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河川局

審議会等の情報
河川審議会について


河川審議会の提言
「社会経済の変化を踏まえた今後の河川制度のあり方について」
(平成8年12月4日)の概要について

全文



 河川審議会は、本年6月の答申「21世紀の社会を展望した今後の河川整備の基本的方向について」の制度面での具体化を図るため、河川制度小委員会を設けて検討を進めてきたが、このたび、同小委員会の検討を踏まえ、建設大臣に対し、「社会経済の変化を踏まえた今後の河川制度のあり方について」提言を行うものである。


我が国の河川制度の歴史とこれを巡る状況の変化

 我が国の河川制度は、明治29年に旧河川法が制定されて以来、社会経済の変化に応じて幾たびかの改正を経て現在に至っており、特に治水・利水の体系的な制度の整備を図った昭和39年の新河川法の制定以降、新しい時代の河川行政の規範としての役割を果たしてきた。

 しかしながら、その後の社会経済の変化により、近年、河川制度をとりまく状況は大きく変化している。現在では、河川は、治水、利水の役割だけでなく、うるおいのある水辺空間や多様な生物の生息・生育環境として捉えられるようになっているし、また、地域の風土と文化を形成する重要な要素としてその個性を生かした川づくりが強く求められている。さらに、社会経済の高度化に伴って、渇水による社会的影響が著しくなるなど、円滑な渇水調整の推進等が大きな課題となっている。

 こうした変化を踏まえ、以下のような河川制度の改正を行うべきである。

河川制度の改正の方向

(1) 河川環境の整備・保全

 もともと治水・利水を主眼としてつくられた現行の河川制度においては、河川環境の整備及び保全のための制度が整っておらず、社会経済の変化する中で河川管理の実態面において種々の問題が生じているため、次のような措置を講ずることが必要である。

1.河川法の目的への「環境」の位置付け

 河川法の目的に「環境」に関する事項を明記し、治水・利水機能の向上と併せた良好な環境の形成と保全を推進する。これに伴い、以下の水と緑のネットワークの整備等の環境に関連する施策の充実、Uの治水、利水、環境の調和のとれた河川整備の計画の策定等を推進する。

2.水と緑のネットワークの整備

  1)既存水路を活用した良好な水辺環境の形成

 都市内の既存水路を活用し、他の施策と連携をとりながら、河川水を導水してうるおいのある水辺空間を創出するとともに、内水排除の促進等による洪水等の浸水被害の防止又は軽減を図るため、そうした水路について、水路の効用を兼ねつつも河川として適正な整備・管理ができることとし、協議により河川管理の一部を水路管理者に委ねたり、河川法の規制を最小限度にとどめるなど、実態に即した管理を行うことができる制度を創設する必要がある。

  2)河川周辺の樹林(河畔林、湖畔林)の整備・保全

 堤内の河畔林やダム湖周辺の湖畔林は、生活にうるおいと安らぎを与える「緑」であり、環境と調和した河川管理を進める上でも貴重な財産であることから、河川法の規制を最小限度にとどめつつ河川管理者がその整備・保全を行うこととし、洪水時の氾濫被害の軽減又はダム湖への汚濁水等の流入の防止を図る必要がある。

3.水質事故処理対策

 水質事故処理等の河川の維持について、水質事故等の原因者に施行させ、又は原因者に負担させることができるようにすべきである。

4.不法係留対策

 不法係留対策として、不法係留船舶の排除に伴う河川管理者の負担軽減を図るため、不法係留船舶の一定の保管期間経過後の当該船舶の売却、廃棄や売却代金の保管等についての制度を創設する必要がある。

(2) 地域との連携による治水・利水・環境の総合的な河川整備の推進

 ――河川整備の計画の改正と計画策定の手続の整備――

 河川環境の整備や保全を求める国民ニーズに的確に応え、また、河川の特性と地域の風土・文化を踏まえて地域の魅力を引き出す河川管理を実施していくため、地域との連携による治水・利水・環境の総合的な河川整備を推進することとし、現行の工事実施基本計画を見直し、以下のような河川整備の計画制度とする方向で改正すべきである。

1.河川整備の基本方針

 従来工事実施基本計画で定められていた事項のうち、長期的な観点に立った水系全体の治水・利水・環境の総合的整備の方針、全国的なバランスによって決まる基本高水等については、河川整備の最終目標(基本方針)として、河川管理者が河川審議会の意見を聴いて定める必要がある。

2.河川整備の計画

 従来工事実施基本計画で定められていた主要な河川工事の概要の部分を拡充し、具体の「川づくり」の姿が明らかになるよう、水系全体にわたる今後20〜30年間の段階的な河川整備の計画を作成する。この場合、環境面を含め河川の総合的管理が十分に可能なよう、単に河川工事の内容に止まらず、河川の維持又は河川の保全に関する事項についても計画に記載し、河川整備の全容が明らかになることが望ましい。

 また、当該計画の決定に当たっては、治水、利水と河川環境の整備・保全や地域づくりとの調和を図るため、地方公共団体の意見を聴取するとともに、必要があると認める場合には、専門的な学識経験者の意見聴取と併せて、公聴会の開催等地域住民の意見を反映するための措置を講ずるべきである。

(3)異常渇水時の円滑な水利調整のための措置

 近年渇水が頻発する中でこれに適切に対応していくためには、長期的には水資源の開発や広域的な水融通を効率的に進めていくことが必要であるが、当面の対策としては、異常渇水が発生した場合にもその被害を最小限に止めるための方策である利水者間の水利使用の調整(渇水調整)の円滑化を図ることが、極めて重要である。しかし、利水者の増加や水利使用の広域化、複雑化等から、現実には渇水調整は次第に困難となっており、危機管理の面からも、以下のような制度的措置を講じるべきである。

1.「渇水調整協議会」の位置付けとその役割の明確化

 近年、異常渇水時に利水者が渇水調整を協議する場である「渇水調整協議会」が活用され、その中で河川管理者の果たす役割が大きくなっていることにかんがみ、その活用を一層推進することによって渇水調整の円滑化を図るため、「渇水調整協議会」の位置付けやその役割を河川法上明らかにすることなどが必要である。

2.異常渇水時における一時的な水融通のための特例措置の創設

 異常渇水時における水利調整のための一時的な水融通の中には、河川法上、水利使用許可の変更のための河川管理者による審査手続等が必要となるものがあるが、緊急かつ応急的な事態に適切に対応できるよう、当該水融通について、審査手続の簡素化等の所要の特例措置を設けるべきである。

(4)河川情報の提供の推進

 適時適切な河川情報の提供により、以上のような施策を効果的に推進するとともに、危機管理対策等の推進を図るため、河川管理者による情報提供の責務を河川法上明らかにする必要がある。




河川審議会「社会経済の変化を踏まえた今後の河川制度の
あり方について」(平成8年12月4日)  (全文)




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