事務次官会見

谷口事務次官就任会見要旨

2009年7月24日(金) 14:01 ~ 14:31
国土交通省会見室
谷口 博昭 事務次官

閣議・閣僚懇

 次官を拝命致しました谷口でございます。到りませんが宜しくお願い致したいと思います。国土交通省を取り巻く環境は非常に厳しいものがありますが、皆様方のご協力を得ながら精一杯努めて参りたいと思いますので、宜しくお願い致したいと思います。記者会見は8月は週1回になりそうですが、基本的には週2回以上あるということでございますので、国民に対するアカウンティビリティー、国民とのコミュニケーションを図る意味で重要と考えておりますので、皆様方のご指導、ご鞭撻をお願い致したいと思います。この後、職員に対しての就任の挨拶で申し上げることと重なるかと思いますが、就任に当たっての抱負を3点お話させて頂きたいと思います。まずは信頼の回復についてであります。残念ながら国民の目線で見て到底理解が得られず不信感を増大させる不祥事が続いております。職員1人1人の自覚と節度ある行動をお願いすると共に、組織を挙げて信頼回復に先頭に立って取り組んでいきたいと思っている次第です。時代が大きく変化してきております。これまでの延長ではなく時代の変化に適確に対応して参りたいと考えております。また100年に一度と言われる経済危機対策として国土交通省に課せられた責務、例えば過去最大の前倒し発注等を確実に果たしていくことも重要だと考えておりますし、21日に山口の防府で残念ながら災害が起こりました。また今晩からということで、そうした災害、事故等にも危機管理ということで、迅速かつ適確に対応していければと思っております。2つ目は現場との距離感を縮めることです。「足長官庁」と言われたりする訳ですが、6万1千人の多くが現場に従事しております。国民に近い所で業務をする現場で色々ご苦労頂いているということですが、その現場がよくならないと変わらないと、信頼の回復も為し得ないと思います。現場の職場環境をよくすると共に、現場と本省との距離感を縮め、ひいては国民との距離を縮めることに繋がればということで取り組んでいければと思っております。コミュニケーションの向上は一方通行ではなく、双方向でお互いの立場に立ったコミュニケーションの向上に努めていくということで距離感を縮めていくということではないかと思います。また、国民、マスコミの皆様に対するアカウンティビリティーの向上にも努めていければと思っております。最後に3つ目でございますが、施策の総合化、融合化についてです。国土交通省になって9年目、来年は10年目を迎えることになりますが、これまで連携施策として種々努めてきているところですが、未だに残念ながら「局あって省なし」という批判も聞かれる訳でございます。局の壁、課の壁を越えて、施策の総合化、融合化を戦略的、クリエイティブに進めていければと思っております。冒頭申しましたように、厳しい環境下にある訳ですが、国と地方、官と民との適切な役割分担の下、パートナーシップ精神で国土交通省ミッションを果たすべく職員の皆様方と力を合わせ、知恵を出し合いながら一歩一歩着実に進めていければと思っております。以上をもちまして簡単でございますが、就任に当たっての挨拶、抱負とさせて頂きたいと思います。宜しくお願いします。

質疑応答

(問)民主党が今度の総選挙の公約の中で、高速道路の無料化と暫定税率の撤廃を掲げているのですが、選挙の結果次第によってはこれが政府の方針になると思うのですが、道路行政に長く携わってきた次官として、こうした民主党の政策についてどのように思われるかお聞かせください。
(答)昨日、民主党の政策集「INDEX2009」が出されました。詳細に目を通しておりませんが、今ご質問があった部分につきましては、高速道路は原則として無料化します、首都高速、阪神高速などはTDMの観点から社会実験をしつつ、影響を確認しつつ、無料化を実施しますと書かれている訳です。高速道路無料化については、無料化に伴う渋滞の発生状況、その影響、高速道路の維持管理のあり方、高い高速速度サービスをどう維持していくのか、また高速道路の債務返済の観点も踏まえ、総合的に検討することが必要ではないかと思っております。詳細なところはこれからということもあるかと思いますが、路線によって交通量、その影響というものも異なると思いますので、具体的な検討が状況に応じてしていくということではないかと思っています。暫定税率のお話につきましては、一般財源になったということで私の立場でコメントするのは如何なものかと思いますが、何れにしましても必要な道路整備については効率的、効果的な整備の推進に努めていきたいと思っております。それに要する予算は与えられた基準の下で要求し、基本的には年末までになろうかと思いますが、予算を確保していきたいということで、色んな方々のご協力、理解を得ながら進めていくということではないかと思っております。

(問)今の高速の無料化と暫定税率の廃止の件ですが、仮定の話で恐縮ですが、例えば民主党の大臣が「公約を実現せよ」という指示を受けた時は、次官としてどのように行動されるのでしょうか。
(答)大臣にお仕えするということが基本ではないかなと思います。先程の答弁と重なるかもしれませんが、我々が与えられた指示の下に具体的な検討結果、またこれまでの経緯、状況もお話しながら大臣の指示を仰ぎながら適確に対応していくことが基本姿勢であるかと思います。

(問)それと関係して、その2つを実現した場合に単純に計算して5兆円前後の歳入欠陥が出かねない問題だと思うのですけれども、そこを別の公共事業の削減で賄うべきだとの議論が出て来ることも予想される訳ですけれども、歳入欠陥に対しての対応はどのようにお考えでしょうか。
(答)予算というのは歳入と歳出を考えながらやっていくということではないかと思います。もし暫定税率廃止ということになりますと、地方分も含めてということが書かれている訳で、大きな影響があろうかと思います。また、直轄負担金の問題もありますので、公共事業全体もかなり国費ベースでいっても減ってきておりますので全体の枠組みがはっきりした中で、先程お話させて頂きましたけれども状況の変化を踏まえてその与えられた枠組みの中でしっかりと国交省に課せられた公共事業の予算といったものも確保していく必要があるのではないかと思っております。

(問)先程最初にご所見を伺いまして信頼回復と現場との距離を縮めたいと、いずれの2項目の中では現場が良くならないと信頼感が生まれないというお話でしたが、北海道開発局ですが昨年来河川関係の談合があったり北海道だけではないですが公用車の話があったりと非常に揺れている状況にあります。北海道開発局の場合は開発庁からの歴史もあって組織も大きくて北海道特例もあって巨大官庁という捉え方もあってそこの距離感なりなんなりというものをどうされるのかということと、民主党の問題で言うと完全に決まったという訳ではありませんが岡田幹事長が北海道に来て開発局廃止の方向でも良いのではないかという話を先般されたりと、状況によっては組織自体また改めてどうあるべきなんだということがあるのかなと思いますが、そうならないようにということかわかりませんけれどももうちょっと具体的に現場との距離感を縮めて信頼感をというのはどのようにお考えですか。
(答)北海道開発局につきましてはお話ございましたように法律に基づく組織ということもございますし、開拓の歴史というのですか、また位置的にも内地と比べると異なる状況があるということでございますし、色んな経緯等があって整備局等と異なるという部分もございますし、組織的には農水省とか他省庁という組識の部分があるということで、一概に他の整備局と比べて比較できないかと思います。いずれにしましても公用車の問題、また河川事業の問題について官製談合というのは北海道だけということになっている訳なので厳しい対応が求められるのではないかと思います。今回人事につきましても大臣のご判断も頂きまして私が技監の時に一緒に仕事をしてきました関審議官が北海道開発局に行ったということで、人事交流も進めていく必要があるかと思いますし必要な事業の見直し、組織の見直しということもやっていく必要があるのではないかと思っております。いずれにしましても北海道開発局につきましては、先程も言いましたが国土交通省になって4つの省庁が1つになったということでございますが、一緒になる前は北海道開発庁というような独立した組織の中に置かれたということですので、10年目を迎えるという話もしましたので、現場は現場としてのこれまでの経緯、惰性ということに流されがちなので私共本省も色々な形で現場の距離を縮めていくことによって皆様方から批判を受けないような、理解が得られるような事業のあり方、またそれに応じての組織の見直しも必要なのではないかと考えております。

(問)民主党の公約の関係で全く恐縮ですが、八ッ場ダム中止というのも公約の中に入っていますがこれは事務方から見てどのようにお考えですか。
(答)八ッ場ダムにつきましては、事実関係として治水利水の両面から必要な施設として事業に参画する関係都県やダム予定地の地元首長等からも早期完成を求められているという経緯がある訳です。今ご質問の仮に事業主体の国がダム事業を中止するとした場合にはダムが発揮する事業効果を補う具体的な試算を改めて検討することになると思いますが、その他水没地の住民との長年の経緯、法定計画の廃止に伴う地方公共団体等との合意形成といったような課題を総合的に検討するということではないかと思っています。いずれにいたしましても、現時点でこれ以上具体的にお答えできないと思いますので状況の変化に応じてしっかり対応できるように、当面河川局が中心になろうかと思いますが検討を深めていくということではないかと思います。

(問)八ッ場ダムと同時に川辺川ダムの件も中止ということを民主党は打ち出していますが、その辺はどのようにお考えですか。
(答)川辺川ダムにつきましては、八ッ場と少し状況が異なるかなと思っています。事実関係としてはご案内のように川辺川ダムにつきましてはダムに依らない治水を検討する場を熊本県と共同で設置し地元首長にも参加頂き治水対策を議論しているというところですので、少し先程八ッ場で申し上げました経緯ということよりもまずこの検討する場を通じて議論の結果を待ってから対応ということではないかと思っております。

(問)そうすると民主党にも現場の判断を待った上で判断してもらいたいということですか。
(答)現時点ではそういうことではないかと思います。

(問)当面の概算要求について、政権交代の可能性もある中で内容的に踏み込んだ物にしにくいのではないかというような見方もありますがその点はどうでしょうか。
(答)政治的に色々な状況が出て来ればその状況に応じて国土交通省のミッションが果たせるよう適切に対応していくということではないかなということです。今は決められた基準、スケジュールに従って取組んでいくということではないかなと思っています。

(問)今朝の大臣会見でも伺ったのですが直轄事業負担金についてはですね、全国知事会が廃止を求めている維持管理費については維持管理費を頂くという前提で今回概算要求に取組むのですか。
(答)先般知事会が開かれて申し合わせということがありました。全国知事会から近々国土交通省に具体的に提示するということになっている訳でございますので、その内容を良く確認した上でどのように対応するか検討していきたいと思っております。

(問)今朝の大臣会見では技術的にも間に合わないので維持管理費については組み込むという形で概算要求をするというお話だったのですが。
(答)大臣の答弁はそういうことで私も聞かせて頂いております。2つあったと思いますが、退職金と共済金の問題と維持管理費の問題ということであろうかと思いますが、直轄負担金につきましては概算要求と年末までどうしていくかということであります。もう少し概算要求の締め切りまで時間がありますのでよく先程の違い等の話も承りながら検討していくことではないかと思います。

(問)先程から民主党政権を見据えた質問も相次いでいますが、今回のご自身の人事についてもまた国交省の幹部人事について、中央官庁の慣例を崩すような事例も出ているようですが、ご自身の人事について今後の民主党政権を見据えたものとかご感想があればお願いします。
(答)人事は適材適所が基本というか原則だと思います。私のことについては私自身で述べるできではないかと思っています。一般的に次官人事につきましてはその時の大臣が、今日も大臣が会見でお話しされたと思いますが、色々なことを勘案して我々に対して最強軍団と仰って頂いていますが、そのようなご判断を下に人事はされてきたのではないかと思っています。

(問)しかし先程のお話しからも伺っていると、なかなか民主党というこの選挙後の体制を考えざるを得ないのかなと思いますが、その点は如何でしょうか。
(答)報道等でそういうことがあって皆さん方の関心もそういうことになると思いますが、おそらくこれまでの次官就任の時にこのような質問が出るということは無かったのではないかと思います。そういう意味では、国土交通省に対する厳しい目、国民の厳しい目というお話しもさせて頂きましたが、これまで答弁したことと重なる訳ですが、我々は与えられた枠組み、仕組みの中で国土交通省のミッションをしっかりと果たしていくことに尽きるのではないかと思います。優秀な最強軍団と大臣の言葉も頂きましたので、色々な課題について検討を深めて頂いて、私もその先頭に立って与えられた枠組みの中で全力を上げていくと決意を新たにしているところです。

(問)ここ数年道路整備のあり方が取りざたされていますが、長らく道路行政に携われた立場からどのような思いで仕事に臨まれてきたのか、ご自身の言葉で1つお願いします。
(答)道路関係業務の執行に関する支出について国会、マスコミ等の場で様々な指摘がなされること等、国民の皆様の疑惑や不快の念を招いたことを極めて遺憾でありお詫びを申し上げたいと思います。私も技監の前に道路局長を2年、その前は近畿地方整備局長で、その前に企画課長を3年、その前は高速国道課長を9ヶ月やらせて頂いて、責任の重さを痛感してるところです。昨年は「君らの感覚はどうなっているのだ」と私も直接お叱りを受けましたし、責任を痛感しているわけでございます。道路局のもう辞められましたが宮田前局長や今も道路局で若い人が色々な形で日夜努力されているわけですので申し訳ないという気持ちもあります。しかしながら、昨年4月に道路関係業務執行のあり方改革本部最終報告書の取りまとめが行われたということで、これに基づいて鋭意改革を進めていく、しっかりこれに従って無駄な支出の排除と信頼確保において一層意を強くして取り組んで参りたいと思っています。

(問)今回の18路線の凍結された国道の再会を巡る議論の中で、B/Cの基準ですね、事業評価監視委員会による継続か中止かの基準がやや結論ありきではないかとか恣意的ではないかという指摘や批判がありますが、それに関して次官のご所見をお願いします。
(答)今回の18路線の関係については、大きな反響があったのではないかと思います。それだけ色々な価値観の多様化と言いますか意見の相違が出てきているのではないかと思います。直接的に我々にも頂いたご意見もありますし、今お話し頂いた事業評価監視委員会また知事さんからもまた色々な形で色々なご意見を頂いているということです。評価が非常にこの3要素に基づくB/Cのみならずもう少し広く考えて評価すべきではないかという意見が多かったのではないかと思います。残念ながらこの3要素以外のものについては数字化するというか3要素を比べるようなレベルまでいっていないということですので、私も道路局長の時に早く概算でも数値化して並べて総合的に見て頂いた方が良いのではないかというようなことも検討するようお願いしたところですが、残念ながらまだそういうレベルまでいっていないということであります。今回のことを教訓により分かり易い判断基準が出来ましたら概略でも数値化出来るということが望ましいのではないかと思っていますが、検討を深めていくということではないかと思います。特に18路線のうち地方の交通量の少ない所の評価についてご意見を頂いたのではないかと思っています。何れにしてもこうした影響の大きい事業の見直しということですので今回のことを教訓にまた反省すべき点は反省し、しっかりと国民の皆さんに納得頂けるような形で事業を効率的・効果的に進めていければと思っています。

(問)その判断に明確な基準が必要だというご意見は私もそうだと思いますが、そこがまだもやもやしている状況の中で個々の路線について継続或いは中止という判断をしてしまったのは順番が逆ではないかと思いますが。
(答)そういうご意見もあるかもしれませんが、元々説明の仕方かもわかりませんが、私共の費用便益分析マニュアルにも今回の評価の考え方というのは記載されているということであります。説明の仕方が足りなかったという部分があるかも分かりません。3要素だけで、高速道路の問題から国会の場でご指摘を頂いたという流れの中で、今年度の予算という審議の中で出て来たという経緯でやむを得ない面があるのかも分かりませんが、そういうことである訳ですのでしっかりとアカウンタビリティを果たしてということではないかなと思います。そういうことで数値化出来ない部分につきましては、先程お話ししましたが、知事さんからのご意見や事業評価監視委員会のご意見というようなことも頂きながら大臣のご判断を頂いて事業継続という判断をしている部分が多いということではないかと思います。

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