大臣会見

斉藤大臣会見要旨

2024年3月8日(金) 10:02 ~ 10:23
国土交通省会見室
斉藤鉄夫 大臣

主な質疑事項

冒頭発言

(大臣から)「建設業法及び入契法の一部を改正する法律案」の閣議決定について
      「住宅セーフティーネット法の一部を改正する法律案」の閣議決定について

(大臣)

本日の閣議案件で、私から1点報告があります。
本日の閣議で、国土交通省提出の2本の法律案が閣議決定されました。
1本目は、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」です。
この法案は、国民生活や経済活動を支える建設業が将来にわたって「地域の守り手」としての重要な役割を果たしていけるよう、その担い手の確保にむけた対策として、労働者の処遇改善や働き方改革、建設現場の生産性向上などに総合的に取り組むものです。
2本目は、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律案」です。
この法案は、住宅セーフティネット機能の強化に向けて、住宅の確保に配慮を必要とする方が賃貸住宅に円滑に入居できる市場環境の整備や、住宅と福祉が連携した、地域における居住支援体制の強化を図るものです。
それぞれの法案について、後ほど資料を配付いたします。
詳細は事務方にお問い合わせください。

(大臣から)建設業団体との賃上げ等に関する意見交換会実施について

(大臣)

このほか、私から1点報告があります。
本日「建設業団体との賃上げ等に関する意見交換会」を、岸田総理と関係閣僚の出席のもと開催しました。
この場で、建設業団体から、賃上げと働き方改革に向けた決意をお聞きした上で、国土交通省と建設業団体との間で、一層の賃上げの推進、具体的には「5%を十分に上回る上昇」を目標とすることと、働き方改革の徹底に関する申し合わせを行ったところです。
また、総理からも、この申し合わせに沿った賃上げの強力な推進について要請があったほか、官民挙げて「成長型経済」への転換を図り、建設業の担い手確保と持続的な発展につなげていきたいとの御発言がありました。
国土交通省としても、建設業の賃上げと働き方改革をさらに進め、担い手確保と持続可能な建設業の実現に全力を尽くしていきたいと考えています。
詳細は事務方にお問い合わせください。
私からは以上です。

質疑応答

東日本大震災からの復興と、能登半島地震からの復興へ活かす教訓について

(記者)

週明けの11日で東日本大震災からちょうど13年となります。
これまでの復旧・復興に向けた国土交通省の取組と今後の対応について、改めてお聞かせいただきたいのと、最近では能登半島地震がありました。
東日本大震災の復興から今回活かすべき教訓などありましたらこちらもお聞かせください。

(大臣)

来週11日で、東日本大震災の発生から丸13年を迎えます。改めて、犠牲になられた方々に哀悼の意を表し、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
これまでの13年間、国土交通省として、復旧・復興に全力で取り組んでまいりました。
その結果、基幹インフラの復旧・整備や、復興まちづくりなど、ハード事業は地震・津波被災地域で概ね完了しました。
引き続き、事業の完了に向けて進めていきたいと思っています。
他方で、福島の原子力災害被災地域では、帰還困難区域からの避難者を含め、未だに不自由な生活を強いられている被災者の方々がおられます。
国土交通省としては、福島の復興・再生に向けて、拠点となる市街地やインフラの整備、地域公共交通の確保、観光復興の促進など、生活やなりわい基盤の再建に取り組んでいきたいと思っています。
そして、能登半島地震の復旧・復興に向けては、どういう教訓があったかという御質問ですが、特に、今後進めていく「復興まちづくり」における取組などにおいて、東日本大震災のみならず過去の災害で得られた教訓・ノウハウを最大限活用して、被災地の取組を全力で支援していきたいと思っています。
今後も引き続き、東日本大震災の被災地の皆さまと能登半島地震の被災地の皆さまに寄り添いながら、省を挙げて、被災地の復旧・復興に全力で取り組んでいく決意です。

建設業法・入契法 改正法案の狙いと期待する効果について

(記者)

冒頭、建設業法の改正案の閣議決定と、建設業団体と意見交換を今朝されたということで御報告ありましたけれども、法改正の方でお伺いしたいのですが、これまで中央建設業審議会の場ですとか、そういうところでこれまで制度改正についていろいろ議論を積み重ねてきて、今回の法改正について、建設業界からの大きな期待感というのは我々も伺っているところです。
そういったものに対して、大臣としてそのような業界内外の声をどのように受け止めて、これから法改正を契機として、持続可能な建設業というのをどのように目指されていくのかお考えをお伺いしたいです。

(大臣)

今回の法改正に向けての我々の狙いと、期待する効果について御質問がありました。建設業は、今回の能登半島地震でも災害復旧の最前線を担うなど、重要な産業である一方で、処遇や働き方などの就労条件が厳しく、担い手確保が急務となっています。
このため、今般、必要な対策を強化するための法律案を提出することとしました。
これが狙いです。
具体的には、現場技能者の賃金原資となる適正な労務費の確保と、下請けまでの行き渡りのため、著しく低い労務費による契約を、下請けも含め禁止するとともに、資材高騰に伴う代金変更協議のルールを整備し、労務費へのしわ寄せ防止を図ります。
さらに、働き方改革や生産性向上の観点から、工期ダンピング対策の強化や、現場技術者の専任規制の合理化などの措置を講じることとしています。
これらによって、処遇改善と働き方改革を強力に進め、将来にわたって必要な担い手が確保できる、持続可能な建設業の実現を目指していきたいと決意しています。
これらの取組は、発注者である企業等にとっても、建設サービスの提供を、今後も持続的に受けられるようにするためのものです。
単に建設業だけではなくて、発注者にとっても非常に重要なことである、こういう観点を持っています。
人口減少が進展する我が国において、経済成長や防災対策などに必要な投資を、安定的に推進する体制を確保する観点から、建設業界だけでなく、経済全体で相互に協力して取り組んでいくことが必要であると考えています。
経済全体、設備投資を担う建設業界、その設備投資ができなくなれば、経済全体に大きな影響が及ぶわけです。
そういう意味で、この建設業界の担い手確保、そして働き方改革、持続可能性を高めることは、経済全体にとっても非常に大きな意味があると考えています。

建設業法改正の「専任義務の合理化」についての具体的内容や狙いについて

(記者)

今回、閣議決定した改正法案、建設の方で今も説明ありましたが、専任現場の合理化という部分がありました。これはいわゆる現場監督の話につながってくると思うのですが、この合理化を進める狙いというのをまずお聞かせください。

(大臣)

今般の法律案では、建設現場に配置すべき技術者について、専任規制を一定の範囲で合理化することとしています。
これは、今後技術者が減少するなかにあっても、工事の安全や品質を確保しようとするものです。
具体的には、「ICTを活用して遠隔から現場確認が可能である」等の条件のもと、「建築一式工事にあっては請負金額が2億円未満のもの」、「その他の工事にあっては1億円未満のもの」については、一人の技術者が二つの現場を兼任できるようにします。
これは、ICT技術の活用により、一人の技術者が二つの現場の施工を同時に管理することが可能となるものであり、併せて、国が示す指針に沿ってICTの活用による現場管理の効率化を進めることで、建設業の生産性が大きく向上することを我々は期待しているところです。
このような観点から、今回このような専任義務の合理化ということで法改正を行っていきたいと、今日閣議決定させていただきました。

時間外労働の上限規制が収入減少を招くとの懸念の声への対応について

(記者)

もう一点が建設業界で、下請け企業からは働き方改革が必要だということは分かるのだが、特に従業員からは残業が減ることになると残業代が減って手取りが減ると、今言っている待遇改善と働き方改革の両立が難しいのではないかと、そうすると逆に担い手が、目指す人が減ってしまうのではないかという懸念の声もあるのですが、そのようことにならないためにどういう対応が必要だと考えているかお聞かせいただければと思います。

(大臣)

私もいろいろ現場に入って、声を聞くとそういう不安な声を聞きます。
決してそういうことがあってはならないと我々決意しています。
そのためにも今回賃上げをしっかりやっていこうと今日も申し合わせたところですが、時間外労働の上限規制は、5年前に導入が決まり、他の産業ではすでに適用が始まっていますが、建設業については、5年間、これが猶予されており、いよいよ本年4月から適用が始まります。
労働者の健康と安全を守ることを目的とした規制であり、また、若者を始めとした担い手確保、これによる持続可能な産業への転換という点でも、この規制は、しっかりと遵守していただくことが必要です。
若い人たちが入ってきやすい働き方、これは持続可能な建設業にしていくためにどうしても必要です。
その上で、労働時間の短縮が収入へ影響を及ぼすことがないように可能な限りこの影響を抑制する観点も含め、必要とされる技能や厳しい労働環境に相応しい賃上げに取り組んでまいります。
まず先ほども申し上げましたが、令和6年度は、本日の建設業団体との会合を受け、官民挙げて「5%を十分に上回る上昇」を目指してまいります。
また、本日閣議決定した法案に基づく措置を着実に実行に移し、適正な労務費確保と下請業者までの行き渡り、また工期についてもしっかりと発注者にその点を徹底させることも含まれています。
さらに、ICTを活用して現場の生産性を一層高めることで、賃上げの原資を確保し、現場技術者の処遇改善につなげていきたいと思っています。
こういう生産性を上げる努力を一生懸命やることで、官民挙げて、経済界全体で、この民間設備投資を支える建設業を持続可能なものにすることが重要であると認識していただいて、この2024年から始まる規制が現場の技能者、技術者の処遇の悪化に結びつかないように、また却って生産性が上がるように、全力を挙げていきたいと思っています。

北陸応援割が石川県を除き予約開始となるにあたり、復興に向けた期待について

(記者)

今日から北陸応援割が石川県を除く3県で受付がスタートします。
観光業からの復興も含めた期待感などありましたら御見解をお願いします。

(大臣)

今般の能登半島地震により、北陸地方においては、通常通りの営業が可能な地域でも予約のキャンセルが相次ぐ宿泊施設が多数存在するなど、観光業界が大きな打撃を受けています。
こうした状況を踏まえ、本年3月の北陸新幹線の金沢ー敦賀(つるが)間開業の機会も捉え、北陸応援割を3月16日から実施することとしています。
今日から石川を除く3県については予約を開始する。石川については12日からです。
キャンセルが相次ぐ中で、風評被害を早期に払拭するため、失われた分の旅行需要を新たに喚起することで、北陸4県の観光復興に繫がるよう期待しているところです。
北陸全体が元気になれば、それが能登の復旧・復興を支援することになると考えます。
また、最も被害が甚大であった能登地域においては、まずは全力で復旧・復興に務めていく必要があるところです。
その上で、より手厚い需要喚起策を図っていく必要があるところ、その内容については、復旧・復興状況を見ながら、適切な支援の在り方を検討し、実施していきたいと思っています。
国土交通省としては、北陸応援割の適切な実施により、北陸4県の観光復興に向けてしっかりと取り組んでいきたいと決意しています。

産業全体の担い手不足への対応について

(記者)

建設業もそうですし、少し前で言うと物流もそうです。
いわゆるエッセンシャルワーカー、整備業に加えて最近だと製造業も人が足らない、サービス業はもっと人が足らない、縦には建設業ギャラ上げますよ、整備業も運輸業もとおっしゃるのですが、政治はそれで良いのでしょうか。
少子高齢化とおっしゃっているように日本人がどんどん減っていく中で、どの分野も担い手が必要なわけです。
縦にそうやって賃上げをします、残業を減らします、労務環境を改善しますとか政府はおっしゃるが、横軸通したらどこもしていないわけです。
どこから人を持ってこようと大臣お考えなのか。
公明党もずっとおっしゃっている割には縦に処遇改善をしているとPRされるが、横軸が全く入っていない。
そこに違和感があるのですがいかがでしょうか。

(大臣)

横軸が入っていないとは思いません。
岸田総理の施政方針演説を見ましても、これまでのコストカット型の経済から価格転嫁を認め合って、経済全体を大きくしていこうという基本的な考え方が示されています。
そしてそれを実行するにはそれぞれの産業に事情や特徴がありますので、それぞれの産業ごとにやっていく。
また、国土交通省が所管する建設業や物流業においては非常に特殊な事情があります。
これまでどちらかというと発注者に対して非常に弱い立場にあって、中々価格転嫁が行われない中において、全産業よりも長い労働時間、全産業よりも低い処遇が固定化していました。
それをなんとか打破したいということで、全体で経済を拡大基調に持っていこうということと併せて、こういう特徴をもっている物流、建設については特別な考え方で対応していく。
特に私が感じているのは、総理もそうですが、発注者の理解がなければ中々進んでいかない。
そういう機運を盛り上げていこう。
これは建設業、また物流業に特異な事情ではないかと思います。
そういう意味で決して縦割だけでやっているわけではないと御理解いただきたいと思います。

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