水管理・国土保全

  

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神通川の自然環境

地質
 神通川の流域上流部、飛騨高原北部一帯には、日本列島の基盤を形成していると言われる飛騨変成岩帯があり、この周辺には、古生代、中生代の堆積岩、火成岩が分布しています。飛騨山脈を形成する乗鞍火山群では、新生代岩石層とその堆積が見られます。流域下流部には、中新世、更新世、完新世の層が分布しています。
 富山県南部の山岳地帯には、ジュラ紀及び白亜紀に堆積した手取層群が分布しており、流域下流部は、神通川と常願寺川による扇状地堆積物が見られます。神通川流域から常願寺川流域にかけての礫岩層を庵谷峠層と呼び、その上層砂岩と頁岩の層を猪谷互層と呼んでいます。
 流域中流部の富山県と岐阜県の県境付近には、飛越地震(1858年)の震源となった跡津川断層があります。この断層は60kmに達します。また、国道41号の千貫橋付近には国の天然記念物に指定されている横山楡原衝上断層がありますが、これは片麻岩及び花崗岩が手取層の上につき上げたものです。
 流域下流部の井田川合流点付近で交差している呉羽山(くれはやま)断層帯は長さ約22km以上で、断層の北西側が南東側に対し相対的に隆起する逆断層です。


地質時代区分図、地質区分図


横山楡原衝上断層


気候
 神通川流域の気候は、夏季の気温が高く冬季の降水量が多い下流部の日本海側気候区、高い山々に囲まれた盆地地域で、夏季に雨が多く気温が比較的低い上流部の内陸性気候区に分類されます。
 年間降水量の平年値は、上流部で約1,700~2,000mm、下流部で約2,400~2,600mmとなり、年平均気温の平年値は、富山観測所で約14℃、栃尾観測所で約10℃となっています。


年平均降水量分布図


富山観測所、栃尾観測所の降水量・気温(平年値)

流域上流部
 神通川流域の自然環境は、その特性から流域上流部、流域中流部、流域下流部の3区分に分類されます。
 流域上流部(源流~小鳥川合流点・高原川)は、源流の急峻な山間地を経て高山盆地のほぼ中心を流下する盆地河川となっています。植生は、冷温帯の二次林であるクリ-ミズナラ群落、ブナ-ミズナラ群落の落葉広葉樹林が大勢を占め、河川沿いの水辺にはツルヨシが生育しています。また、砂礫床にはアユ、カワムツ等の魚類が生息・繁殖し、水辺には魚類を餌とするカワセミ等も飛来します。アルプスの山々を源流にもつ支川の高原川では、その上流域が中部山岳国立公園に指定されており、国指定の特別天然記念物のニホンカモシカが生息するなど、一帯には優れた自然環境が広がっています。


流域の区分


ニホンカモシカ、カワセミ、カワムツ


流域中流部
 流域中流部(小鳥川合流点~神三ダム)は、山間地を縫うように流下する山地河川となっています。渓谷を利用した発電ダムにより湛水区間が連続しており、その途中に風光明媚で名高い神通峡があります。植生は、山腹を覆うスギ、ヒノキ、アカマツ等の針葉樹の植林地及びコナラ群落が大勢を占めており、河岸や河床は露岩や大玉石で形成されています。砂礫床にはアユ、オイカワ等の魚類が生息・繁殖し、水辺には魚類を餌とするアオサギ等のサギ類が飛来します。また、森林性の猛禽類であるクマタカが生息・繁殖するほか、連続する湛水区間には冬季にカモ類が飛来します。


オイカワ、アオサギ、クマタカ


流域下流部
 流域下流部(神三ダム~河口)は、上流までと様相が異なり典型的な扇状地河川となります。植生は、発達した砂礫州にカワラヨモギ-カワラハハコ群落、ヨモギ-メドハギ群落が分布し、水辺にツルヨシ群集等からなる抽水植物群落、ヤナギ林が分布しています。魚類の遡上降下阻害要因となる堰等がなく魚類相が豊富であり、淡水魚であるオイカワ、カワムツ、アカザ、カワヨシノボリ等の他、アユやサクラマスといった回遊魚、マハゼ等の汽水魚が生息しています。また、熊野川合流点付近の砂礫床はウグイ、アユの産卵場となっています。河口にかけて分布するヤナギ高木林の一部は、アオサギ等の集団繁殖地となっているほか、緩流部の水面はマガモ等の水鳥の集団渡来地となっています。河口砂州には、ハマヒルガオ等からなる海浜植物群落が分布し、シロチドリ等が生息しています。
 支川の井田川及び熊野川は、高水敷にオギ群落、ヨモギ群落、水際にツルヨシ群落、ヤナギ林等が分布しています。砂礫床にはオイカワ、カワムツ、カワヨシノボリ等の魚類が生息・繁殖するほか、井田川ではサケやサクラマスの遡上、産卵が見られます。


カワラハハコ、サクラマス、アユ




自然再生の取り組み

 かつて神通川は、多種多様な魚類や底生動物等が生息・生育・繁殖する瀬や淵、砂礫河原等の多様な環境が形成されていましたが、砂利採取や河川改修等の人為的インパクトに伴う河道の固定化・直線化、河床低下等により、瀬や深い淵が減少し、流れが単調化するとともに、高水敷や中州では冠水頻度の低下による樹林化が近年顕著となっています。
 これらの河川環境の変化を踏まえ、平成18年度から多様な生物の生息・生育・繁殖の基盤となる神通川の瀬や淵等の再生を図ることを目的とした自然再生を実施しています。
 地元の地方公共団体等からの自然再生の取り組みへの期待の高まりも踏まえ、整備後のモニタリング調査結果等に基づき整備内容の見直しを図るなど、順応的に取り組みを進めていきます。


モニタリング調査の実施状況①


モニタリング調査の実施状況②




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