大臣会見

斉藤大臣会見要旨

2024年3月29日(金) 9:02 ~ 9:29
国土交通省会見室
斉藤鉄夫 大臣

主な質疑事項

冒頭発言

(大臣から)自家用車活用事業について

(大臣)

本日の閣議案件で、特に私から報告するものはありません。
このほか、私から1点報告があります。
自家用車活用事業についてです。
地域交通の担い手や「移動の足」の不足といった課題について、昨年秋以来、デジタル行財政改革会議や規制改革推進会議、交通政策審議会にて議論を行い、地域の自家用車や一般ドライバーを活用した新たな運送サービスの検討を進めてまいりました。
この度、この新たな運送サービスについて、「自家用車活用事業」として、制度内容を決定しました。これを踏まえ、4月からの実装に向けて、まずは、すでに不足車両数の特定作業が完了している、東京・横浜・名古屋・京都の四つのエリアにおいて、タクシー事業者等において準備が進められます。
さらに、四つのエリア以外についても、順次、実装できるよう、国土交通省において、不足車両数の特定作業を進めてまいります。
なお、検討にあたっては、パブリックコメントにて、約8000件の御意見をいただきました。
これらの御意見はしっかりと受け止めさせていただき、4月から始まる制度にはこのうち一部を反映しています。自家用車活用事業により冒頭、申し上げた課題である地域交通の担い手や移動の足の不足という課題に対して、解消が進むことを期待しています。
後ほど資料を配布します。
詳細は事務方から説明します。
私からは以上です。

質疑応答

2024年問題への対応や公共交通のドライバー不足対策への意気込み、対応について

(記者)

来週から4月になり、いよいよドライバーや建設業を対象とした時間外労働の上限規制が始まります。
物流と建設業の2024年問題への対応ですとか、公共交通ドライバーの不足に向けた大臣の意気込みですとか今後の対応についてお聞かせください。

(大臣)

物流、建設業、公共交通は、いずれも、国民生活や経済活動を支える重要な産業であり、2024年問題も踏まえ、将来にわたって担い手を確保できるよう、処遇改善などの課題に取り組む必要があります。
物流については、標準的運賃の8%引上げやトラックGメンによる荷主等への是正指導強化、物流DXを進めるとともに、今国会に提出している法案により、適正な運賃導入と物流効率化を進め、物流の持続的成長を実現してまいります。
こうした作業を通じて、物流の2024年問題、対応していきたいと思っています。
また、魅力的な産業になるようにしっかり、これらの政策を推し進めたいと思います。建設業については、週休二日工事を更に拡大するとともに、無理な工期設定の是正をしっかりと進め、さらに、今国会に提出している建設業法等の改正法案により、賃金原資となる労務費の確保とその行き渡りを図り、担い手確保を強力に進めてまいります。
工期を無理のないものにすることと、働き手の処遇改善を行って、若い人たちが魅力を感じてたくさんの人が入ってくる、そういう産業にしていくことが、この2024年問題に対しての最も基本的な課題解決に繋がると思います。
バスやタクシーについても、現在、多くの事業者において運賃改定を進めているところです。
今後も、運賃改定を原資としたバス・タクシードライバーの賃上げを進めるなど、様々な観点から公共交通の担い手確保を図ってまいります。
国土交通省としては、これらの取組を通じて、関係省庁・産業界とも連携して、持続可能な物流、建設業、公共交通の実現に向け、全力を尽くしていきたいと思っています。

芸備線再構築協議会について

(記者)

広島市で26日に開かれたJR芸備(げいび)(せん)の再構築協議会について伺います。
協議会では交通体系の見直しを求めるJR側と存続を望む自治体間の意識の溝が浮き彫りになりました。
また、広島県は内部補助について、JR側に説明を求める考えを示すなど、自治体間でも意見は様々でした。
こうした意識の溝をどう受け止めて、国として今後、どう調整して結論を得ていくお考えなのか伺います。

(大臣)

26日に、第1回芸備線再構築協議会が開催されました。協議会では、JR西日本から「地域のまちづくりに合わせた、今よりも便利で、持続可能性の高い交通体系の実現に向けた議論をお願いしたい」といった意見があったのに対し、沿線自治体からは「引き続きJR西日本による運行を望む」といった意見が多数あったと承知しています。
また、あわせて、沿線自治体からは、「データに基づく議論を行うべきだ」、「JR西日本が現状どおり運行するのが望ましいが、持続可能な交通体系の実現に向けて、幅広く議論・検討をすべき」、といった様々な意見があり、現時点における関係者の率直な問題意識が表明されたものと受け止めています。
私も報告を聞きましたが、まずは第1回目ということで、皆さまが各立場で今考えていることを率直にお話いただいたと感じました。
今後の協議会においては、沿線自治体からいただいた意見も踏まえつつ、客観的なファクトとデータに基づいた分析を活用し、まちづくりや観光振興などの観点から、地域にとってあるべき公共交通とは何か、それを関係者の間でどのような役割分担で維持していくかなど、多面的な観点から議論を行っていく必要があると考えています。
国土交通省としても、「廃止ありき」、「存続ありき」という前提を置かず、中立的な立場から、自治体や利用者を始めとする地域の声をよく聴き、地域の実状に則した利便性や持続可能性の高い地域公共交通が実現するよう取り組んでまいります。
第1回目の再構築協議会ということで、私も非常にどうなるのかという思いで見ていましたけれども、先ほど申し上げましたように、まずは、各主体者が率直に御意見をおっしゃったこと、これまで地域公共交通について、事業者任せだったところもありますが、積極的に地方公共団体、地域、そして我々国もそうですけれども、積極的に関心を持って関与していこうという姿勢が皆さんにあられたのは大変すばらしいことではないかと思っています。
 

(記者)

今の質問に関連して、再構築協議会では3年を目途に存廃の方針を示すことになっています。
現状でJRと自治体間で隔たりがある中で、初会合で示されたスケジュールで進めて、3年という期間で結論を得られるのか大臣の考えをお願いします。

(大臣)

再構築協議会における協議については、地域交通法に基づく基本方針において、地域公共交通としての利便性と持続可能性を早急に改善する観点から、協議開始後3年以内を目安とする合理的な期限内に、再構築方針を作成すべき、とされています。
先ほど申し上げたとおり協議会では様々な御意見をいただきましたが、国土交通省としては、3年以内を目安として方針を作成できるよう、最大限努力していきたいと思っています。
具体的には、中立的な立場を堅持しながら、調査事業や実証事業も活用しつつ、ファクトとデータに基づき議論を進め、関係者間の信頼関係の構築に努めるなど、合意形成に向けて取り組んでまいります。
先ほども申し上げましたが、まずは第1回目ということで、皆さんが今考えていること、感じられていることをおっしゃっていただいた、そういう意味では、当然意見の違い、隔たりはあるかと思いますが、先ほど申し上げたように、皆で話し合って、この地域公共交通を守っていこう、再構築していこうという熱意は皆さんにおありになったと報告を受けています。
そういう熱意、そこからくる信頼関係、そういうものの議論の積み重ねで、必ずや結論が得られるものと確信しています。

鉄道事業者による通学割引について

(記者)

文部科学省から国土交通省宛てに通学割引普通回数券の指定要件について、柔軟な運用を求める要望が出ています。
鉄道事業者は、運賃収入への大きな影響を理由に拒んでいます。
短期的には減収かもしれませんが、一方で国土交通省をはじめ、周辺自治体が利用者を増やそうと、財政的な支援も含めて努力している中で、こうした経営判断というのは鉄道の未来を明るくするものなのでしょうか。
大臣の御所見をお願いします。

(大臣)

通学定期などの割引は、毎日の通学などによる運賃負担を軽減することを目的としており、非常に高い割引率となっているため、各鉄道事業者において、通学頻度などの客観的な基準を設けて、対象範囲を定めているものと承知しています。
一方で、こうした割引の対象になっていない通信制学校等に在籍する学生が、通学する際の利便性確保の観点から、通信制高校の団体が文部科学省に対し、通学定期の発売要件の緩和等について、要望を行っていると承知しています。
また、こうした割引は鉄道事業者の経営判断により実施されているものですが、他方で、学生の皆さまが鉄道を利用しやすくし、将来においても鉄道を利用する習慣を持っていただくことも、経営判断として重要であると思います。
国土交通省としては、文部科学省からの依頼に基づき、こうした要望内容を鉄道事業者にお知らせし、周知をしているところですが、各鉄道事業者においても、こうした点を踏まえて判断いただければと考えています。
これからも文部科学省からも、我々こういう要望があると伺っていますので、文部科学省とともに考えていきたいと思います。

ビッグモーターに対する監査・処分結果の公表とガイドラインについて

(記者)

ビッグモーターに対して、国土交通省、昨年から立ち入り検査や調査、行政処分等をしてきたと思うのですけれども、改めて同社や自動車整備業界に対して、監督とか再発防止策、どのようにしていくかを教えていただけますでしょうか。

(大臣)

国土交通省では、昨年7月以降、ビッグモーターの一連の不正を受けて、ビッグモーターの事業場に対する監査・処分を順次行ってまいりました。
その結果と、このような事案の発生を防止するために、国土交通省においてとりまとめた車体整備の消費者に対する透明性確保に向けたガイドラインなどについて、会見終了後、事務方より発表させていただきたいと思っています。
ガイドラインの内容ですが、例えば車体整備作業の画像情報の記録・保存や、車体整備作業の内容、方法にかかる情報の記録・保存、消費者への適切な説明と消費者からの了承等です。
この後詳しく説明させていただきます。
今回のビッグモーターに関わる事案は、自動車整備業界の信頼を損ね、国民生活に多大な混乱を与えました。
国土交通省としては、業界の信頼回復のため、再発防止策をしっかりと実行し、二度とこのような事案が起きないよう、図っていきたいと思っています。

(記者)

1点だけ、ガイドラインということなので、義務ではないという理解で良いのでしょうか。

(事務方)

ガイドラインでございますので、義務ではございません。

4地域で始まる自家用車活用事業について

(記者)

冒頭の自家用車活用事業についてなのですが、実際に今四つの地域でタクシー事業者が準備を進めているところなのですが、運行責任を負うタクシー業界に対して、期待やメッセージがありましたらお願いします。

(大臣)

今回の事業は、総理から今現実に地域の足、また公共交通としてのタクシーが不足している地域があり、これから「観光」も大きな目標をもって進めていく中で問題があると、また地域の公共交通として足が不足しているのは国民生活、移動の自由という観点からも問題であると、これに対して対処するようにという総理の指示がありました。
そういうことから地域の足の不足の解消ということで、我々デジタル行財政改革会議とともに、河野(こうの)大臣と連携しながら、どういう風に対処していくか考えてきたものです。
その際にやはり、最も大切な原則は、まず有償旅客運送なので、ドライバー・車の安全、事故が起きた時の責任、そして実際に働く方の労働条件、ワーキングプアをたくさん産むような制度になってはならないという三つの基本的な考え方が大事だと。
これは河野大臣もその通りだということで、そういう考え方のもとで、そして現行法制のもとで何ができるかということを考えてきました。現行道路運送事業法78条2号にあります自家用有償旅客制度の拡充、もっと使いやすいものにすること、それから3号の公共の福祉の二つの現行の枠組みの中で何ができるかを一生懸命考えて、そして先ほどの三つの原則を守るためにはどうしたら良いかということで、タクシー事業者に、その三つの重要なポイントを担っていただく形でスタートさせようとなった次第です。
四つのエリアから始まりますが、順次これを拡大していきたいと思っていますし、タクシーの不足台数はいわゆるアプリのマッチングデータから算出することになっているのですが、そもそもアプリのマッチングデータが少ない地域もあります。
そういうところでは、別の簡便な方法からタクシーの不足台数を導き出してやっていこうということで出来るだけ全国に早く広げていきたいと思いますが、いわゆる今課題となっている、また総理から指示があった、地域の足の不足を解決することにどれだけ結びつくかを見てみたいと思っています。
これを担っていただくのが先ほど申し上げたようにタクシー業界の方に、安全・安心という大前提のもとで担っていただきます。
そういう意味では大変タクシー業界の方に期待をしています。
 

(記者)

僕はタクシー業界に期待していません。御案内の通り、一番大事なのは大臣もおっしゃったように安全・安心、運行責任、何かあったときの対応、こういう事をしっかりやってもらうという意味では確かに現状タクシー事業者が一番前にいる、ここは僕も同意です。
一方で、そもそも今回なぜライドシェアになったかというと、タクシー事業者が地域の移動の需要を賄えていないからだというのは明らかなわけです。旅客課が散々渋って、僕は10年単位でライドシェア考えないのと言っても絶対考えないと言い張ってきたのを、政治の力でちょっと風穴を開けたというのが現状だと思っています。
自分たちの島を守るために事業者はいろいろ手練手管を使ってきた、当局もそうであった。
許認可、規制を使って、一生懸命外から物が入ってくることを抑えてきた。今でも現に燃料代や、前金のようにプロパンガスに燃料補助を出している。非常に手厚く公共事業を守るという大義名分があるので、それは分かるのですが、そういう風に考えると、要は安全・安心、運行責任、有事の際の対応ができる事業者、事業管理者であれば、ライドシェアを使わせても問題ないのではないか、この議論が抜けているのですね。
河野さんはそこを言及されていますが、タクシー事業者だけが安全・安心、運行管理責任をしっかり取られるというのは、日本はいかにも稚拙だと。
民間にはもっと頭の良い仕事のできる事業者の候補がいっぱいいるはずです。
僕はやっぱりタクシー事業者だけに運行管理責任あるいはライドシェア事業をやらせるというのは、第一歩としては分かるのですが、大臣もおっしゃったように全国に早急に広げていきたいということであれば、安全・安心、運行管理責任等をタクシー事業者と同じくらい担保できる方々、実際地方に行くと安全・安心、運行管理責任が出来ていない事業者も実際いるわけです。
たくさん中小零細事業者もいて、東京で見ているようなことは実際起きていない、案外安全・安心が担保されていない人もいる、こういうことを考えると許認可に頼る国土交通省ではありますが、何度も言いますけど運行管理がしっかりできるという、それこそルールを作って、広く事業者を求めることは結果的に地方への普及拡大につながる、地方の過疎のおじいちゃん、おばあちゃんや身内が車で送り迎えしてくれない人、公共のバスが来ない人、こういう人のために今ライドシェア事業をやろうとしているわけですが、これをタクシー事業者にやらせるというのはやはりまだまだ守りの姿勢が国にはあるなと、その辺許認可を司る国土交通省はどのようにお考えかと、ぜひ伺っておきたいと思います。

(大臣)

まず先ほど申し上げたように、地域の足の不足という課題にどう対応していくか、これが第一前提です。
その上で、先ほど申し上げた三つの安全・安心、責任、そして労働条件と、この三つを満足させながらどのような形で地域の公共交通を守っていくかという制度のあり方について今議論を進めています。
今回の4月1日からの自家用車活用事業はその第一歩だと思います。
ここで得られるデータをよく吟味をして、デジタル行財政改革会議、そして交通政策審議会で、しっかり先ほどのような観点も含めて、専門家の間にもまた各関係者の皆さまに議論していただいて、合意を得ていって、地域の足の不足という問題に対して対応していくということです。
まずは自家用車活用事業を行って、どういう状況になるのか、その実態またデータも見ながらこの二つの会議等で議論し、もちろん我々も業を所管する官庁として、責任者として、しっかりこの議論に加わりながら結論を得ていきたいと思っています。
先ほどおっしゃったような観点も非常に大切かと思いますので、そういう観点も含めながら、しかしこれまでいろいろな経緯がありました。タクシーというのは地域公共交通の一つの大きな柱です。
過去にいろいろな試行錯誤があって失敗した時期もありました。
そういうことも含めてタクシーには地域公共交通の足として頑張っていただかなければなりません。
そういうことも含めながら今回の自家用車活用事業、どういう風になっているのかを見守っていきたいと思っています。

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