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河川局

審議会等の情報 社会資本整備審議会河川分科会について


第60回河川整備基本方針検討小委員会

平成19年1月29日


出席者(敬称略)
委員長  近 藤   徹
委   員  綾   日出教

池 淵 周 一
岡 本 敬 三
楠 田 哲 也
小 池 俊 雄
小 松 利 光
坂 本 弘 道
谷 田 一 三
福 岡 捷 二
福 永 浩 介
虫 明 功 臣
潮 谷 義 子


1.開      会

(事務局)  ただいまより、第60回社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会を開催いたします。
 私、本日の進行を務めさせていただきます事務局○○でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、お手元に配付しております資料のご確認をお願いいたします。
 議事次第、名簿、配席図がございます。
 それから、資料目次がございます。この資料目次にのっとってご説明します。
 資料1、球磨川水系河川整備基本方針に関する審議の流れ。資料2−1、「川辺川ダムを考える住民討論集会」論点(治水・環境)。資料2−2、住民討論集会の「ダム反対側」論点説明資料(環境)。資料2−3、住民討論集会の「国土交通省側」論点説明資料(環境)。資料2−4、「川辺川ダムを考える住民討論集会」(環境)概要等について。資料3−1、河川環境について。資料3−2、洪水調節施設における環境保全への取り組みについて。資料3−3、河川空間利用について。資料3−4、流水の正常な機能を維持するために必要な流量について。資料3−5、(参考資料)水系における環境調査の概要。
 参考資料1、球磨川水系管内図。参考資料2、球磨川水系流域図。
 それから、別添ファイルがございまして、これまでの審議に用いた資料をまとめて机の上に置かせていただいております。
 また、本日ご欠席の○○委員から各委員へ配付資料がございます。「みなさま」と書いた○○委員からの配付資料がございますので、ご確認いただきたいと思います。
 資料に不備がございましたら、お申しつけいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 本日はBグループでございます。○○委員、○○委員、○○委員は、ご都合によりご欠席されております。また、○○委員におかれましても急遽ご欠席とのご連絡をいただきました。
 傍聴の皆様におかれましては、傍聴のみとなっております。審議の進行に支障を与える行為があった場合には退室いただく場合があります。議事の進行にご協力願います。
 それでは、委員長、よろしくお願いいたします。

2.議      事

(委員長)  ○○でございます。本日は、委員の皆様にはご多用中のところご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 まず、議事に入る前に、地元の方々から意見書や要望書が来ております。既に配付しているものも含め、各委員にはこの場に用意しております。各委員におかれましては、意見書の専門的な分野についてはごらんになっているか、あるいはまた議論の中でごらんいただいて、本日の審議に際してはこれらの意見書の内容も踏まえてご意見をいただきたいと思います。ここにあります大きなファイルです。よろしくお願いします。私も先ほど手に入れたものもございますので、議事の進行の中で随時事務局の意見を聞くかもしれませんが、よろしくお願いします。
 前回、河川環境に関する資料の項目のみの説明になっていましたので、今回は住民討論集会の環境関係部分と球磨川の河川環境について事務局より説明をお願いいたします。
(事務局)  事務局を担当させていただいております○○でございます。
 まず、お手元の資料1をごらんください。「球磨川水系河川整備基本方針に関する審議の流れ」というペーパーがございます。これまで9回審議を重ねてまいりましたけれども、前回は計画高水流量の中の洪水調節施設の実現可能性、それと項目だけという委員長からのお話がございましたけれども、時間の関係がございまして、河川環境、河川利用のさわりの部分だけご説明をさせていただきました。本日は、河川環境、河川利用の具体的内容、ここにございます河川環境、河川空間利用、水利用、流水の正常な機能を維持するため必要な流量、こういった項目についてご審議をいただければと考えてございます。
 お許しをいただきまして座ってご説明させていただきます。
 それでは、資料2−1、「『川辺川ダムを考える住民討論集会』論点(治水・環境)」というペーパーがございます。これは熊本県でおまとめいただいた資料でございますけれども、これまで環境に関してどのような議論があったのかということで、住民討論集会の追体験ということでご説明をさせていただきたいと思います。この資料2−1とあわせまして、資料2−4というA3横の資料を準備させていただいております。この2つの資料を使いながら説明をさせていただきたいと思います。
 資料2−1の16ページをお開きいただければと思います。前回もさっと項目だけご紹介はさせていただきましたけれども、「川辺川ダムを考える住民討論集会」の論点(環境)ということで、これ以降に環境についてどんな論点があったのか、ダムの反対側、それから国土交通省、推進・容認側、両方の意見が列記されてございます。時間の関係もございますので、主な項目、ポイントを抜粋して、先ほど説明しました資料2−4という資料を準備してございますので、それとあわせながら、分かりやすく対比したもので説明をさせていただきたいと思います。
 まず、16ページの最初にダムによる水質の影響という項目がございます。この中で、水温の問題が最初に指摘されてございます。資料2−4、水質の問題を1ページ目に記載してございます。
 まず、ダムの反対側のほうでございますけれども、低層から水をとるダムの場合、ダム下流の河川に泥水が流れ、ダム湖は春から夏にかけましては日照や気温の上昇によりましてダム湖の表面、上層より下層や底に近いところの水温が低いという実情がございますので、そこからの放流によりまして、稲の発育の悪化や、アユなど魚介類の生育抑制等の働きをする。表層から取水する熊本県で管理されております市房ダムでも、渇水の場合は低水温による影響が出る場合があるというご指摘がございます。
 その下、2つ目でございますけれども、国交省の川辺川ダムの水質モデルによる予測結果によると、現況とダム建設後では月によっては日平均水温に6度程度差があるが、これでダム建設後も大きな変化がないと言えるのかというご指摘がございます。
 これに対しまして、国土交通省・推進側でございます。右側でございますが、一番上に選択取水設備及び清水バイパスの水質対策により、水質や水温の変化を最小限に抑えるように努力している。こういう前提でございますけれども、その下に選択取水設備により川辺川ダムではさまざまな高さから取水できるため、市房ダムで起きるから川辺川ダムでも起きるわけではないという主張でございます。
 選択取水設備というのは、その下にございますように、わかりやすく言いますと伸ばしたり縮めたりする望遠鏡の原理で伸び縮みをさせまして、ある任意の水深から水をとる設備のことを言っております。こういう設備を設けまして、適当な水深の濁度、あるいは水温のところから水を下流に放流することが可能になります。
 それに加えまして、右側に絵がございますけれども、ダム湖をバイパスする水路ですけれども、清水バイパスと呼んでおりますが、こういったものをあわせて設けまして、これらの組み合わせて下流の水温の問題だとか、水質の問題を解消しようと考えてございます。
 次に、○の3つ目ですが、昭和33年から平成8年の39年間の月ごとの最高、最低、及び平均水温についてシミュレーションで見ますと、月平均で見た場合、右側にグラブがございますけれども、ダムの有無による影響はほとんどないということが言えます。
 その下でございますが、ダムの運用によりましてダム建設前後で平均水温の差が生じることはありますけれども、水温の差が5度以上高くなっているのは39年間でわずか12日という極めてまれな現象でございまして、水質、水温面での大きな影響はないであろうという考え方でございます。
 次に、2−1の資料に戻っていただきまして、16ページの左側の下に濁りの問題がございます。これにつきましては、資料2−4の2ページでございますけれども、まずダム反対側でございます。球磨川の濁りの原因について、洪水後の濁りの回復について、球磨川の木綿葉橋(ゆうばばし)と川辺川の権現河原との透視度を調査した結果、川辺川では急速に濁りが回復し、3日間で透視度100センチを超すようなことになりましたけれども、球磨川の濁りは3日間で川辺川の半分の50しか回復しないというご指摘でございます。
 もう一点がその下にございますけれども、濁りについては8、9月の水の少ない平水時の濁りが問題、この時期の球磨川の濁りはほとんどが市房ダムから来るもので、生物には平水時に濁りが続くのが一番大きな問題というご指摘でございます。
 この濁りの原因について、国土交通省・推進側でございますけれども、先ほどもご説明しましたとおりでございますが、選択取水設備と清水バイパスを活用して水質の保全を図るという基本的考え方でございます。
 シミュレーションの結果でございますけれども、川辺川では現況で濁度5未満の日数が年間308日、ダム建設後――図のほうに309とありますのでご訂正いただければと思います――308日ということで、河川水の濁りに大きな変化はないという考え方でございます。
 それから、川辺川が澄んで球磨川が濁っているは4月から9月の間で、各月4から10日ということですが、この濁りの原因は市房ダムの放流によるもの、それから稲作のしろかきなど球磨川上流域の汚濁源を起因とするものという指摘でございます。
 左の下にまいりまして、濁りの予測結果についてということでございます。ダム反対側でございますが、濁度5未満であっても濁度4.7では米のとぎ汁のように濁っており、現状の川辺川の平均濁度1.6の状況とは大きく違う、濁度について現状の平均濁度よりもっとデータを細分化して出せないのかというご指摘でございます。
 これを受けまして、右側、国土交通省・推進側でございますが、川辺川では現況で濁度2未満の日数が年間214日、ダム建設後は220日でございまして、細かい資料を出しましたけれども、大きな変化がないということでございます。
 再び2−1の資料に戻っていただきまして、17ページの右下のところ、河川水の変化というところがございます。これと、その次のページのダム湖の富栄養化の問題と両方をあわせてでございます。これにつきまして、資料2−4の3ページの対照表をごらんいただければと思います。
 富栄養化の可能性についてということで、ダム反対側のほうですが、ダムができると河川環境は湖沼的環境へと変化し水も変化する。具体的には、左にちょっと書かれていますが、ダム内では環境が変わる、河川的な環境から湖沼的環境。それから、環境が変われば水質も変わる。植物プランクトンが増殖したり、栄養塩が減少したり、底層の酸素不足が発生するというご指摘でございます。
 また、その下でございますが、市房ダムと川辺川ダムでの平均水深×回転率という水理条件が非常に似ている。モデル上、川辺川ダムのほうがより富栄養化する位置にあるならば、市房ダム同様に川辺川ダムでも富栄養化する可能性があるのではないかというご指摘でございます。
 一番下でございますが、シミュレーションによる予測は科学的解析のためには重要だが、現時点ではまだ十分な予測ができるほど精度は高くないというご指摘でございます。
 それに対しまして、右側の国土交通省・推進側でございますけれども、貯水池等での富栄養化発生の可能性を予測するボーレンワイダーモデルというものがございますけれども、これによりますと、川辺川ダムの場合、富栄養化現象が発生する可能性は低いという考え方でございます。
 その次でございますけれども、アオコなどによる景観障害について、これはクロロフィルaの水質のシミュレーションでございますけれども、その結果、川辺川ダムができても国交省が管理している九州内の他のダムと比較して特に高い値ではない。それは下のグラフにございますけれども、川辺川ダムの予測値と、例えば松原ダムだとか竜門ダムだとか厳木ダムと比較しまして特に高い値ではなくて、景観障害などの問題は今、言いました既設のダムで発生していませんので、可能性は低いということでございます。
 また、富栄養化によって赤潮等が発生する可能性は低いが、ダム完成後はモニタリングを行い、必要に応じて対策を講じていくということで、必要に応じまして伐木といったことも検討しているということでございます。
 次に、再び2−1に戻りまして、19ページでございます。魚族(アユ等)への影響ということでございます。ここから抜粋をいたしまして、2−4の4ページでございます。魚族への影響ということで、アユ個体調査と付着藻類の問題という2点がございます。
 まず球磨川と川辺川のアユの大きさについてでございますが、ダム反対側からは、2000年、2001年調査の結果、川辺川と川辺川合流前の球磨川とでアユのサイズを比較しますと、体重、肥満度とともに川辺川のアユのほうが大きいというご指摘でございます。そこにデータが示されてございます。
 国土交通省・推進側でございますが、右側でございます。統計学的には調査時期やサンプル数をそろえるべきであり、すべての調査をあわせて比較するやり方には疑義があるという指摘でございます。反対側のほうから示されました2001年10月、あるいは2002年のデータですとご指摘のような傾向は見出せませんし、いかがなものかということでございます。また、アユは季節によりまして大きさが違いますし、3回の調査では球磨川と川辺川のアユは違うとは言えないということでございます。
 次に、付着藻類、アユのえさについてでございますけれども、左側のダム反対側でございます。国交省が平成13年に行ったアユの胃の内容物の調査結果を見ると、藍藻の割合は球磨川上流が61.7%、川辺川が33.8%と、本流のほうは珪藻よりも藍藻のほうが多く、川辺川のほうは珪藻類が多く含まれており、その差がダムの影響か、別の環境要因によるものかは調査する必要があるというご指摘でございます。
 また、下にございますけれども、アユの食味や香りはえさとなる珪藻によるものというご指摘で、川辺川でとったアユの胃袋には珪藻類が詰まっているが、球磨川でとったアユには藍藻類が詰まっていることが多い。藍藻類の繁茂地についてきちんとしたデータはないが、ダム直下のような流量変動が非常に大きいところに生えることが観測されているというご指摘でございます。
 それに対しまして、国土交通省・推進側でございますが、ダムの影響で藍藻類が増えるという因果関係は特になく、珪藻類で育ったアユのほうがおいしいということも定説になっていないということでございます。
 2つ目でございますが、アユは藻類の種類を選択して食べる状況にはない。付着藻類は時期や流況によって剥離するなど付着状況が変化するため、胃の内容物に一定の傾向は見られないという主張でございます。
 3つ目はダブっておりますので割愛いたします。
 次でございますけれども、資料2−1、20ページでございます。八代海への影響ということでございまして、川辺川ダムの影響予測が21ページにございます。それから、22ページに既存ダム等と干潟の減少の関係という論点がございます。これらにつきまして、資料2−4の5ページ、6ページに記載がございます。
 八代海への影響の川辺川ダムの水質についてでございますけれども、ダムの反対側からは、ダムの底に堆積した泥に含まれる有機物や微量元素の対策が考えられていない。干潟や藻場の減少、赤潮の発生について、ダムによる影響を過少評価しているので影響予測ができていない。したがって、漁業に与える影響については全く予測されていないというご主張でございます。
 2つ目でございますが、夏の海の塩分分布について、密度の成層構造が発達しているのにもかかわらず、国交省が行った三次元モデルシミュレーションでは、上層、下層の塩分分布に差がなく再現性がよくないというご指摘です。また、COD、全リンについても実測値と計算値が合わないので、このモデルの再現性は決してよくないというご主張でございます。
 それに対しまして、国土交通省・推進側でございますけれども、右側にございます。八代海域調査委員会で、八代海と川辺川の関係について次のとおり確認が行われたということでございます。
 4点ございまして、1つ目が球磨川から八代海に流れ込む年間の水の総量について、川辺川ダムの建設前後で比較しますと0.7%の減少で比較的軽微ということでございます。
 2点目は、川辺川ダムの上流域から流出する栄養塩類は、人口なども非常に少なくて農業生産ももともと非常に小さいということで、川辺川ダム建設前後で栄養塩類の負荷の変化はほとんど見られないというシミュレーション結果でございます。
 3つ目でございますが、八代海の水質予測モデルを用いて、川辺川ダムが建設された場合の八代海域の水質予測をしたところ、窒素、リン、CODについて、河口域におきまして若干の濃度の減少がありましたけれども、それが非常に小さいということでございます。
 次のページにまいりまして、6ページでございますが、右側でございます。河口付近で昭和57年7月出水時のシミュレーションで予測しましたけれども、そのデータが右側になります。建設後には洪水時のピーク流量が下がる。洪水調節を川辺川ダムが行うために洪水時のピーク流量が下がるため、CODとか窒素、リンの総量が低くなっているという予測でございます。
 こういう4つの項目から、6ページの右上の一番下のところにありますように、川辺川ダムが海域へ与える水質面での影響は、無視し得る程度のものという結果を得ているということでございます。
 また、既存ダムと干潟の減少の関係ということで、6ページの左側でございますが、土砂、干潟についてことで記載がございます。
 ダム反対側でございますが、八代海の干潟の減少の最大の原因は埋め立てや干拓によるものだが、ダムによる土砂供給の減少も干潟減少の原因であるというご指摘でございます。
 右側に国土交通省・推進側の論点がございますが、マクロ的に見ると干潟はほとんど変わっていないと推測しています。干潟が後退しておりますけれども、その原因は昭和40年以降かなり砂利採取が行われましたので、この辺の影響。それから、平成10年以降は、年間50万立方メートル程度の航路維持しゅんせつ、砂利採取なども行われておりまして、このようなさまざまな要素が影響しているのではないかという指摘でございます。
 その下、砂の移動の問題、そういった不確実な事項が非常に多く、現段階では予測の精度には限界がある、今後、慎重にモニタリングを行いながら、必要に応じてダムの下流に土砂を置いて、下流に砂を供給することを実施するということを記載してございます。
 次でございますけれども、資料2−1では23ページでございます。希少生物への影響という項目でございます。まずクマタカへの影響という項目がございます。資料2−4の7ページをごらんください。
 ダム反対側のご主張ですが、ダムサイトに近い藤田谷の――ダムサイトの左岸直上流でございます――クマタカの繁殖成績を1996年から2002年まで集計してみると、繁殖成功率は43%にすぎない。近傍に生息しております7つがいで見たとき、繁殖成功率はわずかに29%でしかない。さらに、国土交通省の資料を計算すると24%というご主張でございます。それから、その下にございますとおり、ダム建設は繁殖率の低いクマタカ個体群にさらに追い打ちをかけるような不利益をもたらすと考えられるというご主張でございます。
 それに対しまして、右側、国土交通省・推進側の主張でございます。川辺川ダムの事業区域には7つがいを確認、各つがいへの影響を予測した結果、クマタカのつがいの生息、繁殖活動はダム完成後も継続するものと考えているということで、その下にAからKまでの7つがいでございますけれども、これと事業区域との関係が整理されてございます。こういった関係から、実際はもう少し細かく分析してございますけれども、つがいの生息、それから繁殖活動はダム完成後も継続するものと考えてございます。
 その下でございますが、短期的なデータで繁殖率を出しておられるんですけれども、科学的に見ましてそれが有利かどうかという指摘です。さらには、川辺川ダムのコアエリア内、これはクマタカの行動圏を評価する際に中心部をそういうふうに呼んでおりますが、コアエリア内で工事があった場合、繁殖率は37%、工事のなかった場合は12%となっており、工事の関係ではないことがわかっている。何が原因かというと、山の中のさまざまな現象となっております。
 繁殖状況はその下にございます。右側に繁殖率に関するさまざまな要因がございまして、ダム工事以外にもクマタカが置かれておる環境は、こういったものが影響しているという考え方でございます。
 次でございますけれども、資料2−1では23ページの下のところでございますが、やはり希少生物への影響ということで、洞窟の生物への影響が指摘されてございます。資料2−4では、8ページ、9ページに説明資料を準備させていただいております。そちらをごらんください。
 8ページでございます。洞窟の生物への影響ということで、まずコウモリへの影響でございますが、ダム反対側でございます。洞窟ではコウモリ類が生息し、洞窟の床にはグアノと呼ばれるコウモリのふんの堆積物が見られ、洞窟に住む小さな生物はこのグアノがなくては生きていけない。特に希少な2種類の洞窟生物、その下にありますけれども、●●●●●だとか、○○○○○といったものでございますけれども、洞窟だけに住んでおり、洞窟の入り口が水によってふさがれていれば、コウモリ類は出入りすることができず、そういったものが死んでしまうことになるというご主張でございます。
 その下でございますけれども、国土交通省の資料でもコウモリがトンネルを利用するのは不確実と認めており、国土交通省のほうで保全対策としてトンネル案をお示ししておりますので、それについての言及でございます。トンネルを利用するのは不確実と認めており、不確実性の高い代償措置を実施することは許されないというご主張でございます。
 右側でございますけれども、国土交通省・推進側の主張でございます。専門家からなる●●●●保全対策検討会を設置し、そこにおきまして洞窟の生態系や動物の生息状況の把握、保全措置の検討を行っているということでございます。洞窟は1,000メートルを超える延長の鍾乳洞でございますけれども、その中の一番大きなホールでございます東ホールは非常に高いところにあるので、仮にダムの最高水位である280メートルまで水がたまった場合も、それより高いところにあるということでございます。そこには横断図、それから平面図が示されてございます。
 その下でございますが、人工的なトンネルをコウモリが利用した例は、全国や川辺川ダムのサイト周辺でも確認されているということで、東ホールでもコウモリが移住し、なれるための時間を十分確保すれば、何とか保全が可能ではないかということでございます。
 1枚めくっていただきまして、保全対策についてということでございます。
 ダム反対側でございます。九折瀬洞の生物への影響、保全対策についてということでございますが、今、申しましたトンネル等を使いました保全対策についてのご指摘でございます。東ホールの気温は最低13度、最高18度で、その差はわずか6度、これに対して洞窟の外では最低気温4度から最高気温29度まで25度の差がある。東ホールにトンネルをあけまして、直接外気が入るようなことになってしまえば、コウモリの繁殖、子育て環境が失われてしまうのではないかというご主張でございます。
 右側に、国土交通省・推進側の指摘がありますが、東ホールから外への移動経路が一時的に水没するが、トンネルを設置するという案を採用。トンネル案でシミュレーションを行った結果、生態系に対して非常に重要な湿度、温度といった、先ほど言いました東ホールの生息環境にも大きな影響を与えないことを確認しているということでございます。ただ、生物のことですので非常にセンシティブな問題で、こういったところにつきましてはモニタリングも必要だということでございます。
 以上、住民討論集会での論点、特に環境面にかかわります論点についてご紹介をさせていただきました。時間の関係もございまして、少し省略をさせていただきまして申しわけございませんでした。
 次に、資料3−1から3−5まで準備してございます。これがきょうの河川環境に関します説明の資料でございます。まず、3−1を使いまして河川環境全般についてご説明をいたします。その次に3−2を用いまして、洪水調節施設における環境保全への取り組みについてということで、前回、洪水調節施設の実現可能性ということで川辺川ダムを想定しましてご説明をさせていただきましたけれども、今回も洪水調節施設が及ぼす環境への影響ということで、やはり川辺川ダムを想定いたしまして環境に与えます影響と対応についてご紹介をさせていただきます。その後、資料3−3、河川空間利用について、資料3−4、流水の正常な機能を維持するために必要な流量について、そういった流れでご説明をさせていただきます。なお、資料3−5は、今、申しました資料3−1から3−4の参考資料になってございますので、適宜ごらんいただくことになります。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料3−1につきまして、順番にご説明をさせていただきたいと思います。
 資料3−1、河川環境についてということで、球磨川流域の河川の自然環境につきまして全般的なご説明をさせていただきます。
 河川全体の区分でございますけれども、左の上にございますとおり、河口部、下流部、中流部、上流部、川辺川ということで区分をさせていただいております。球磨川の幹川流量延長は115キロ、川辺川は62キロと延長が長いこともありまして、それらの区間をそれぞれの環境に応じて区分をさせていただきました。河口部は、汽水域となります分波堰、球磨川堰、新前川堰という分波堰から下流。下流部は、球磨川堰から遙拝堰までの区間。中流部は、遙拝堰から渡地区までの区間、上流部は渡地区から市房ダムまでの区間。川辺川は、球磨川の合流点から神屋敷堰までの区間ということで設定をさせていただいてございます。
 全般的な話を申しますと、河口部につきましては干満の差が大きい八代海に面しておりまして、広大な干潟が形成されてございます。シギ、チドリといった渡り鳥の中継地点になっておりまして、ヨシ群落が分布しております。
 下流部は、分流堰により湛水域が形成されております。中洲が発達してございまして、ヤナギなどが生育し、そこにはカワウなどがねぐらで利用しているということでございます。
 中流部は、山間部を貫流するところでございまして、瀬や淵が連続する区間、それから堰やダムによる湛水が存在してございます。
 上流部、支川の川辺川でございますが、瀬や淵、砂州、ワンドが分布した河川環境を示してございます。実際、現地には多くの取水堰も存在しているということでございます。
 1枚めくっていただきまして、河川の区分と自然環境でございます。今、申しました河川の区分に応じた河川の特性を少し整理させていただいております。先ほど申しました河口部、下流部、中流部、上流部、支川の川辺川ということで、いわゆる典型的な環境がどんなふうになっているかをここにお示ししてございます。
 河口部では、分流堰までの間でございますけれども、汽水域、干潟という特性がございます。河床材料はシルト、砂、砂利主体でございます。植物相は、ヨシ群落、アイアシ等の塩沼植生でございます。生物群衆というお話が前回○○委員からございましたが、ボラ、ハゼ類、シギ、チドリ、シオマネキ等という生物相でございます。
 下流部につきましては、分流堰から遙拝堰の間でございますけれども、緩流域、あるいは堰の湛水域になってございます。河床材料はシルト、砂、砂利が主体でございます。植物相はヨシ群落、ヤナギ林、生物相はアユ、カワムツ、カマツカ、鳥類ではカワウ、サギ、動物類ではアカネズミ、イタチとなってございます。
 中流部でございますけれども、遙拝堰から人吉市の出口の渡地点でございます。ここは山間狭窄部という地形でございまして、特性といたしまして瀬、淵、あるいは岩河床、それから堰ダムによります湛水域が形成されてございます。河床材料は砂利、転石が主体でございまして、植物相はメダケ林、ムクノキ、エノキ等の広葉樹林になってございます。生物相は、アユ、オイカワ、カワムツなどの魚類、ヒヨドリ、サギ類などの鳥類、カヤネズミなどの動物ということになってございます。
 上流部につきましては、渡地点から市房ダムの間でございまして、人吉盆地内を流れてございます。瀬、淵、ワンドが発達していまして、河床材料は砂利、転石が主体でございます。植物相はツルヨシ群落、ヤナギ林などが発達してございまして、生物相といたしましてはアユ、オイカワ、カワムツ、キンブナ、タナゴなどの魚類、セイレイ類、ヒヨドリ、サギ類などの鳥類、ゲンゴロウ類、コムラサキなどの昆虫類、こういったものが見られます。
 支川の川辺川でございますが、合流点から神屋敷堰でございます。盆地、さらにはその上の山間狭窄部を流れます。特性といたしましては、瀬、淵が発達してございまして、河床材料は転石が主体でございます。植物相といたしましてはツルヨシ群落、メダケ群落が発達してございまして、生物相といたしましてはアユ、オイカワ、ウグイ、カマツカ、カワムツ、ヤマメなどの魚類、ヤマセミ、カワガラス、セキレイなどの鳥類、タヌキ、テンなどの動物、カナヘビなどの爬虫類となってございます。
 こういう環境調査をもとに、球磨川を特徴づける生態系を考えてございます。それを右下の表に整理してございます。その際の視点でございますが、上位性、典型性、特殊性、移動性というということでございます。
 それぞれの考え方は左側の表に紹介がございますが、例えば上位性という観点で見ますと、鳥類ではサギ類、カワセミが河川の環境として考えられます。実際、ダムの話になりますと森林生態ということになりまして、クマタカとかオオタカとかが上位性を表現する種になりますけれども、ここではサギ類、カワセミを対象としています。
 典型性という観点では、砂れき地ではセグロセキレイだとか、高水敷植生ではセッカだとかカヤネズミ。水域では、汽水域ではハゼ、干潟ではトビハゼ、シギ、チドリ。淡水域では、魚類ではアユ、カワムツ、鳥類ではサギ、カモ類が考えられます。
 あと、移動性ということで、広範囲に移動する生物といたしましては、アユだとかタヌキがこの流域の河川周辺では取り上げ対象となります。こういった種を対象といたしまして、河川の整備、保全を図るという基本的な考え方でございます。
 1枚めくっていただきまして、流域の歴史的変遷をまとめてあります。河川の環境を考える際、河川にどういうインパクトがあったか。それによってレスポンスがあって今の環境ができているわけですけれども、そういうインパクトを少し整理させていただきましたのが下の表でございます。
 細かいところの説明は省略させていただきますが、例えば河口部、下流部ではどういう歴史的な変遷があったかは、一番上の写真で4枚示してございます。昭和22年から河川改修が進みまして、どんどん川の形が形づくられていったことがわかりますし、あわせまして八代市の都市化の進展がどんどん進んだということもあわせて見ることができます。
 上流部、左側でございますが、球磨川の改修とございます。従来もう少し幅の狭い川でございましたけれども、昭和40年以降、河川改修を行いまして、現在の人吉市の市街地ができているのが見てとれます。
 こういうようにいろいろなインパクトがありまして、現在の環境ができているということでございます。
 また、右側に砂利採取だとか水質の変化についてもご紹介させていただいておりますが、ここでは説明を割愛させていただきます。
 次のページでございます。河川縦断と河道特性ということでございます。球磨川の平均河床高、それぞれの区間の流動部分を上の表で示してございます。地形的には河口部が平野になっておりまして、上流部が山間地を流れ、また上に人吉盆地があるということで、河床勾配がそれに伴い変化しております。
 また、河床材料の粒度分布でございますけれども、河口部、中流部、上流部と粒度分布が変化しておることがおわかりいただけるのではないかと思います。
 一番下にそれぞれの河道特性を表現してございますが、最初に河川の特徴をお示ししたものとダブりますので、説明は省略させていただきます。
 1枚めくりまして、土砂動態でございます。球磨川本川及び支川川辺川では、過去に砂利採取等による河床低下やダムによる堆砂があったが、近年は比較的安定しているという考え方を一番上に示させていただいております。
 最初に球磨川の下流、中流区間の河床高の経年変化でございますけれども、上のほうが昭和57年から平成11年の18年間の河床高の変化でございます。例えば、遙拝堰から上流側は砂利採取で低下している。瀬戸石ダムの湛水域では堆砂してたまっている。
 それから、球磨川の平成11年から17年でございますけれども、遙拝堰の下流で少したまっている傾向がありますけれども、全般的には変動が結構小さくなりまして、縦断的には安定してきていると言えると思います。ただし、球磨川自体は非常に蛇行の著しい河川でもありますし、横から支川も入ってまいりますので、合流部だとか湾曲部で一時的にたまったり、あるいは増えたりというところがありまして、そういったことで局所的にたまったり、増えたりというデータが出ているということが読み取れると思います。
 次に、下でございますけれども、球磨川の人吉・上流区間の河床高の経年変化でございますけれども、球磨川の昭和57年から平成6年でございます。一部の区間、河川工事及び砂利採取に伴う低下とございますけれども、全般的に安定していると見れるのではないかと思います。
 それから、球磨川の平成6年から平成17年の11年間でございますが、河川工事に伴う低下、河川工事及び砂利採取に伴う低下とございますけれども、全般的には安定してきておるのではないかと思っております。
 また、川辺川、右側でございますが、直轄管理区間2.4キロのデータでございますけれども、昭和57年から平成6年にかけましては河川工事に伴う低下が上流部で見られましたけれども、平成6年以降は安定しているということでございます。
 右側に横断もありますけれども、これを見ますと、大野大橋地点という上から2つ目のところは少し河床が下がってございますが、他は安定している傾向と見れると思います。
 次に、流況でございますけれども、左下に各観測所の年総流出量の比較があります。年間の雨によります総流出量ということでございますが、平成9年以降、減少傾向にありましたけれども、平成14年以降また大きな出水がありまして増加傾向になってございます。平成17年、18年は示してございませんけれども、いずれも大きな取水がありましたので、比較的大きなものになっていると想定されます。
 各観測所の最近10カ年平均の流況表、いわゆる豊平低渇と言っておるものでございますけれども、豊水流量、平水流量、低水流量、渇水流量をお示ししてございます。右側の下にその定義を記載してございますので、参考にしていただければと思います。これを見ますと、一武という球磨川の本川、人吉より上流でございますけれども、そこと川辺川の柳瀬が流域面積同程度で流況も同程度と言えると思います。
 1枚めくっていただきまして水質でございます。7ページでございます。球磨川流域の水質でございます。まず水質の環境基準の類型区分というものがございまして、左上の地図の中にちょっと記載してございますが、一番河口のほうがB類型となってございます。下流部、河口部がB類型になっています。そこから上流がずっとA類型になっておりまして、支川の川辺川も、藤田地点という川辺川ダムサイト付近までA類型になってございます。そこから上流、川辺川ダムサイト付近から上流、それから市房ダムサイトから上流、ここはAA類型でもうちょっと水質がいいという環境基準になってございます。
 それらの達成度でございますけれども、B類型のところ、A類型のところ、それからAA類型のところを見ていただきましても、いずれも環境基準値の範囲内ということで良好な状態になってございます。これは一部、球磨川流域の下水道整備も寄与しているということでございます。右側にグラフがございますけれども、ここに下水道の普及率が書かれてございますけれども、本川上流部につきましては普及率が比較的高うございまして、これらが寄与しているのではないかと思われます。
 それから、水質の問題といたしましては、市房ダムにおける濁水の長期化というご指摘がございました。以前もご説明をさせていただきましたけれども、市房ダムでは濁水の長期化が発生している。ただし、これは昨年でございますが、温水取水塔という先ほど説明いたしました選択取水設備と同じ機能を持ったものの運用によりまして、濁水の長期化を軽減するという大きな効果が出ておりまして、そういった懸念は解消される方向にあります。
 お手元の資料に3−5というものがございます。資料3−5(参考)というものでございますが、この資料の一番後ろのページ、11ページでございます。熊本県管理市房ダムにおける対策の実施状況ということでございますが、市房ダムでは温水取水塔というものを泥水放流対策として設けておりましたけれども、品種改良などで冷水の影響がなくなったため運用を平成8年度からとめておりました。今回、濁水の長期化の指摘を受けまして、その改善対策として試験的に温水取水塔というものを動かして、比較的きれいなところの水の放流が行われたということでございます。
 それによりまして、下の左側ですけれども、温水取水塔の効果というものがございます。濁度がかなり軽減されておりまして、長期化が軽減されているという大きな効果が見られてございます。
 右側にその状況を示した写真がございますけれども、平成17年9月27日、平成18年9月8日と比較しますと、写真ではあまりきれいに出ておりません。右側の下の写真、光って白く見えておりまして、あまり改善されていないように見えておりますけれども、実際、現地に行きますと非常に澄んだ状態が見えます。これを活用していくことによって、濁水の長期化の問題が今、解消されていると伺ってございます。
 もとの資料に戻っていただきまして、7ページでございます。山腹崩壊等による濁水の発生ということでございます。これも以前ご紹介をさせていただきましたけれども、平成16年、17年の台風で川辺川流域、特に五木村のほうで多くの山腹崩壊が発生いたしました。左側の写真、2つ並んでおりますが、同じ川でございますけれども、平成17年9月には砂がいっぱいたまっている状態がわかるかと思います。こういった砂が堆積し、これが徐々に流れることによって濁りの期間が長く継続したと聞いてございます。平成18年の出水で右側のような状態にもう既に変わっておりまして、もともとの渓流というか、大きな岩のあります状況に戻ってきておりまして、雨が降りましても一時的に濁水発生はいたしますけれども、長期化は今、なくなってきていると聞いてございます。
 流域からの濁水の流入ということでございますが、先ほど住民討論集会の資料のときにもご説明しましたが、出水時以外でも流域からいろいろな濁水があるということで、地域全体で濁水対策に対する取り込みをしなくてはいけないということで、今、勉強会をされたり、いろいろな活動が始まっているということでございます。
 いずれにいたしましても、流域全体の濁水対策につきましては、地域の関係期間との連携を図り、植林を行うなど流域が一体となって濁水の軽減に努めるとともに、市房ダムの温水取水塔の試験運用みたいなものを継続いたしまして、何とか効果を発揮できないかということでございます。
 8ページでございます。ここからは各区間の河川環境と整備の基本的な考え方でございます。ちょっと時間が押しておりますので、ダブるところは割愛をいたします。
 河口部、それから河口部の汽水域、下流部の状況につきましては先ほどご説明いたしましたが、特に干潟につきましては、左側の下に地図がございますが、赤い線が1991年、緑のところが1963年、青のところが2003年ということで、最近、干潟が縮小しているということが傾向として見られてございます。
 1枚めくっていただきまして、河口部・下流部の河川環境と整備の基本的な考え方でございます。ここにお示ししておりますのは、河川環境情報図というものでございまして、植生だとか河川の河道の状態だとかいろいろなものを整理して、環境を分析するための図面として、今、各河川で整備を進めておるものでございます。こういったものを用いまして、河川環境の際にどこをさわったらいいのか、どこをさわってはいけないのか、河川管理の際にどこにしっかり目を向けなければいけないのかということに使っておる資料でございます。こういったものを見ながら考えるわけでございますが、下流部では、前にご説明しました萩原堤防の向かい側の高水敷について、一部掘削を予定しておるところでございます。こういった影響が軽減できるように、今の図面を活用しながら掘削を行うということでございます。
 左側の下に何点か整理されてございますが、河口部についてはモニタリングを継続し、関係機関と連携して干潟、汽水環境の保全につめる。過去の調査で重要種が確認されている箇所については、その生息、生育環境の保全に努める。過去に重要種が確認された箇所で河川整備を行う場合には、状況が変化している可能性があるので、施行前に再調査を行い、重要種が確認された場合は必要に応じて専門家の指導を受けながら移植等の保全措置を行う。工事の際には表土をはぎ取り、それを覆土に用いることにより植生等の早期回復に努める。濁水に十分配慮する。砂利採取の制限を継続する。アユの産卵場の再生だとか、堰管理者と連携した魚道の改良を行いながら、河川環境全般の改善に努めるということでございます。
 1枚めくっていただきまして、中流部の河川環境と整備の基本的な考え方でございます。中流部は先ほどもご説明しましたが、ダムや堰の湛水域、それから上流は山間部、山つきの渓谷となってございます。
 1枚めくっていただきまして、中流部の河川環境と整備の基本的な考え方でございます。ダムの湛水区間における堆積土砂の除去だとか、疎通能力の少ないところの河畔の樹木伐採、あるいは平水位以上の掘削を行うことを考えてございます。山間部の限られた区間での土砂の除去ですので、生物への影響は軽微かと考えております。
 左側、流水区間は定期的なモニタリングを実施するとともに、瀬、淵の保全に努める。先ほどご説明したミティゲーションの考え方みたいなものが全般的に述べられております。一番下、広葉樹林は改変面積の縮小に努めるということで、この地域本来の典型的な環境を保全するという考え方でございます。
 1枚めくっていただきまして、上流部の河川環境と整備の基本的な考え方でございます。ここは人吉市街地の区間、それからその上流区間とございます。人吉市街地区間でございますけれども、高水敷がなくて低水路のみの区間、市街地内で改修をしたこともございましたけれども、そういうことになっております。○○委員からご紹介がございました人吉層という軟岩層が比較的浅い位置にありまして、それが重要ということでございました。また、上流区間は蛇行を繰り返しておりまして、湾曲部に規模の大きな淵、ワンドが存在。これは支川川辺川につきましても同様でございます。
 左側の下でございますが、人吉市街部区間につきましては堆積した砂れきにツルヨシだとか群生しているとか、先ほどもご説明したところでございます。
 特徴的なことといたしまして、右下に環境保全の取り組みとして住民による群生の回復を目指した活動ということで、ツクシバラという野生の野バラがあるんだそうですけれども、これが堤防の除草時等に間違って刈ってしまわれないように、専門家の指導を仰ぐなど保全の取り組みが実施されているということでございます。
 1枚めくっていただきまして、上流部の河川環境と整備の基本的な考え方でございます。上流部における河川整備は、以前もご紹介いたしましたとおり、瀬、淵に影響を与えないように平水位以上の掘削ということでございます。掘削に当たっては、人吉層を露出されない配慮が必要ということでございます。また、河川と背後地に広がる水路、水田と横断的な連続性が欠如しているというのは全国的にも指摘されてございますけれども、そういう段差の解消だとか、魚道等の設置が必要ということでございます。
 河川改修のイメージでございますが、下にございますとおり平水位以上の掘削を考えてございます。
 河川環境情報図をそこにお示ししてございますが、これは川辺川との合流点でございますけれども、こういった環境に配慮をしながら、いろいろな施工のやり方を考えるということでございます。
 基本的な考え方、右の下にございますが、先ほどもご説明したポイントでございます。上流部には湿地やワンド等が多数存在しているので、そういったところを工事でさわるときにも湿地やワンドの早期回復に努めるとか、人吉層が露出しないよう十分配慮するといった点が指摘されてございます。これらにつきましては支川の川辺川も基本的に同じ考え方でございまして、河川環境の保全整備を図っていくという基本的考え方に変わりはございません。
 次でございます。ここから2点、流域全般にかかわる取り組みをご紹介させていただきます。
 河川の上下流方向の連続性確保に向けた取り組みということで、球磨川には横断工作物がたくさんございまして、上下流分断が懸念されます。発電ダム、荒瀬ダム、瀬戸石ダム、ほかにも農業用の堰だとかいろいろなものがございまして、魚類の遡上、降下に支障がないようにということで、平成6年度から魚が上りやすい川づくり推進モデル事業、これは全国展開しておるプロジェクトでございます。その指定を受けまして、横断工作物の上下流方向の移動性の改善の取り組みを行ってきております。これを受けまして、荒瀬ダム、瀬戸石ダムというダムとも呼べる高さの高い施設でございますが、ここに魚道が設けられてございます。それから、ほとんどの堰でも魚道が改築されてございまして、かなり効果を上げてきております。
 魚道の調査の結果を見ますと、右側に施設ごとの確認魚種数とございます。いろいろな種類がありますけれども、必ずしも回遊魚だけではございませんけれども、多数の魚類が魚道の中で確認されているということで、魚類の移動性の改善という観点では大きな効果を上げているのではないかということでございます。ちなみに、右側の下の写真でございますけれども、荒瀬ダムに設けられております魚道でございまして、ダムですので落差が大分ありますので、こういうふうに折り返し上がりながら高さをクリアしていくという型式の魚道でございます。
 なお、左側の地図のところにございますが、魚の上りやすい川づくりで、改善されたのが黄色、改善されていないのがグリーンになってございます。遙拝堰という八代市の下流のほうにございます堰でございますが、河床低下等の影響によりまして、今、機能が十分発揮できていないということでございます。下流がネックになりますと上流の取り組みも生きてこないということでございますので、今後、堰管理者など関係者と協議、調整を進めまして、魚道の改善に取り組んでいっていただきたいと考えております。
 1枚めくりまして、15ページでございます。自然環境と調和した川づくりの取り組みということでございます。球磨川は清流で知られておりまして、瀬、淵などが非常に発達した自然豊かな川であります。したがいまして、災害普及などともあわせまして、平成6年から多自然型川づくり――かつてはそう呼んでおりました――今は多自然川づくりと名称を変更してございますが、こういった取り組みを進めてきてございます。ここで取り組んできた例を示してございますが、追跡調査も行いまして、今後さらにこういった調査によりまして得られた成果を川づくりに生かしていきたいと考えてございます。
 以上、河川の自然環境に関する説明でございました。
 続きまして、洪水調節施設による環境への影響と対応についてということでございます。
 前回、先ほども申しましたとおり、洪水調節施設の実現可能性をご紹介させていただきましたので、洪水調節施設による環境への影響を考える際、やはり同じ川辺川ダムを想定させていただきまして、ここではその影響、対応について考えてございます。
 なお、ご承知かと思いますけれども、川辺川ダムからかんがいが撤退するという表明がございました。現在、環境への影響を小さくするような見直しを作業で行っているところでございますけれども、今回は従来の計画のもとにご説明をさせていただくということで申し添えさせていただきたいと思います。
 左側の上でございますけれども、川辺川ダムの事業計画及び五木村、相良村の地域の特性を踏まえ、影響予測の詳細な検討が必要と想定される環境影響予測を選定しました。これらについて調査、事業実施による影響予測及び評価を行い、必要に応じて保全措置を検討しています。調査影響予測評価については、環境影響評価法というものができておりまして、環境アセスメントの方法等が定められてございます。技術指針もできてございます。そういったものに基づきます調査と同等の水準で実施してございます。専門家からなる委員会を設置しまして調査、保全措置の検討などを実施してきました。
 こういったものをまとめまして、平成12年に実質的に環境影響評価書に当たります川辺川ダム事業における環境保全への取り組みを取りまとめ、県知事からもご意見をいただきまして、公表をしてございます。これらにつきましては、今回、事前に委員の皆様方にはお配りをしております。大変分厚いもので恐縮でございましたけれども、あらかじめ送らせていただきました。
 前回もご説明しましたが、今回想定しております洪水調節施設でございますけれども、左下にございます現在建設中の川辺川ダムでございます。ダムの形式はアーチ式コンクリートダム、堤高が107.5m、湛水面積が約4km2弱、総貯水容量は1億3,300万m3ということでございます。これを想定して資料はまとめさせていただいております。
 調査項目でございますけれども、環境影響評価法、それに基づきます技術指針に沿いまして、大気環境、水環境、土壌に係る環境その他の環境、動物、植物、生態系、景観、人と自然との触れ合い活動の場、廃棄物等を対象にまとめさせていただきました。
 今回のまとめ方でございますけれども、※にございます、工事中及びダム供用後に対しまして先ほどご説明しました平成12年の資料は整理してございますけれども、今回の資料は影響が継続するダムの供用後のみを整理してご報告させていただきますので、ご承知おき願いたいと思います。
 1枚めくっていただきまして、貯水池の出現による環境への影響でございます。影響を与える要素といたしましては、貯水池の出現、それからつけかえ道路やダム本体、代替地、こういったものの設置に伴います土地改変でございます。
 1枚めくっていただきまして、まず流況への影響でございます。予測される影響といたしましては、ダム建設後の運用によりまして下流の流況が変化して、河川のダイナミズムが損なわれないかということでございます。ダムによる運用でございますけれども、左の一番上にありますとおり、人吉地点の流量が30m3/s未満の場合にはダムにためない。もっと少なくなっていくと、いろいろな条件でダムから補給することにしてございます。
 ダムからの補給、あるいは貯留の概念でございますが、そこに模式図があるのでご紹介をいたします。例えば、7月、梅雨の洪水を調節するということで、大きな雨が降ってきたときに貯水池に入ってきた水の一部をためるということでございます。あるいは、9月にも台風の洪水を調節しています。また、それほど大きくない雨でも、かなり雨が降った場合には貯留というところがございますけれども、水の少ないときに備えましてダムに水をためる操作をするということでございます。こういうときにたまった水を用いまして、川の水が減ったときにダムから下流に補給をする。そして、必要な水量が不足している川に必要な水量を組み合わせる。そういう操作をやるわけでございます。
 ダムを運用した後の流況の変化でございますけれども、年間の流量日数を左下に紹介してございます。人吉地点でございますが、30m3/s未満の日数は少し減っておりますが、30m3/sから40m3/sのところは上がっております。こんなふうに流況が改善されているということでございます。
 放流の具体的な運用の例でございますけれども、右側に幾つか図面を記載しています。先ほど模式図でご説明した内容でございますので、説明は省略させていただきますが、右下にありますとおり、ダムを運用することにより川辺川については大きな流量が若干減少するものの、本川の流況に大きな変化はないということで、河川のダイナミズムが損なわれるというところまではないのではないかという考え方でございます。
 次、1枚めくっていただきまして、4ページ、水質への影響でございます。予測される影響といたしましては、ダム下流の流水の水温が現状から変化し、先ほど申しました冷水の話、ダム湖からの濁水の放流の長期化の話、富栄養化による水質悪化の話でございます。この辺は先ほど住民討論集会の資料で大体説明をさせていただいております。水質保全対策の検討ということで、選択取水設備、清水バイパスを今、検討してございまして、こういったものを運用することで、なるべく現況の状態を悪くしない運用をしていこうという考え方でございます。
 1枚めくっていただきまして、水質への影響でございます。水質予測の結果でございますが、これも先ほどご説明しましたとおり、水の濁りについて濁度5度未満の日数に大きな変化がない。水温の件につきましても、平均水温を見ますとダム建設後も現況と大きな変化はない。富栄養化現象につきましても、ボーレンワイダーモデルとか、鉛直二次元モデルを用いたシミュレーションだとか、他ダムとの比較検討の結果、大きな障害が発生する可能性は低いということで整理してございます。
 1枚めくっていただきまして、下流河道への影響でございます。これらは従来から○○委員をはじめ土砂の供給ということでお話のあった点でございます。予測される影響といたしましては、ダムにより加入に流下する土砂が遮断され、下流の河床低下や河床材料の変化などの影響が出るということでございます。特に、砂れき層が薄い人吉区間で人吉層の露出がなされますと、治水上の安全性の懸念だとか、河川環境の改変が心配されるということでございます。
 ダムに土砂がたまる影響はどうかという観点でシミュレーションをしたのが左のところでございますけれども、ダムに土砂がたまることによって下流の川の土砂が流されてだんだん下がっていくという現象が起こる、それをシミュレーションで出しているものでございます。確かに川底は下がっていきますが、その要素に加えまして、ここでは下流の高水敷に貯水池にたまった土砂を置いて洪水時に流されるという、置き土という対策を講ずることも検討に加えまして、それがどういうふうに効果を発揮するかという比較をしてございます。
 左側のグラフ、5つございますが、真ん中に球磨川100年後というものがございますけれども、ダムを運用して100年たった後、ダムが仮にない場合はどうか。それから、ダムがあって土砂を還元しない、置き土をしない場合はどうか。それから、土砂があって土砂を還元した場合どうかという比較でシミュレーションをしたものでございます。
 上から3つ目のグラフが100年後の状態を示したものでございますが、これではちょっとわかりにくいですので、下の増減表みたいなものを見ていただければと思います。下のものは100年後の河床変動でございます。下から2つ目は、ダムがない場合とダムがあって還元していない場合の河床変動の状態を見たところでございます。全般的に河床は下がる予測になってございます。最も大きいところで、平均河床40センチ程度低下しているのがこれでわかると思います。
 一番下でございますけれども、ダムなし−ダムあり還元ありと書かれていますが、ダムがない場合と、ダムがあっても土砂を置き土して還元する措置を講じたときにはどうかということでございます。これを見ますと、ダム直下のところはやはり下がります。一番右端のところがそれに当たりますけれども、それにより下流側はかなり河床が下がることが全般的に解消されている、抑制されているということがこれから読み取れるのではないかと思います。
 河床材料の変化ということでございますけれども、右側の細かいグラフがございます。球磨川、川辺川というグラフがございますけれども、各地点の河床材料の分布がどんなふうに変わるかということでございます。ちょっと見にくくて恐縮でございますけれども、全般的にいいますと、ダムがない場合に比べまして、ダムをつくると粒子が粗いほうに移行するんですけれども、そこに還元を行うことで土砂を供給いたしますと、粗いほうに行ったものが少しダムがない状態に引き戻されるということで、置き土して土砂の供給を行いますと、粗流化を防止していく効果は上げられるということが言えると思います。
 なお、全国のダムで実施されております土砂の下流への補給対策でございますけれども、置き土とか排砂ゲートといいまして、ダムの中にゲートを設けまして、それをあけると下流に土砂が流れるとか、排砂バイパスといいまして、上流のほうから土砂と水が一緒流れるバイパストンネルみたいなものをつくって下流に供給するだとか、そういう方法が現在でも実現しております。
 こういうことで、右側のグリーンのところにありますけれども、ダムによる下流河川の河床低下に伴う大規模な人吉層の露出はないと考えられる。また、土砂還元を行うことで、河床低下及び河床材料の変化を小さくできると考えてございます。なお、土砂につきましては非常にセンシティブな問題でございますので、建設後もモニタリングを行い、適切に対応していくという考え方でございます。
 次に、7ページでございます。動植物生態系への影響ということでございます。生態系の多様性の確保、自然環境の体系的保全といった観点から、事業によります動植物及びその生息、生育環境への影響のみならず、河川環境のときにもご紹介しました上位性、典型性、特殊性、移動性といった視点から、生態系の構造に着目をしまして検討を加えてございます。典型性という観点で見ますと、川辺川流域の植生区分を左側に示してございますけれども、ダム予定地の周辺の典型的な環境というのはアラカシなどの広葉樹林、スギ、ヒノキ植林といったものになってございます。こういったものが貯水池が生まれるだとか、ダムや付替道路で工事をすることでどのぐらい改変されるかというのは、そこにあります残存率でございます。かなりの部分残るという評価でございます。したがいまして、典型的な環境は維持されるという考え方でございます。
 一方、河川環境という観点で見たものが右側でございまして、この流域、山ろくを流れる川、山地を流れる方、渓流的な川、源流的な川と区分をいたしました。そういうことで典型的な環境を区分させていただいておりますが、ダム事業によります影響は山ろくを流れる方、山地を流れる川ということになります。特に山地を流れる川が54.6%の残存率ですので、大きな影響を受けることになります。
 こういう典型的な環境がどう変わるかということとあわせまして、右の下にございますとおり、動植物の重要な種の保全の検討を行います。さらには、クマタカなどの生態系の上位種、特殊な環境としての九折瀬洞の生態系の構造等にも着目しまして、具体的な影響を予測し、保全措置を検討することが必要と考えてございます。
 1枚めくっていただきまして、8ページでございます。動植物への影響ということで、今、言いました典型的な環境の動植物に対しての保全措置が中心に述べられてございます。左側にありますように、ダム湖畔における森林環境を保全しまして、典型的な動植物の生息の場にするとか、改変区域を最小化するとか、改変しても在来種を用いまして緑化、植生の復元を行う。
 右側のほうでは、移動経路の確保のためにいろいろな措置についてご説明をしてございます。
 右下でございますが、工事予定箇所の環境保全対策として、川辺川ダムにおきましては環境巡視員を平成5年度から配置して、いろいろな工事をやる際にきめ細かく指導を行う措置も講じられております。
 いずれにいたしましても、ここに紹介しておりますのは、効果のあるものや、かえってよくないものもあるかもしれませんけれども、モニタリングを用いまして効果、検証を行いたいと思っております。こういったことで、いろいろなファクターに対しまして必要な保全措置を講じ、影響の回避、低減に努めているということでございます。
 1枚めくっていただきまして、その中でも指標値ともいうべきアユの生息についてでございます。これにつきましては、先ほど住民討論集会でのお話でかなりご説明させていただきました。アユの大きさのお話などもございましたけれども、成長やサイズに一定の傾向は見られないということでございます。
 1枚めくっていただきまして、アユの生息への影響を流量、水の濁り、水の汚れ、水温、付着藻類という観点でそれぞれ見させていただきました。それぞれの項目は、既に全部ご紹介しておりますとおり、ものすごく大きな激変という変化はないということでございます。こういったことで、一番下にございますように、流量、水質、水温、付着藻類、河床材料の変化がアユの生息、成長に大きな影響を及ぼすことはないと考えてございます。
 1枚めくっていただきまして、クマタカの生息でございます。予測される影響でございます。クマタカは、ご承知のとおり全国的に個体数が少なくなっております希少猛禽類でございます。生態系の上位種でもございまして、こういった種が継続して生息できるということは、健全な森林、生態系を維持しているということで評価されると思います。
 クマタカの調査につきましては平成5年度から継続して実施しておりまして、個体識別の上、飛翔図を作成するなどして、彼らの行動をずっと調査し、その結果に基づきまして、飛行ルート、行動などから行動圏の内部構造を解析して、先ほどちょっとお話ししましたコアエリアを分析したり、繁殖テリトリーを分析したり、幼鳥の行動範囲を分析したり、こうやって彼らにとって重要な場所はどこかという特定を行います。そういう結果と事業区域の重ね合わせによりまして影響の予測を行うということで、これは住民討論集会のところでご説明したとおりでございます。その結果、先ほども申しましたとおり、クマタカの生息、繁殖活動の継続に大きな支障はないのではないかという考え方でございます。
 1枚目めくっていただきまして、九折瀬洞における固有の生態系の保全ということでございます。これも先ほどご説明いたしましたが、●●●●というのはダム貯水池付近に石灰岩の分布がございますけれども、そこの中に大小さまざまな洞窟があって、10カ所程度洞窟が存在しておりますが、その中の最大規模の洞窟でございまして、延長は1,200m弱というかなり大きなものでございます。
 一番下に平面図、縦断図がございます。ここはコウモリが生息しておりまして、コウモリのふん、グアノと呼ばれておりますが、そこをベースとする生態系が成立しています。グアノを食べて生きる動物がいて、その上にそれらを食べる動物がいてということで形成されておる非常に独特の生態系、世界でここにしかない生態系になってございます。
 これらの影響でございますけれども、右下にございますとおり、先ほどもご説明しましたが、洞窟性動物の生息場やコウモリの移動経路が水没する影響がございます。そういったことに対しまして、新たな経路の設置などにより影響の軽減を図るということを考えてございます。
 なお、かんがいの撤退のお話もいたしまして、ダムの運用計画を見直すことでできる限りここへの影響を小さくしたいということも考えてございます。
 最後のページでございますが、地形、地質、景観等への影響ということで、重要な地形、地質は、周辺には天狗岩というものがございますが、大きな影響はございません。それから、景観につきましても大きな影響はない。人と自然との触れ合い活動の場には影響は出ますけれども、新たな水面もできますので、そういったものの活用が期待されるということでございます。
 洪水調節施設による環境への影響と対応についてということでご説明をいたしました。
 次でございます。ちょっと長くなっておりまして恐縮でございます。資料3−3、河川空間利用でございます。
 球磨川の河川利用については、最初のほうでご説明をいたしました。いろいろな利用がございまして、特に顕著なのは舟下り、ラフティング、カヌーという水遊びでございます。
 1枚めくっていただきまして、河口部から下流部でございますけれども、ここには貴重な生物の生息場となっている干潟がございますので、地域進行や環境学習の場としての整備を行って、皆さんに使っていただくことを考えてございます。また、水辺プラザというものを八代市の前川の部分に設けておりまして、ここは朝市だとか、いろいろなことでお使いいただいているということでございます。
 一番右のところに図がございます。散策路として利用されている前川堤防へのアクセス改善を行いまして、坂道を緩やかなものにかえましたところ、お年寄りや障害者の方々にも通行しやすい緩やかな道になりまして、川のオープンスペースが活用されたということもございます。こういったことにも努めてまいりたいと思っております。
 1枚めくっていただきまして、中流部でございます。ここは瀬、淵が連続するダイナミックな流れということでございまして、人吉地方の観光のシンボルである舟下り、ラフティングなども行われております。こういったものが引き続き行われるようなダイナミックな水の流れや、良好な自然環境の保全に努めるのが一番だと思っております。
 1枚めくっていただきまして上流部、それから川辺川及び源流でございます。人吉市は九州の小京都と呼ばれまして、人吉城跡の周りには歴史的な景観がございますし、中川原だとか人々が活用される地域もあります。こういった人が水が水辺と親しめる、あるいは水辺がまちの中のランドマークとなっていく、そういったことをうまく生かしながら川づくりにも利用していきたいと考えてございます。
 駆け足になりますが、最後、資料3−4でございます。水利用の現状と課題でございます。
 球磨川流域の水利用でございますけれども、全水利権量は128m3/sで352件ということでございまして、発電目的の約85m3/s(20件)と、かんがい目的の約40m3/sで98%を占めております。八代地域の工業水のほかにも、流域外の宇土半島とか天草諸島の上水道が球磨川に水源を依存してございます。そういったことで熊本県南部の重要な水源であるということでございます。
 流況につきましては、左上のところに人吉地点、横石視点を示しておりますが、平水流量は経年的に見て横ばい、渇水流量は若干低下傾向というところでございます。
 水利使用の状況でございますが、左下に書いたとおり、先ほどご説明したとおりでございますが、真ん中の地図にありますとおり発電所が結構ございまして、減水区間なども若干あるということでございます。水利使用の状況を模式図にしたものが一番右の図でございます。細かい説明は割愛させていただきます。
 1枚めくっていただきまして、水利用の現状と課題ということでございますが、人吉球磨盆地でございます。市房ダムを水源として幸野溝、百太郎溝等を通じてかんがい用水が取水されております。かなりの穀倉地帯になっておりますけれども、こういったところに水の供給が行われています。それから、八代平野のほうもかんがい用水が供給されてございますし、先ほど申しましたように工業用水、あるいは宇土半島、天草諸島の水路用水としても活用されてございます。
 一方、舟下りがこの川では有名だというご説明をさせていただきました。年間約6万人の利用者があるということでございますけれども、舟下りを維持するためにもやはり水が必要ということでございまして、水量が減りますと舟下りができない。運行の日数が一番右にございますけれども、平成11年は6.5%、平成12年は18%、平成13年は37%という運行がございまして、水量の確保は非常に重大な課題になってございます。
 最後のページでございますが、流水の正常な機能を維持するための必要な流量の設定ということでございます。基準地点は人吉地点としてございます。1.2.3.としてございますけれども、主要支川である川辺川の合流後で、球磨川で取水されたかんがい用水がおおむね還元する地点であり、水系全体の低水管理に適している。それから、アユの産卵場だとか舟運の運行区間といったところがそばにありまして、低水管理も重要な場所だということ。あと、長期的に河川流量データが蓄積されているということもございまして人吉地点としてございます。
 なお、工事実施基本計画では、もっと下流の八代市の遙拝堰下流の古田地点を基準地点としておりましたが、現在そこは分流堰でバックの影響がございますし、低水管理に主眼を置きますとやはり人吉地点に変えるべきだということで、今回、見直しをさせていただいてございます。
 あと、9項目の検討を行いまして、これはどこの河川でも行っております方法と同じでございますけれども、右のところ、正常流量ございますが、4月から11月上旬につきましては舟運の必要流量、先ほど言いました舟下りのために必要な流量がおおむね21m3/s強ということでございます。また、アユの移動、産卵の必要流量が21m3/s強ということでございまして、基準地点、人吉地点の4月から11月上旬の正常流量はおおむね22m3/sと考えてございます。その他の期間につきましては、人吉地点の舟運の必要流量17.91m3/sということでございまして、おおむね18m3/sとしてございます。
 一番右下にございますとおり、人吉地点における流水の正常な機能を維持するための必要な流量は、おおむね22m3/s(4月から11月上旬)、18m3/s(その他の期間)とし、もって流水の適正な管理、円滑な水利使用、河川環境の保全等に資するものとする。これは前回、荒川等のときにこういう記述をするというご説明をさせていただきましたが、今回それを踏襲してこういう記述にさせていただきました。
 ちょっと間違いがございました。先ほど古田地点、遙拝堰下流と申しましたが、遙拝堰上流の湛水域でございまして、現在では低水管理の基準点としてあまり適切でないということでございます。
 以上、長くなりましたけれども、ご説明をさせていただきました。
(委員長)  ありがとうございました。ちょっとボリュームが多いので大変でした。
 それでは、恒例によりまして、どうぞ。
(委員)  論議に入られる前に2点確認したいことがあります。
 その1点は、今の説明、とりわけ平成15年12月の川辺川ダムを前提とした住民討論集会での説明資料、さらに今回出された資料の中に、川辺川ダムを前提にした資料が多々ございます。また、事務局のご説明の中にも、伺っておりますと「川辺川ダム建設後」とか、「建設」という言葉が再三にわたって聞かれております。
 この川辺川ダムの位置づけということで確認をさせていただきたいと思いますけれども、前回の審議におきましては、事務局から、ダム等の洪水調整のための具体的な施設は河川整備基本方針ではなく河川整備計画策定段階で議論すべきものと説明があって、私ども委員会もそれを確認したところでありました。今回、川辺川ダムに関して詳細な資料を示した上で議論する、あるいは説明資料の中で住民討論集会の川辺川前提というところの資料からの説明ということは、どういう理解をすればよろしいのでしょうか。
 私自身、基本方針に関しましては、ご承知のとおり相当長い歴史の中で環境を考えていくという視点、現在がこのようにあるから将来的にといった長いスパンの中で考えていく、現況をとらえた視点が非常に大事ではないかと思いますし、河川整備計画策定段階はご承知のとおり20年から、この整備基本方針はものすごく長いスパン、そして整備計画策定という段階でさえも20年から30年という長いスパンの中で考えて、私どもは環境を論じていかなければならないと思うのですが、現況と川辺川ダムの位置づけということでの説明というのは、私はややいかがなものかという思いがあります。
 その点で、事務局からただいまの位置づけ、そして説明、どういう観点からなされたのか聞かせていただきたい。よしんば、前回、委員の先生方から出された中に、環境影響に関する質問の中で土砂が、ダムができたらという質問が多々ありました。ですから、そういった意味合いの中で、土砂にかかわって今回の説明がされるということであればまだしもという感じがいたします。
 2点目、私どもは1月30日、ここで国に対して、これまでの審議会の小委員会の状況の報告を、地元の皆様方にぜひしていただきたいということで申し入れをさせていただきました。しかし、このことについて、いまだ何ら回答があっておりません。この扱いについてどのようにされていこうとしているのか、まず冒頭にこの2点をしっかりと伺わせていただいた上でと思いますので、よろしくお願いいたします。
(委員長)  第1点は、この委員会も、前々回でしたか、私が最終的にダムの問題も議論しましょうと申し上げて、事務局もちょっと慌てていたようでございますが、委員からもダムの問題が透けて見えるというお話もおりましたし、各委員からも、ダムがあるからこそこれだけ皆さんの意見もありますので、前回も議論しましたが、ただ、ここで出た結論が川辺川ダムを即規定するものではないということは前提の上で、私たちも議論して、実現可能性みたいなものは各委員も気になっているでしょうし、絵にかいた餅を押しつけるわけにいきませんので、そういう議論をしたと記憶しております。きょうもおそらくそういう前提で事務局から説明があったと思いますが、そういうことでよろしゅうございますか。
(事務局)  はい。お手元のこれまでの審議に用いた資料に、前回の議論の資料がございます。赤の表紙の17というところですけれども、わかりますでしょうか。赤い表紙があって、後ろに資料がついているという並びになってございますけれども、その17というところでございます。そこの最初に、第9回(H18.12.25)配付資料ということで、「河川整備の具体的な内容の取り扱いについて」という資料をつけてさせていただいております。前回のペーパーでございます。説明したつもりだったんですけれども、言葉足らずで皆さんに誤解を与えていたとすればおわびを申し上げたいと思います。
 ■の2つ目のところに河川整備の具体的な内容の取り扱いということで、これは前回の洪水調節施設の実現可能性の議論のときにもご説明いたしました。ダム等洪水調節施設の具体的な内容は、河川整備計画に位置づけるものであり、その具体的な内容の位置づけについては、河川整備基本方針策定段階ではなく、河川整備計画策定段階で議論されるものと前回ご説明をいたしました。こういうことからいたしますと、本日の洪水調節施設の環境に与える影響というのは、個別の洪水調節施設を前提とした環境影響への議論、特定の施設を対象とした議論ということではなくて、本来それであれば河川整備計画段階で議論すべきことと考えております。
 ただし、○○委員からもご指摘ありましたように、これまでの審議の中で、大規模な洪水調節施設の整備に伴う土砂動態の変化について大変いろいろご心配のご意見がございました。また、貯水池の形成に伴いまして、例えば濁水長期化だとか、水温の変化だとか、富栄養化の問題、こういったものも各方面から指摘をされておりますので、球磨川の河川環境を全般的に審議する上で重要な事項といろいろな委員からご指摘ございました。
 そういうことを受けまして、前回、洪水調節施設の実現可能性を確認するために川辺川ダムを対象にご審議いただきましたので、今回の洪水調節施設の環境に与える影響の検討に当たりましても、同じ観点で環境調査の蓄積がしっかりされております川辺川ダムを対象にご説明させていただいて、ご議論をいただくつもりで説明をさせていただきました。
 したがいまして、ここでこの議論をしたからといって、川辺川ダムの環境への環境自体を審議しているとか、認めるというつもりは全然ありませんで、具体的な内容につきましては河川整備計画の段階で議論していただくことになると考えております。このような前提のもとで本日ご議論させていただいたと思っておりましたけれども、言葉足らずでありましたら大変おわびを申し上げたいと思います。
(委員)  今のお話の中で、12月の時点で私どもが確認したことを前提にということでありますけれども、環境というのは、先ほども申しましたように、近年さまざまな形の中で、温暖化の問題だとか環境の変化がものすごく出てきているわけです。ですから、私どもが今ここで審議をしていることは、むしろ想定される出来事の中で球磨川の環境が現況こうあり、今後どういうふうになければならないのかといったことが、ほんとうに真摯に論議されていかなければならないと思います。
 川辺川ダムを一つのわかりやすい事例としての論議ということでありますけれども、それこそはまさに整備計画策定の中でやられるべきことでありまして、私はちょっと誤解を招くのではないかということを恐れます。私自身も、これから論議の中で、少しそういった観点から環境立県・熊本としての意見も述べさせていただこうと思います。
(委員長)  いずれにしても、地球温暖化とか想定外のこともありますが、現時点で予想されるものについては今、説明をいただいたということです。また、この議論がいきなり川辺川ダムの環境計画を決めるということではなかったということで、ご理解をいただきたいと思います。
 2点目についてはいかがいたしましょう。これは当局と熊本県とのお話で、委員会として議論すべきなのかと思いますが、一応ご見解を。後ほどにしましょうか。
(委員)  後でいいです。
(委員長)  後でいいですか。
 では、各委員からご意見を順次承りたいと思います。
(委員)  今のご意見に若干もやもやするところもあるんですが、少し教えていただきたいことと、意見を述べさせていただきたいと思います。
 先ほどの土砂動態の河川環境との絡みで、河床の構成材料を幾つかの資料でご説明いただきました。生き物、生態の中で河床材料の類型分布、資料3−1の4ページに示されている資料と、資料3−2の6ページに示されている資料で、年次とかシミュレーションの期間等があるんでしょうけれども、縦横座標の違い等があって少し考察がしにくい。表面についている材料だけをとったとか、横座表が球磨川本川のほうは結構粒径が粗くなっている。それから、置き土が一つの対応として出てきて、そういうものとのかかわりで粒径分布が川辺川水系と球磨川本川との間で違いがあり、また、そういうことによって河床材料の粒径分布が漸近していく。これは結構生態等とのかかわりもあるので、このあたりの土砂動態を、横座表のとり方が少し見にくかったので、河床材料の変化を再度見させていただいた中で、そのようになるのかなと感想として持たせていただきました。
 それから、河川の環境区分という物の見方として、上流、中流、下流、あるいは河口域というスケールの大きい規模で見るレベルの話と、河川環境の類型区分といいますか、中スケールというもの、それから河川環境情報図という小規模スケールといいますか、そういった形で河川整備をするときの影響なり、保全を描くスケールを、それぞれの階層ごとに見ていく形として、大、中、小というスケールでどのように影響の振る舞い、あるいは保全を持っていくときにスケールの違いのレベルをどう整理して見ていったらいいのか。少し頭が混乱して、印象で恐縮でございますが、述べさせていただきました。
 それから、生き物系のアユ、特に付着藻類という形で藍藻類とか珪藻類があり、また時期とか流況によって付着藻類が変化する。個々の要素の評価が複合した形で、最終的にアユの生息環境、えさ環境が、資料3−2の10ページのまとめとして描かれていくということです。この流域において稚アユの放流箇所とか規模が非常に大きいんですが、従前どおり、いろいろな環境保全、あるいは対策をすることによって、資料3−2の10ページのまとめのような形で保持できると理解しておいていいんですねということです。
 それから、これはあくまで川辺川ダムを想定してという意味合いにもなろうかと思いますが、冷温水、濁水、水質コントロールを、いろいろな対応を含めて、現時点で考えている多くの施設、装置系が相当いろいろ張りついているんですが、印象として、実際に実行されている事例等もあるんですが、非常に複雑で運用を管理する難易度が非常に高いような気がします。あくまで想定ということでありますけれども、印象としては非常に難しい形態をとっているという感じがいたしました。
 それから、このような形のものをずっと運用したときに底層の環境はどうなっていくのか。土砂動態と同じように、ダムの底層のもう少し長い期間での環境変化がどうなっていくのかがちょっと気になりました。
 質問のような、印象のような形で恐縮でございますが、少し思いつきでございますが、言わせていただきました。以上です。
(委員長)  さっき川辺川のほうでしょうか、本川のほうが粗いとかおっしゃったのでしょうか。
(委員)  球磨川本川のほうが粒径が、もう既に粒径分布が大きい形の、細かいものが粒径分布として少ない形で推移している。そういう形状変化として見たものですので、本川と川辺川で粒径河床材料の違いをそのような形で見させていただいたということでございます。逆ですか。
(委員長)  事務局からお願いします。
(事務局)  資料3−1の4ページの河川縦断と河川特性というところに載せさせていただきました粒度分布でございますけれども、これは河口部、中流部、上流部を比較するために載せてあるものでございまして、河口部、中流部と上流部を比較するときに、河口部、中流部はかなり粒度が細かいこともございまして、その辺に焦点を当てた字句になっておりますので、ご指摘のようなことになってございます。上流部と、先ほど見ていただきました資料3−2の6ページの球磨川の粒度分布が大体同じでございまして、ちょっと地点のずれるところがございますので、ぴったり一致はしていないかもしれませんけれども、基本的なところはこの辺が合っているということでございます。
 2点目の環境を見るときの区分でございますけれども、河口域とか下流域とか中流域とか上流域と見ているときには、環境をざっくりとという表現はあまり適切でないかもしれませんけれども、大きくとらえて、典型的な環境はどうだとか、そういうふうに見るときの区分として今回使わせていただいたもので、それぞれの区分で代表的な種だとか生物群衆を見て、どういう環境が本来の環境なのかという見方のアプローチをしています。
 それに対しまして河川環境情報図のほうは、もっと小さな区分になっておるということでございますけれども、これは先ほど申しましたように、河川の工事だとか、河川の管理だとか、部分的にここをさわるとどんな影響が出るかを見るために使っているものでございまして、まさにおっしゃるとおり大きな区分、小さな区分、使い分けをして環境を見るということでやっておるものでございます。
 それから、アユの話でございますけれども、稚アユの放流の話でございます。ちょっと説明を飛ばしてしまいまして、誤解を生じてしまいました。申しわけございません。資料3−2の9ページでございますけれども、左下にアユの分布と生息環境というものがございます。これを見ていただきますと、ダムだとか堰といったものと、調査をしてもアユが確認できなかったところがこれで出てきます。赤いところとか黄色いところはアユが確認されたところでございますけれども、間が中飛びになっています。
 全般的にはこういうことで、1回目に戻ったアユが遡上しても、ずっと連続性が確保されているわけではないので、河口域、あるいは下流域で採捕されました稚アユが上流で、大体70%だったと思いますけれども、稚アユの放流の70%がここの川産の稚アユということでございますけれども、放流をされております。そういう構造を前提とした予測に我々もしてございまして、水質や水温やいろいろなものが変わると、その状況がどう変わるかという見方をしてございます。
 それに加えまして、先ほど申しました魚の上りやすい川づくりで魚道環境を改善していくと、そういう意味では遡上環境がもっと改善されていきますので、それは良好な方向に向いていくのではないかと考えてございます。
 それから、冷水、濁水、富栄養化だとか、いろいろなファクターを見ながら選択取水設備、あるいは清水バイパスを活用しなくてはいけないということでございます。確かにご指摘のとおり、いろいろな要素を見ながら操作をしなくてはいけないので大変複雑なところもございますけれども、今、いろいろなシミュレーションができるようになってきておりまして、そういった中で最適化みたいものを導き出して操作をするという基本的な方向で考えてございます。
 底層の環境につきましては、この操作とそんなに直接関係はないのではないかと考えてございます。
 以上でございます。
(委員)  環境面への配慮ということで2点お願いがございます。
 第1点目は、少しテクニカルなところですけれども、きょうご説明をいただきましたように、球磨川では非常に長い歴史の中で人為的な改変が進んできていると思います。利水、治水のためにはやむを得ないものもあったと推察されますけれども、環境にそれらの行為が何らかの影響を与えたことには違いないと思われます。その修復のために、きょうは河口のほうですとアシハラの再生ですとか、アユの産卵場の再生というお話をちょうだいいたしました。通常の河川環境を考えます場合には、何らかの目標像というか、レファレンスを設定いたしまして、それに対して修復、ハビリテーションを掘り起こしていくことが考えられます。きょうの話の中では、時間の経過とともに人の営みによってどのような環境影響があったかを踏まえて、それを評価された上での次の対策をとられているようには伺えませんでした。現状はこうだから、こちらがベターでしょうということのようにお話を伺いました。
 つきましては、ここでどうするかという細かい議論まで踏み込んで行う場ではないと考えておりますので、河川整備計画の段階におきまして、目標像の選択ですとか実施手法の工夫等ができるように、その背景に対してかなり配慮していただきたいというのが1点目のお願いであります。もちろん、その中に、昨今変わりつつあります自然環境の変化、水温、気温の上昇とか、雨の降り方が変わっているというのは、含まれてしかるべきだと考えております。
 第2点目は、これはかなり本質的な議論で、先ほど○○委員がおっしゃられたことにもかかわるわけですが、治水か環境保全かというところが大きな争点になっていると考えておりますけれども、二元論的思考、赤か青かという思考形態ではあまり人類の英知を取り込むことができないのではないかと考えています。現実には、農業用水のほうは可能性がなくなったということなので、ダムが100%あるとしてもその形態は大きく変わってくるだろうと推察されます。現実にはまだ発電の部分の利水が残りまして、それはやはり契約として残っているものですから、簡単にだめですという言い方ではとてもできないということは十分承知しております。
 今の場合、利水用のものが仮になくなったとしたならば、ダムの貯水の悪影響がかなり問題にされておりますけれども、それは利水との見合いで生じてくる現象だと考えております。ダムの貯水を回避して、必要なときに必要な目的を達成できる新たなあり方を工夫できるのではないかと考えております。技術でかなりの環境インパクトを減らせるのではないかと思います。昨今、いろいろなところで言われております穴あきダムにしましても、あれよりもっともっと機能として超えるものはかなりつくり得ると思いますし、そうなれば、従来と違う環境の方式も工夫次第でできるのではないかと思います。このような視点をぜひ整備計画に取り込んでいただければと思います。
 以上です。
(委員)  私は、いつも人吉市、あるいは下流域の住民の生命、財産を守るために先生方が一生懸命ご苦労いただいていることに感謝していますが、きょう、事務局のご説明を聞きまして、現状の分析、あるいは今後の対策、極めて緻密に、正確に分析されていると思いました。
 きょうは住民討論集会のことも少し出てまいりましたが、反対の動きが顕著になっていた当時は、市房ダムがあります球磨川の水と、ダムのない川辺川の水の濁り度合いの写真が出回りまして、市房ダムのある球磨川は濁っている、ダムのない川辺川は非常にきれいな水だということが非常に喧伝されたんです。
 私は地元で鉄道会社の社長もやっていまして、ちょうど合流するところに鉄橋がございまして、鉄道会社の運転手、車掌にほんとうにこういう状態ばかりなのかと聞きましたところ、それはいろいろありますと。例えば、球磨川上流の市房ダムのほうに雨が降ればこちらが濁ります、反対に川辺川に雨が降ったら、球磨川は非常にきれいで川辺川が非常に濁っているということで、写真を撮りまして皆さん方にお示ししましたところ、そういう喧伝はなくなりました。
 ご承知のように、反対側のほうから河床掘削ですとか堤防のかさ上げ、遊水地ということで住民討論集会がスタートしたわけでございます。きょうも事務局のご説明で、河床掘削、特に人吉は○○委員のご指摘にあったように、人吉層が非常に浅いところにあって河川環境に非常に影響を与えるというご指摘があったように、代替案そのものもあやふやになったという印象です。本来、小委員会がスタートした時点で、ダムという言葉が出てくる委員会ではないと思って出席させていただきましたけれども、最初、森林の保水力が出てまいりまして、基本高水ですとか計画高水とかいろいろな議論を経まして、さらに最近の異常気象も勘案されまして、人吉では80分の1、下流では100分の1という妥当性のある議論を積み重ねてきたという印象でございます。
 技術的なことは、私、あまり深いことはよくわかりませんが、現在まで小委員会は極めて妥当性のある議論が続けられ、そして前回、川辺川ダムという有効性について取りまとめがされたということで、私どもといたしましては大変心強い、期待の大きい小委員会であるということでございます。今後とも何とぞよろしくお願い申し上げたいと思う次第であります。
 以上でございます。
(委員)  おくれて大変申しわけございません。
 環境の問題を考えるときに、ちょっと基本的なことを申し上げたいと思うんですが、○○委員からお話がありましたように、自然環境と人々がどうやってつき合ってきたかという歴史的な経緯を踏まえて、球磨川のあるべき環境の姿を描くことは非常に大事なことであると思います。全く同感でございます。同時に、その環境に非常に大きなインパクトを与える要因について、ここで議論をしないというのも非常に不思議というか、私は不足していると思います。ですから、きょうご説明のあったことは、そういう考える素材を提供していただいたということで、私は大変意義があったと思います。
 それを申し上げた上で、前者のほうでございますが、きょうのお話の中で大変詳細な資料をいただきました。歴史的なことも書かれておりましたが、私が一つ残念だと思いますのは、球磨川の環境に関して、非常に多くの方が非常に強い、しかも熱心なご意見をお持ちです。今回の基本方針の議論が社会的にも非常に大きな取り上げ方をされていて、またここにもたくさんの方がお集まりになっているということは、今、申し上げたことの証左であろうと思います。
 何を申し上げたいかというと、生物的、生態学的、化学的、あるいは土砂動態を含めた物理的な面の環境の分析について非常に詳細になされていますが、流域の住民の方々がこの環境をどういうふうにイメージしておられるのか、どういうふうにとらえておられるのか、球磨川の特性は何なのかという分析が、きょうの資料の中に見受けられなかったのが私は残念でございます。
 環境問題は、確かに自然環境を保全するという非常に大きな目的がございますが、現在の環境は人々との社会的生活と折り合いをつけてできたものでございますので、人々がどういうふうにそれを認識しておられるかということは、やはり分析していただきたいと思います。環境計画を立てる上で重要な点だと思います。
 それから、後者につきまして、非常に大きなインパクトを与える項目については、私はむしろ○○委員とは違って、逆に大胆に議論をしておくべきだろうと思います。それが整備計画を立てるときの重要な視点になると私は思うからです。
 そこで私の立場を申し上げますと、きょう○○委員からのコメントもあって非常に参考になるんですが、これまでの議論の中で基本高水、それから計画高水を議論してきたわけでございまして、洪水対策の観点から貯留施設が必要であると私自身は認識しておりますし、この小委員会の一つの結論であるとも思っております。その貯留施設が環境にインパクトを与えることは間違いない事実でございますので、そのインパクトについて可能な限り詳細に議論しておくことは大事だろうと思っております。
 きょう、表面取水だとか置き土とか、いろいろな対策案をご紹介いただきましたが、環境に関して私どもが持ち合わせている知識並びに経験はやはりまだ浅い。先ほど○○委員からもございましたが、いろいろなことでいろいろな対策がとられておりますけれども、それでやれば万全と言えるか。あるいは、今、我々が理解している範囲でいろいろなモデルを使ってその対策をとるわけですけれども、やはりそこには限界があることは、これまで我々がやってきた環境に対するインパクトを見れば明らかであって、不足していることは明らかであって、そういう謙虚さをちゃんと持つべきであろう。
 謙虚さを持ったときに我々は次に何をするか。ではやめるかということがあるわけですが、やめるか、あるいは進むかという議論の中に、ある程度の適用的な対応といいますか、もう後戻りできないような対応ではなくて、適用的な対応ができる余地がどの程度あるかということは、やはり議論しておくべきだろうと思います。貯留施設が大きな影響を与え、それに対していろいろな対策がある。だけども、やはり今まで我々が持ち合わせていないようないろいろな事態が起こりかねない。それはモニタリングを通してきちんと見ていくわけですが、起こったときにこんな適用的な対応ができますということを、我々はフリーハンドとしてできれば持っておきたいと思います。
 利水の問題が、一つ撤退の問題があって、ある種それを考えられる土壌もあるのではないかとも思います。そういうことで後者の問題、要するに非常に大きなインパクトがあるという問題につきましては、やはり我々が知り得る環境に関する理解と対策のインパクトに対しては、ある種の謙虚さを持って臨み、そして適用的に対応できる手だてとしてどんなオプションを我々は持ち合わせるかということを議論しておくべきだろう。そういうものを整備計画をお立ていただくときに提供することは、基本方針の議論の役目であろうと思います。
 以上です。
(委員)  きょう、事務局からいろいろ説明があって、それに対する質問も幾つかあったんですが、それは些少なことなので後で事務局に尋ねるとして、ちょっと私の私見を言わせていただきたいと思います。というのは、きょうはもう時間の関係で、次に私の発言の機会がないかもしれないので。
 この小委員会、先ほど○○委員がダムありきではないと。確かにそうなんですが、ダムがあるから今まで10回という数を数えてきたし、住民討論集会も9回やってきたわけです。ですから、やはりダムを抜きにしては語れないというのがほんとうのところだと思います。
 先ほど○○委員、2点目に住民の方に説明する必要があると。その点に関して一言述べさせていただきます。というのは、昨年7月の梅雨前線による川内川、球磨川流域の豪雨災害に対して、土木学会が緊急調査団を組織し、調査を今も続けています。私は団長で、ここの委員である○○委員もメンバーの1人なんですが、この調査の一環で、昨年12月26日から28日の3日間にかけて、球磨川の中流域、下流域で対面による聞き取り調査を、1軒当たり1時間から1時間半ぐらいかけてじっくりと実施しました。
 本来の目的は、支川の合流部付近の小集落、深水とか漆口、渡、坂本等なんですが、これらの地域の防災のあり方、将来の防災のあり方について、住民の方の意見、希望を聞き取ることが本来の目的だったんですが、最後に川辺川ダムの必要性について尋ねてみました。そうしたら、川辺川ダムは不要だという意見が確かに多かったのですが、その理由を尋ねてみると、特に昭和40年の水害において、市房ダムが悪さをした、市房ダムが原因だったという意見が圧倒的に多かったんです。
 もう少し詳しく聞いてみますと2点ありまして、ダムの放流により今まで経験したことがないような水位の上昇があったということと、もう一点は、市房ダムの県の管理所の職員が酒を飲んでマージャンをしていて水位の上昇に気がつかなかった、ダムから水があふれ始めて初めて気がついて、怖くなって逃げ出したという風評です。この無責任極まる風評についてはもちろん事実無根なんですが、意図的にビラ等で宣伝されたり、地元の新聞等でも取り上げられたということです。
 この結果、どういうことが起こったかというと、通常は被災すると住民の方は環境よりも防災の必要性を強く意識するようになるわけです。これは東海豪雨でも、ほかの水害地域でも全部そうです。ところが、球磨川流域では逆の現象というか、ねじれ現象が起きていたんです。毎回のように被災している人たちのほうが川辺川ダムは不要だと言う割合が高かったわけです。これはどういうことかというと、先ほどの過去に経験した急激な水位の上昇と、市房ダムの操作に対する不信感。結局、川辺川ダムは要らないというのではなくて、市房ダム、もしくは2個目の市房ダムは要らないというのが住民の方たちの意識の根底にあるということが言えると思います。
 以上のようにダムが悪者にされて世論が形づくられていると言えるかと思います。これらの影響は川辺川ダムだけにとどまらないわけです。全国的に影響が及んでいます。どうしてこのようなことになったかというと、昭和40年の水害等の後に市房ダムを管理している県に不当な風評などの濡れ衣が着せられたわけですが、県がこれに対してきちんと説明してこなかった、説明責任を果たしてこなかった。また、いまだにそれがなされていないことが最大の理由と言えるかと思います。川辺川ダムに対する国交省の説明責任はもちろん重要です。それがあってこの委員会も10回を数えているわけです。
 しかしながら、我々土木学会の調査の結果、住民の方というのは、川辺川ダムの説明以前に市房ダムについて十分な説明を必要としているということが言えると思います。ですから、県は市房ダムに対する位置づけ、市房ダムがこれまで果たしてきた役割について、きちんと住民の方が納得できるような説明をする必要があるということを、調査の結果で我々は強く痛感しております。ですから、先ほど2点目に○○委員が国交省に説明責任をと言いましたけれども、ぜひ県も一緒になって市房ダムについてきちんと説明していただきたいと考えております。
(委員)  今、○○委員のほうからご指摘がありました。私も、市房ダムについて、過去、説明責任が住民の皆さんにきちんととられる、理解されるような形でなされたかどうか、そこは検証すべきだということを言っております。そして、平成19年度予算の中で、改めて市房ダムに住民の皆様たちが見学においでになったり、説明を受けられたり、そういう機会をつくるということで予算化を考えたところであります。
 それから、私が1月30日に求めた説明責任というのは、川辺川ダムについての説明責任を求めているのではなくて、この小委員会の中で論議をされたことについて、基本高水を含めてぜひプロセスを説明していただきたいということでございますので、そこは○○委員、ぜひ理解していただきたいと思います。
 以上です。
(委員長)  わかりました。そのつもりで審議をしたいと思います。
 傍聴の方から委員の発言に圧力がかかるようなことのないように、冷静に対応をお願いしたいと思います。
(委員)  きょうは資料をいただきまして、大変濃度の濃い環境についての資料を用意していただき、ありがとうございますと、まず最初に申し上げたいと思います。
 私は、河川の土砂動態につきまして、洪水調節施設との関係を前回も申し上げました。きょう、もう一度その点について、河川環境に関係し非常に重要であるということから意見を述べたい。
 私は、現在、熊本県が持っています、球磨川中流部の15キロメートルのところにある荒瀬ダムの問題にかかわっています。そこでは、将来ダムを撤去していこうということで、それによって住民が望まれる環境的にふさわしい川をつくる方向で議論がされてきています。一方、大きな洪水が発生するということで、川辺川には洪水調節施設が必要となっています。これは球磨川の治水上非常に重要なことで、その方向は正しいと思っています。そういう状況での洪水調節施設を考えるときに、土砂動態とか土砂移動が実は環境問題と密接に関係しています。川辺川の洪水調節施設についても、流域全体としてはその視点が必要ということをまず最初に申し上げたいと思います。
 それで、先ほど○○委員からも紹介ありました資料3−2の4ページと6ページ、特に4ページを見ていただきたいと思うんですが、濁水問題については清水バイパスで対応する。小さい土砂についても、これで濁水を流すことができるということで、濁水対策としては、この方法は考えられます。しかし、川辺川の場合、相当大きなれきや石が中心になって川底を構成している。大きさで言えば、粗石というのは粒径7センチ以上、巨石というと25から30センチぐらいのものでありますが、こういった粗石とか巨石、あるいは粗れき、巨れきが川辺川、球磨川の河床の安定を規定します。これは別に球磨川だけでなくて、日本の急流河川では、大きな石が河道の安定に寄与していることは、いろいろな観測からわかってきています。
 そのときに、洪水調節施設で石やれき等大きな粗径の河床材料がとめられても、小さいものが下流に流れるとき、下流の河道に対してどういう影響を与えるのか、しっかり見きわめる必要があります。大きな石があるということは、その周りに小さな河床材料を含めて広い粒径のものがそこに存在できます。このため、大きな石があることによって河床が安定して、いろいろな規模の洪水に対して河床が対応できるということです。
 もしも、大きな石だけが河床から取り除かれたとき、河床は洪水流に対しどういう応答をするのか理解しなければなりません。川の応答は主にこういう形で現れます。置き砂をすると、ここで計算されているように一次元の河床変動計算で平均的な河床の状態は表現していると思います。しかし、主流となる澪筋がどうなってできていくのかまで説明はできません。実は大きい石があることによって河床が安定しています。しかし、大きな石が少なくなってくると、そこに水が集中して洗掘されていく。そうすると、そこでの流れの抵抗が小さくなってますます水が集まり、澪筋の発達が起こります。
 私が申し上げたいのは、広い粒径集団からなる川辺川、球磨川で、どうやって洪水調節施設と調和させて安定した河道を維持していくのかということであります。計算結果は、平均的には示されたものと思いますが、実態は澪筋ができることになります。6ページの川辺川の粒径の図を見ると、実は大きな石から河道で河床の安定を支配する代表的な径は、大体80%の粒径です。80%径というのはそれより大きいものが20%ぐらい河床に存在しており、河床はいろいろな規模の洪水に対応して安定しています。大洪水には粒径の大きいものが河床表面あらわれてきて、小さい洪水時には小さいものが現れています。川辺川では、80%粒径は15センチ、100%クラスになると30センチ以上のものです。こういったものを洪水調節施設でとめて、下流に流下させない状態に保つとしたら、一体河道はどういうことになるのでしょうか。
 私はいろいろ川にかかわりを持つ中で理解できたことですが、大きな石の持っている河床の安定に果たす役割、特に球磨川の場合には、大きな石があることによって、人吉地区の薄い砂れき層が比較的安定して存在するために、大きな石が果たしている役割が重要です。これによって砂れき層が保たれていることを現地で見てまいりました。この砂れき層が、大きな石が流下してこないことによって、長い時間の中でだんだん川底が下がってきて、澪筋ができて、洗掘されやすい人吉層が出てきて、だんだん深掘れしていくことが心配されます。
 もう一方においては、河床に大きな石があることによって、その周りの石が浮石となり、それらにこけ等がつきます。漁師の方に聞くと、球磨川の場合には大きな石があることがアユ漁場として大事なんだとよく聞かされます。
 今回はダムの下流に置き土をするということですが、ほんとうに継続的にこういうことができるのか、上流から流れてくる大きな石を置石し、洪水のときに下流に流すことをやろうとしているのか。それは難しかろうと思います。私は、6ページにありますように、具体的方法として、排砂ゲートとか排砂バイパスを用いるのが良いと思います。川辺川のような大規模の洪水調節施設を考えるときには排砂ゲートとか排砂バイパスのようなものを考えてほしい。
 そして、排砂施設の設置場所については、どこに土砂がたまるのかは、川の平面形から決まりますから、バイパスの場合、どこから土砂を抜いたらいいかはかなり明確です。あとは技術的にそれが可能かどうか、しっかりと技術開発していただくことが必要ではないかと思います。
 ここに出ている環境に関しての濃度の濃い資料を見たとき、土砂問題についてだけは私は必ずしも満足できない。すなわち、置き土で堆砂対策をやろうというのは、これも一つの方法であるけれども、このような方法でやれるとは私には思えません。こういうものは整備計画の中でどう考えるのが良いかを議論していただければということでお話をさせていただきました。
 次に、資料3−1自然環境について書かれている9ページの右上の図です。以前の議論で、萩原堤のところは大変よく検討されて、治水上の安全度を増していくということで私は納得しているものですが、この図では、遙拝堰の直下流のところに非常に大きな土砂が残っていて、その前面に大きな洲ができています。遙拝堰から内岸側へのすりつけ方を少し考えて、こんな大きな洲ができない、洪水が出なかったときに樹木等が生えないような方策をとっていただきたいと。
 もう一つは、遙拝堰と前川堰、球磨川堰という分流堰の間の川底は一体どういうふうになるのだろうか。ここはアユの産卵場として非常に大事ですし、河床が下がってきているということです。荒瀬ダムの撤去があるとすれば土砂がここに供給されてくる。そのときに、それらの行為がここにいい環境をつくり出す方策も含めて十分議論をしておかなければならないと思っています。
 以上です。
(委員)  ここで川辺川ダムの議論をするかどうか、私も議論すべきだという立場から言わせてもらいます。
 球磨川では貯留施設というか、貯留が非常に大きなウエートを持っているということがあります。それで具体的な動きもあるわけですけれども、それはおそらく基本方針の中では、もちろん特定の名前は出てきませんし、貯留施設の設置に当たってはこういうことに留意すべきだとか、その議論をするためにここではやっていると思っています。そのときに具体的な、実にこれだけ膨大なデータができているのも、まさに今までのいきさつの中で調査されたからこういう貴重なデータが出ているわけですから、やはり具体的なものをイメージしながら議論するというのは、そうしないと非常に上っ面なものになるだろうと思います。
 そういう立場から2つ言わせてもらいますが、やはり清水バイパスというのはあまりやられていない方法です。○○委員おっしゃったように、これが排砂バイパスとして使えるのかどうか、ちょっとそれを聞きたかったんです。清水バイパスは排砂バイパスとして使えるのではないか、そういう検討がなされているかどうかということ。
 それから、排砂バイパスについては全国で幾つか例があります。清水バイパスというのは例があるのでしょうか、ちょっとお聞きしたい。
 それから、30m3/sという流量ですが、これはダムサイトでいうと何日間流量、流況曲線でいうと何日間流れる流量か。その辺は30m3/sだけではわからないので、30m3/sというのは流況曲線上で何日間流量か教えていただきたい。
 ただ、もう一つ、○○委員が言われた、それから事務局も最初に言われましたが、利水が撤退したという問題です。私は○○委員がおっしゃることに大賛成ですが、もし発電だけなら何か話し合いの余地があるのではないか。そうすれば、清水バイパスなんて大変なことをしなくても、環境に与える影響は非常に楽になるといいますか、やはりこれも整備計画の議論でしょうけれども、ここでそのことをちゃんと議論する、資料もそういう役割もないかわかりませんけれども、○○委員言われたとおり、発電をどうするかというのは改めて考えて、洪水単独になったらかなりの部分で楽になるという印象を持っています。これは印象ですが、最初の清水バイパスの実例とか、これが実際にどれぐらい、何日間そういうところを流れるのかということについてお答えいただければと思います。
(委員長)  では、事務局からお願いします。
(事務局)  お答えいたします。
 排砂バイパスというのは、熊野川水系の朝日ダムという電力のダムで、揚水式発電の、たしか下池だったと思いますけれども、大峰山だったか紀伊山系の……ごめんなさい、清水バイパスにつきましては朝日ダムで実績があります。
(委員長)  あれは清水バイパスを兼ねているわけ? 排砂バイパスと出ていますよね。
(事務局)  排砂は兼ねておりません。微粒分の排砂は兼ねておりますけれども、先ほど言われたような大きなものを流せる形にはなっておりません。
 それから、排砂バイパスとしてここに美和ダムだとか幾つかの例が書かれてございますけれども、美和ダムにつきましては大きなトンネルを掘りまして、上流側に貯砂ダムみたいなものを設けまして、そこから分水、分流をすることで大きなものも流せる構造になってございます。
 それから、ダムサイトで30m3/sという数字ですけれども、最近10カ年の豊水流量程度ということでございます。
(委員)  豊水は何日ですか。95日?
(事務局)  ついでに申し上げますと、黒部川という直轄の河川がございますけれども、宇奈月ダムと、これは直轄の多目的ダムでございますけれども、その上流に関電の出し平ダムと2つございまして、黒部川というのは土砂流出の大変大きいところで、連携排砂という形でたまった土砂を洪水の末期に流す仕組みを設けています。具体的には排砂ゲートを堤体の中に設けてありまして、それをあけることによって土砂を下流に吐くという構造でございます。
 お手元の資料では静岡県と書いてありましたけれども、これは富山県の間違いがございますので、訂正をさせていただきます。
(委員)  清水バイパスを排砂バイパスと兼用するという考え方はないんですか。
(事務局)  ここの清水バイパスは、今の計画は微粒分、濁った川の微粒分を流すことまでは対応可能でございますけれども、先ほど申しました美和ダムのような大きな土砂だとか、そういったものを混流させて下流に流すという機能までは想定しておりませんでした。
(委員)  環境立県の熊本県でもあり、それから球磨川に対する私の思いが大きいせいですか、環境のために開いていただいた小委員会なのでちょっと苦言を申し上げたいんですが、球磨川というのは、私、現地を何回も歩かせていただいて、意外に痛めつけられている川だというのが強い印象です。特に、下流部の遙拝堰から始まって、荒瀬、瀬戸石、それから清流の川辺川に入りましても大小の発電ダムができていて、ズタズタに切られている。この現状を、やはり100年の計画でもう少し連続性の高いものにしなければいけないというのが私の強い思いであります。そういう見方では、ダムをつくるほうの議論を入れるかどうかということと同時に、当面あるダムの撤去、あるいは改良もぜひやっていただきたい。この委員会で議論していただきたい。
 もう一つ、きょう、魚道が非常に整備されているというご説明をされたんですが、我々生物屋から見ますと非常に残念な状況です。アユにしましても海から上がってきます。一番の要は入り口にある遙拝堰ですが、今もって人手で稚アユを上へ上げるというやり方は、とてもサステイナブル(持続可能)なやり方だとは思えません。そういう意味では、上流側の魚の上りやすいところに非常に大量の資金と手間を注ぎ込むのもいいんですが、魚道は下から丁寧に改良していきましょうというのがお願いです。
 それから、魚道をつくっただけで、その上に長々と湛水域が続いていて、アユの遡上条件としていいかというと、これはどうもよろしくないと思います。そういう面もあわせて、魚道だけではなく、魚道に大量の資金を注ぎ込むだけではなく、連続性が健全に直るようなプランをぜひ100年の計として立てていただきたいというのが強い思いです。
 だから、川を痛めつける方法というのは、まず水を全部取ってしまうというやり方です。そういう意味でいうと、今、市房ダムで取られた水、あるいはその上の農業用水で取られた水は、夏場はほとんど川に戻らずに、球磨川をかなり水枯れ状態にして、水質としてはそれほど悪化していないんですが、ベントスが棲んでいる底質のところではかなり状態が悪いというのが現場を歩いた印象です。そういう意味では、もう少し水を戻してあげていただきたいというのが一つです。
 それから、ダムの議論をどうするかというのは非常に難しいところですが、その前に一つ、資料3−1、河川環境についてということで、いつも刺身のつまのように挙げられる生物種がずっと注目種として挙げられているんですが、これを拝見して非常に適切な注目種もございますが、アカマダラカゲロウとかギンブナとかサギ類、カワセミもそうでしょうか、カイツブリ、天下の球磨川の注目種としてはちょっと寂しい生物種しか挙がっていないというのが私の直感的な印象です。
 ただ、川辺川に入ったの相良村のところですと、我々現地調査しましたけれども、夜、ライトをつけて川虫を集めますと、息もできないぐらいたくさんの底生動物が来ます。川底にいた虫が上陸してライトに飛んできます。九州の幾つかの川を回ったんですけれども、そんなすごい豊かな川はありません。それは多分、一つの種類で注目種というよりは、そこの群集全体として非常にいい環境が川辺川の下流域、権現河原はあまりよくないんですが、その上は非常にいい環境になっていると思います。それが一つ
 それから、貯留施設をどうするかという議論で、私、○○委員がおっしゃったように、発電利水は別にして、利水を全部外して治水プロパーの貯留施設を考えたときにはいろいろなオプションがあり得ると思うんです。水面を全く持たないような貯留施設も当然ありますし、そういうものを当然視野に、これこそ計画マターなのか判りませんが、長期的な視点でもってこういうものを考えていこうという視座をこの小委員会で開くべきなのか、私、よくわからないところがあるんですけれども、そういう新しい視点の貯留施設もやはり展望しなければいけない。
 とすると、きょう、ご説明いただいた旧来の計画、利水を持った貯水計画で出てきた問題点の多くがほとんど消滅してしまうわけです。水質悪化もなくなる、大きな粒径の土砂さえも下へ流すようなしかけもできるかもしれないです。そういうこともやはり河川管理者、あるいは地元の方を含めて考えていただきたいというのが強い希望でございます。
(委員長)  環境のご専門では○○委員がおられるわけですが、きょう欠席していまして、ペーパーをいただいております。ちょっと長いんですけれども、議事録にとどめる意味で、事務局、どなたか読んでいただけますか。
(事務局)  それではご紹介させていただきます。A4の3枚ものでございます。
 みなさま、2月14日の球磨川小委員会に欠席いたすこともあり、これまでの会議を踏まえて若干のコメントをさせていただきます。なお、11月に事務局に送付した内容と重複部分もあります。○○(Bグループ)
1.環境検討への位置づけ
 これまで小委員会では、提示された球磨川に関する報告書に対して、治水を中心とした議論に終始してきました。そのこと自体は、便宜上にしろ関連上にしろ何ら問題のないことであります。しかし、今後されるであろう環境面についての議論もまた実質的に流量や河道状況の議論と直結することが多く、治水対策と完全に分離して進めていくことは困難かと思います。洪水対策への計画流量の議論が終了したから、次は環境の議論へという順序ではなくて、この間は何度か応答し合う必要があるのではないでしょうか。少なくともそれを揺るがない前提とした環境にかかわる議論は回避するべきでしょう。しかも、本河川では、ダムという環境面にとっては不可逆的な状況がもたらされる施設が想定される上では、より慎重さが求められるものです。当然ながら、ここでいう環境とは、アユだけの保全を指すものではなくて、ここで尺アユをシンボリックに掲げていますが、それが再生産されるような河川環境の保全という意味となります。
 また、河川環境において治水、利水、環境が同等の三本柱であるとすれば、議論の順序として先に環境面があり、次に治水面があっても、相互に応答があれば順不同でもいいかと思われます。この応答によって、河川整備・管理の目的・目標、例えば出水から何を保全するかの議論を深化させることになります。すなわち、住民の生命、財産に加えて、この場合「県土環境」という県民財産への保全も、○○委員のご指摘に伺えるように当然に議論対象となるわけです。もっとも現状において、このままの順序で了解しています。
 河川環境に対して悪影響をもたらす構造物として想定されやすいダムは、それが治水目的である場合、自明ながら別の治水対策とあわせて本委員会のように議論するものでしょう。もちろん、こうした議論の遅々さによって、取り返しのつかない洪水被害が起こってしまうことも大変懸念されるところです。○○委員に代表されるような現地の行政責任者としての火急性に力点が置かれるのも、私なりに理解ができます。ただ、委員長がしばしば申されるような意見と関連するかと思われますが、「生命・財産を守る」というときの「財産」の保全においては、「生命」と切り離して、その程度や中身(私有、公有、共有)の議論をして、いわば必要・緊急ランクを合理的に設けていくべきかと思います。
 今後の環境面に関する議論は、まだ特に個別かつ直接的にはされていませんが、これまでの中で関連すると思われる議論もありました。例えば、河道掘削による流量確保は過度である場合、河川環境面からは慎重かつ回避すべきと考えます。
2.計画高水流量の確保
 以下は、当委員会の議論として、まさに自明のことかと思います。
 近代以降、人工的管理に基づく治水・利水のシステムを構築していくに当たり、人の生活空間は流域一体に広がり、川の岸際まで近接していくようになりました。しかし、一方で、その生活空間の拡大は洪水災害の頻度と規模を増大させることになったといえます。そのため、治水事業が国家施策として実施されてきました。その治水対策の管理基本方針を決定する根拠として、計画高水流量が設定されています。つまり、ある地点での想定される最大流量を、過去の出水実績、降雨量、治水事業の整備完成度、流域状況(土地利用)などから統計学的に決められ、それを基準に流域全体の護岸、河道変更、河床掘削、ダム、遊水池などの治水計画が立案されると理解しています。
 河川整備基本計画に対して理解が不十分な点もあることを認識しつつも、私は、この計画高水流量について、決定根拠の整合性や決定過程に当たって考慮される要素は、これまでどおりでよいのか再検討される時期に来ているのではないかという印象を持っていました。実際に本委員会においては、その再検討がなされつつある会議と認識することができました。例えば、河川環境の構成要素を保全、維持するための流量を設定する根拠性や、実施に向けての具体的政策についての議論を練り上げていくといった点です。
3.「自然に優しい」ダムについて:管理(運用・操作・利用)
 最近、しばしば「自然に優しいダム」とダムが環境配慮という機能を持つという観点から説明されることがあります。ここで、そのキャッチフレーズは矛盾をはらんだ文言とやゆすることはしません。ここで申したいことは、実際に現状の多くの河川を見るにつけ、その矛盾と判断されることも、場合によっては改善機能を持たせる可能性が多少なりともあり、議論の余地があると思われることです。
 当該の球磨川の議論においては、ダム建設を想定して計画降水流量を決める順序となっています。前述したように、河川管理としての流量については、河川環境の視点からも考慮することが肝要と思います。すわなち、河川管理を目的として、治水による安全向上と河川の環境保全を同時的に(現状、同じ重みという意味ではありません)議論することであります。例えば、ダムが劣化した現状の環境に対して改善効果があるという機能について、一般論として下記のような3つの議論の必要性を感じます。
 1)水質の問題:ダム湖で貯水された水を下流に流して量として確保されても、その水の性質はダムのなかったときの水とは異なっている。河川は、いわば単に液体物質としての流れ水を資源として供給する場だけではなく、さまざまな生物からなる水環境によっても構成される自然現象である。すなわち、水温や濁度という点だけでなく、懸濁物や微生物、栄養塩類、土砂含有などにおいて多かれ少なかれ異なっている。このことは、ダム湖にたまる土砂や有機物など堆積物とも関係する。これらに対しては、水深のあるダム湖のどの層の水を流せばよりよいかという選択取水の議論もされつつある。しかし、この議論に基づいた調査成果はまだ不十分な部分もあり、一層の検証が必要とされる。さらに、新規ダム事業や既設ダムの管理運営に活用されるべきである。
 2)放水流量の問題:単に画一的に一定流量を放水すればいいわけでなく、自然流の実態に即した流し方(水質を含めて)を根拠をもって考慮されているか。生物は、必ずしも恒常的に安定した流量が絶対的に必要とするものではない。限られた水量を効果的に生物が利用できる(生物の生態調査が必須)ような放水設備や運用が重要である。極論すれば、毎日安定的に増減水なく、例えば10m3/sの水を流し続けるのか、あるいは年間を通しての総量だけの配慮でいいのか。おそらく生態系の面から見れば、いずれであっても不十分だろう。まずもって変動する自然流量の実態を年間を通じて把握しておくことからこの議論は始まる。もちろん、現状の河川は物理的な形態や水量、また流域の土地利用においても多くの人為性が加わっているので、原始自然の状況を再現することを望むものではない。
 しかしながら、生物の進化的な歴史時間を考慮し、過去(およそ数千年から数十万年前)から変動してきた流況を予測し、それをその河川環境の本来性として一つの理想モデルとして想定する作業が重要である。この科学的作業は困難を極めそうであるが、例えばどれだけの流量を、いかなる時期にダム湖から放水するのが下流環境の改善にとって効果的かという議論において必要とされよう。つまり、どのように何をもって計測して環境保全を目的とする流量が確定されるのかを、多面的な根拠をもって示す時期に来ている。今後、この議論が展開されることを切望する。環境保全のための水の「補給量」は、そもそも「新規需要量」(そのまま流す水量)として位置づけていいかと思う。
 3)また、出水時の流量確保のための河床掘削の量と箇所は、場合によっては河川環境に多大の影響を与えるものと思われる。前述のように河道掘削が過度である場合、それは河川環境面から慎重かつ回避すべきである。したがって、確保すべき流量の議論は環境面からも重大である。
 なお、熊本日日新聞(07年1月)インタビューにおいて、その気持ちは重々に理解でき、かつ個人的心情としてダム建設の回避を望むものであるか、「小委員の委員はダム推進派ばかり」という断言的文言には一言そうではない旨、申しておきたい。
 以上、流量の扱い方についての不十分な理解もあろうかとは思いますが、ある側面からの若干の所見を述べさせていただきました。
(委員長)  きょう、この委員会に出ておられたら、またちょっとご発言も変わったかもしれませんし、同じ生物を研究する立場として、○○委員、何かつけ加えることはありますか。
(委員)  結構です。
(委員長)  いいですか。わかりました。
 きょうの議事録も含めて、また○○委員にもご説明を願いたいと思います。
(委員)  先ほどから水力発電をやめろと、なければもっと簡単だというお話が幾つか出ているかと思います。ですが、前のときも、それからその他の委員会のときにも申し上げたと思うんですが、私自身も川がもとの姿に、自然に近い姿に戻ることに賛成でありますが、現況にあります水力発電所を単純になくしていいのか。必ずそれに対する対価が必要なはずです。荒瀬ダムにつきましても廃止したときの炭酸ガス対価はどうなるのかとお伺いしたことがあるんですけれども、お返事はいただいておりません。同じように、ほかのダムで下流に水がないときも、では水を流すようにしたら幾ら炭酸ガスが増えるんですか、今後必ず出してくださいとお願いしてあるんですが、チャンスに恵まれておりません。
 私、きょうの資料で、熊本県内の水力発電で最大66万キロワットですか、ちょっと火力発電所一つですよね。その大部分が球磨川である。つまり、地球温暖化防止に非常に貢献しておるわけです。環境にできるだけ支障のない範囲で使える無料のエネルギーですから、これは確保していくべきだろうと思います。
 水力発電をやめて代替エネルギーがあるではないか――これも前、申し上げたと思いますが、コストの面で水力発電が古くなったからやめるとおっしゃいましても、代替エネルギーのほとんどは現行の補助金がなければ成立しません。一部OKのところもありますけれども、諸外国でもかなりそうです。今、ニュースで非常にはやっていますバイオフィエル、アルコールですけれども、それにいたしましても食品と食料と競合しております。
 同じような議論は随分昔ありまして、20年ぐらい前ですか、バイオマスのエネルギー変換ということで皆さん一生懸命になって研究したことがあります。私も一緒にやっていたんですが、結局はペイしない。やはり一番ペイするのは、はっきり言って水力発電であります。雨が降ってくれますから。それと河川環境といかに調和していくか。そこの視点をぜひとも忘れないようにお願いしたいということであります。
(委員長)  大変重要なご指摘でありますが、環境をいきなり金に計算すると大部分の方に抵抗がありますし、環境については全部内部コスト化して考えるべきではないか。その中でプラスマイナスというんですか、今の発電所をやめたら幾ら金がかかるから、水力は安いんだぞというお話だと、ちょっといかがかと思います。そういうことが一つ。
(委員)  地球温暖化を念頭に置いておりますから、貢献しているんだということです。
(委員長)  そういうことも含めて、荒瀬ダムの話とは別に、今まで議論していたのは川辺川ダムに乗る予定の発電をやめたらどうかという議論だったと僕は思いますので、そこはひとつ。
(委員)  そうとも限らないと思ったんですが。ほかのほうにもありましたので。
(委員長)  一般論としてはそういう議論があることは我々も重く受けとめたいと思いますが、委員の皆様から出たのは、川辺川ダムに乗る予定の発電をこの際やめてはどうかというご意見だったと私は受けとめました。
(委員)  1点だけ、濁水についてですけれども、資料では3−1の7ページの一番下に書かれております。濁水の原因が並べられて、その対策ということになっておりますけれども、やはり水利が若干わかりにくくなっているのではないかと思います。大きな崩壊があったから濁水があるんだということは間違いのないことですけれども、一般的には崩壊があったとしても、相当の降雨を何回か経験すれば復する。ダムが存在すると、そこの条件が若干変わってくるということだと思います。そのダムの影響につきましても、崩壊の程度とか、崩壊地の地質の影響とかで、ほとんど問題にされないダムもありますけれども、非常に長期化して問題視されるダムもあるのではないかと思います。そういう意味では、ここで水田も濁水の原因に書かれておりますが、昔から水田をつくったから水が濁って困るという話はあまり聞いたこともないので、このあたり、やはり水が濁る原因とその対応といいますか、そこのところをもう一度整理し直して書いていただいたほうがわかりやすいのではないかと思います。
(委員)  水道にとっては、離島に水を持っていておるということで、球磨川は大変大事な川だということを一言申し上げておきます。
 それから、全般的なことでございますが、きょう、こうやって川辺川ダムの資料がたくさん出てきて、事務局からご説明いただいたということは、ダムをつくる、つくらないについては整備計画ほうでということお話もございましたが、この小委員会といたしましても、これだけダムが世の中の話題になっておることからして、勉強をしておくということは大事なことだろうと思います。ただ、きょうのご説明は、国土交通省・推進派と書いてあったものですから、何となくそちらに力が入ったのではないか。その誤解が○○委員のほうに行ったのではないかという気がしますが、ここで議論したこと自体は非常にいいことだし、これは避けて通ること自体、世の中で何をこの小委員会でしていたんですかと聞かれたときに、何となく私たちも答えにくいところがありますので、勉強としてこれをしたということは大変よかったと思います。
 これは整備計画のほうでご議論いただくということですが、そういうことで誤解のないようにしておけば、きょうの資料についてはプラスの話である。何もここで川辺川ダムをつくろうとかつくらないとか言っておるわけではございません。基本方針でどういう書き方をするかとか、基本方針でどう書くのかというところは、いろいろ知恵が要るところだと思います。もちろん名前は出てこないと思いますけれども、このままずるずると11回、12回、13回とやってみるということではないと私は思うんですけれども、基本方針はどうするのか。
 あと、河川整備計画はどうするのかというのは、このような形で並行線でずっと行ってしまうということは球磨川周辺の住民にとってどういうことになるのか。もし、そんなことになったときには国土交通省はどういうことを考えていますとか、県のほうは何を考えていますということを整理しないことには、住んでいる人たちにとってどうなのか。もちろん環境も含めて、何も私はダムをつくると言っているわけではございません。川をどうするかということです。そういう気がいたします。
 それから、ちょっと細かい点でございますが、今度は河川整備計画マターだと思いますが、私も足かけ8年ほど今の水資源開発公団で管理部長をやったり、担当理事をやってまいりまして、いろいろなダム、下流の環境等についていろいろな経験をしてまいりました。確かに、早明浦ダムのように濁水が出たり、冷たい水が下へ落ちてアユに影響を与えるとか、荒川の浦山につきましても濁水が出たり、それからアユに対してどうかということで先ほど置き土の話がありましたが、アユに対して影響がないように置き砂をしたり、早明浦ダムにつきましては表面取水するように取水のゲートをまた新たに取り付けたり、実際に見ながらやってまいりましたが、それぞれのダムによって特性が全く違います。
 ですから、濁水の出る早明浦ダムとか浦山みたいな事例もございますが、全く出ないところもあります。水質問題も、アオコが出たりするところもあるし、全く出ないところもございます。それから、阿木川ダムのように、バイパスで上流の汚水をダムに入れないように、前もって工事のときからやっておったという事例もございますし、伐木をやったり、膜を張ったり、クレソンというビフテキの横についておる植物を栽培して、それに窒素を食わせたりいろいろやってまいりました。
 そういうことからして、実績はいろいろありますので、先ほど○○委員からあまりちゃんとしたことができていないというお話もございましたが、実施部隊と実践している者にとっては実績をきちんとやることが大事なことですので、シミュレーションもまことに結構ですけれども、その辺の整理もやって、仮に川辺川でダムをつくるのであれば、そういう特性を入れたことをまた議論していただければいいと思います。今までのダムの実績はある程度あるし、もちろん悪い事例もございます。いいものばかりではございませんが、そういうところも含めてまたご議論いただければと思います。ありがとうございました。
(委員)  球磨川流域全体の河川環境について説明審議ということで私はきょうの委員会を受けとめさせていただいたんですけれども、その中で、区域ごと、あるいはさまざまな観点からアプローチがなされております。この点については委員の先生方からもいろいろな意見が出されたんですけれども、特に希少動植物の生息状況、それから保全の必要性について、私自身が改めて申し上げる必要はないのかもしれませんけれども、河川環境を考える上で欠いてはならない視点は、そのような希少種を含めたさまざまな動植物が連関し合って生態系が維持されているということです。つまり、単に一つの種をどのように守っていくかということだけではなくて、その種によって他の種が生かされ、さらに他の種にも影響を与えていくという連関性の中で命の営みが成り立っている。こういうことを考えてまいりましたときに、今回のように区分された形の中で述べられるだけでは足りないのではないかと私は思っています。
 それから、熊本県の中で申し上げますと、県内におきましても環境の変化が具体的に生態系に大きな影響を与えているという実態があります。例えば、レッドデータブックスに掲載されている絶滅危惧種、これは平成10年で893種でした。それが平成16年には1,402種と増加をしております。私たちは、やはりこういった実態を考えますと、球磨川全体の自然環境保全というところで、将来にわたって野生動植物の生息、生育環境といった視点からも、もう一度整理をしてみることが非常に大事ではないかと思います。
 それから、今回の資料で瀬、淵の保全については触れられておりますけれども、流域に点在するせせらぎ、瀬、あるいは淵、よどみ、これはほんとうに生物の命の源です。そういったことを考えますと、このようなエリアをできる限り工夫の中で残していくことも論議されていかなければならないのではないかと私は思います。
 それから、事務局のご説明の中でミティゲーションの考え方について、資料3−1の11ページのところで口頭で触れられました。私はこの考え方は非常に大事な考え方だと思いますので、ぜひ瀬、淵に限らず、ワンド、河畔、湖畔、それから河川全域にわたって河川整備基本方針に明確に位置づけていただきたいと思っております。
 それから、資料3−1の5ページですけれども、近年は比較的安定しているという書きぶりがされておりますけれども、将来展望も比較的安定したままで推移していくのかどうか。そのあたりのことは、資料の髄所でモニタリングをしていらっしゃるという報告がありますので、ぜひそういった資料を生かしながら、将来展望についても触れていただくべきではないかと私は思います。
 そして、モニタリングの中で経年的な変化、これが河川環境、あるいは生物の生息状況にどのように影響を与えてきているか。その資料を私はぜひ明らかにしていただきたい。単にモニタリングを継続して実施していたという文言だけで終わっておりますけれども、そういったものを明らかにしていただくことによって、そのような変化が何に起因するのか。そして、今後どのように変化していくと考えられるのか。さらに、それに対して専門家を交えた議論も必要ではないかと考えるところでございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それから、河川に関してですけれども、量、質ともに河川環境が悪化したと懸念する声が地域住民の皆様方にあること、これは事実でございます。だからといって、地域住民の方々、熊本県の皆様たちは手をこまねいているということでは決してなくて、水源涵養のために企業、漁民の方々、あるいは行政ももちろんですけれども、県民のボランティア滑動の中で、今、非常に取り組みがなされているということであります。このモニタリングの結果は、今後そういう方々と課題認識を共有していくという意味でも大変大事ではないかと思いますので、ぜひ河川環境変化のモニタリング関係の資料、経年的な資料をお示しいただければと思います。
 それから、川辺川は球磨川の支流とはいえ最大の支流です。流域面積でも全体の3割近くを占めております。さらには、前回の資料に示されておりましたように、希少動植物について申し上げますと、水系全体で287種が確認されている中で、川辺川では146種が確認されております。すぐれた環境が残されている数少ない地域であると申し上げてよろしいかと思います。しかし、今回配付されました資料では、球磨川本川については現況の評価、課題、今後の河川保全に向けた基本的な考え方が示されておりますが、川辺川についてはダムを前提とした環境への影響、及びその対策に関する資料が示されているのみでありまして、現況を踏まえて、この流域を将来どのように整備、保全していくのかという基本的な議論、これは本来この小委員会の役割だと私は思いますけれども、この資料は十分に示されているとは言えないのではないかと考えております。
 それから、先ほど○○委員もお触れでございましたけれども、資料3−1の7ページ、流域からの濁水の流入についてでございます。私も非常に不思議に思いまして、農政の担当職員に確認をしたところです。水田のかんがい域の濁水をここで取り上げておりますけれども、かんがい期のうち、しろかき期に水田内の水が濁ることは当然あります。しかし、農家の方々は、しろかきとあわせて施肥――肥料をまくということです――を行いますために、その間、水田の水は外に出さないことが原則と言っておりまして、水田の濁りが河川に流出するという考え方は考えにくい話であると申し上げたいと思います。
 また、資料のSS負荷量推算値のグラフでございますけれども、濁りが7月に最大値を示しています。球磨川地方のしろかき期は6月中旬です。このことからも、流域の濁水の流入について、水田のかんがい、特にしろかきとの因果関係があるような記述は事実と違っていると申し上げなければなりません。むしろ、この原因については十分な検証を行っていただかなければならないのではないかと私は思います。
 アユの資源回復についてですけれども、アユの漁獲量は18年も非常に少なくなっておりまして、地元では深刻な問題となっていると申し上げたいと思います。それから、資料の中で、産卵場が河川の下流から上流部にかけて広範囲に存在すると図式がされております。しかし、アユはふ化後、短時間のうちに海に下る必要があるために、再生産に結びつく産卵場は、球磨川では遙拝堰付近から荒瀬ダムまでの区域と考えられております。これはどなたかの委員の先生もお触れくださったと思いますけれども、広範囲に存在するという認識は実態とずれていると申し上げなければならないと思います。
 そして、砂や砂利に産卵することを考えますと、産卵場の河床には砂や砂利が欠かせない条件であります。しかしながら、資料では、遙拝堰の上流では産卵に必要な砂利が採取され、あわせて遙拝堰直下でも砂や砂利が減少するなど、アユの産卵環境が悪化をしております。これらはアユの再生産を図る上で深刻な問題になっている。そのことが漁獲量にも非常に影響を与えていると思います。このようなことから、アユ資源を回復させるためには、遙拝堰付近における砂利を用いた河床の整備等の対策を今後とも意識的にやっていかなければいけないと思います。
 それから、資料3−2の○の4つ目でございます。平成12年に実質的に環境影響調査書に当たる川辺川ダム事業における環境保全への取り組みを取りまとめ、県知事からも意見を聴取し公表したと、ここで書かれております。私どもがこのときに出した中身というのは、調査の継続を住民の意見を聞いた上で公表をしていただきたいということ。それから、不測の事態が起きたときの対応を明確にしていただきたいということ。それから、重大な環境への影響が予想された場合には、速やかに調査を実施し、公表し、対応することということのほかに、個別要望として水質、水量、クマタカ保全、九折瀬洞の問題、そしてただいま申し上げました動植物の生態に関係する情報提供の問題、こういった点を触れさせていただいておりますので、そこは明確にしておきたいと思います。
 さらに、このところで申し上げますと、調査項目や手法、調査地域について環境影響評価法の規定とは異なりまして、知事や地元市町村長、住民等から意見を述べる機会は設けられておりません。結果論として私どもは意見を申し上げた、でき上がったものに対して申し上げたということも明確にさせていただきたいと思います。
 少し長くなりますけれども、河川環境を考えるに当たりましては、私は非常に大きな観点、そしてこの委員会の役割であります、将来展望を考えていく中での論議がもう少し深められていくことが非常に大事ではないかと思っております。
 それから、ダムを設定とした条件について、委員の方々からお話がございました。しかし、私自身は冒頭に確認をさせていただきましたように、これはしっかりと役割分担、その中で考えていくべきではないかと思います。きょうの事務局の説明を伺いますと、私は、住民討論集会が数回にわたってダムの環境への影響を集中的になされているという状態を考えましたときに、ほんとうにこの問題の取り扱いが新河川法に位置づけられて、きちんと論議を深めていくことの役割、そのことをもう一度確認することが必要ではないかと思います。ダム論は避けて通れないという委員の先生方のご指摘もございます。その一方で、それであれば新河川法の位置づけをどのように考えていけばいいのか。なかなかこの状況、きょうの委員会の状況を通しながら、悩ましいものを私自身感じたところでございます。
 長くなりましたけれども以上です。
(委員長)  6点でしょうか、ご議論がありましたが、順次お答えをいただきましょうか。1番目の河川の瀬、淵の改変等について、大変評価の高い事務局の説明のとおりちゃんとやるのかということだったと思いますが。
(事務局)  その前に1点、動植物ですけれども、いろいろな種が関連し合って生態系を維持している、今回の資料みたいに区分に切って議論するのはいかがかというご指摘があったんですけれども、一般的に環境評価をする際、先ほどの資料でご説明しましたけれども、我々も生態系を評価するときに上位性、特質性、典型性、移動性、いろいろな指標で物事を見させていただいております。その際に、ものすごく大きくとらえますと関係性が見えなくなりますし、小さくとらえるとまた関係が見えなくなる。これは先ほどもお話があったとおりです。そういう中で、一まとまりの環境として評価できる環境を単位としてとりまして、その中の生態系を評価するというやり方をしております。それがある種典型性ということになるのかもしれませんけれども、そういった区分されたそれぞれの中で代表種なり、生物群種を先ほどお示しさせていただいたつもりでございます。そういう意味で、知事がおっしゃられたような手法と合致したものではないかと我々は考えてございます。
 それから、流域にはいろいろな環境が点在するということでございます。大変多様な環境が点在してございまして、瀬、淵、よどみだけではなくて、小さな水路だとか、小さなせせらぎだとか、いろいろなものが分布しております。我々、河川の整備を行う際には、ここの中でも書かせていただきましたけれども、さまざまな工夫をやりまして、多様な河川環境をできるだけ残していける努力はしていきたいと考えております。もっと大きな単位で見ますと、川と周りの水田だとか森林だとか、いろいろなところとの連続性がものすごく大事でございまして、そういったところの改善は、ここの中でもちょっと書かせていただきましたけれども、周りの方々との協力なしに進められません。これは流域の皆さん、関係者、いろいろな方が一体となりまして、河川管理者も頑張りますので、ご協力いただきながら環境の改善に努めていきたいと考えてございます。
 3点目、ミティゲーションの考え方でございますけれども、これは○○委員ご指摘のとおり、我々も非常に重要な視点だと考えております。何回か前の小委員会の際に○○委員からその辺のご指摘がございまして、具体的に申しますと、河川整備基本方針の中で河川工事などにより河川環境に影響を与える場合には、代償措置などによりできるだけ影響の回避、低減に努め、良好な河川環境の維持を図るという記載を、これは6水系ぐらいやりましたか、何回か前からそういうふうにきっちり記載するようにとご指導をいただきまして、記載を始めてございます。その辺は球磨川の中でもしっかり書かせていただきたいと考えてございます。
 それから、最近、安定傾向で、これからどうなるのかというお話ですけれども、河川環境のモニタリングというのは、いろいろ河川環境にかかわります議論が出てきました平成2年度ぐらい、長良川河口堰だとか、もろもろの問題が指摘された当時に始めておりまして、河川水辺の国勢調査ということで17年ぐらい実施してきております。調査開始当初は、やはり手法的な問題だとかいろいろな問題がありまして、例の環境庁がやられております緑の国勢調査も、やっているうちにだんだん手法が成熟してきて、だんだんいろいろな評価につながるようになってきたというところもありますけれども、我々の河川水辺の国勢調査も当初よりはいろいろなとらえ方ができるようになってきております。いろいろなデータを一概に比較することは難しいですけれども、ある意味ではトレンドといいますか、変化といいますか、そういったものをこの中で分析してとらえていこうとしてございますけれども、先ほど言いましたようにまだ若干日が浅うございまして、大きな変化みたいなものがなかなかあらわれてこないのが実情でございます。
 球磨川はと申しますと、平成年代以降は河川整備として宅地のかさ上げだとか輪中堤の整備だとか、堤内地におきます工事が中心になってございまして、川の中の形状を大胆に改変するといったことはやってきてございません。そういう意味では、基本的には河道の河川の状態というのは大きな変更が行われておりません。環境条件的には、水質のデータだとかさまざまなデータをごらんいただいたと思いますけれども、大きな変化はないと考えております。これからも河川の河道の状態を改変するような調査を実施する際には、専門家の皆さんのご指導を得ながら、なるべく影響が小さくなるやり方で何とかやっていきたいと考えております。ミティゲーションの考え方といいますか、ダメージを最小化するといいますか、そういうやり方で今後整備を進めていきたいと考えております。
 川辺川の環境のお話がございまして、非常に大事だけれども、丁寧に説明されていないではないかとお話がございました。私、説明の中で話はしたんですけれども、基本的な考え方は、支川の川辺川につきましても球磨川の上流域と同じ考え方で整備を進めていくという考え方でございます。河川水辺の国勢調査のデータ等も見ましたけれども、直轄管理区間、我々が直接管理している区間は合流点から2.4キロという区間に限られてございます。ダムの湛水域を除く部分は県で管理いただいておりますので、そちら側のデータは基本的に県でおとりいただくのが原則だと思います。そうはいいましても、球磨川だけではなくて川辺川の環境自体も非常に重要な要素だと考えておりますので、ぜひ県と一緒になりまして必要なデータをお互いに取り上げまして、今後の整備のあり方だとか、あるべき方向みたいなものは議論していきたいと考えてございます。
 それから、水田の話というか球磨川流域の濁度の話で、水田のしろかきが影響していると書きました。確かにご指摘のとおりで、しろかきだけが影響しているともし読まれたとすると、○○委員にも申しわけなかったと思いますし、ちょっと書き方が十分な配慮がなかったと思います。しろかきを含め、そのほかの開発もそうでしょうし、畑もそうかもしれませんし、いろいろなものが濁度の流出の原因になっていると思います。これらの改善に向けましては、河川管理者のみでは流域対策という観点では困難でございますので、熊本県をはじめ流域の関係の皆さんと一緒になってその辺の対策もやっていく必要がある。これからの美しい球磨川流域をつくっていく上では、河川管理者と関係の皆さんと手を携えてやっていく必要があると考えてございます。
 アユの話でございますけれども、遙拝堰の下流側が良好な産卵場であったというのは事実と伺っております。ただ、そこが砂利採取によりまして損なわれた状態になっておるというのは、この間も私、現地で見させていただきましたけれども、確かに瀬がかなりなくなっておりまして、厳しい状況にあると思います。
 アユ資源の回復につきましても、先ほどもお話がありましたとおり、稚魚の放流に結構頼っておりますけれども、それだけではなくて、再生産に結びつく産卵場を砂利や砂などを用いまして再生していく努力も必要ですし、○○委員からご指摘ありました遙拝堰を、まず魚道が改善され、流域全体がアユにとりまして移動性といったものの阻害がないようにしていくことも重要です。湛水域自体が遡上に影響を与えているということであれば、それに対する手当て、どういう方法でできるかは今のところ解を持ってございませんけれども、そういうことにつきましても、これは河川管理者だけでやれることではございませんので、漁業関係者の皆さんだとか、関係の自治体の皆さんと協力しながらやっていきたいと考えております。
 それから、いわゆる青本といっておりまして、ここにございます川辺川ダム事業における環境保全の取り組みでございます。これにつきましては、先ほど申しましたように、○○委員に意見照会をしたところ、先ほどたくさんの項目を言われましたけれども、要望をいただいてございます。平成12年7月11日付で、九州地方建設局長あてに要望をいただいてございます。それに対しましては、平成12年7月26日付で、九州地方建設局長から○○委員あてにその要望に対する回答をいたしております。
 ここで細かくは申し上げませんけれども、先ほど申されたような幾つかの点につきまして、例えば地域住民の皆さんの意見を聞けということに対しましては、環境調査を継続し、環境重視の充実を図り、その結果について適宜適切に公表し、地域住民の意見を聞いてまいりたいとお答えをさせていただいております。不測の事態への対応につきましても、事業により予測し得なかった環境の影響が万一生じた場合は、調査を実施し、必要に応じて専門家の助言を得つつ、適切に措置を講じてまいりたいとお話をしております。水質、水量の公表につきましてもお約束をしてございますし、先ほど幾つか言われた点につきましても、丁寧に回答させていただいているということでございますので、ご承知おきいただければと思います。
 たくさんの項目だったので、これで全部カバーできていたか、一応答えてつもりではありますが。
(委員)  モニタリングをずっとやっていらっしゃいますので、ぜひ経年的な変化を資料としてお出しいただいて、それを私ども県も課題認識の中で、住民の皆さんや企業の皆さんを含めて共有してまいるということはやはり非常に大事だろうと思いますので、その辺のことが今、回答がなかったようですが、いかがでしょうか。
(事務局)  モニタリングの件は先ほど申しましたように、河川水辺の国勢調査だとか、そういった中で実施してございまして……。
(委員)  出していただきたいと。
(事務局)  それは公表させていただいております。これは毎年公表させていただいております。
(委員長)  それでは、今、直轄区間は2キロぐらいしかやっていないということでしたが、それを前提に、平成何年からやっているんですか。
(事務局)  2年から。
(委員長)  2年からやっているんですか。それらの資料を取りまとめてご説明いただければいいのではないかと思いますが、それでよろしゅうございますか。
(委員)  はい。
(委員長)  それから、重大な影響があった場合云々というは大変重要なご指摘で、各委員からも、この際、利水もなくなったのだったら、水をためないダムにしてしまったら全く問題ないのではないかという議論もありましたので、最後の委員会の取りまとめに当たっては十分考えておく必要があると思います。この件について何か想定される問題があるなら説明してください。
(事務局)  先日、長野県の浅川ダムの報道がございまして、その中で穴あきダムというお話がありまして、先ほどからの先生方のご意見は、多分それをイメージされている部分、あるいはもうちょっと改善しろと○○委員からはお話がございましたけれども、そういったことかと思います。
 確かに、穴あきダムというのは環境面では、先ほどお話がありましたように、土砂を流すだとか、ためないので水質の問題がないだとか、上下流の連続性の問題だとか、そういったものが解消できると言われてございます。ただ、治水という観点で見ますと、例えばゲートをつけない穴あきダムの場合ですと、ゲート操作をするケースに比べますと治水容量が大きくなるということがございます。
 川辺川ダムにつきましては、前にもご紹介しましたように、今、想定していますのは、鍋底カットと言われるような操作でございまして、ゲートは不可欠でありますし、そのために整理すべき点はあると思います。また、先ほど発電の話がございましたけれども、多目的ダムとして今、扱ってございますので、関係者の皆さんのこともありますので、私の一存で答えることはできかねる問題でございます。そこが持っているメリット、デメリットについては、今、申し上げたところかと思います。
(委員長)  事務局当局としてはなかなか答えにいく問題のようでありますが、委員のかなりのご意見は、不可逆的な変化はさせないほうがいい。となると、やはり洪水時だけ水をためるというのは大変賢明な選択ではないかと思いますので、取りまとめに当たってはそういう意見も体したいと思います。
 それから、○○委員、今の事務局の返答で、モニタリングの資料は追加していただきたいということでお願いしておきますが、それでよろしゅうございますか。
(委員)  それと、先ほど濁水の問題について、それだけではないと触れてはくださいましたけれども、もともとこれはこの時期やられていないということと、しろかきのときには施肥を行うということで、水田の水が外に出ない状態ということですので、そこは認識としては少し違っていると申し上げてよろしいかと思います。
(委員長)  それでは、この資料はインターネットでオープンになってしまいますので、今のようなご指摘があって、誤解を招くといけないので、表現を工夫して、インターネットにオープンにするときは考えていただきたい。
 それから、○○○○○○○○○、ちょっと長い名前ですが、大変貴重なので、○○○○という名前がつくと全国の人が採捕に来るかもしれない。球磨川の人は大丈夫でしょうけれども、そんなこともあるので、資料をオープンにするときには固有名詞は黒く塗っておいていただけますか。
(事務局)  はい、そのようにさせていただきたいと思います。
(委員長)  それから、今回、意見書が3通来ましたけれども、1通だけ、子守歌の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会から反対の意見が一つ来ております。
 これまで議論したことでどうもご不満なようでありますが、上流に市房ダムが完成してから、ダムの放流により水害被害が増大したという水害体験者の実体験を通じて出された声がある。これは先ほど○○委員からもありました。これは過去に4回ぐらい議論しましたが、この扱いについては結局、説明責任の問題だと思います。後ほど○○委員からも、前に意見書を出して答えがないというので事務局からお答えをいただきたい。
 その前に、住民討論集会での国交省の説明の基礎となった流出算出方法及び観測点の変更がなぜなされたのかという議論でございます。これは第6回だったと思いますが、2日雨量440ミリを12時間で二百七十何ミリに変えて、算出方法が変わったということと、基準点を2点にしたこと、人吉だけだったものを、人吉と萩原または横石にしたこと。これはやはり上下流の関係で、下流の八代の安全度は高めておきたい、上流が破堤していなくて下流が破堤した場合を考えると、やはり河川工事により下流の安全度を悪化させてはいかんので下流の安全度を高めるということで2点にした。これは議事録に残っていると思います。
 それから、流出方法を2日雨量から12時間にした。この委員会では3回もこの問題をやりました。440ミリというのは昭和41年か42年ごろの計画だと思いますが、当時の観測資料が日雨量で三十数個、時間雨量で十数個でした。それから40年たって、データがそれぞれ増えておりますので、現時点で評価して、全く同じ手法だと、たしか1万数千m3/sになる。1万数千m3/sにしなさいという委員会の結論であればある意味で無責任なので、悩みに悩んで詳細に検討したこと、それから過去に発生した洪水を検証したこと、それからコンピューターの上で数値処理した洪水により検証したこと。さまざまな検証をした中では、7,000m3/sが妥当ではないかというのが委員の結論で、これを委員会で取りまとめたわけでございます。
 それから、森林水文学者不在の中で森林保守力の議論が行われた云々とございます。森林水文家、水理水文家、これもたしか2回以上は議論したと思います。第3回のときに議論したと思います。森林水文家でホートン流という議論があって、ホートン流も知らないで議論するのかというご意見もありました。結局、降った雨が人吉にどう出てくるのかが河川水文家の最大の目標であって、その間にホートン流があるか何があるかは別として、過去に観測した結果、確実に人吉に出てきているという事実をつかえまて、関係式を成立させたということで出しております。これは○○委員、○○委員からも議論がありましたし、○○さんという方の名論文も読ませてもらいました。大変明晰な方のご意見だと承りました。森林水文家の視点と河川水文家の視点を明確に書き分けておられて、どこかに書いてありましたが、両方とも役に立たないとおっしゃっています。
 前者というのはおそらく森林水文家のご意見でしょうけれども、森林は大洪水時にも無視できない効果を発揮しているのかどうかをこのアプローチによって実証するには、数十年に一度の大洪水をもたらす大雨の際に、森林でどのような現象が起こっているのか実際に観測する必要があるが、そのような雨はめったに降らないし、仮に降っても装置が壊れたり、自分の命が危険にさらされるので検証が非常に困難だ、ちょっと無理だとおっしゃっています。
 後者のほう、河川水文家の意見ですが、過去の洪水一つ一つに個性があることが問題になる。個性の違いは森林状態の違い、降雨前の流域の湿潤状態、降雨パターン、継続時間、空間分布、降雨強度、河川工事の進みぐあいなどで違いがある。
 ここの中でおっしゃっている降雨前の湿潤状態は大体観測がされていますし、降雨パターン、降雨継続時間、空間分布、降雨強度も工学的には研究、調査が進んでおりまして、これらが織り込まれておりますので、河川水文学としてはある程度実用性があると考えられます。そういう意味で、これは第3回で議論が済んでおります。
 それから、球磨川中流域の水害が荒瀬、瀬戸石両ダムができてから頻繁に発生するようになり、被害も格段に大きくなったとおっしゃっていますが、これはたしか資料で、どこでしたっけ、事務局で探してもらいたいんですけれども、工事実施基本計画までつくったときの雨量とそれ以後の雨量とを比較したものがありますよね。
(事務局)  資料赤−9の2ページです。
(委員長)  これ、私のほうで見ると8−1ページです。これで見ると、工事実施基本計画後にどうも雨の量が多くなっている、流量が多くなっている。8−1ページ、右下です。これらから見て、昭和40年の大豪雨が引き金になって頻繁に集中豪雨が出るようになったと読めると思いますので、これは市房ダムの責任とは言えないのではないかと思います。
(事務局)  9−2で急流部、狭窄部の水位上昇についてということで、市房ダムの完成以降、洪水被害が激化しているという意見があることに対してご説明をしているところがございます。赤9−2ページ、右下のところでございます。これまで市房ダムの洪水調節では下流のピーク流量を下げてはいても上げてはいないとダムの構造と言いながら、ではどういうことが起こったかというと、日雨量データからおおよその傾向を見ると、市房ダム完成以降、大きな雨の発生頻度はどうも増加している。これが原因ではないかということでこのときにご説明させていただいております。
(委員長)  わかりました。
 次は、住民討論集会で、連続2日間440ミリ、人吉で7,000m3/s、八代で9,000m3/sと言ってきた。昨年、一昨年、2日で440ミリオーバーの降雨があったけれども、4,200m3/s、八代では7,000m3/sであった。そのとおり出ないではないか。これは確率論で、440ミリだったら必ず7,000m3/sになるわけではなくていろいろなケースがある。雨の降り方、集中の仕方によっていろいろあります。これもたしかみんなで議論をしてきました。
 ただ、住民の生命財産を守る計画としてはどうあるべきなのか。そういう意味で、やはり住民にとって安全側というと、一番マズいケースでも対応できるほうに決定したわけで、440ミリ=7,000m3/sになるわけではない。私は、安全工学という言い方をしましたけれども、疑わしきは安全側に数値をセットするというのは他の工学でも同様のことであります。YS11は片肺で飛べるから片肺でいいではないか、この次も飛べるからいいではないか。しかし、双発より確実に落ちる可能性は高いわけで、そういった安全工学の視点からセットいたしました。
 それから、人吉で計画洪水4,000m3/s云々で、過去5,400m3/sが越流しなくて流れたではないかということであります。これも同じ論点で、人間、血圧140以下とか、私は百二十幾つですけれども、140以上になったら危ない、180以上になったらもっと危ない、でも180でも生きている人がいるからいいのではないかという議論になりますので、少なくとも安全を考えたときには、5,400m3/s流れたからこの次も流れるという保証は全くないわけでありますので、そういう視点で4,000m3/sとセットいたしました。
 それから、流域で54名の住民が過去に失われているというが、水害に遭ったのは1名だから、あとは土砂災害だ、だからいいのかということであります。水害に遭った人が1人だったからいいと言えるのか。せっかくの文明国家、経済国家で、やはり人命、財産を守るということは最重要なことですから、死者が少なかったからといって計画を低くするということにはいかないのではないか。
 それから、八代で9,000m3/sを超える水が越流も堤防決壊もなく流下した、国土交通省の基本高水との関係はどうなっているのかというご議論であります。これはまた同じ延長上の話でありまして、住民の安全を守るという計画はいかにあるべきかという視点で決めた次第であります。
 それから、八代では9,000m3/s以上の水が過去何回も流れているのに、ここ250年以上堤防決壊も氾濫も起こしていない。これは大変な誤解で、私が昭和40年に現地を視察したときには球磨川の左岸は堤防がなかったんです。堤防がないから破堤もしないし、氾濫をしたけれども人は住んでいなかったんですけれども、今、現地はものすごい都市化です。高校か何かが全部連担しているので、潜在的な危険は増えていると考えるべきではないかと思います。
 以上、この要求書については、今まで審議してきた経過によって委員長から説明をいたしました。
 ということで、本日、環境の問題、3時から4時間かかってしまいましたが、一応議論を出尽くしたんですが、ちょっと条件があります。先ほどの河川水辺の国勢調査のモニタリングの経緯の資料については次回提出願いたい。
 それから、立場上というのはわかりはしますが、出すのは大変かと思います。治水だけのダムだったら相当の問題が解消されるのではないか、事務的に難しいなら難しいで結構ですが、出せる範囲で資料があれば、事務局制作というよりは委員長から尋ねられたものに対する回答ということでもよろしゅうございますので、取りまとめていただきたい。
 本日の議論は一応、各委員の意見を取りまとめましたので集約したいと思います。環境の問題については、先ほどもいろいろありましたけれども、要は基本方針にどう反映させるかということでございますので、次回においては、それらの資料も含めて、本文案にどう反映させるかという議論に入りたいと思います。その準備をお願いしたいと思います。
(委員)  今、取りまとめを委員長のほうでなさいましたけれども、ダムの環境への影響について、熊本県はご承知のとおり住民討論集会で数回にわたって論議を重ねてきております。きょうの論議でもってほんとうに環境への影響が払拭されるかといいますと、私はいいがたいと思います。環境への影響を懸念する声というのは、きょうの論議の中では解消されないのではないかと思っております。こんな状況を踏まえますと、私は本日の説明の内容について了解という形でまとめることはできませんので、申し添えさせていただきます。
(委員長)  県民の中に相当疑念があるということで、大変悩ましいお立場だということも重々承知しております。ただ、今までダムの一番反対の根拠は環境だった、環境で苦労してきた。今回、委員の大多数の皆様が洪水のときだけ溜めればいいではないかというご意見だったと思います。そういうことで、次回にその問題について、事務局は行政的に、農水との関係は整理されたんですけれども、発電との関係は言いにくいし、○○委員からは炭素会計の問題について厳しく意見を言われておりますので、それらも踏まえた資料を、国土交通省の資料というのは大変難しいのかもしれないんですけれども、委員の皆様、特に環境に関心のある先生方から、一番反対の根拠は環境ではないか。置き砂をするとか、清水バイパスをするとか、何バイパスをするとか言ってみても、何となく胸に入ってこないということもありますので、そこは整理していただいて、基本方針案文案に入らせていただきたいと思います。
 おっしゃるようなことは本文案の中で、当然ながら川辺川ダムとは書きませんが、7,000m3/sという基本高水ピーク流量、4,000m3/s河道ということになると、ほとんどそういう議論にならざるを得ないので、そこのところは丁寧に扱っていきますが、今後の問題についても事務局から熊本県にお話をしていただきたい。基本的に一番の利害関係者は水没地の住民です。水没地の住民があれほど不信感を持っているということを踏まえて、まず誤解を解く努力をしていただきたいということを要望したいと思います。お立場を十分わきまえながら次の段階の議論に入りたいと思います。お願いいたします。
 そういうことで、次回は事務局に資料を出していただき、本文の説明をいただいて審議をしたいと思います。
 ○○委員から強い要望のあった点について、事務局から説明責任の問題としてしっかりと住民にご説明願いたいと思います。
(事務局)  ○○でございます。毎回長時間にわたりましてご審議賜っています。恐縮でございます。今回も4時間を超えますご審議をいただきまして、大変ありがとうございます。申しわけなく思っております。
 これまで審議の過程におきまして、委員長、あるいは○○委員から、住民への説明責任をしっかり果たすようにというご意見をいただいております。また、このたび○○委員から文書にて、この小委員会での審議経過等、関係住民によく説明してくださいという申し出がございました。こういうことを受けまして、国としての考えを述べてみたいと思います。
 河川管理者としては、関係する住民の皆様に説明責任を果たすことは当然でございまして、今後、河川整備計画を円滑に策定していくためにも重要であるとも思っております。この認識に立ちまして、小委員会におきます審議の内容及び審議の計画について地域関係住民等に報告することとしておりまして、具体的な方法とか実施時期につきましては地方整備局に検討させているところでございます。
 これを実施するに当たりまして、2点ほど確認させていただきたいと思います。1点目でございますが、河川整備基本方針を審議いたします審議会及び小委員会の役割でございます。すなわち、この審議会と住民との関係といってもいいと思いますが、一級水系にかかわります河川整備基本方針でございますが、一級水系が国土の保全上または国民経済上、特に重要な水系であることにかんがみまして、全国的な安全度のバランスや、長期的な国土の保全、利用の観点を考慮し、高度に専門的な観点から社会整備審議会の意見を聞いて、大臣みずからがその責任において定めるものと河川法で定められております。
 2点目でございますが、報告会のことでございます。すなわち小委員会と報告会との関係といってもいいかと思いますが、予定しております報告会でございます。この小委員会におきます審議の内容及び審議経過を、地元住民にご説明することを目的として九州地方整備局が実施するものでありまして、この小委員会の審議と直接関係を持つものではないと考えております。報告会の実施に当たっては地元自治体の協力が不可欠であります。具体の方法、時期につきましては、地元自治体とも相談の上、決めさせていただきたいと思います。
 国といたしましては、球磨川では最近3年立て続けで洪水被害が発生しておりまして、球磨川流域にお住まいになります住民の生命、財産が、治水対策を進めることは喫緊の課題となっております。このため、国としても一日も早く基本方針を策定して、引き続き河川整備計画の検討に入ってまいりたいと思っています。よろしくご指導のほどお願いしたいと思います。
 なお、○○委員から、文書を出したけれども文書で返ってきていないというお話もありました。現在、文書によります返事も、今、私が申し上げました趣旨の返事になろうかと思いますが、用意をしておりますことを申し添えておきます。
 以上でございます。
(委員長)  そういうことで、責任を持って事務局はやっていただく。ただ、現地にもいろいろなことがありますので、ひとつ県、あるいは市町村のご協力もいただきたいということだと思います。いずれにしても、一番の利害関係者は水害危険区域に住んでおられる住民でございますので、徹底的に今までの誤解を解くような努力をしていただきたいということを申し添えたいと思います。
 各委員には、本議題につきまして貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。
 最後に、本日の議事録につきましては、内容について発言者の氏名を除いたものとし、各委員のご確認を得た後、国土交通省大臣官房広報課及びインターネットにおいて一般に公開することとします。
 本日の議題は以上でございます。

3.閉      会


(事務局)  ありがとうございました。
 次回の本委員会は、Bグループにつきまして、球磨川水系の審議を3月23日金曜日13時から16時の間、場所は後日改めてご連絡いたします。
 また、お手元の資料につきましてはお持ち帰りいただいても結構でございますが、郵送をご希望の方には後日郵送させていただきますので、そのまま席にお残しください。
 それでは閉会いたします。どうもありがとうございました。

  







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