災害復旧申請の手引き 2.災害復旧事業のあらまし

●我が国では、毎年豪雨や地震などにより大小様々な災害が多数発生しています。

●国土交通省では、所管する公共土木施設(河川、海岸、砂防、地すべり、急傾斜地、道路、下水道、公園の施設、その他港湾局等に係る施設)が豪雨や地震などの異常な天然現象によって被災した場合に災害復旧関係事業の国庫補助を行っています。

●天然の河岸及び海岸の欠壊の場合でも、河岸及び海岸の維持上又は公益上特に必要と認められるものは、災害復旧関係事業を行うことができます。

●防災課が担当する災害復旧関係事業(地方公共団体又はその機関が維持管理する公共土木施設が被災した場合の災害復旧関係事業)のあらましは、下に示すようになっています。

●地方公共団体は、災害が発生した場合には、被災箇所について災害復旧を申請し、それに基づいて災害査定が行われ、災害復旧事業費が決定されます。(「災害復旧事業の流れ」参照)

●災害復旧関係事業には、災害復旧事業費(負担率2/3以上)のみをもって原形復旧するものと、それに改良工事費(補助率は「災特」4/10、その他1/2)を加え再度災害防止を図る改良復旧があり、高率な国費負担が受けられます。

●原形復旧とは、元の形に復旧することが基本ですが、原形に復旧することが不可能な場合には、形状、寸法、材質を変えて被災前の機能を復旧することも原形復旧としています。また、原形に復旧することが困難な場合や不適当である場合には、これに代わる施設で復旧する事も原形復旧とみなしています。
なお、河川の災害復旧事業の実施にあたっては、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」に基づく、基本的な考え方や事業のポイント、あるいは復旧工法検討の流れ、河道計画の考え方など、様々な情報を習得した上での事業の実施が望まれます。

●その他、火山の爆発による降灰を除去する降灰除去事業があります。

 
 
 
  災害復旧関係事業(防災課担当分) 
 
✓工期については、工事の規模、難易度、地形条件、自然条件及び地域の状況などにより、3箇年以内の完工にこだわることなく、適正な工期の確保に努めてください。
✓北海道・離島等の補助率については、災害関係法令例規集を参照してください。
 ※1 指定都市の海岸のみ
 ※2 下水道については、下水道法施行令第二十四条の二に規定する国の地方公共団体に対する補助金の額と同率
【災害復旧事業の解説】
 
     
河川等災害復旧事業
 
 異常な天然現象によって被災した公共土木事業を災害復旧事業費(負担率2/3以上)をもって原形に復旧することを基本とする事業です。
 
 【被災状況】
 
【復旧後】
被災施設を原形に復旧
 
  1.河川等災害復旧事業で復旧可能な範囲
 
 河川等災害復旧事業は、被災した公共土木施設を原形に復旧することを基本としていますが、原形に復旧することが不可能な場合には、形状、寸法、材質を変えて被災前の機能を復旧することも可能です。また、原形に復旧することが困難な場合や不適当である場合には、これに代わる施設で復旧することも可能です。
   
 
位 置
形状・寸法
材 質
原型復旧
原型復旧
変えられない
変えられない
変えられない
原型復旧不可能
変えられない
変更できる
変更できる
原型復旧とみなす
原型復旧困難
変更できる
原型復旧不適当
変更できる(効用的に改良された施設を含む)
   
 
 
■原形に復旧することが不可能な河川災害の例
  ■原形に復旧することが不適当な河川災害の例
 
 
原形に復旧する事が不適当な河川災害の例
 
広域の地盤沈下や極端な河床の洗掘により原形の復旧が不可能な場合、従前の効用(防災機能)が図られる形状で復旧する。
 
上下流が改修済みで、それら施設と合わせて一連の効用が増大される場合に堤防を嵩上げして復旧する。
       
  ■原形に復旧することが困難な道路災害の例   ■原形に復旧することが困難な道路災害の例
 
原形に復旧する事が困難な道路災害の例
 
原形に復旧する事が困難な道路災害の例
 
在来の道路位置に復旧することが著しく困難であるため、必要最小限の工事として、トンネルで復旧する。
 
道路を盛土で復旧するのは、著しく困難かつ高価となるため、橋梁で復旧する。
       
■原形に復旧することが不適当な道路災害の例
■原形に復旧することが不適当な道路災害の例
原形に復旧する事が不適当な道路災害の例
原形に復旧する事が不適当な道路災害の例
 
道路災害復旧とともに、被災原因の除去として、谷止工と排水工の拡幅を行う。
 
被災施設の前後がいずれも改良済みであり、あわせて復旧した場合、一連の施設の効用が増大される場合に、前後の道路に合わせて復旧する。
   
■原形に復旧することが不適当な橋梁災害の例
原形に復旧する事が不適当な道路災害の例
 
被災した橋梁の前後が改良済みであり、合わせて復旧した場合、一連の施設の効用が増大される場合に、前後の道路に合わせて復旧する。
   
  2.一箇所工事の取り扱い 
一箇所工事の取り扱いイメージ
 同一工種の被災箇所が、直線距離で100m以内の間隔で連続している場合は、各々の箇所の被害額の合計が限度額以上となれば、採択される。
 
 
 
 
  3.一定災 
一定災イメージ
 広範囲にわたって激甚な災害を受けた場合、一定計画に基づき復旧するもので、原形復旧とみなされ、河川等災害復旧事業に含まれる。
 
 (河川の例)
 欠壊した延長が、一定計画で復旧する区間延長の8割以上あれば採択される。
 
 
 4.越水させない原形復旧
(原型に復旧する事が不適当な河川災害の例)
越水させない原形復旧イメージ
 被災をもたらした洪水を対象に、上下流の河川改修計画と整合性の図れる範囲で堤防の嵩上げが可能となる制度。
 
 
 
 
  5.倒木の除去
 
 
 10分間平均風速の最大が15m以上の風により倒木が発生し、下記の場合採択される。
 
 (河川の例)
 河道断面の3割程度以上堆積した場合
 (道路の例)
 車両の交通可能部分が、幅員5m以上の一般国道・主要地方道は幅員の6割未満、その他の道路は3m未満の場合
 
 
 
 
道路の被災例  
 
河川等災害関連事業<関連>
 
 
 災害復旧事業費(負担率2/3以上)に改良工事費(補助率1/2)を加えて行う改良事業。再度災害防止のため一定計画に基づくものや局部的な改良等、一定計画によらない改良復旧も実施可能です。一級・二級河川、都道府県・指定都市管理の海岸で一定計画に基づくものについては、改良工事費が6億円以内が対象。それ以外の事業については6億円を超えても関連事業となります。総工事費のうち改良分の割合が原則として5割以内で採択されます。
   
 【被災状況】
 【復旧後】
被災河川を一定計画に基づいて復旧
 ■河川の例
 (被災)
(災害復旧)
 (改良)
河川の例 被災
河川の例 単災
河川の例 改良
 
・護岸が被災
・被災箇所のみの原形復旧
・ぜい弱部・狭窄部を含む一連区間を改良復旧
・総工事費のうち改良分が原則として5割以内
 ■道路の例
 (被災)
 (災害復旧)
 (改良)
道路の例 被災
道路の例 単災
道路の例 改良
 
・道路法面が崩壊
・被災箇所のみの原形復旧
・被災箇所を橋梁によりショートカットし、再度災害防止と法線是正を行う改良復旧
 ・総工事費のうち改良分が原則として5割以内
 ■橋梁の例
 (被災)
 (災害復旧)
 (改良)
橋梁の例 被災
橋梁の例 単災
橋梁の例 改良
 
・橋梁が崩壊
・被災箇所のみ原形復旧
・未被災の道路を含め改良、幅員拡幅を行う改良復旧
 ・総工事費のうち改良分が原則として5割以内
 
河川災害復旧助成事業助成
海岸災害復旧助成事業
 河川、海岸において大規模な災害を受けた場合に災害復旧事業費(負担率2/3以上)に改良工事費(補助率1/2)を加えて行う改良復旧事業。再度災害防止のため一定計画に基づき実施する一級・二級河川、都道府県・指定都市管理の海岸で改良工事費が6億円を超えるものが対象。総工事費のうち改良分の割合が5割を超える場合にも採択されます。経済効果が重視される事業です。
  【被災状況】
 【復旧後】
被災河川を一定計画に基づいて復旧
 
■河川の例
(被災) 
(災害復旧) 
 (改良)
・出水により護岸が被災し、家屋等も多数浸水。被害が激甚
 ・被災した施設のみの復旧
・再度被害の恐れが残り、充分な効果が得られない
・一定計画に基づいて一連区間の川幅の拡幅、護岸の嵩上げを実施
 ・一般資産等が保護され、経済効果が大きい
 ・総工事のうち改良分が5割以上も可
■海岸の例
(被災) 
(災害復旧) 
 (改良)
海岸の例 被災
海岸の例 単災
海岸の例 改良
・高波浪により直立護岸が被災し、背後の道路家屋等にも被害
・地形変化により原形復旧困難とみなして、直立護岸の復旧に合わせて消波工を設置
・一定計画に基づいて一連区間を人工リーフ、緩傾斜護岸により面的に防護
 ・一般資産等が保護され、経済効果が大きい
 ・総工事費のうち改良分が5割以上も可
 
 
【一口メモ】
 
 ■河川等災害復旧助成事業・河川等災害関連事業の推移
 過去10年の河川等災害復旧助成事業・河川等災害関連事業の事業費推移は、下記のとおりであり、令和元年の改良費は東日本台風での被害が大きかったこともあり、過去10年間で最も多い約700億円に達しました。
 
特定小川災害関連環境再生事業<小川
 小規模な河川において、災害復旧事業費(負担率2/3以上)に改良工事費(補助率1/2)を加えて河川の環境機能の改良を図る事業。総工事費のうち改良分の割合が5割以上で採択されます。
 
【被災状況】
【復旧後】
公園と一体的に河川被害を復旧
 
特に環境に配慮すべき次の区間で実施。
  (1)市街地もしくは市街地周辺部または付近に学校、公園、病院等の公共施設もしくは史跡、歴史的記念物が存在する地域。
  (2)自然環境、歴史的風土、文化財等に関する法令により、災害復旧事業の行為に制限を受ける区域。
  (3)被災施設付近の河川区間において、絶滅のおそれのある野生動植物の種等の貴重な動植物の生息、生育が確認される区域。 
一部の施設を残して被災
未被災箇所を含めて環境に配慮した工法で復旧
 
河川等災害関連特別対策事業災特
 河川、砂防において関連事業及び助成事業を実施する際に、その上下流(概ね200m以内)で流下能力の確保に支障となる箇所を除去、是正する事業。この事業の工事費は、原則として「関連」、「助成」における災害復旧事業費の工事費以内で採択されます。
 
狭窄部の除去
橋梁の是正
 
 
【一口メモ】
 
 ■土砂等撤去について
 河川の決壊により、宅地・道路等がガレキと流木・土砂により埋没した場合は、災害復旧事業だけでなく、堆積土砂排除事業(国土交通省都市局所管)及び災害等廃棄物処理事業(環境省所管)と連携することにより一括撤去することが可能です。
降灰除去作業<降灰除去
 
 火山の爆発に伴う降灰があった場合、道路・下水道・都市排水路・公園・宅地にかかる降灰を収集、運搬および処分する事業です。このうち防災課は市町村道・下水道・都市排水路に堆積した降灰の除去を所管します。連続する2ヶ月において毎月1回以上の降灰がある場合で、かつ1,000g/㎡以上の降灰があった場合に採択となります。補助率は下水道は2/3、それ以外の施設においては1,000g/㎡から2,500g/㎡までは1/2、2,500g/㎡以上までは2/3となります。なお、降灰除去事業は、活動火山対策特別措置法に基づくものですが、短期間に多量の降灰があった場合には、県道、市町村道ともに災害復旧事業として申請することも可能です。
降灰除去作業風景
 
 
【一口メモ】
 
 ■総合単価
 災害復旧の申請額を算定する作業を簡素化、迅速化するために、総合単価が設定されています。
 総合単価とは、施設ごとにあらかじめ定めた地区別の平均的な労務単価、材料単価、機械経費等を用いて算出した単価で、これに災害箇所の延長や面積を掛けることによって、災害復旧事業費が求められます。
 
 
 ■大規模災害時の設計委託費等補助制度
 大規模災害時の設計委託費(現地測量、調査及び試験、復旧工法検討、設計、数量計算等)に対し、条件によって査定設計に要した費用の1/2を補助します。
適用条件
特に被害が激甚であると認められる災害(激甚災害等)の箇所(補助対象限度額あり)
地すべり対策工事、橋梁、トンネル等の特殊工法等を実施する箇所
委託費等の額が決定工事費が2億円未満
委託費の額が500万円以上で決定工事費に対する割合が7%以上
2億円未満
委託費の額が1,400万円以上
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