10.おわりに

遺跡として確認できる最古のダムは、約5千年前(紀元前2750年頃)に築造された、エジプトのサド・エル・カファラダム(堤高11m、堤長106m)といわれます。ダム貯水池の歴史は、文明の誕生とともにあるといえます。


生物としてのヒトが水を必要とし、また、農耕、工業生産、都市での諸活動が水なしには成立しえない以上、必要な量の水を必要な時期に供給できることが文明の必要条件の一つです。また、我が国のように、沖積平野に人口、経済が集積している場合は、洪水被害の軽減ということも要件の一つになってきます。


私は、自然界の水の時間的空間的変動を調整するダム貯水池・水路系は、文明社会を支える基本的なツールの一つだと考えています。十分な量の安定した水源があれば、苦労してダムを作るまでもありませんが、そのような状況は必ずしも一般的なものとは言えず、世界の多くの地域では用水源の確保やその水量の変動に悩まされ、都市の中に雨水を蓄える貯水池を築造し、あるいは谷間にダム貯水池を建設してきました。


工業文明の時代には、ダム貯水池にエネルギー供給(水力発電)という新しい役割が加わりました。また、技術の進歩により、洪水規模の大きい河川にダムを建設し、洪水調節を行うことも可能になり、その役割も重要なものとなりました。


一方で、ダムの大型化やその数の増大に伴い、地域社会や自然環境、流砂系に及ぼす影響面などからの厳しい批判も加えられるようになりました。


これらの批判に対して、地域社会との共存や、自然環境、流砂系への影響軽減の努力がなされてきていますが、良好な二次的自然としてダム貯水池が社会に効用を発揮し続けられるよう、これからも更なる取組みが必要と考えます。


そのためにも、多くの方が、ダムとダムに関連する様々な課題に関心を持っていただくことが重要であり、このサイトがそのきっかけになれば幸いです。