報道・広報

超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策について

平成28年6月24日

 国土交通省では、6月24日、超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策についてとりまとめ、地方公共団体等の関係団体あてに通知しました。
 同対策は、南海トラフ沿いで約100~150年の間隔で発生しているとされるM8~9クラスの巨大地震に備えて、関東地域、静岡地域、中京地域及び大阪地域の対象地域内において、
  ・ 平成29年4月1日以降に申請する性能評価に基づき超高層建築物等を新築する際の大臣認定の運用を強化するとともに、
・ 同区域内の既存の超高層建築物等について、今回対策を求める地震動の大きさが設計時の想定を上回る場合には、大きな揺れによる家具の転倒、内外装材や設備の損傷等による危害が発生するおそれがあることから、自主的な検証や必要に応じた補強等の措置を促すものです。
 また、マンションを含む区分所有建物や庁舎等の公共建築物の耐震診断・耐震改修等の事業について、既存の国の支援制度の活用が可能です。
 

1.対策の背景

 平成15年9月の十勝沖地震において、震央から約250キロメートル離れた苫小牧市内で石油タンク火災が発生しました。平成23年3月の東北地方太平洋沖地震では、首都圏や大阪湾岸の超高層建築物において、大きな揺れが観測されました。これらの現象については、長周期かつ長時間継続する地震動(以下、「長周期地震動」という。)がその原因のひとつであるとして注目されています。
 国土交通省住宅局では、国土技術政策総合研究所及び国立研究開発法人建築研究所の協力のもと、平成20年度より、既往の観測地震記録に基づく長周期地震動の評価手法の検討と、長周期地震動を考慮した設計用地震動の作成手法の検討を行ってきました。その結果、建築物に影響を与える0.1~10秒の幅広い周期成分を含む設計用長周期地震動の作成手法をまとめました。
 一方、内閣府における「南海トラフ沿いの巨大地震モデル検討会」及び「首都直下モデル検討会」により、南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する報告(平成27年12月17日)がとりまとめられました。本対策はこのような状況を勘案し、建築基準法(昭和25年法律第201号)に基づく超高層建築物等における長周期地震動の対策について、現時点までに得られた技術的知見に基づきとりまとめたものです。
 なお、長周期地震動に関する調査研究は今後も引き続き進められ、さらなる知見が得られていくものと考えられます。国土交通省としては、こうした長周期地震動に関する調査研究の結果を踏まえ、今回提案する長周期地震動への対策について、今後も必要に応じて適宜見直しを行っていく予定です。

2.対策の概要

(1)対象地震
 本対策で対象とする地震は、モデル検討会の報告において、南海トラフ沿いで約100~150年の間隔で発生しているとされるM8~9クラスの地震です。
(2)超高層建築物等における長周期地震動への対策
○ 対象地域内に超高層建築物等を大臣認定により新築する場合について
 高さが60mを超える建築物及び地上4階建て以上の免震建築物(以下、「超高層建築物等」という。)であって、平成29年4月1日以降に申請する性能評価に基づく大臣認定によって新築されるものについて、大臣認定の運用を強化します。
・ 従来からの検討に加えて、対象地震によって建設地で発生すると想定される長周期地震動による検討を行うこと。
・ 家具の転倒・移動防止対策に対する設計上の措置について説明すること。
・ 免震建築物や鉄骨造の超高層建築物について、長時間の繰返しの累積変形の影響を考慮して安全性の検証を行うこと。
○ 対象地域内の既存の超高層建築物等について
 対象地震による建設地の設計用長周期地震動の大きさが、設計時に構造計算に用いた地震動の大きさを上回る場合には、大きな揺れによる家具の転倒、内外装材や設備の損傷等による危害が発生するおそれがあることから、自主的な検証や必要に応じた補強等の措置を講じることが望ましい旨を周知します。なお、マンションを含む区分所有建物や庁舎等の公共建築物の耐震診断・耐震改修等の事業について、既存の国の支援制度の活用が可能です。
 
<対象地域>
 下図の対象地域内の既存の超高層建築物等については、対象地震による建設地の設計用長周期地震動の大きさが、設計時に構造計算に用いた地震動の大きさを上回る可能性があります。
   : 設計時に構造計算に用いた地震動の大きさを上回る可能性が非常に高い地域
   : 設計時に構造計算に用いた地震動の大きさを上回る可能性が高い地域
   : 設計時に構造計算に用いた地震動の大きさを上回る可能性がある地域


<留意点>
 内閣府において、相模トラフ沿いの巨大地震などによる長周期地震動の検討が進められており、特に、関東地域など、それらの地震による影響が大きいと想定される地域に超高層建築物等を建築する場合は、上記の対策に留まらず、可能な限り余裕のある建築物とする又は減衰材を設置しやすい架構としておくなど、将来の改修も見込んだ設計とすることが望ましいと考えています。
 

お問い合わせ先

国土交通省住宅局建築指導課  
TEL:03-5253-8111 (内線39-532)

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