報道・広報

第5回日EU海事政策対話の結果概要について

平成21年11月30日

 標記について、平成21年11月25日(水)、ブラッセル(ベルギー)において日本及びEUの海事当局(日本側:森 雅人 大臣官房技術審議官(海事)他、EU側:カラミトソス(Fotis. KARAMITSOS) 欧州委員会運輸・エネルギー総局G局(海事局)長他)による第5回日EU海事政策対話が開催されました。主要議題に関する結果概要は以下のとおりです。

1.金融経済危機の海運への影響について
 昨年の世界的金融危機以降の海運市況を取り巻く現状について意見交換を行い、ここに来て回復の兆しがみられており、本格的な回復に至るかについて慎重に見守っていくべきとの共通認識が示され、これを踏まえ、公正な競争条件を確保し、更なる市場の歪曲を防ぐため海運・造船に対する国家による保護的措置は不適切であるとして、日EU双方で共通の認識が示された。
 海運に対する国家助成の承認に関し、EUでは従来の国家助成に関する指針とは別に、2010年までの期限付きで、金融危機をふまえて資金調達等の要件を緩和した内容の国家助成に関する通達が出されており、ハパックロイドに対する独政府による債務保証については独政府よりEUに対して国家助成の承認申請が出されており、EUにおいて慎重に審査中であること、一方、CMA-CGMへの国家助成は仏政府内で検討中でありEUへの承認申請は行われていないとの報告がなされた。
 また、造船に対する国家助成に関して、新造船協定交渉への韓国の参加について、日EU双方で働きかけを続けていくことを確認した。

2.外航海運における温室効果ガス削減について
 EU側より、理事会決議によるEUの方針として、[1]ポスト京都議定書により海運の削減量を規定し、具体的削減方法はIMOに委ねること、[2]2011年までにIMOで結論が得られなかった場合は地域規制を開始することが示された。更に、IMOにおける経済的手法の検討については、独、ノルウェーによる海運ETS制度とデンマークや日本の燃料油課金制度が提案されているが、EUとしては、いずれの手法を取るかよりも、2011年中のIMOでの決定を期待・重視しているとした。
 日本側からは、海運の特殊性を踏まえIMOにおける主体的な検討・枠組みが重要であるとの立場を説明し、IMOでの交渉加速に向けて日EUが協力していくこととされた。

3.シップリサイクル条約について
 昨今の金融危機による荷動きの減少や2010年のシングルハルタンカーのフェーズアウト等により、解撤需要が増大することが見込まれており、条約の早期発効が重要であることと、条約発効の際にインベントリー作成が円滑に行われるよう先行的な措置が必要であることを確認し、日EUが協力して取り組んでいくことで一致した。また、EU側より、日本が関連ガイドラインの策定に関するIMO作業グループのコーディネーターを務め議論をリードしていることに謝意が示され、EMSA(欧州海事安全庁)からも積極的に協力したいとした。

4.船級協会の相互承認に関するEU規則について
 船舶に搭載される舶用機器等に関する船級協会の証書を相互承認するように求めたEU規則について、日本側から旗国の権限を侵害するものであり、安全性の低下にもつながる懸念を改めて表するとともに、日本と同様の懸念を有するEU域外国が共同書簡をEUに対して送付する予定であるので、十分考慮するようEUに求めた。

5.マラッカ・シンガポール海峡の航行安全対策について
 日本側から、マラッカ・シンガポール海峡における沿岸国と利用国の協力のあり方を具体化した「協力メカニズム」(2007年9月創設)に関し、運営状況を紹介し、10月の第2回協力フォーラムで示されたEU及び独からの資金拠出表明を評価した。EUからは、本件に関するこれまでの日本の支援を評価する旨の認識が示され、双方で連携して取り組んでいくこととされた。

6.ソマリア沖海賊対策について
 ソマリア沖・アデン湾の海賊対策として、EUからは、日本も資金拠出を行っているIMOのジブチ行動計画実施のための信託基金に4百万€の拠出を決定した旨の紹介があり、日本側から、EUの海賊対処全般に関するリーダーシップに感謝すると共に、IMO基金への拠出を高く評価した。また、我が国における護衛活動や海賊対処法の成立などの海賊対策について説明を行い、今後も欧州とアジアを結ぶ重要な海域における航行の安全を確保するため協力していくことを確認した。

7.WTO海運サービス交渉について
 日本側から、ドーハラウンドにおける海運サービス交渉の状況を説明し、EUの積極的な協力を求めたところ、EU側からは、議長国としての日本のリーダーシップに感謝すると共に、2010年中のドーハラウンド交渉妥結を目指すとのラクイラサミット首脳宣言の実現に向け、様々な場において、今後も日本とEUが連携していくことを確認した。

8.トン数標準税制について
 日本側からは、昨年導入したトン数標準税制の実施状況(今年度より10社に同税制を適用)及び期待される効果(今後5年間で外航日本籍船を約2.1倍、外航日本人船員を約1.1倍にする)について説明を行い、EU側のこれまでの情報提供等の協力に感謝の意を表した。EUよりは、欧州でのトン数税制等の実施による、欧州本拠の船社の競争力やフラッギングアウト防止効果等についてのレビューを2010年中に行う予定であるとして、今後日EUで情報を共有していくこととされた。

お問い合わせ先

国土交通省海事局外航課海運渉外室 西田、川村
TEL:03-5253-8111 (内線43-354) 直通 03-5253-8620

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