂いた御意見)
 事故を起こすドライバーは「運転支援の考え方」を配慮して支援をする対象のドライバー以外のドライバーであることが多いので、事故低減にはそれも考慮して、その人達用に導入の考え方もあっても良いのではないか。
 (理由)事故低減にはドライバーとしての責任と義務が当然ある。それを徹底することにより、恐れることなく導入できると思われる。悪質ドライバーには別の考えで強制介入していくことも考えることが事故低減にダイレクトにつながると考えられる。
(国土交通省の考え方)
 運転支援の考え方は、いわゆる悪質ドライバーはもちろん、事故低減に対する責任と義務の自覚を持つドライバーも含めた全てのドライバーを想定して、運転支援技術の実用化に伴い安全上配慮すべき事項を列挙したものである。
 いわゆる悪質ドライバーに限った場合の考え方の検討は予定していない。

(頂いた御意見)
 「運転支援技術」が搭載されていない、最低限の車での定期的講習が必要である。
 (理由)いくら安全装備を増やしても、それが当たり前になれば、以前よりハイスピードで事故を起こしてしまい、被害が大きくなる。よって運転者は、これらの運転支援装置の効果を再確認できるよう、免許取得時や免許更新時などにこれらの装備が一切無い、最低基準車の講習を義務付けなければならないと思う(ドラムブレーキ、パワーステアリング無し、スタビライザー無し、非力なエンジン等)。特に、最近は大型車の事故が目立つ。性能の向上(スタビライザー、エアサスペンション、ハイパワーエンジン、エアブレーキ、フルフロートキャビン)により感覚が麻痺しやすい現在の自動車だけに、定期的にそれらの機能の無い最低基準の車を運転させ、初心に戻ることを定期的に行わなければ、感覚がますます麻痺していくと思う。
(国土交通省の考え方)
 「運転支援技術」とは、安全運転を支援するために、自動車周囲や自身の情報を把握し、これら情報を処理することにより、情報提供・警報を行い、又は自動車の制御を行うものである。運転支援技術のうち、「運転支援の考え方」に基づいて安全上留意すべき事項の確認を行うものは、システムが周囲の環境等を認知・判断することにより、ドライバーが通常行っている操作の一部をシステムが支援する技術である。例えば、被害軽減ブレーキやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)がこれにあたる。意見中のスタビライザー、エアサスペンション等は、「運転支援の考え方」に基づいて確認を行おうとする運転支援技術ではない。
 「運転支援の考え方」に基づく確認においては、「4ドライバーがシステムに過度の依存や不信を招かず適正な信頼が得られるようにシステムが配慮されていること」等について確認することとしている。
 意見中のスタビライザー、エアサスペンション等については、これによって交通事故が悪化したとの事実はこれまでのところ確認されていない。

(頂いた御意見)
 大型車の過積載の防止、飲酒運転の防止の対策を追加できないのでしょうか。
(国土交通省の考え方)
 「運転支援技術」とは、安全運転を支援するために、自動車周囲や自身の情報を把握し、これら情報を処理することにより、情報提供・警報を行い、又は自動車の制御を行うものであり、例えば、被害軽減ブレーキやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)がこれにあたる。
 これまでのところ「運転支援技術」として大型車の過積載の防止対策や飲酒運転の防止対策が取り上げられたことはない。これは、運転支援技術は通常ドライバーの運転操作の一部を支援しようとするのに対して、過積載や飲酒運転は運転操作以前に避けなければならない問題であるためと考えられる。


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