報道・広報

マラッカ・シンガポール海峡における第2回協力フォーラム等の結果概要について

平成21年10月20日

 エネルギー輸送など世界貿易上、重要な海上輸送路であるマラッカ・シンガポール海峡(マ・シ海峡)の航行の安全及び環境保全のために創設された協力メカニズム※に基づき、第2回協力フォーラムが開催され、同海峡沿岸国、利用国及び利害関係者が会し、同海峡の安全対策に関して意見交換等が行われました。また、第2回プロジェクト調整委員会が開催され、同海峡沿岸国から提案されたプロジェクトについて、沿岸国及び支援を表明している利用国等が具体的な実施について調整を行いました。さらに、同海峡の航行援助施設の維持・更新にかかる費用を支弁する基金の運営に関する第4回基金委員会が開催されました。それぞれの結果は下記のとおりです。

※ 協力メカニズムは、平成19年9月に開催されたIMOシンガポール会議において創設され、協力フォーラム・プロジェクト調整委員会・航行援助施設基金の3つの要素で構成されています。

                                   記

1.第2回協力フォーラム

開催日: 平成21年10月14日(水)~15日(木)
場所: シンガポール
出席者: 沿岸国(インドネシア、マレーシア、シンガポール)
利用国(オーストラリア、バングラディシュ、ベルギー、カンボジア、中国、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、インド、日本、オランダ、ナイジェリア,ノルウェー、パキスタン、カタール、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、タイ、トルコ、英国、UAE、米国)
  ※ 前回参加したイラン、フィリピンは参加しなかった。
海事関係者(日本財団、マラッカ海峡協議会、BIMCO、ICS、OCIMF、IFSMA、INTERTANKO等)
国際機関等(EC,IMO)
※ 日本側出席者:篠部外航課長、日本財団海野グループ長、マラッカ海峡協議会金子専務等

結果の主な概要:
☆ 協力フォーラムの開会に際し、沿岸3カ国から、利用国及び利害関係者の本フォーラムへの参加の歓迎の辞が述べられ、かつ、本会合のホスト国であるシンガポールのリム運輸大臣から、本フォーラムを通じて、沿岸国と利用国、海運業界及び利害関係者の意見交換が促進され、マ・シ海峡の航行の安全及び環境保全が向上されることを期待する旨述べられた。
☆ 沿岸3カ国から、我が国を始め協力メカニズムへの協力国に対して感謝状が贈呈された。
  (感謝状を贈呈されたのは、我が国の他、豪州、中国、ギリシャ、インド及び米国である。)

☆ 航行援助施設の維持・管理について、我が国より篠部外航課長がプレゼンテーションを行った。プレゼンテーションにおいて篠部外航課長は、我が国は政府・民間を通じて昭和43年(1968年)よりマラッカ・シンガポール海峡の航行援助施設の維持管理事業に貢献してきたこと及び2007年に創設された協力メカニズムにおける日本の貢献内容を説明するとともに、協力メカニズムを持続可能な枠組みとするよう沿岸国・利用国・民間セクターが連携して更なる努力をしていくことが重要であり、そのためには、
[1] 沿岸国にとってより有益な枠組みとし、人材開発を中心とする沿岸国のキャパシティビルディングにつなげていくこと
[2] 支援を行っている利用国や民間セクターのノウハウやアイディアを十分活用すること
[3] より広い利用国や利用者の参加を引き続き継続的に求めていくこと
[4] 技術革新も踏まえ、より合理的な枠組みを目指して調査・検討を行っていくこと
が必要であるとした。

☆ 航行安全と海洋環境保護のそれぞれについてパネルディスカッションが行われ、我が国からは、角(つの)外航課課長補佐が海洋環境保護のパネルディスカッションにパネリストとして参加し、我が国におけるHNS(有害危険物質)流出事故への対応状況を説明した。また、これらのパネルディスカッションで提案された議論を継続し、発展させていくために次のフォーラムまでの間に海運業界と非公式な協議を行うことが合意された。

☆ 新規プロジェクトとして、シンガポールより、第2回協力フォーラムに先立ち開催された第34回沿岸3カ国技術専門家会合(TTEG)での了解に基づき、緊急時におけるタグ船による離礁サービス等の提供について提案がなされた。これは、船舶が座礁等した場合、タグ船がいつでも現場に駆けつけ、座礁船を離礁させる等のサービスを提供して、座礁船からの燃料油の流出等による海洋汚染の拡大を防ごうとするものであり、今後、海運業界の意見を聞きながら検討を進めることとなった。

☆ 利用国・関係者からの拠出については、ドイツがIMOの「マラッカ・シンガポール海峡信託基金」に50,000米ドルを拠出する旨表明するとともに、ECがHNSデータバンクの整備、MEH(海上電子ハイウェー)、AISクラスBの実証実験に400,000~500,000ユーロ拠出する旨表明した。

2.第2回プロジェクト調整委員会

開催日: 平成21年10月16日(金)
場所: シンガポール
出席者: 沿岸国(インドネシア、マレーシア、シンガポール)
利用国(オーストラリア、中国、インド、日本、韓国、米国)
海事機関(マラッカ海峡協議会、EC,IMO)
※ 日本側出席者:篠部外航課長、マラッカ海峡協議会金子専務等

結果の主な概要:

☆ プロジェクト1(分離通航帯内における沈船の除去)及びプロジェクト2(有害危険物質(HNS)への対応体制整備)の進捗状況を検討するワーキング・グループ1と、プロジェクト3(小型船舶用のAIS(船舶自動識別システム)クラスBの実証実験)及びプロジェクト4(潮流・潮汐等の観測システムの整備)の進捗状況を検討するワーキング・グループ2が設置され、検討が進められた。

☆ プロジェクト1については、沈船調査の結果をMEHに反映させることとし、インドが沿岸3カ国を対象とした水路測量の訓練コースの実施を提案した。

☆ プロジェクト2については、米国がHNS事故に対処する標準処理手続(SOP)のコピーを提供することを表明し、中国が2010年に、HNS事故対策訓練担当者を対象とした訓練を行う旨表明した。

☆ プロジェクト3については、我が国に対し沿岸3カ国よりAISクラスBトランスポンダーの提供に関し謝意が述べられるとともに、我が国より提供した機器を用いて実証実験が順調に進んでいることが報告された。

☆ プロジェクト4については、7月に中国とインドが共同で行ったアセスメント調査の結果が報告され、システム整備のための技術要件についてさらに検討することとなった。

3.第4回基金委員会

開催日: 平成21年10月19日(月)~20日(火)
場所: ジョホール・バル(マレーシア)
出席者: 沿岸国(インドネシア、マレーシア、シンガポール)
利用国(中国、ギリシャ、インド、日本、韓国、アラブ首長国連邦)
海事機関(日本財団、マラッカ海峡協議会、IMO)
※ 日本側出席者:篠部外航課長、日本財団海野グループ長、マラッカ海峡協議会金子専務等

結果の主な概要:
☆ 中国より、2010年に、航行援助施設基金に直接拠出するほか、IMOの「マラッカ海峡信託基金」を通じて資金拠出する旨を表明し、沿岸3カ国から歓迎された。また、IMOより、「IMOマラッカ海峡基金」から50,000ドルの拠出が表明され、沿岸3カ国から歓迎された。

☆ マレーシアより、セパットの浮体式灯浮標の代替について、日本側に対し事前調査への協力申し出があり、我が国は協力に応じる旨発言するとともに、事前調査の実施時期は年内が望ましいと発言しつつも、マレーシア側と調整して事前調査を進めることとなった。

☆ マレーシアより、人材開発の一環として沿岸3カ国の航行援助施設の維持管理担当職員を対象にした「技術ワークショップ」開催の予算計上の提案があったが、航行援助施設基金は、専ら航行援助施設の維持更新に使用されるものであることから、基金予算には計上せず、別途検討することとなった。

☆ 基金委員会では、沿岸3カ国より2009年の第2及び第3四半期の事業実施状況並びに第4四半期の事業計画について報告があった。マレーシアよりワン・ファザム・バンク浮体式灯浮標の代替工事完了、ワン・ファザム・バンク(北)灯標とムダ・ウタラ灯標の代替工事の進捗状況について報告があった。インドネシアより、インドネシア管理の口座の運用が開始されたので、第4四半期にインドネシア管理の航行援助施設28カ所の見回り調査を行う旨が報告された。

☆ 基金委員会は2010年の予算について検討を行った。沿岸3カ国より、日本側の貢献に感謝の意が表明されるとともに、引き続き積極的な貢献への期待が表明された。特に、2009年に我が国が行ったインドネシア管理のニパ浮体式灯浮標代替工事のための事前調査に関して、インドネシアより非常に有益な調査であり、引き続き我が国が同様の調査を行うことにより、航行援助施設の維持管理事業に積極的に貢献をすることを期待する旨表明された。

お問い合わせ先

国土交通省海事局外航課専門官 梅原 寛
TEL:(03)5253-8111 (内線43-323)

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