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10月15日付朝日新聞「窓」の報道に対する建設省の書簡について

10月15日付け朝日新聞「窓」の内容




平成11年10月15日 朝日新聞(夕刊)  窓 論説委員室から

建設省のウソ

 「アユは順調に遡上。サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少は見られない」岐阜県から三重県に流れる長良川が河口堰で仕切られて四年あまり。自然環境への影響を、建設省はこう言い張る。
 しかし、その根拠は事実に反し、データを自分に都合よく解釈したものにすぎない。日本自然保護協会の吉田正人保護部長は、五年に及ぶ厳密な独自調査をもとに、そう指摘する。
 たとえばアユは、堰の両端に設けられた幅十メートルの魚道をさかのぼった数を観測し、今年は六百万匹を超えたという。
 でも、堰ができる前は何千万匹もが、幅六百メートルの河口を遡上していたはずだ。
 しかも、長良川のアユは天然ものから放流ものに変わりつつある。
 堰運用の前は放流ものの漁獲量の二・五倍もの総漁獲があり、その差が天然アユだった。最近は漁獲量が放流漁獲量に届かないほどに減ってしまった。
 絶滅が危ぶまれる種のサツキマスにいたっては、今年は二百七十八匹しか取れなかった。
 シジミについて建設省は、地元漁協の漁獲高が減っていないことを根拠に挙げる。
 だがそのシジミは、長良川でなく、隣の揖斐川で取れたものだ。はるかによい漁場だった長良川でシジミは死滅し、いま漁に出る漁師は一人もいない。
 真実を隠し、国民をだます。建設省の河口堰をめぐる言動はその点で、薬害エイスで厚生省、金融で大蔵省がやってきたことと共通している。
 そうした実態を踏まえ、河口堰に反対してきた市民グループは今週末、「公共事業、世界の潮流・日本の逆行」をテーマにシンポジウムなどを開く。
 自然の再生に動き出した先進各国の試みに学び、世界に逆行する日本の公共事業の見直しを求めるための催しだ。<幹>