報道・広報

「日インドネシア防災・統合水資源管理ワークショップ」等の結果概要について

平成24年1月24日

 この度、国土交通省では、インドネシア共和国ジャカルタにおいて、インドネシア公共事業省水資源総局とともに、「日インドネシア防災・統合水資源管理ワークショップ」を開催しました。
 本ワークショップでは、インドネシア政府が高い関心を有する河川情報システム及び河川施設の管理や操作の技術や政策に関する互いの取組について、情報交換および議論を行いました。
 また上記ワークショップに引き続き、「日インドネシア住民参加ディスカッション」を実施しました。ここでは、防災や水資源管理における住民参加に関して、日本・インドネシア双方の取組や政策を紹介した後、当該分野における双方の課題や取組に関し意見交換を行いました。
 これらを通じ日本、インドネシア双方の、防災や水資源管理に関するより良い取組の実施に向けて互いの理解を促進し、インドネシアにおける当該分野の協力ニーズを把握することができました。この成果を踏まえ、今後ともインドネシア共和国と一層の協力関係を推進してまいります。

日インドネシア防災・統合水資源管理ワークショップ

(1)日程  平成24年1月19日(木)9:00-12:30
(2)会場  公共事業省水資源総局 多目的ホール(インドネシア共和国・ジャカルタ)
(3)主催  国土交通省、インドネシア公共事業省
(4)出席者 約120名
[日本側]
国土交通省 総合政策局海外プロジェクト推進課 国際建設管理官 安田吾郎
独立行政法人水資源機構 総合技術センターマネージャー 山下祥弘
在インドネシア日本国大使館、JICAインドネシア事務所 ほか
[インドネシア側]
公共事業省 水資源総局長 モハメド・アムロン
国家防災庁 ほか


(5)結果概要

1)冒頭挨拶
・冒頭、インドネシア公共事業省アムロン水資源総局局長より、本ワークショップの各関係者への謝意が示された。また複雑化する水資源管理(治水の概念を含む、以下同じ。)の課題への取組の必要性、今回の操作・管理などにテーマを絞った議論を活用することへの期待が述べられた。
・続いて国土交通省安田国際建設管理官より、ワークショップ開催にあたり関係者へ感謝を述べるとともに、河川情報の伝達の重要性、河川施設の操作・管理に係るトータルシステムの必要性、このような議論の機会を日・インドネシア間の協力の推進につなげていきたいこと等、発言した。
・在インドネシア日本大使館大條参事官より、本ワークショップは多くの共通の課題をもつ日本とインドネシアが認識を共有する良い機会であるとの期待が示されるとともに、JICAインドネシア事務所石黒次長からは、インドネシアの国際的な重要性に言及し、今後もパートナーシップを維持していきたい旨発言があった。

2)河川情報システム
<公共事業省水資源研究所 ムルヤンタリ課長>
・水資源管理の分野におけるインドネシアの現状として、水資源に関する正確な情報の不足などについて説明があった。
・インドネシアで実施している携帯電話によるテレメトリーシステムの開発、洪水早期警報システムの開発について説明した。

<国家防災庁情報・広報センター フトモ課長>
・インドネシアの地震、火山、近年の災害の増加傾向含む災害の概要、災害対応能力、早期警報など国家防災庁の役割について説明があった。
・防災に関するデータが多くの機関に分散しているインドネシアの問題点、ネットワークの重要性を指摘した。
・インドネシアにおける災害情報処理の仕組みについて説明があった。

<国土交通省総合政策局 安田国際建設管理官>
・災害情報が重要であることの背景として、豪雨の多発や降雨量の増加など近年の気候変動の傾向を説明するとともに、日本の防災協力パッケージの考え方を示し、河川情報システムもその内容の一つとなり得ることを説明した。
・洪水時の情報伝達の遅れや特に注意を要する地下施設など、近年の洪水時の避難に関する問題点を指摘し、河川情報の取得、分析、行動の一連のつながりが重要であることを述べた。
・洪水予報、水位情報や洪水警報の伝達など、日本の河川情報システムを実例とともに紹介した。
・航空レーザー測量、Xバンドレーダーなどの河川情報取得や情報伝達に関する新技術とその適用を紹介した。
・1つの情報伝達ではなく、複数の手段を用いることが重要であることを強調した。




3)河川施設の操作・維持管理

<公共事業省水資源総局 ハルタント維持管理局長>
・水資源関連施設の維持管理における予算配分等インドネシアの当該分野における取り組みの経緯や現状について説明があり、2004年の新しい水資源法により施設の維持管理の対象が拡大され、2010年に水資源総局に維持管理局が設けられたことなどが説明された。
・維持管理における2009年から2014年迄の戦略計画方針、それを受けての近年の維持管理部門の予算配分や事業の目標や達成状況について説明された。

<国土交通省総合政策局 吉井係長>
・水害訴訟の事例や河川維持管理計画の策定など、日本における河川堤防の維持管理の重要性や位置づけ、取組に係る背景を説明した。
・巡視や点検、対策の実施など、国土交通省の河川施設の維持管理に関する具体的な取組を紹介した。
・現場での情報通信技術を用いた機器の活用、住民参加の事例など、河川施設の維持管理に関する新たな技術や最近の取組を紹介した。

<独立行政法人水資源機構総合技術センター 山下マネージャー>
・日本の主要水系でダムを管理する水資源機構の役割と管理業務での業務実施体制について説明した。
・出水時の対応について、降雨や水位情報の収集や降雨予測を含めた気象情報収集と洪水予測操作や、放流警報、オンラインによるリアルタイムのダムや水位情報の公開などの情報伝達を説明した。
・水の効率的利用や渇水時での利水管理での情報共有の重要性を紹介した。
・施設の日常点検や定期点検など常日頃のダム施設の維持管理の重要性や、施設管理者としての責任と維持管理計画作成、維持管理費用など、ダム施設の維持管理に係る取組を説明した。

4)終了時挨拶
・閉会にあたり、国土交通省安田国際建設管理官より、河川情報システムや河川施設について、整備・建設後の操作・維持管理が重要であることを強調するとともに、本ワークショップは取組のスタートであり、この成果を業務に活かされるよう期待を述べ、日本としても今後とも協力していく意思を示した。
・インドネシア公共事業省水資源総局ハルタント操作管理局長より、ワークショップ参加者への謝意が述べられ、インドネシア側として今回のワークショップの結果を踏まえ当該分野についてさらに取り組みを進めていく旨、発言があった。


日インドネシア住民参加ディスカッション
(1)日程  平成24年1月19日(木)14:00-17:00
(2)会場  公共事業省水資源総局 会議室(インドネシア共和国・ジャカルタ)
(3)主催  国土交通省、インドネシア公共事業省
(4)出席者 約30名
[日本側]
国土交通省 総合政策局海外プロジェクト推進課 国際建設管理官 安田吾郎
独立行政法人水資源機構 総合技術センターマネージャー 山下祥弘 ほか
[インドネシア側]
公共事業省 水資源総局 水資源管理局長 ジャヤ・ムルニ ほか

(5)結果概要

1)冒頭および終了時挨拶
・冒頭、インドネシア公共事業省水資源総局ジャヤ・ムルニ水資源管理局長より、参加者に謝意が述べられた。また水資源管理に係る住民参加は、インドネシアでも今始まった事ではないが、より効率的な水資源管理等に向けて、今後の一層の取り組みが必要である旨発言があった。
・続いて国土交通省安田国際建設管理官より、あるべき住民参加の方法には単一の答えはなく、地域や国によっても求められる形は異なるが、情報交換を通じてより良い姿を求めていくことは可能であり、今回のインドネシア側との情報交換への期待を示した。

2)インドネシア側の発表
<公共事業省水資源総局 スハルト・サルワン氏>
・インドネシアにおいて地域からの意見を聴取して水資源管理を行う枠組みであるWater Resources Council, River Basin Committee についてその法制度や構成、役割が紹介された。
・またこれらの仕組みについては人材、資金面の強化が必要であることや、セミナー等を通じた人材育成が必要であることなど課題も示された。

<公共事業省水資源総局 ニコ・ダリスマント氏>
・インドネシアの水資源管理に地域住民が参加する枠組みPublic Consultation Meeting (PCM) について、その成立を含めた経緯、役割、構成について説明した。
・PCMによる、地元のニーズをプロジェクトに反映させられるなどの短期的な効果、水資源管理に地域コミュニティを関与させる動機づけなどの長期的な効果が示された。

<公共事業省水資源総局 クスナエニ氏>
・インドネシアの住民参加による流域・土地保全の取り組みである”National Partnership Movement for Water Safety Guard”についてその仕組みや手続きなどが紹介された。
・流域保全での課題として、浸食対策施設の不足又は機能不全、表土や森林の荒廃、河川へのゴミ投棄などがあげられた。


3)日本側の発表
<国土交通省総合政策局 安田国際建設管理官>
・日本において水資源管理に係る紛争が近代以前からも生じていたことを、利根川の治水および築堤の例等を紹介しながら説明した。
・水資源管理の事業においては上下流問題が存在し、事業実施のどの段階においても不利益の生じる地域が発生しないように留意することが重要であることを説明した。
・日本における河川法の成立、河川整備基本方針、河川整備計画と住民参加の枠組みを説明した。
・現在の日本の河川事業における住民参加の取り組みについて、庄内川の事例を紹介しながら解説した。

<独立行政法人水資源機構総合技術センター 山下マネージャー>
・日本のダム事業における事業実施者による補償の仕組みの概要を説明した。
・ダム事業での上下流問題への取り組みとして水源地域対策特別措置法が制定された背景とその目的、利点、手続き、実施内容及び下流受益地も含めた費用負担である事を大山ダムの事例を紹介しながら解説した。
・ダム事業による移転者の生活再建対策をサポートする水源地域対策基金が国と地方公共団体の協力により設立されている事、利根川・荒川水源地域対策基金を事例に取り上げ費用負担と運営の仕組みを紹介した。
・これらの枠組みにおける今後の課題とダム管理者として地域との連携強化の取り組み姿勢についても示した。

4)議論
・ジャヤ・ムルニ局長より、河川法と水源地域対策特別措置法の適用範囲の区分について質問があり、安田国際建設管理官より、河川法が水系全体を対象とした管理法であり、水源地域対策特別措置法はダム等の整備に際しての上下流間の受益の衡平を図る観点から設けられた特別法であることを説明した。
・その他インドネシア側より、主要なものとして下記のような質問やコメントがあり、本問題に対するインドネシア側の関心の高さが示された。日本側より、これらの質問に対し日本における取組等に即して回答するとともに、活発な議論が行われた。
- 日本での上下流問題や住民との関係において中央政府や地方政府の関与がどのようなものか。
- 日本の発表から、河川法の歴史が長いことがわかり、インドネシアの現状と比較するとその規制が根付いていることに感心した。
- 住民参加の会合を何回も実施する事例があったが、どのくらいの費用をかけているのか。
- 住民参加の手段について、様々な手段による事例の紹介があったが、インドネシアでの取組の参考にするためその運用ルールを知りたい。

5)終了時挨拶
・閉会にあたり、安田国際建設管理官より、インドネシアでは流域委員会における行政側委員の割合を50%と決める等の興味深い話が聞けるなど両国の取り組みについての有意義な意見交換が行われた旨発言し、最後にジャヤ・ムルニ水資源管理局長より、参加者への感謝の意が述べられた。

総括
・防災・統合水資源管理ワークショップにおいては、インドネシア側、日本側ともに多数の参加者を得た。ここではインドネシア側の発表によって、河川情報システムや操作・維持管理に関して、公共事業省のみならず国家防災庁からも発表があり、それぞれの省庁の取り組みやそれぞれが認識している課題が具体的に示された。
・ワークショップで日本側が発表した内容に対し、インドネシア側から多くの質問が寄せられる等、日本の取り組みや技術についてインドネシア側の関心は高く、今回のワークショップによりインドネシア側の理解を深めることができた。
・引き続いて実施した住民参加ディスカッションにおいては、双方の発表と、実務者同士の率直で活発な議論により、水資源管理に係る住民参加の課題に対するより良い施策の実施に向けて、現状や取組について相互に理解を深め、意見交換を行うことができた。
・これらの取り組みを通じて、国土交通省としてはインドネシアとの水資源管理の分野における協力の具体的なニーズを把握し、今後の政策対話や具体的な協力のきっかけとすることができた。

お問い合わせ先

国土交通省総合政策局海外プロジェクト推進課 森、吉井
TEL:(03)5253-8111 (内線25804、25815) 直通 (03)5253-8315

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