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記者発表

1−2 上下流交流の現状と課題



 これまで上流山間地域は水源地として、治水、利水、環境面において下流地域の発展を支えてきた。このため上流山間地域では下流に対する不公平感を根強く持っているところも多い。ダム事業完了後にこのような構造的な問題を解決することはきわめて難しいが、森林の管理水準の低下、ダム貯水池の堆砂の進行、ダム貯水池水質の悪化など水源地の荒廃が進めばダム貯水池の治水、利水、環境機能の低下をきたすなど、下流地域にとっても大きな損失を被ることになる。このため、流域圏という視点から、上下流の新たな流域連携の形態を模索し、実際に交流に取り組む地域も現れはじめているが、行政依存の取り組みであること、下流住民への情報発信が不足しているなどの課題がある。

    (1) 現 状

     流域共同体意識の形成が流域交流のきっかけづくりになるとの観点から、水源地と下流受益地域は、これまで主としてイベント等の開催により交流を深めてきた。

     以下では、流域圏という視点から、上下流交流が活発に行われている代表的な事例として、

      ○ 下流が水源の森づくりの費用を負担している事例

      ○ 定期的に連携、交流を行っている事例

      ○ 流域共同体の結成を目指している事例

    を紹介する。


    (注1)掲上した取組は、下流の自治体等が上流にある森林の公益
        的機能の発揮を図るために行うもののうち、(1)森林整備
        費用の助成、(2)分収林契約、(3)水源林の取得の3形態
        またはそれに類するものに限定している。
    (注2)86の取組のうち、基金を設けているのは27事例ある(基金
        を積立中の9事例を含む)。
    (注3)平成8,9年度に新たに取得を開始した事例は10件である。
    (注4)林野庁業務資料(平成9年11月調査)

    図−5 上下流の協力による森林整備の取り組み数の推移


     1) 下流住民が水源林整備の費用を負担:かながわ水源の森林づくり
    (相模川、酒匂川)

      ○ 目 的

      • 渇水対策
      • 水道水源の保全
      • 子供たちへの教育

      ○ 概 要

       下流地域の住民は上流地域に対し、水道料金収入から水1m3あたり1円程度(23m3あたり25円)を支払う。上流地域はそのお金で山林を借り上げて混交林や広葉樹林を整備する「森林整備協定」を推進するための経費や、土地・立ち木を買い取る「水源林取得」のための経費及び管理経費など、水源林を保全する事業に充てている。

      ○ 事業内容

      • 私有林を対象に、人工林の間伐や枝打ちなどの整備
      • 巨木林化(樹齢100年以上の大木にすること)
      • 高木と低木からなる「複層林」をつくること
      • 針葉樹と広葉樹からなる「混交林」をつくること
      • 広葉樹林を植えていくこと

      ○ 特 徴

       この事業は、神奈川県の主導で行われているもので、官主導型といえる。また、上流地域は下流地域に対し水を供給し、下流地域は水を確保するためにその分の金銭を払うという、最もシンプルな形の連携になっている。


     2) 定期的な連携、交流:四万十川流域住民ネットワーク(四万十川)

      ○ 目 的

      • 清流四万十川の保全
      • 地域の活性化

      ○ 概 要

       四万十川流域では、諸問題を解決し四万十川を守っていくため、流域市町村や県、国が組織する「四万十川サミット」の開催をはじめ、多くの市民グループが活動を行ってきたが、市民グループ間の情報連絡網がなく、行政との連携も十分ではなかった。

       そこで、四万十川流域で活発に展開されてきた住民活動を母体として、(1)市民グループ間が相互支援・相互交流し、(2)流域住民と行政との連携を図り、個々の住民活動を効果的なものとすることを目的として、流域の市民グループを中心に「四万十川流域住民ネットワーク」が発足した。

      ○ 事業内容

      • 四万十川利用ルールブックの作成配布
      • 流域地場産品の通信販売
      • 流域全市町村に対する清流保全条例の制定要請
      • 家庭用洗剤の研究

      ○ 特 徴

       流域市町村の住民グループ22団体からなる、四万十川流域住民ネットワークが主体となって、四万十川の保全、地域の活性化に取り組んでいる。前述の神奈川県の事例とは異なり、住民主導により活動が行われている。

       四万十川ではもともと上下流関係ではなく、四万十川の環境を守ろうという目的のもとで、流域全体の市町村がお互いに同じ立場に立って活動している。


     3) 流域共同体の形成:雫石川流域共同体(パートナーシップ)活動(雫石川)

      ○ 目 的

      • 住民、企業・団体、行政の連携
      • 上流、中流、下流の連携による流域環境の保全・改善及びその利用の向上

      ○ 概 要

       雫石川流域共同体による組織的な活動に向けて、地元活動団体への説明会やアンケート調査などを行っている。その結果、活動に向けての課題として、

        (1) 関連部局との意見交換の必要性
        (2) 民間諸団体との連携の必要性
        (3) 検討課題の明確化の必要性

      が挙げられている。

      ○ 事業内容

      • 水辺環境づくりとその利用(湖面、湖畔、河畔)
      • 水質の保全
      • 自然環境の保護(鳥類、植物)
      • 森と水による環境教育
      • 間伐材の活用
      • 流木・ゴミ対策
      • 森林づくり(水源林、河畔林)


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