近年、雨の降り方が局地化、集中化、激甚化しています。被害を最小限にするためには、施設整備による対策だけでなく、ソフト対策との組み合わせが重要です。
みんなでタイムラインづくりに参加して、大規模災害に備えましょう。
(注:本映像の中には、CGによる堤防決壊、浸水等のイメージが含まれています。)
タイムラインとは、災害の発生を前提に、防災関係機関が連携して災害時に発生する状況を予め想定し共有した上で、「いつ」、「誰が」、「何をするか」に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画です。防災行動計画とも言います。
国、地方公共団体、企業、住民等が連携してタイムラインを策定することにより、災害時に連携した対応を行うことができます。
2012年10月29日、米国ニュージャージー州・ニューヨーク州に上陸したハリケーン・サンディは、大都市を直撃、地下鉄や地下空間への浸水をはじめ、交通機関の麻痺、ビジネス活動の停止など、近年発生した災害の中でも極めて甚大な被害をもたらしました。ニューヨーク州知事らは、「被害の発生を前提とした防災」として事前にタイムラインを策定しており、タイムラインをもとに住民避難に対する対策を行ったことで、ハリケーンによる被害を最小限に抑えることが出来ました。
2013年に国土交通省は防災関連学会との合同調査団を結成し、米国での現地調査とヒアリング(米国ハリケーン・サンディに関する現地調査)を行い、2013年10月、最終報告書を作成しました。この報告書では、米国での教訓等を活用しつつ、我が国の実情にあったタイムラインの策定・活用を進め、大規模水災害が発生することを前提とした防災・減災対策を進めることを提言しました。
2014年1月「国土交通省・水災害に関する防災・減災対策本部」を設置し、リードタイムを活用した発災前の活動に着目し、防災・減災に向けタイムラインの考え方を活かした行動計画を検討するため、防災行動計画ワーキンググループを設置しました。
タイムラインの対象とする災害は、【進行型災害】を基本としますが、【突発型災害】を対象とすることもできます。また、タイムラインの策定にあたっては、災害対応時の想定外の事態を減らすため、最悪の状況を含む災害も想定することが大切です。
水災害、雪害や遠地津波災害等の災害を進行型災害と定義します。タイムラインでは進行型災害を基本とし、事前に起こりうる状況を想定し共有した上で、防災行動をタイムラインとして策定します。
地震などの突発型災害では、防災行動を実施することは困難であるが、例えば、地震発生後の人命救助のために重要な「72時間」を意識して、それまで何を行わなければならないかについて検討する等、地震発生後の行動をタイムラインとして策定する事例もあり、タイムラインは災害発生後の対応でも有効な手段の一つとなり得ます。
タイムラインを構築するため、対象災害の設定とともに、主な災害の発生時点を定め、この時刻を「ゼロ・アワー」とします。また、ゼロ・アワーから時間を遡り、個々の防災行動を実施するタイミングと防災行動に必要な時間(リードタイム)、並びにその事態の進行状況を整理します。
タイムラインは災害発生後の対応につながるものとして、災害の発生を前提として防災行動を迅速かつ効率的・効果的に行うものです。このため、タイムラインの策定にあたっては、防災関係機関が広く参加することが大切です。
タイムラインの導入により、以下のような効果が期待されます。
平成27年9月関東・東北豪雨災害で氾濫危険情報が発表された市町村のうち、「避難勧告の発令等に着目したタイムライン」を策定した市町村における避難勧告または避難指示を発令した市町村の割合は72%、未策定市町村は33%となっており、タイムライン策定済みの自治体の方が、発令率が高い傾向となりました。
災害への対応後、策定したタイムラインと災害対応の時系列の記録(「クロノロジー」という。)の比較や、防災行動を実施した事象をもとにふりかえり(検証)を行うことにより、改善策を検討し、必要に応じてタイムラインに反映させるなど、防災行動や災害後の対応を継続的に改善・充実していくことが重要です。