事務次官会見

春田事務次官繰り上げ会見要旨

2009年6月19日(金) 18:32 ~ 19:00
国土交通省 会見室
春田 謙 事務次官

閣議・閣僚懇

 本日は繰り上げの事務次官等会議が午後6時から開かれましたが、特に私共の関係の案件はございません。

質疑応答

(問)先程、日本航空が、中期経営計画の基本的な方向性ですか、数値目標等々のない決意表明的なものを出してきました。政投銀融資等の前提になるものだと思いますが、この内容で十分なのかという点も含めてご所見を伺いたいと思います。
(答)日本航空においては、丁度2006年の6月からでありましたが、西松社長になって3ヵ年計画、07、08、09と取り組む形で経営の中期計画を策定し、これに基づいて色々合理化等を進めてきたところでありますけど、特に08年に入ってからは全体に経済の影響を大きく受けまして当初の見通しと比べて非常に収支が悪い状況になったということで、それぞれ営業ベースでも、経常ベースでも前年度から1千億円を超える減益になりました。結果、当期の損失も630億円になった訳であります。こういう状況の中で、日本航空においては、資金需要についても金融機関からの借入れが必要な状況が経営全体の環境の中で生じているところです。こういう非常に厳しい経営状況になっているということで、日本航空に対して本年4月22日に今後3ヵ年を計画対象期間とする経営改善計画の策定を求めると、併せて経営改善計画に盛り込む中核的な施策の方向性について5月中を目途に報告するように求めていたところです。それを受けた形で、日本航空から、中期経営計画の基本的な方向性について今日の午後発表されたということです。私共は、本日この基本的な方向性が出されたことを受けまして、大臣コメントを出させて頂きました。私共としては、日本航空から今日ありました基本的な方向性の考え方をたたき台にして、出来るだけ早期に経営改善計画を作り上げるように求めていくようにしたいということです。特に経営改善計画については、大臣コメントの3にもありますように選択と集中ということで路線計画のあり方を重点化していくべき事業分野について十分踏み込んだ検討が必要であると。また具体的な改革後の姿を明確に示されることが必要であると。特にコスト削減については痛みを伴う大幅な削減計画が必要不可欠ということ、特に国土交通省としても明確に考え方を示す必要があるだろうということで、そういう内容を盛り込んでいるということです。併せまして4のところで、経営改善計画の策定・実施に当たって金融機関の協力・支援が必要不可欠な状況の下、日本航空に対して関係金融機関の考え方を十分に聴取して、これを受け止めて対応するということ。それから国土交通省としても、関係金融機関と十分な意思疎通を図るための連絡会議を設置して随時情報を共有、意見交換を行うということで、日本航空が策定する経営改善計画の中味、またその実施について、協力の要請をしていくということです。先程もお話ししたような西松体制になってからの計画として、非常に厳しい経営環境の転換の中で経営状況が非常に悪い状況になっていることもあります。特に、我が国航空分野に占める日本航空の占めるウエイトは航空旅客分野で約4割、航空貨物分野で約2割ということになっています。我が国の航空ネットワークの形成にも重要な役割を果たしている企業です。そういった意味で我が国の経済産業活動、或いは国際交流、或いは地域交流を支えていく航空ネットワークの健全な発展と利用者利便の増進を図る観点からも、日本航空の経営の改善は非常に重要なテーマであると考えているところです。そういう趣旨でコメントも発表させて頂いたところです。

(問)今回の趣旨は分かるのですが、一企業の再建を指導するということをわざわざ大臣のコメントという形で出すのは極めて異例だと思うのですが、敢えて何故わざわざ必要なのか分かりやすくご説明をお願いします。
(答)先程、説明した大臣コメントの3のところ、或いは4のところで示していることが中心的ですが、日本航空については、特に米国の同時多発テロ後の非常に急激な需要の落ち込みの中での対応、それからそういったものを経た経営体制も西松社長の下の体制に変わり、色んな経営合理化を図る、コスト削減を含めた取組みをしている中で、経営の環境がより厳しいものになった。また、直近ではインフルエンザのようなことも起こっています。そういう中で、こういった状況をしっかりと踏まえて乗り越えて行けるような明確な経営改善計画をやはり組んで頂かなければならないということで、今回は基本的な方向性ということです。確かに具体的な数値等入っていないということです。寧ろそういったもの、そういった方向性が出されたことを受けて、しっかりとした経営改善計画を作って頂く必要があると。航空の果たす役割というのは、国際交流或いは国内地域間交流、それから、航空産業としての我が国の非常にこういった分野としての活動を確保していく、ネットワークの確保を担ってもらうと。しかも先程申したような経緯を踏まえているので、そういった経緯の中で状況は厳しいところですが、これをしっかり乗り越えられるものを確実に経営改善計画の中できちんと方向を定め、またそれを着実に実施していくと。そのことに関しては、金融機関の協力も必要であると。こういった状況の中で私共としての姿勢をしっかりと示す必要もあるだろうということです。確かに普通の企業が何かあった時に、1つひとつのことでこういったことまではなかなかやらないのではないかということについては仰る通りです。そういった意味では、日本航空が果たしている役割、我が国の交流という広い意味で国の活力を支えたりする機能を担う分野です。その分野の主要な役割を果たす企業に対して、国としてもしっかりとした経営の再建を果たして頂きたいということでコメントを出したものです。

(問)3ポツの一番下の方に「国土交通省としては、日本航空において聖域なく真摯な検討が行われ、抜本的な経営改善計画が策定されるよう、計画策定過程において、日本航空をしっかりと指導・監督していく。」とあるのですが、これの法的根拠はあるのですか。
(答)私共所管の行政に関わる事業の発展、或いは果たされている色々な機能、国としても非常に重要だと思っている機能、こういったものを確実になものにするためのものです。根拠については、行政はそういうものを実現するために色々な取組みをしているというものですので、そういうものに則って、こういう指導・監督をして行くのだということで書かせて頂いています。

(問)では特に航空法含めて法的な根拠は無いのですね。
(答)法的根拠と言えば、国土交通省の事務は設置法にも書いているので、そういうものに基づいていると申し上げても良いと思います。

(問)では敢えて言えば国土交通省の設置法に基づいて、という部分なのですか。
(答)敢えて言えば、航空企業が果たしている日本の色々な役割、そういうものに鑑みてそういった役割を将来にわたって十分確保しながら日本の発展に繋げていくという観点から、この企業に対して指導・監督を行っていくという趣旨です。

(問)金融機関に対しても、もっと公的性が高いとされる金融機関に対しても法的な根拠無しに経営改善計画を作らせるということは無いと思いますが、それについてはどうお考えですか。どこまで役所が関わるおつもりなんでしょうか、一民間企業の経営に。
(答)勿論、作るのは企業です。ですから、企業はそういったものを作りたい、またそういう意思は示されている訳です。その企業の取組みについては、はっきりとしっかりとした形で取り組まれるということに我々としても注視し、必要に応じて我々としてもご意見申し上げるところは申し上げていきたいということです。

(問)経営改善計画については作成を指示していますよね。
(答)はい。

(問)その根拠は無いのですよね、航空法等には。極めて異例だと思うのですが。
(答)日本航空が果たしている役割に鑑みて、計画を作ってもらいたいということで我々としても強く要請致しました。このことは、何か具体的に何法の何条に基づいているといったことでは勿論無い訳ですが、我々は必要であると考えています。企業側も全くその気がないとかではないという状況の中で、しっかりとした経営改善計画を作ってもらいたいと指示した訳です。

(問)建前はJALは民間企業なんですよ。民間企業がどのような計画を作ろうが、どうしようがそれはJALの勝手であって、国土交通省が経営改善計画そのものを指導・監督するという法的根拠もなしにそれはやり過ぎというか、まずあり得ないかなということではないですか。
(答)あくまでも日本航空という民間の企業がそういう物を作るということに対して、我々としても必要な要請等をしていくということなので、企業としての取組みをしっかりやって頂きたいと、こういうことであると思っています。

(問)しっかりやって頂きたいでは済まないですよ。指導・監督していくと紙に書いてあるんですよ。
(答)しっかりやって頂くということを指導・監督という形で書いてあります。

(問)今日、JALが出したこの方向性の中で、路便計画の見直し、地点撤退ということが書いてありますが、これはどういう風に受け止めてますか。
(答)ここの点は、これからの施策の中では、機材計画の見直し、ダウンサイジング、低効率機材の更新促進、高効率機材の導入促進等といったことを、従来からのビジネスモデルに肯定することなく将来に向かって企業として新しいビジネスモデルを作っていくという考え方の下に国内旅客、国際旅客、貨物といった全体的なコスト削減に取り組むと。これはあくまでも施策の方向性ですので、これを具体化されていくというのが次の段階だと思います。将来に渡って航空企業として我が国の国際・地域間交流を支えていく機能を企業として果たして頂くということがこの方向性というものの中では非常に重要だと思っていますので、それを実現出来るようにコスト削減ですとか、或いは事業そのものの抜本的な見直しを進めていくことが重要だと思っています。そういう意味では、ここに書いてある方向性の中でも、特に将来の展望を持ちながらそれに応じたコスト削減をしっかりやって頂くことは大変に重要ではないかと思っています。

(問)地点撤退、路便計画の見直しは当然必要であるというご見解で宜しいですか。
(答)具体的にどういう形で行っていくかということでありますから、新しいビジネスモデルの下でどのように事業を展開していくのかが当然必要になることだと思います。その中で、増強して充実させる、或いはダウンサイズで需要にあった対応をするといったこともあると思いますし、今行われているようなサービスの中身についても全体的に見直しするということもあるのだろうと思います。将来にどういう役割が果たせるのか明確に示しながら、きちんと計画に見合うだけのコスト削減をしっかり進めて頂く必要があると思います。これは方向性が書かれているということですから、冒頭でも中期計画を策定しますというのが書いてある訳ですから、そういう形で計画が策定されることを我々も期待しています。

(問)もっとストレートにお伺いします。支援という意味では不採算路線の撤退というのは進めた方が良くて、その意味では国交省はそれを後押しする立場なのでしょうが、一方で、これまでネットワークの維持ということで航空会社が見直そうとするとそれに竿を差していたこともあったと思いますが、そこでぶつかることについてはどうでしょうか。
(答)機材計画の見直しとか、ダウンサイジングも敢えて申し上げていますが、どのように需要に応えていくのかという新しいビジネスモデルも十分構築しながらその中でコスト削減に取組むと。ただやみくもに収支が償わない部分だけを削っていくというようなことだけではない取組み、そうしたものを中期の計画の中では作っていかれるということだと思いますし、そこはどのように作っていかれるか非常に期待するところがございます。勿論、現下の輸送環境は非常に厳しいがありますのでそれ程簡単なことではなく、将来の見通しを新しいビジネスモデルということで立ててもそれに見合うだけのコスト削減というのは大変なことだと思います。そういった意味では、現在の航空需要も非常に厳しい部分がありますし、その辺は今後の見通しがどのようになるかというようなことは予断を許さないという点もあると思います。その辺もしっかり見据えて対応しなければいけないと思います。

(問)「痛みを伴う」とか「聖域なく」とかありますが、実際にモノが出来た時に判断基準のようなものはあるのですか。
(答)判断基準が経営計画の基準的なものとして予めあるというのはあまり無いと思いますが、やはり基本的には将来に渡って事業が継続且つ発展出来るという観点、それに見合うようなコスト面や体制的な面をしっかり作ることが必要だと思います。確かに大変難しい環境だと思いますが、その中でも航空の需要というものにきめ細かく対応して需要を拾い出していく、また新たな需要を創り出していくということも大事だと思います。こういう厳しい環境がありますが、先々に展望を持てるような見通しを持ちながら、コスト削減等の内容もしっかり対応して取り組まれることを大いに期待します。

(問)国交省が指導・監督して作った計画が夏か秋に出来るのでしょうが、それが達成出来なかった場合は国交省が責任を取るのですか。大臣のコメントになっていますが、大臣が責任を取るということで宜しいですね。
(答)勿論、私共もこういう形で申し上げている以上、当然計画を作る過程において適切なものになるように役割を果たさなければいけないと思います。ですからそれを受けた形の重みはあると思います。

(問)達成出来なかった場合は、大臣なり次官が責任を取ることで宜しいですね。
(答)今のご質問にそのまま「取ります」と答えるのが適切かどうかについては、私共はそういうことにならないよう色々な形で対応したいと思いますので、何かやる時にまず責任を取りますということはなかなかお答えしづらいということはご理解頂きたく思います。

(問)重みは感じていらっしゃると。
(答)重みは感じています。

(問)来年に控えて成田・羽田の容量拡張による羽田国際化が本格化しますが、これについて必ずしも日航の支援と利害が合わない部分が出て来くるかと思いますが、それについてはどのように調整されるのでしょうか。例えば、分かり易く言うと、羽田-北京便を先般の日中首脳会談で合意されましたが、「日本上空ガラガラです」と、「飛んで下さい」というのは日航の経営には必ずしもありがたくないと思いますが、その辺は国交省としてどのように調整されるのでしょうか。
(答)中国との間も7月から個人ビザが動き出すと、インフルエンザの影響等に対する旅客の反応がどうなるのかちょっと読めないところがありますが、個人ビザは実際に動き出して全然乗らない路線についてどうかといった仮定の議論でそこを敢えてやるかどうかというのは、日本航空でなくてももの凄く経営的負担になる訳ですから、どのように需要に対応するかによって需要をより顕在化させたり増やしたりしていけるかということも当然航空企業として考えなければいけませんし、航空企業はサービス競争も行っている訳ですから、色々な努力をしながら取り組む中で一つ一つの需要に応じてどれだけ的確な対応が出来るかということだと思います。一概に飛べないような状況である時に「出来ませんよね」と言われれば、「飛べない状況であれば飛べないと思います」とお答えするしかありませんので、逆に言えば、飛んで収益が上がるように需要が厳しい中でも収支が償うようなことをやるというのは合理化も厳しいものになるということだと思います。そこの兼ね合いのところになるのかと。一概に分かり易く答える、形式的にお答えするのは非常に難しいご質問だと思います。

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