事務次官会見

春田事務次官会見要旨

2009年7月9日(木) 14:02 ~ 14:51
国土交通省 会見室
春田 謙 事務次官

閣議・閣僚懇

 次官等会議の関係では、北朝鮮の貨物検査法の関係が、皆さんご承知のとおり7日に閣議決定されたものですが次官等会議に事後報告されたということがございましたが、特に国土交通省の直接の案件はありません。

質疑応答

(問)昨日、JR西日本の社長が在宅起訴されるという異例の事態になっていますが、それについての受け止めをお願いします。
(答)神戸地方検察庁が昨日、福知山線の列車脱線事故に関してJR西日本の山崎社長を起訴したということでございます。改めましてお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げ、またご遺族の皆様には心から哀悼の意を表したいと思います。またお怪我をされた方々に対しましても心からお見舞いを申し上げるところでございます。起訴されたということについては私共も厳粛に受け止めております。このような事故を2度と起こしてはならないという決意の下で、公共交通機関の一層の安全の確保に全力を尽くして参りたいと思っております。併せて、昨日この起訴を受けてJR西日本は山崎社長が辞意を表明されたということもお聞きをしております。このことに関しましては、社長のご判断ということだと受け止めております。

(問)着工を見合わせていた18国道のうち九州の3路線について、昨日事業評価監視委員会で再開は妥当であると結論が出た訳ですが、それを受けて国交省としてどうなさるかということと、併せて先般14路線の再開を正式に決めた際のB/Cの評価の基準がやや曖昧ではないかとの指摘ですね、残事業B/Cが1に達しない所でも種々の経済効果で達したというご判断もあったので、評価基準のあり方というか、その辺のお考えをお願いします。
(答)昨日、九州の関係で事業評価監視委員会が3つの事業、3件について委員会が開かれ審議の結果が出たということでございます。まず一般国道220号早崎改良、それから一般国道225号川辺改良については事業継続が妥当というのが審議結果であるとお聞きしております。また一般国道220号青島~日南改良につきましては、お諮りをした区間に関しては、青島バイパス区間の4車線化を中止するということでそういう結果が出されたということでございます。それから併せて、全体の23.5キロの青島~日南改良区間全体でございますが、この中で異常気象時の通行規制区間等について防災対策を施すことが必要であるということで前回から引き継いでの議論がなされ、この部分については事業計画を明らかにして委員会として報告をしてもらった上で審議をするということが審議結果として出されたということでございます。九州の3つの事業の審議結果については、これを受けて本省で大臣ともご相談してどのように取組むかという判断をまとめていきたいと考えております。それから、14事業についてどのように臨むかということに関しては、14事業の委員会がそれぞれ行われたことを受けまして、7日に事業継続という判断をいたしました。14事業については、コストの更なる削減等徹底した事業内容の見直し、それから3便益以外の効果について可能な限り試算をするということで、具体的にこの効果の把握に努めたということです。委員会でもその点についてご審議を頂いたところです。ということで、委員会では多様な便益についての検討も加えて頂いた上で継続が妥当との意見を頂いたところです。それから知事等から継続すべきという意見も頂いており、今申し上げましたことを総合的に判断して事業継続としたということです。その中でお話がありましたようにB/Cの数値の評価の問題ですが、14事業の中では6事業でB/Cが届かない、1に達しないということでありましたが、この点につきましてはそれ以外の便益のことも含めて、併せて残事業という評価も加えた上で進める必要があると、6事業のうち5事業については残事業につきましては1を越えるということです。一つだけ残事業についても1を越えないという数字がございました。この点につきましては、その他の色々な便益というような、これは鷹ノ巣道路ですが、それも加えた残事業のB/C、この点が数字としては他の便益、休日の観光等の需要、冬期の交通状況の考慮、或いは災害時における通行止めの事情についての考慮、こういったものを加えて残事業のB/Cが1から1.1という結果になったことも踏まえて、この事業も含めた14事業について事業を継続するという判断をしたものです。なお、B/Cが1を越えなかった扱い、更に残事業のB/Cが1を越えたものの、判断に当たって3便益以外の便益を加えての判断の上で残事業が1を越えるということだったということについて、今までもマニュアルでどのように判断していくか考え方をまとめていたところですが、3便益以外の便益についても他の便益のことをそれぞれの事項に応じて拾い出して評価をしたところですが、こういったものを積み上げて具体的な形でこれを基準に出来るような取組みをしていかなければいけないと考えています。

(問)昨日の宮崎の道路についての委員会の結論は事業全体について継続が妥当という判断ですけれども、その主要な部分は既に計画が明確だった部分ではなくて、まだ計画も固まっていないし事業費も明らかでないトンネルの工事について、いわばB/Cの分析もないまま先回りしてゴーサインを出したという結論だったと思いますが、これはルール違反ではないでしょうか。
(答)先程も申し上げたところですが、委員会にお諮りをした青島~日南改良の中の4区間は既に整備を行っている区間です。そのことに関しては、特に一番北側の所ですね、青島バイパスの部分が4車線化というのが残っていた訳ですが、ここは中止をするということで、その限りでは青島バイパスの扱いは4車線化中止、つまり今やっている事業でということで終わりましたので、お諮りをしたことについての答えはこれ以上やらないというご判断を頂いたということでございます。南側の所の区間に関しては、具体的に整備計画なりが定まっているということではなく、異常気象時の通行規制についても前回から2回に渡っての審議をされたということで、その時の防災対策は、トンネル等で対応するということも含めたことについてのご議論があったということです。これについては防災対策の必要性があるということで、この点について委員会としてはそれなりの効果が見込めるのではないかとご検討をされたのですが、この点についてはまだ具体的な事業計画も明らかになっていないということで明らかになった段階で委員会に報告をしてもらいたいということを委員会として昨日ご審議されたということです。先程申しましたように、お諮りをした部分の今現に整備している所の残る区間を含めた所の問題に関しては、これ以上やらないという意味で4車線化、一番北側の部分についてはご判断を頂いたということです。残りの部分は、具体的にはっきりしていない部分については遅れになっているという部分がありますので、この点はこの委員会の審議結果を本省として受けましたので、これをどのように判断するか検討したいと思っています。ですから今のご質問に対しては、審議をして頂きたいという対象のことと、それ以外のことを含めて委員会ではご議論されたということで、特に全体的な議論の中では防災対策のことについても異常気象時の交通規制区間等の防災対策についても相当な広範な議論がなされ、そのことについては事業計画が明らかになった段階でご報告をしてもらいたいということとなっているという事実はあります。私共も本省としてこういうご審議だったということを受け止めてどのようにするかを検討したいと思っています。

(問)ただ地元では、4車線化が廃止されたことではなく、トンネル等の工事は今後行われるということの方が注目されていて、それをもって皆さん凍結解除、事業継続と受け止めていると思いますが、本来そういう事業についてこういう委員会の場で審議すること事態が越権ではないかと思います。かつ、本来はそういう事業は今後の予算を決める際に議論すべきことではないかと思いますが如何ですか。
(答)そういう意味では、直接お諮りしていることとそれの周辺の特にこの区間については、青島日南区間については災害時のことが非常に大きなポイントになるというお話しがある中で、南側の区間について防災対策の必要性とのご議論があったということですので、私共はそういう議論がなされたということは事実だったということで、これをどのように私共として受け止めるかというのは本省で判断することだと思います。勿論仰るように、この防災対策の必要性を議論された部分は、まだ事業計画も明確になっていない際の区間ですので、この点については丁度B/Cの議論をするというよりも手前の状況ですので、私共もこの点についてはこの委員会でのご審議がなされたと事業評価監視委員会の議論がなされたというのは事実としてそういうご審議がなされていますので、そのことを受けてこれをどのように扱うかということについて検討したいと思っています。

(問)概要箇所のB/Cが0.6で、残りのトンネルを掘る事業を加えても残事業は1を超えないと思われるのですが、これについては凍結解除は妥当との判断が出て、どうしてもトンネル工事を事業計画として挙げていこうと考えを示されているというのは。
(答)私はそういうことを申し上げているつもりはありません。トンネル等の話でご議論があった部分はまだ事業計画も出来ていない話ですので、その扱いがどうかということについてはこういう委員会でご審議があったことを受けて、我々も扱いについてはどうするか検討しますが、対象としてお諮りしている所ではない部分ですので、そういう部分でのご議論だったということで受け止めをして、それをどのように考えるかということは私共も検討しますということです。ですから元々検討をお願いしますといっていた事案のことではない訳です。極端に言いますと、お諮りした事業の方は、全体でこの青島日南が586億円の事業で、残る所がごく一部で日南の宮崎に近い所の4車線化の部分が残っていましたのでB/Cの点から見ても4車線化は取り止めるということで結論が付いたと。これ以上事業をしないということですね、ということで結論が委員会として出されたということですから、お諮りしている部分に関しての結果は単純な形で残事業はやらないという形で出ていると受け止めています。これをどのようにするかは私共も行政として本省で整理しなければいけないと思っています。

(問)昨日のJR西日本の社長が起訴されたことに関して、起訴の根拠の一つにATSの設置の必要性とありますが、当時はATSの設置の必要性は省令では義務付けていなかった点を捉えていながらも、ATSの設置の必要性があったということで社長の起訴が行われている訳ですが、その点について国交省としての省令のあり方や妥当性等についてどのように受け止めていますか。
(答)平成17年4月に福知山線の事故が起こった訳ですが、その事故以前のATSの設置については、昭和37年の三河島事故を初めとして信号を見落としたということで事故が起こったということを受けて、信号が切り替わるということを運転手が見落としたり間違えて認識するということで、これをきちんとバックアップする機能が必要だということで、ATSの信号についての機能というものを義務化したのがATSの設置の義務化の始めです。一方で、急曲線の扱いについては信号のようにその時々の状況で変わるのではなく、基本的にはカーブがあるということで、それに応じてどういう速度で通行するかというのは鉄道事業者において速度設定をして訓練をして資格要件を満たした運転士が操縦するという形で対応するということでありました。したがって急曲線の速度超過を防止するためのATSの設置の義務付けはしていなかったということです。福知山線の事故が発生したことを受けて、鉄道の安全性、信頼性をより一層高める必要があるだろうと考え、技術関係の方にも色々と審議して頂いて18年7月に技術基準を改正して急曲線での速度超過を防止するためのATS設置の義務付けをしたというのがこれまでの経緯です。そういった意味で、ATSの問題ではないかということに関しては、信号の見落とし等の問題と比較すると必ずその場所でスピードを落とすということをどう徹底するかということが第一義的だという状況がありましたので、そういう部分についての義務付けまではしていなかったというのが事実です。

(問)敢えてこの時期に聞きますが、観光庁が10月に発足してから余り知名度が国民に認知されていないと思うのですが、観光キャンペーン等で思い返してみると小泉元総理がテレビコマーシャル等で観光招致をしたり観光庁発足前の冬柴さんの時だって木村佳乃さんと一緒にツーショットでお出になったり、色々様々なキャンペーンを行ってきたのですが、観光庁になってから何となくアウトソーシングがあまり足りていないように思うのですが、次官としては約1年間を振り返って観光庁に対してどのようにお考えですか。
(答)観光庁が発足の時にも申し上げたかと思いますが、色々な施策を推進するという機能とそういう施策を色々な所と連携して着実なものとして政策をきちんと立てながら将来の観光立国を目指して繋いでいくことが大事だということで、そういった役割を担うことが観光庁に求められているのだということを申し上げたかと思います。そういった意味では、推進するところの部分、これは確かにどのように外にアピールするかというような面があります。観光大使の任命等、色んな方に輪を広げ、推進の取組みを図ってきている努力はしてきていますが、その辺が十分でないというご指摘であれば、私共もそこはもっとそういったアピールや、推進をするということについてはもっと力を入れていかなければならないと思います。それからもう1つの色んな施策の連携という部分に関しては、観光庁が発足する前から行政の中でも色々と関係者が皆集まって会議をやるということがスタートしましたが、特に観光庁になってからはその点は相当力を入れて来ています。国際会議等を開くといったことについては、観光庁になってからは各省に具体的にお願いをしたり等相当成果が上がってきているということはあります。そういった成果も出来るだけ外に出していく努力をしなければならないと思います。それから各省で協力していく中で、やはり観光というのは来て頂いて満足して頂ける、それだけ魅力のある観光の中身というものを日本の中で作っていくということが大事なので、そういった意味では受け入れ側の関係で観光圏の取組みというのが丁度スタートして、今正にその具体的な取組みということを形に出していこうとしているところなので、この辺のところに力を入れる必要があると思います。観光圏というのは、滞在の魅力作りをして、それが地域としても今まで通過的な観光であったりしたようなところをしっかりと地域で色々見て頂けるものをゆっくり見て、且つ楽しんで頂けるようなそういったことに繋げていくということなのでこれも大事なことだと思っており、観光庁としてはそういった点にも力を入れ成果が出るように、特に今までそれぞれの地元なりで観光に直接関係していた人、或いは今まで関係していなかった人、そういった人達を含めた広い、所謂連携というものを作っていくことだと思いますので、なお一層力を入れていかなければならないと思います。そういったご指摘を真摯に受け止めて、観光は国の産業の面でも、また交流そのものが目的ですので、大事な分野と思って取り組んで行きたいと思っています。

(問)JALの件ですが、路線の整理計画を地元に示すとありますが、地元からはネットワークを維持するための公的支援ではなかったのかという声が出ていますが、それに対しての受け止めをお願いします。
(答)今の経済状況もありますし、それから新型インフルエンザの関係もまだ収まったというか、世界各地で色々と広がっているということもあるので、色々と今航空の環境としては厳しいことは事実です。そういった中で、日本航空、全日空の採算性の厳しい路線についての減便、廃止が検討されているということで報じられているということだと思います。非常に厳しい状況ですので、そういった意味ではある程度そういう対応もやむを得ない面もあろうかと思います。今もお話しがありましたが、やはり航空のネットワーク、地域に与える影響もあるので、この点は今の経済、経営の実状等もよく説明し、或いは路線の利用状況等、そういうことも関係者によく説明しながら協議していかなければならないことだと思います。特に日本航空については、政府としても経営再建に向けて金融関係も含めて色々と支援をしていくということを表明しているところであり、その目的も良い意味での競争を通じてネットワークがきちんと運営をされていくことでお客さんの多様な利便に対応しながら、将来の需要を拡大というか伸ばしていくという形で取組む、そういう土台を作ることだと思っていますので、そういった取組みに繋げていけるように我々も支援したい。ですから、ただ路線の廃止というような形でどこか収斂するところまで廃止をすれば利益が上がるのではないかというような議論ではないと思っています。現下の経済状況等もあるので、その中で今当面対応しなければならない措置というのもある部分は必要だと思いますが、どこまでも縮小していくということではない問題だと思っています。日本航空については、特に企業としての力、体力というものをちゃんと身に付けながら、しかも将来に向かっての展望もしっかりと持って競争環境の中でサービスを伸ばしていけるようなビジネスモデルというものを目指して欲しいと思っています。

(問)一方、今回整理対象が関西国際空港に非常に集中しているということで、そもそもこの狭い地域に伊丹、神戸も含めた3空港が存在してその役割関係も今だに何かスッキリしないという航空行政の歪みが出て来ているのではないかと指摘する声も随分とありますが、それについては如何ですか。
(答)関西圏の空港の役割については、伊丹、関空、神戸空港とありますが、伊丹と関空という拠点の空港の間のことだと思います。国内路線の拠点空港である伊丹、それから国際・国内の拠点である関西国際空港というものの役割については関係の自治体を含めた統一の認識を作って取組んでいるところですが、その中で関西国際空港が非常に競争条件的には厳しいということも言われ、この関係については地元の知事からもアクセスの問題の指摘も受けています。それからやはりネットワークとしての魅力をどのように作っていくかということもとても大事です。特に関西国際空港はアジア路線、特に中国路線を中心にそういったものを充実させていくというのが1つの特色の出し方です。それからもう1つは特に深夜の時間帯が非常に重要であるところの航空貨物の関係、こういったことに滑走路2本を持ち、且つ騒音問題等も陸に影響を及ぼさないで運用が出来るという空港の特性を活かして、そういったサービスの内容を高めていくことが大事だと思っているところです。現下の状況は非常に色んな意味で厳しくて、特に関西は新型インフルエンザの関係で追い打ちが掛かったということもあります。基本的にはそういった役割を果たしていくということについて、地元の関係の皆さんとも共同して連携して取組んでいかなければならないと思っています。関西国際空港に関しては色んなアクセスの問題も含めて、それから関西国際空港の財務の問題、こういったこともずっと議論されているところです。これも非常に大事なことです。この問題も今の議論と無関係ではないと勿論思っています。そういう問題を解決しながら将来に発展出来るような、特に国際拠点としての関空のポテンシャルは高いと思いますので、その辺を上手く実現出来るように取組んでいかなければならないと。それは現下の状況においても勿論変わらないということです。

(問)先程の日本航空の航空ネットワークの話ですが、退路を断って航空ネットワークの維持充実に努める方針だと。そこまではっきり方針を示しておきながらいきなり減便、廃止というのはやはり、今の次官の説明を聞いていても、環境が悪ければやって良いよということだと今までと一緒ではないかと。一方で政府保証を受けるので航空ネットワークの維持充実をしていきますと、方針は変わったはずではないのですか。
(答)まだ経営改善計画をまとめなければいけないところです。だからそういうことをやりながら、足下の問題にも対応するという状況ではあると思います。航空企業として、JALに限らないかもしれませんが、特にJALの場合は、企業としてどういう体力を持って臨めるのか、それから将来的にどういったネットワークを運営していくだけの色々な体制を取っていくのか、そういったことを明確にしながらどういう路線でどのように飛ばすかということを具体化していかなければならないと思います。まだ実は経営改善計画についても具体的に作っている過程なので、今の段階で全部結論が出たように対応するのもなかなか難しいことだと思いますが、こういう形で色んな支援を受けながら、将来のことも睨みつつ会社として考えて頂く必要があると考えております。未だ経営改善計画はこれから具体的に詰めて作っていくということがありますので、その辺は並行してそういう意識も持ちながら取り組んでもらわないといけないと思っています。それが特にJALの場合にはそれだけ重いものがあると思います。

(問)一旦不採算路線を切った上で、充実とまであるということはネットワークが増えるんですか。
(答)全日空の場合でも、仮に路線を今切った場合にそれを将来どうするのか勿論あると思います。相当路線の中でも現在の航空需要は色々差があるんだろうと思いますけど、旅行の手控え等の国内の状況がありますので。ただずっと縮小の傾向が未来に続いていくということではないはずだと思っていますし、経済対策を色々しているのも、経済が回り、人も活発に移動するということが国の活力ですから、そういうものの環境も作りながら、将来的には減り続ける形ではない環境にしていかなければいけないと思うし、またそれに合うように考えてもらわないといけないと思っています。ですから、緊急避難的な面ですとか、もう1つは企業としてのネットワーク戦略と色々持ちながら取り組んでいかなければならない課題ですが、今はあまり企業のネットワーク戦略が強くない格好で減便や休止という話が出ている面があるとは思います。基本は両面から考えていかなければならないと思っています。

(問)大臣も常々仰っているんですが、大臣は今度の政府支援の大前提は彼らの企業年金の減額がセットとまで仰いましたが、ということで宜しいんですね。
(答)個別のところでどうかというのは議論があると思いますが、相当思い切って削減、合理化出来ることについては聖域無く、血の滲むようなと申し上げてますが、そういう覚悟でやって頂きたい。当然のことながら、厳しいことを行わなければならないというのは先の展望も持たなければいけないと思いますから、先の展望が無いけれど、どんどん悪くなるだけですよ、ということではなかなか社内の合意形成は難しいことも事実だと思います。だから逆に言えば、厳しい中ではありますが、先の展望を持ってここで歯を食いしばっても頑張ろうと、展望が開けるように繋げていこうという形で取り組んでもらいたいと思います。その意味で厳しい内容になるところは覚悟してもらいたいなと思っています。

(問)先程のJR西日本の件でATSの設置の基準ですが、事故を受けてカーブにもATSを設置することを義務付けた経緯はご説明頂いたんですが、結局それは国土交通省として事故が起きる前に基準を作るべきだったというところまではやはり仰れないということで宜しいんでしょうか。
(答)安全の基準については、函館線でJR貨物の列車の脱線事故が平成8年に発生したということがあって、それが今回のことにも関係があるというご議論もあります。平成8年に函館線でJR貨物の脱線事故が発生した、これもカーブでの脱線事故だったんですが、JR貨物の場合には元々深夜から早朝の運行ということで、夜も勤務ということで注意が足りなくなり事故が起こったという背景があります。それから、元々ここは長い下りの勾配で加速するという地形的な条件があるという中で発生したということです。もう1つは貨物列車は走行安定性の面ではバランスが非常に悪いところがありまして、脱線が起こる蓋然性が旅客の列車と比べると高いということがあります。この事故の時には、再発防止の確立を指示したのを受けて、JR貨物では貨物列車特有の夜の運転環境での規律の確立や、運転手がうつらうつらした時の警報装置を改良するとか、設定した速度以上になると列車の方で自動的にブレーキが作用するような装置を設置するような安全対策を講じていたということでありました。そういう意味では、函館の平成8年というのは丁度今議論になっている時期なんですが、そういうことも行ったということです。ATSについては先程申し上げたように信号が青から赤に変わることをうっかり見過ごすとか、これをとにかく防止するのが最初です。元々この部分ではこういう運転をするよと決まっているような分野に関しては、基本的には運転士さんがその速度をコントロールすることで対応していたと。ただ、福知山線事故もありましたので、一層安全性を高める意味で曲線部におけるATSも義務化した経緯があります。安全についてはより安全性が高まる方向で考えなければいけないというのが基本だと思っておりますけど、或いは事故の対応等でその時点における対応をして必要なことはそれなりに積み上げてきたという部分はありますが、だからどうだというところまではなかなか言いづらいところもありますので、そこは安全に対して私共として出来るだけの対応はしていかなければならないと一義的に考えています。

(問)出来るだけの対応はしていたので、国土交通省としての責任は無いということですね。
(答)省令で基準を作ると全ての問題を防止出来るかというと、なかなかそういう問題でもないこともあります。だからと言ってそういうものだとお答えするのはどうかなと思いまして、出来るだけのことはしていかなればならないと思った訳です。

(問)改めてそもそも論なんですけど、今回の事故を招いた原因としてJR西日本の経営基盤が脆弱だと。都市部のネットワークの高速化を図らないと経営的に厳しいという大きな流れ、結局国鉄分割民営化のあり方も問われるかと思うんですけれども、改めてご見解をお願いします。
(答)事故が起こる背景、或いは事故に内包する色んな問題という経営全体で考えていかなければならないと。このことが平成18年から運輸安全マネジメントという制度にも結びつけていかなければならないということで、制度化を図ったところです。やはり安全の問題は経営全体で考えていかなければならないことだと思っています。そういう意味では経営のトップが安全の問題を、経営の色んな取組みがありますけど、そういう中での重要なファクターとしてきっちりと位置付ける、認識をするということが大事だと思っています。

(問)無理の無い形で経営が出来るように民営化の時に切り分けすべきだったというお考えと言いますか、反省はありますか。
(答)民営化という中で求められる効率化、特に国鉄時代に十分でなかった色々な取り組みがあるじゃないかと。私鉄と比べるとコストの掛け方や効率性等そういうことが随分議論されて、その上で各JR各社が発足したという事実はあります。しかし基本は先程申しましたように、経営全体は色々なバランスを執りながらきちんと安全の問題も、そもそも営業戦略等も踏まえて取り組まなければならないことだと思います。ですから国鉄民営化がどうだったかというのはにわかに言えないところです。民間企業でもそういうことは常に問題にある訳ですから、国鉄からJRに変わったからということだけではない問題だろうと思います。

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