報道・広報

第3回海外インフラプロジェクト推進懇談会について(結果概要)

平成24年7月5日

 海外におけるインフラプロジェクトに係る我が国事業者の事業活動を積極的に推進するため、海外展開戦略、PPP等のファイナンススキーム、人的ネットワークの活用方策等について有識者から幅広く助言を頂き、今後の海外展開施策の参考とすることを目的に、第3回海外インフラプロジェクト推進懇談会を下記の通り開催いたしましたので、その概要を報告いたします。

1.日時及び場所
    日時:平成24年6月29日(金) 15:00~17:30
    場所:国土交通省 中央合同庁舎第2号館16階 国際会議室

2.懇談会委員 (五十音順、敬称略)
    安間 匡明   (株)国際協力銀行 経営企画部長
    上田 新次郎  (株)日立プラントテクノロジー 代表取締役
    小澤 一雅   東京大学 工学部 社会基盤学科 教授
    加藤 浩徳   東京大学 工学部 社会基盤学科 准教授
    黒田 孝次   日本高速道路インターナショナル(株) 社長
    佐伯 洋     海外鉄道推進協議会事務局
    高木 敦     モルガン・スタンレーMUFG証券(株) マネージングディレクター
    手塚 裕之   西村あさひ法律事務所 弁護士
    濱島 明道   (株)大林組 海外支店土木第一部 部長
    廣瀬 典昭   日本工営(株) 取締役社長
    山田 順一   国際協力機構 企画部長
    山埜 英樹   住友商事(株) 風力・水インフラ事業部長
   (上記の他、オブザーバーとして外務省、経済産業省その他関係機関が参加)

3.主な議題
    ・ 国土交通省の最近の取り組み等(報告)
    ・ プロジェクトの事業実施面等に係る議論(委員からの御発表、質疑応答)



4.議事概要

○冒頭、国土交通省・前田国際統括官よりあいさつ。インフラ海外展開は政府を挙げての取り組みであり、国交省でも「インフラ海外展開推進のための有識者懇談会」を開催し中間とりまとめを行い、それが「パッケージ型インフラ海外展開促進プログラム」にも反映されている点を紹介。今回は事業実施面での委員のお考えを伺い今後の取り組みに活かしたい旨述べた。

○国土交通省・三宅大臣官房参事官より、「インフラ海外展開推進のための有識者懇談会」の議論およびその中間とりまとめ内容、また「パッケージ型インフラ海外展開促進プログラム」の内容について、概要を説明。

○委員各位より、海外インフラプロジェクトにおける事業実施に関してご発表いただくとともにご意見を伺ったところ、概要は以下のとおり。

・かつては、海外インフラプロジェクトのマスタープラン(MP)策定から個別案件のFS、事業実施まで日本がトータルで実施していた。近年は、例えばMPは日本がつくっても良い案件は他国が実施してしまうなど、うまく回らなくなってきた。MP策定など案件形成の段階は、そこから次につなげる必要がある意味で重要であり、それをどう強化していくかが今の課題で、政府の支援が必要。またFSの段階で事業のかたちを提案することが有効で、この段階で質の高いサービス提供や環境配慮など、日本の強みを活かした事業提案を行い、価格だけでない競争にしていく事が重要。

・マスタープラン策定段階から案件形成を考えていくこと、研修を活用し、日本に来る研修生に日本のインフラプロジェクトをPRする機会とすること、専門家の活用によるO&Mへの関与を進めること、などの取組も、海外インフラプロジェクトへの日本企業の参画促進に有効と考えられる。

・海外プロジェクトの実績を作るための選択肢として、既存の事業に対して、買収やその株式を一部取得するなどの形で参入する方法も有効。新興国のインフラ市場はすでに他国に席巻されつつあり、スピード感をもって対応する必要があるという観点からも、日本がイニシアティブをとれるような展開を前提としつつ、かかる参入方法も活用・検討すべき。

・ODAでインフラ部分の建設、PPPでいわゆる上物関係整備とオペレーションを実施するハイブリッドのプロジェクトが拡大されることが望ましい。ファイナンスの部分で日本の強みを活かすことは大きな強みになる可能性があり、現在円借款で行っている事業にどのようにPPPを組み合わせるかが重要なポイント。

・円借款事業の設計・入札図書の作成を日本側で行うことができれば、日本に有利な案件を形成できると考えられる。一方で、そうした連携DD(Detailed Design, 詳細設計)は現在STEP案件のみで適用されており、その対象範囲を拡大することは、ODAの調達に関する国際ルールとの関係も考慮して慎重に検討する必要がある。

・海外プロジェクトにおける既往の失敗の原因として、これまでに経験したことのない大規模な工事に対するマネジメント能力不足、設計変更や追加工事が次々と増加し、また物価や人件費が急騰するのに対し、物価上昇による負担を担保するエスカレーション条項が契約に盛り込まれていなかったなどの契約上の問題、ローカルのパートナーが無く現地の情報取得や発注者の感覚を吸収できなかったこと、などが挙げられる。

・今後の海外展開にあたっては、収益性の高い事業運営部分に取り組むことが重要。海外事業の受注失敗例を踏まえ、現地の土木企業との連携強化や、運営面も含むライフサイクルコストでの評価を発注者に対し提案するなどの取り組みを行っているほか、技術だけでなく契約管理に関しても強化しようとしているところ。政府への期待は、民間企業で対応が難しい部分のリスクやプロジェクトファイナンスによる支援。また、現地通貨建て収入に依拠する長期のインフラ事業では現地通貨建てのプロジェクトファイナンスが必要。

・実務的対応能力という面におけるわが国の課題としては、キャッシュフロー分析と予測を綿密に行う専門的能力および海外案件での複雑な請負・事業権契約を管理できる人材の育成がある。また、日本でも契約の部分の係争に対応できる弁護士を育成しようとしているだが、対応できる弁護士はまだ少ない。法務面での対応を含めて、海外プロジェクトにおける失敗事例を共有することが重要。

・海外でのインフラプロジェクトの実施にあたっての原則として、現地のニーズをとらえる必要、現地の商習慣や地元周辺自治体のポリティクスを理解する必要、および資機材の現地調達および現地人材育成を含めた徹底した現地化の必要がある。したがって、インフラ事業については日本における成功体験や強みをそのままで活かせるわけではなく、現地ローカル企業などを使いこなすことが必要。

お問い合わせ先

国土交通省総合政策局 海外プロジェクト推進課  西、吉井
TEL:(03)5253-8111 (内線25-803、25-819) 直通 (03)5253-8315 FAX:(03)5253-1562

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