多目的ダムの発展とダムの大型化(~1955年頃)

敗戦後、再出発を迫られた日本では、大型台風の襲来による水害も相次ぐ状況にありました。このため、洪水被害の軽減、食料増産、エネルギー確保等が大きな課題となり、TVA事業にならい、多目的ダムを中心とした地域(国土)総合開発が推進されることとなりました。

1948年には建設省が設置され、乏しい資金・資材の中、中断されていた事業も再開されていきました。

1950年には、国土保全、食料増産、水力開発等をめざし、国土総合開発法が制定され、1951年に河水統制事業は河川総合開発事業に改称されました。その代表的なものとして、 石淵 いしぶち ダム(1953年、岩手県)や 御所 ごしょ ダム(1981年、岩手県)等、北上川五大ダムの建設があります。

石渕ダム(岩手県)


建設(施工)中(堰堤基礎工事の途上:1951年頃)

建設(施工)中(捨石堤体畳築工事時:1952年頃)

建設(湛水)中(竣功時:1953年6月)

建設(湛水)中(湛水後:1954年)


1956年、利根川水系初の多目的ダムである 五十里 いかり ダム(栃木県)が完成しました。同じく利根川水系に完成した 藤原 ふじわら ダム(1958、群馬県)、 下久保 しもくぼ ダム(1968、群馬県・埼玉県)では、不特定かんがい容量が初めて設定され、既得農業用水との摩擦の回避、流水の正常な機能の維持に大きな役割を果たしました。

建設中の藤原ダム

下久保ダムの試験湛水の様子


電力供給も大きな課題であり、九州電力の 上椎葉 かみしいば ダム(1955、宮崎県)、関西電力の 丸山 まるやま ダム(1955、岐阜県、建設省と兼用)など、各地で大型ダムが作られました。

1952年には電源開発促進法に基づく電源開発株式会社が設立されました。電源開発が天竜川に建設した 佐久間 さくま ダム(1956、静岡県・愛知県)は日本初の150m級ダムで、輸入大型重機による機械化施工の本格導入で、我が国のダム建設史上画期的なものとなりました。

水道では、 小河内 おごうち ダム(東京都)が1957年に完成し、当時としては水道専用ダムでは世界最大の規模でした。農業用としては、 山王海 さんのうかい ダム(岩手県)が1952年に完成しています。

現在の五十里ダム(栃木県)

現在の五十里ダム(栃木県)

現在の五十里ダム(栃木県) 現在の五十里ダム(栃木県)

建設中(上)と現在(下)の丸山ダム(岐阜県)