平成20年4月1日
1.概要
本日、新明和工業㈱※から国土交通省に対し、小型ダンプトラックの完成検査の一部未実施事案に関し、過去の完成検査実施状況の調査及び原因究明の結果を踏まえた、業務体制の改善について報告がありました。
本報告は、本年2月1日に同社より完成検査の一部未実施について報告があったことを受け、国土交通省から同社に業務体制の改善を指示したことによるものです。
※新明和工業㈱は、自動車メーカー(いすゞ自動車㈱、日野自動車㈱及び三菱ふそうトラック・バス㈱)と共同で小型ダンプトラックについて型式指定を受け、自動車メーカーが製作した車台に、ダンプ機構を持つ荷台を架装している。
2.新明和工業㈱からの報告概要
(1)調査・検証体制
①取締役社長をトップとする対策本部(1月4日設置)の主導により調査を実施。
②企業倫理専門委員会(2月29日設置)及び外部の弁護士により調査・検証を実施。
(2)調査期間・方法
①調査対象期間
型式指定車の生産を開始した昭和43年7月から平成19年12月まで
②調査方法
以下により調査を行った。
ⅰ)完成検査業務に関係する職務にあった者への事情聴取
ⅱ)保管されている完成検査成績表の制動能力値の分析
ⅲ)完成検査工程の作業時間が不自然でなかったかの検証
(3)調査結果
①完成検査一部未実施の状況
昭和62年中頃から平成19年1月まで断続的に完成検査の一部(ブレーキテスタによる制動能力検査及びスピードメーターテスタによる速度計の検査)をしないまま、完成検査終了証を発行していた。
②完成検査一部未実施と判断される期間
・昭和62年中頃~平成13年3月
・平成15年7月~平成16年3月
・平成16年7月~平成19年1月
③完成検査一部未実施の原因
完成検査の一部未実施が長年に亘って行われていた背景として、会社全体として以下の問題があった。
ⅰ)完成検査への責任感欠如
・検査主任技術者(工場長)及び品質部門長が型式指定制度を適切に運用する義務を果たしていなかった。
・完成検査員は完成検査に対する義務を果たすための理解が不足していた。
ⅱ)生産から完成検査までの工程不備
・組立ラインの終端に完成検査工程が設置され、生産増加に伴い組立工程作業時間が短くなると完成検査工程が圧迫される一方で、完成検査の必要時間は考慮されていなかった。
ⅲ)社内監査体制の不備
・完成検査が適切に実施されていることを、徹底して監査する姿勢が希薄であった。
・検査主任技術者が行う具体的な監査方法の規定が不十分であった。
ⅳ)工場従業員全体の検査工程に対する関心の希薄さ
・完成検査工程に従事する者以外は完成検査の意義及び内容を正しく理解していなかった。
・各部門から検査業務に改善を求める仕組みがなかった。
(4)完成検査の業務体制の改善
①完成検査への責任感向上
ⅰ)完成検査業務体制の見直し
・型式指定検査グループの発足
検査主任技術者(工場長)の直轄組織として型式指定検査グループを設置し、型式指定制度を十分に理解した人材が、生産から独立して完成検査業務を行う。
ⅱ)品質教育の実施
・型式指定制度の特別教育
・コンプライアンス教育の展開
②完成検査工程の改善
・完成検査工程の独立設置
組立工程作業時間に完成検査時間が制約されないように、完成検査工程を移設し、独立させる。
・判定・記録機能付き制動能力/速度計試験機器導入
判定・記録機能付き制動能力/速度計試験機器を導入し、測定結果を自動記録する。
・完成検査員資格認定制度の見直し
・完成検査作業手順書の充実
③社内監査体制の充実等
・検査主任技術者による監査回数の増加と予告なし実施
・具体的な監査方法の規定化
・CSR・品質保証統括本部による独自監査の実施
・工場内に目安箱を設置
④全社的な業務体制の改善
・企業倫理専門委員会の設置
・CSR・品質保証統括本部の設置
(5)完成検査の一部未実施車両に対する自主点検の実施について
①平成16年7月~平成19年12月製作の車両
ⅰ)対象台数
2月1日付け報告において自主点検の対象とした平成16年7月から平成19年12月までに製作された小型ダンプトラック29,121台のうち新規検査又は継続検査において制動能力及び速度計の検査を受けていない車両について、8,878台を特定した。
ⅱ)実施状況
自主点検対象車両の使用者に対して2月下旬に新明和工業㈱からダイレクトメールを発送し、3月26日現在で、1,654台(18.6%)に対して、自主点検としてブレーキテスタによる制動能力の検査及びスピードメーターテスタによる速度計の検査を実施した。
②平成16年6月以前製作の車両
今回新たに完成検査一部未実施とされた昭和62年中頃から平成13年3月まで及び平成15年7月から平成16年3月までに製作された小型ダンプトラックについては、新規検査又は継続検査が行われ、その際に制動能力及び速度計の検査が行われていることから、自主点検の対象とはしない。
3.国土交通省の対応
国土交通省では、新明和工業㈱からの報告を受け、以下の措置を講じます。
①新明和工業㈱が見直した業務体制を適切に実施するかどうかを厳しく監視していきます。
②新明和工業㈱が行う自主点検について早期に完了するよう引き続き監視します。
③完成検査の一部未実施については、道路運送車両法第75条第4項の規定に抵触するものであり、新明和工業㈱に対する過料の適用に係る準備を進めます。