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水管理・国土保全局

利用

水利権制度等


水利権の内容

河川の流水を占用する権利である「水利権」の具体的内容は、その許可に附された「水利使用規則」(※)によって定まっています。

※水利使用規則とは

水利使用の許可の内容及び条件を定めたものです。

一般的に、水利権の内容となるべき事項は次のものです。

1.目的

河川の流水を占用する目的です。現在、水利使用規則において、水力発電、かんがい、水道、工業用水、鉱業用水、養魚、し尿処理等の区分で表示しています。流水の占用の目的は水利権の内容となるので、占用の量が同じであっても目的が異なれば、別の水利権となります。

2.占用の場所

流水の占用の場所は、占用の量と並んで水利権の重要な内容です。河川の上流での取水は、下流の水利権者に対して事実上の優先的地位を取得することとなり、蛇行河川では、取水口が河口から同一距離にある場合でも左右岸によって取水の優劣が事実上異なることがあります。

3.占用の方法

自然流水による取水、堰による堰上げ取水、ポンプ取水、ダムの貯留水の取水、伏流水取水などの別です。

4.占用の量

取水口ごとの1秒あたりの最大取水量のほかに、1日最大取水量、年間総取水量、最大使用水量等が必要に応じて定められます。

5.水力発電における落差

水利使用規則では、理論水力(=使用水量(m3/s)×有効落差(m)×9.8)として表示しています。

6.流水の貯留における貯留量

水利使用規則では、貯水池の水位(常時満水位、最低水位)として表示しています。

7.許可期間

水利権の許可期間は、原則として、発電水利使用については、概ね20年、その他の水利使用については、概ね10年として、実務上処理されています。

ただし、発電水利使用における概ね20年の原則の取扱いについては、一級河川において、当初許可から一定期間を経過しているものを中心に、原則に当てはまらない(許可期間を短縮する)ものを類型化して示し、これに基づき処理しています。

いわゆる「慣行水利権」について

旧河川法(明治29年公布)施行以前あるいは河川法の適用を受ける法定河川(一級、二級、準用河川)として指定される以前から、特定の者による排他継続的な事実上の水の支配をもとに社会的に承認された権利をいわゆる慣行水利権といい、これについては、改めて河川法に基づく取水の許可申請行為を要することなく、許可を受けたものとみなされます。

水利権の内容の制約

1.水利権の性格に由来する内在的制約

水利権は、河川の流水を直接支配する権利であって、河川管理者に対する債権ではないため、異常渇水のために、取水が不能になっても、その権利の内容の実現を河川管理者に要求することはできません。

また、河川管理者が行う河川工事は、水利権者を含めた公共の利益のために実施されるので、河川工事の実施によって生じる流水の汚濁による流水の占用への支障も、河川工事によって通常生ずる程度の支障である場合は、これを受忍すべきものとされています。

水利使用規則には、この旨の条項が記載されますが、これは水利権の許可に附された特別の条件ではなく、河川使用に内在する制約を確認的に表しているものです。

2.水利権の許可の条件による制約

水利権の許可に当たって、河川管理者によって附される条件は、水利権の内容を制約します。水利使用許可の内容及び条件は、許可に際して附される水利使用規則において明らかにされています。通常、この水利使用規則においては、

  1. 水利使用の目的
  2. 取水口等の位置
  3. 取水量等
  4. 取水及び流水貯留の条件(取水制限、貯留制限、豊水条項、優先順位等)
  5. 工作物及び土地の占用場所及び占用面積
  6. 許可期限
  7. 工事の条件
  8. 取水量の測定義務
  9. 排水量及び排水の水質
  10. ポンプ施設の取水能力の変更承認

などに関する事項が規定されます。

なお、許可に当たっての条件は、適正な河川の管理を確保するため必要な最小限度のものに限り、かつ、水利権者に対し不当な義務を課することとなるものであってはならないとされています。(河川法第90条)

権利の安定性による分類

1.安定水利権

水利権許可の一つの基準として、基準渇水流量(※)から既得権利者の水利権量及び河川管理上必要な水量を控除し、この控除した結果得られた残余の流量に比して、申請された取水量が当該流量の範囲内である場合に、新規に水利権が許可されるというものがあります。

このようにして許可された水利権は、取水が安定的に継続されることから安定水利権と呼ばれています。申請された取水量が河川の自然流況のままでは満足されないために、ダム等の水資源開発施設を設置して、人為的に基準渇水流量を増大させてダム補給を受ける水利権も安定水利権です。

※基準渇水流量とは

10年に1回程度の渇水年における取水予定地点の渇水流量(年間355日流量)をいいます。

安定水利権
2.豊水水利権

豊水水利権とは、取水の許可条件として、河川の流量が一定流量を超える場合に限り取水できるとされている権利です。安定水利権が基準渇水年において通年取水することが可能であるのに対し、豊水水利権では、通年取水が不可能であり、また、渇水年などの流況が悪い年においては、取水可能量が減少します。

この豊水水利権は、

  • イ 豊水(※)時にしか取水できないため、水利使用の目的が十分に達成されないおそれがあること
  • ロ 許可条件に反した渇水時の取水が行われるおそれがあるため、その水利使用の実行の仕方によっては、下流の既得水利や河川の正常な機能を侵害することが考えられること
  • ハ 水資源開発を行って安定的取水を行う者との間に費用負担の差が生じること
  • ニ 後発の水資源開発によって利用可能な豊水が減少し、権利の形骸化を来す、あるいは後発の水資源開発の妨げとなるおそれがあること

等の問題点があります。

ただし、水力発電については、河川の流況が日々変動する中で、常に取水し得る水量(常時使用水量)の範囲内でのみ発電を行うものではなく、流れ込み式発電にあっては、年間70日から90日程度の期間において使用できる水量(最大使用水量)が取水可能な場合に、これを最大取水量として取水し、発電を行うのが通例です。また、水力発電は河川水を消費しない水利使用という特色を有していることから、発電用水利権は、豊水水利権として認められています。

※豊水とは

豊水水利権における豊水とは、基準渇水流量を上回る部分の流量をいいます。
なお、この他に、年間95日を下らない流量を豊水流量と呼ぶことがありますので、注意が必要です。

3.暫定豊水水利権

ダム等によって生み出される水量を期待して水利権申請を予定しているところ、ダムがまだ完成していないことから、水道用水等の需要が現実に発生しているにも拘らず、安定的な水利使用が行えない場合があります。このように社会的要請により緊急に用水を必要とする場合には、許可期限が到来したら失効する旨の失効条項及び基準渇水流量を超える場合に限りその超える部分の範囲内で取水することができる旨の豊水条項を附して、暫定的な水利権が許可されることがあります。このような水利権を、暫定豊水水利権と呼んでいます。暫定豊水水利権は、豊水水利権に内在する不安定性の外に、権利の存続性の面でも安定性を欠いているといえます。

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