大臣会見

冬柴大臣会見要旨

2008年6月20日(金) 10:10 ~ 10:41
国土交通省会見室
冬柴鐵三 大臣

閣議・閣僚懇

 おはようございます。本日の閣議は、当省に関係するもので、特にご報告することはありません。 私から1点報告がございます。
 閣議前に第12回観光立国推進戦略会議があり、これは座長は牛尾治朗さんですが、私ももちろん出席をさせてもらいました。ここで、観光庁が10月に発足するに当たりまして、いろいろなご提言を賜りました。その中で最も大きいのは、2020年に訪日外国人旅行者の数を2千万人にするという目標を立てて、発足するべきであるというご意見を頂戴しました。2千万人にするということは、1千万人とは質的にインフラとか、あらゆる面で変わってくる。こういう中長期的戦略を作成すべきであるという意見を出されました。その他、来月開催される北海道洞爺湖サミットについて、是非、観光の面でもサミットを成功させようといった議論が行われました。北海道知事、地元の北海道観光振興機構会長である坂本さんもご出席になりまして、その心構え等をご報告されました。我々としましても、観光の面でもたくさんの外国メディアが来られ、北海道だけでなく、日本の観光魅力を発信する絶好の機会だと思いますので、是非頑張ってまいりたい。このような決意をした次第です。

質疑応答

(問)2点質問します。1点目は、一部航空会社でストライキがありまして、労働者の権利としてストライキは認められますが、一方で、顧客の移動の足を確保するという公共交通機関の使命もあると思います。この点についての大臣のご所見をお願いします。もう1点は、今日、改正建築基準法の施行から1年になりますが、現場で混乱が起こったり、また、対処の問題ですとか、1年間いろいろ問題が起こったのですが、これについてのご感想と今後の方向性、方針を教えてください。
(答)ご案内のとおりですが、日本航空で19日に34便欠航しまして、約5千人に影響がでたほか、日本エア・コミューターでは18日に86便、19日に90便の計176便が欠航して、約3千9百人の乗客に影響がでました。本日20日は、国内線、国際線共に平常通りの運航となる見込みです。本件については、労使間の関係に関わるものですし、国土交通省としてコメントする立場にはありませんけれども、しかし、外国に行く場合唯一の公共交通で、それしか無いわけでして、こういうものについての、輸送業務を行う者は、労使共に安全ということを大事にするとともに、それと併せて乗客の利便を尊重していただくことが必要だと思います。憲法上の権利ですので、それに対してどうこう言うことはありませんが、我々としましては、常にそういうことは考えて労使共に、公共交通を担う者として、是非そういうことを配慮していただきたいという希望は持っています。
 もう一つの建築基準法ですが、昨年の6月20日に改正建築基準法が施行されまして、大変大きな改正を行ったために、十分に準備したつもりですけれども、中々習熟していなかったという点がありまして、建築着工が大変な落ち込みをしてしまいました。7月、8月、9月は大変混乱しましたし、国民経済にまで影響を与えるということになってしまったことは、私も再々国民にお詫び申し上げていますけれども、改めてお詫びを申し上げなければならないと思います。ただ、その後、昨年9月を底にしまして、回復しています。今年の4月は改正建築基準法施行後最高の9万8千戸の着工になっています。対前年同月比では、前年が129万戸であったわけですが、パーセントにして1桁台の減ということは、ほぼ例年並みに落ち着きつつある。私はこれを、ぜひ、今後、戻さないようにしながら落ち込みが一過性のものであったということにしたいし、また、国民経済に大きな影響を与えるということにならないように、是非、今後も注意深くやっていきたいと思います。また、これまで、審査側あるいは設計側双方の関係者の並々ならないご協力を、その苦労をしていることに対しても感謝を申し上げなければならないと思います。引き続き頑張ってまいりたい。なお、建築資材等が暴騰しています。先日も発表させていただきました「単品スライド制」を導入するというのも一つの手でございますが、建築業は中小企業が非常に多いものですから、セイフティーネットというものに十分配慮をしながら、金融面でも支援をしていかなければならない、手抜かりがあってはならないと思っているところです。

(問)日本航空のストライキの関係ですが、実際、欠航便を出すことになった日本航空ジャパン乗員組合が二日間ストライキを行ったことで、欠航便が発生したことになったのですが、組合員の平均年収が2200万円で、今回そこから5%賃金がカットされるということに一番抵抗しているということです。住宅ローンが払えないや教育費が払えないなど、会見までしてそういうことを言っているのですが、個人的なご感想で結構ですのでお話しいただけますか。公共交通機関を担うものとして、2200万円の年収をもらっていて5%の賃金をカットされるのは困ると、そしてストライキを行って実際に欠航を出すということですが。
(答)賃金というのは、労働の対価です。したがいまして、労働の質、内容、それに至るまでの教育・研修など、そういうものを反映したものがその人に対する賃金ということです。そして、それは誰が評価するのかということになりますと、これは労働者と使用者との間の話合いによって決められるというものだと思います。それを変更する場合には、被用者の意見を十分聞かなければならないし、被用者の意見が通らない場合には、労働基本権に基づく権利として、争議権その他があるというものでありますので、第三者が割ってはいる話ではないです。ですから、一般の平均年収がこれで、2200万円は高いではないかとかこういうことを言うのもなかなか難しい。外国の例や他業種などと比較してやっていかなければならないと思いますが、航空企業、操縦するあるいはその中で働くというのは、非常に時間的にも拘束される時間も長いでしょうし、非常に質の高い、これも語弊があるかもしれませんが、労働しておられる評価もあると思いますので、一概に高い低いは言えないと思います。ただ、申し上げたいのは、そういう人たちが、会社も労働者も含めて先ほど申しましたように乗客の安全を何より第一義的に考えなければならないということ、これは全く争いはないですね。しかし、乗客の利便も考えていただきたい。安全と利便というのは、公共交通に求められる基本的な問題だと思います。そういう観点で、その自覚に立って、権利を行使する場合も、こういう自覚に立っていただきたいと希望するだけです。

(問)観光庁ですが、10月に発足すると、そろそろ初代長官というかトップが誰なのかそろそろお決めにならないといけないと思いますが、いつ頃までにお決めになるご予定で、例えば民間という噂もありますが、どのような方がなられるのか。国交省では、観光大使にアニメのキャラクターを任命されるなど、場合によっては世間を驚かすような人事もあると思いますがいかがですか。
(答)なるべく早く。皆さんが納得できるような人選をしないと、本当に今日の話を聞いてましても、観光庁設置ということに対しまして、多くの方が大変な期待をしていただいているということを知りました。ですから、そのトップにふさわしい人、こういう人を是非、早急に決めなければなりませんし、その人選によって、みなさんが良かったと思っていただけるのか、何だと失望をされるのか、これは全く雲泥の差ですので、慎重に皆さんの意見を拝しながら、早急に決めたいと思います。もう決める時期も近いと思いますし。

(問)淀川水系の4ダムの整備計画について、今日の午後、近畿で発表する予定ということで伺っていましたけれど、今日、朝刊の段階でもうその方針について一部報じた社もあったようですので、それを踏まえてこの場で引き続きお聞きしたいんですけど、流域委員会が反対姿勢を見せていて、そういった動きがある中で、建設を前提とした計画案を公表してしまうということは、流域委員会の意向を無視した形になると思います。少なくとも、流域委員会側はそのように取ると思うんですけど、そういった反対意見が流域委員会からある中で、建設を盛り込んだ計画案を発表するということは、どうしてそのような考え方をされたのか、お考えを。
(答)まだ、公表していない。午後の話です。流域委員会につきましては、法律を読んでいただくとわかりますけれども、流域委員会の意見を聴く「必要があると認めるときは」ということがありまして、そのような判断をして、いろんな委員を選任して、これはもうご存じだと思いますけれども、6年間、平成13年から19年1月まで、部会を入れると延べ582回、所要額21億を超える経費がかかっています。本当に異常な回数だと思います。そしてそれは一旦中断しましたけれども、平成19年8月から20年4月まで、これも55回、本委員会だけでも20回、延べ約90時間に亘って議論をされたんです。その結果の意見書ですけれども、お読みになったと思いますけれども、原案をもう一度出し直すべきという意見ですが、その議事録をちょっと読みますと、必ずしも学者の先生方はそういう意見を持っておられないんです。明確におっしゃっている。そしてそれを盛り込むようにしてほしいということをおっしゃってるんですが、議事録に残すからということで、そういう本文になってますけれども、両論併記のようなこと、結論はそうだったんじゃないのかなと私は思います。それで、いつまでやるのか。今、地球温暖化の影響で気候が変化している、そして今まで100年に一回であった洪水が、30年に一回来ると、北海道、東北はもっとすごくなるというのが公表されてますよね。そういう流れの中で、最終的に破堤をしたとか、大洪水に見舞われたときに、誰が責任を負うのかということになれば、河川管理者ですよ。そういう意味で、河川管理者としての主体的な意志、意見というものをやはり持たなければならないと思います。そういう意味ではいろんなご意見を頂戴し、そしてこれを流域委員会だけではなく、都道府県等の首長の意見も聞かなければいけないことになっています。それから、それ以外に関係住民のご意見も伺うことになっています。そういう手続きを全部踏んだ上での結論ですから、ワンステップ進めるということだと思っています。また、それに対するご意見も伺うことになるわけですが、決してそれは流域委員会の意見を軽視するとか、そういうことではありませんし、今後も私は、それで流域委員会が終わりということにするつもりは全くありません。ご意見を頂いた、これほど熱心に、また、これほど長期間、意見を戦わせていただいた方々ですから、それは尊重しなければなりませんが、その結論で国民の安全安心は本当に担保できるのかとうい点について、これはやはり河川管理者が主体的に判断をしなければいけない時期が来ていると思います。

(問)今おっしゃった経費の関係ですが、21億円超から23億円程度のようですが、かかりすぎだというお考えだと伺いました。逆に言うと、それだけかけた検討結果が最終的に分裂するような形で流域委員会の意向を取り入れないとなると、23億円が全く無駄になってしまうという言い方もできると思いますが。
(答)そんなことはないでしょう。そういう過程で議論されたことは尊重されています。ですから、その過程で検討された意見は、尊重すべきは尊重する。結論を出さなければいけません。では流域委員会が最終責任を持つのでしょうか。そうではないでしょう。責任主体はやはり河川管理者なんです。判断するにあたって、ご意見を伺うというのが法の趣旨であり、流域委員会も首長もいろんな方々の意見を伺う仕組みになっているわけです。したがって、意見がそこで割れた場合には何もできないのかということになれば、それはそうではない。小田原評定という言葉がありますが、いろいろな議論をしている間にもし大洪水が来たらどうするのか。その時にはもっと違う責めを負うことになります。私はそういう思いです。したがって、粛々と進めるべきものは進め、尊重すべきものは尊重していかなければならないと思います。私が就任してその話を聞いて、会合を何回も開き結論が出ないというのは、これはちょっと違うのではないか、どうなっているのだと申し上げたことがあります。しかし、ここまで来ました。そして、それだけ議論した結論が原案をもう一度出し直しなさいということでは、しかもそれが多数決か何かでやられたと思いますが、専門の学者の先生方は違う意見を明瞭に述べられています。そういったものが結論に反映されていないという点も注目しなければならないと思います。

(問)流域委員会側の意見合意のプロセスについて、若干の懸念というか疑義を述べていらっしゃると受け止めてよろしいのでしょうか。
(答)いいえ。ただ全体を、出てきたものはお受け取りしますが、その結論が形成される前段階が大事でしょう。どういった議論があったのか、そういうことも私は配慮しなければならないと思います。これだけの会合を開いているのですから。その中で出てきた意見があるわけです。

(問)国会ですが明日会期末、事実上今日で閉会です。この通常国会いろいろと振り返ると、国土交通省は批判等も含めてあったかと思いますが、振り返って率直に印象や感想をお願いします。 
(答)道路特定財源に始まって、それに終わったというぐらいに長時間審議をしていただきました。その間、必要な道路は整備しなければならないということをいろいろと申し上げてきましたが、いわゆる無駄遣いというものが指摘をされました。私も本当に恥ずかしい思いをしたこともありましたし、直ちにこれは改めなければならないと思った点もありました。それなりに改革案も政治主導でやらせていただききましたが、今後はこれをきちんと実行していき、見守っていかなければならないという感を深くしています。ただ、今国会に11本の法律と、1件の北朝鮮船籍の船の入港禁止に関する承認案件を提案させていただき、そのうち9本を成立させていただくことができました。2本は積残しになりましたが、衆議院で積み残したということですが、9本の中には観光関係が3本ありました。観光庁設置ということで、国土交通省設置法の一部を改正する法律を通していただいた。観光圏、圏はゾーンですね、観光圏整備法と言っていいと思いますし、歴史的まちづくり法と言ってもいいと思いますが、そういう2本の法律を通していただき、できるだけ質の高い観光を実現していこうということがありました。また、海の関係でも大事な法律が通りました。海上運送法及び船員法の一部改正法ということで、トン数標準税制の導入が決まりました。これは業界の悲願でした。我が国の外航船、外航運送業は日本の生命線を担っていらっしゃるのですが、国際競争力を著しく喪失しました。1580隻もあった日本籍船は、今95隻に減っています。5万7千人いた日本人船員は今2千6百人まで激減しました。なぜか。それは、やはり、円レートが急激に上がったことが一つあります。それ以外に海運国が等しく採用している自国船を守る税制、トン数標準税制はその典型ですが、日本はそういうものを採用するのが遅れました。そういう二つの問題で競争力を失っているわけですが、やはり国民の安全保障を考えた場合、食料の61%を運んでいただいている船がそのようなことになっていていいのかと考えたときに、今回の法改正は非常に大きかったと思っています。その他にも海に関する法律案を通していただきました。そういういろいろな思い出を刻む国会でした。

(問)国会全体がねじれているような状況の中で通常国会が行われましたが、その中で、提出された法案が、国土交通省もそうですが、全体でも、7、8割ぐらいの成立に止まっています。こういうことを踏まえ、このねじれ状況の中での国会運営のあり方は、国民の視点から見たときに、どうあるべきと考えていらっしゃいますか。
(答)我が国は二院制を採っていますので、衆議院、参議院で多数派が異なるというねじれももちろん起りうるわけですけれども、それを埋めるための努力を議会自らがやっていかなければならない重大な課題だと思います。平成10年に自由民主党が、当時、参議院の過半数を占めるためには127議席以上取らなければならないところ、104議席しか取れず、23議席足りなくなるという事態がありました。平成10年の7月のことです。そのとき公明党が24議席持っていました。23議席足りないときに24議席持っている政党があるわけですから、それが野党に行くのどうかで、ずいぶん変わります。変わるというよりも、政権がひっくり返るわけです。当時は金融問題、北海道拓殖銀行が倒産するとか、日債銀や長銀まで倒産するのではないかという、大変な金融大恐慌前夜のような雰囲気の中だったわけです。私ども公明党としては、これをまず回復するということ、そして、銀行をこれ以上倒産させないということ、それとともに、中小企業が今以上に、過去最高に倒産していましたから、中小企業に対する信用供与してくれるのであれば、金融機能回復に対しても、協力しようではないかということでした。自由民主党に、当時、金融機能の早期健全化法に私どもは賛成しようと申し、その代わりに、中小企業金融安定化特別保障制度を成立させることもぜひ承認してほしいと申しました。30兆円という枠でしたが、これを呑んでくれましたので、その後に連立という連立前夜でした。それを思い返しますと、今、参議院において与野党の差はそれほど大きくはなく、17ぐらいではないでしょうか。そういう意味で、そういう一つの国がひっくり返るような政策について協力、協働することによって、こういうことができてきたということも一つの参考になるのではないかと思います。そういう努力はされていると思いますし、必要だと思います。

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